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第七十五話 VS多世界最強 その4

ギリギリセーフ!?……アウトクサイ気も。

ごめんなさい。


編集しました。この話で第3Rに入ったという感じにします。理由は1Rで済ませるには会話が長く感じたからです。……まあこれでも十分長いんですがね。

第3Rが始まり、再び対峙する僕とファルシオン選手。


「……もしかして、殴られ過ぎて変になった?」


そんな中、開口一番で頭の心配をされてしまった。まあさっきは突然笑い出したので、当然の反応ではある。尚、実際のところは割と間違っていないのでは否定はしない。


「そんな感じですかね。ボッコボコにされたお陰で、僕の駄目な部分を直視することができました」


痛みのお陰で余計なことをウジウジ考えないようになったし、意識を飛ばされたことで僕の本心も明らかになった。

だから殴られ過ぎて変になったってのも間違いじゃない。正確に言えば、一周まわって冷静になったのだけど。


「随分とお待たせしました。もう迷うことはありません」

「……それは何? 今更本気を出すとでも?」

「遅いですかね?」

「当たり前。悪いけど、私はもうキミに期待なんてしてない」

「ですよねー」


予想通りの答えに苦笑が浮かぶ。僕は色んな意味で吹っ切れたお陰で清々しい気分だけど、ファルシオン選手は当然ながらそうじゃない。これまでの僕の行動、ダメダメな姿に機嫌は最悪だし、信用なんてゼロを通り越してマイナスだ。

そんな奴が突然心を入れ替えましたなんて言ったところで、『何を今更』と一蹴されるのが普通である。


「ふっ!」


短い呼気と共に、一瞬で間合いを詰められる。僕の心変わりなど無意味であると主張するかのように、実に機械的で容赦のない攻撃モーション。

当然ながら、僕の回避行動など間に合わない。本気を出すと言っても、これが試合である限り変化するのは戦闘スタイルのみ。今の僕ではどうやったって、近接戦では本気のファルシオン選手に敵わない。



──しかし魔法ならば、僕のそれはファルシオン選手のスピードすらも凌駕する!



「伸びろ!」


言葉と共に地面が隆起し、無数の槍となって拳を打ち出そうとしている彼女目掛けて襲い掛かる。


「っ!!」


しかし、やはり相手は多世界最強。驚愕の表情を浮かべながらも、地面からの奇襲をバックステップで回避してしまう。……まあ、防御ついでに軽く驚かせようとしただけだ。ダメージなんて元から期待していない。

それに1番の目的は達成できた。


「もう不用意に近付くと危ないですよ?」

「……どうやらそうみたいだね」


警戒心を顕にしながら、ファルシオン選手が答える。無闇に接近すれば、魔法によるカウンターが飛んでくることはこれで証明された。牽制としては十分だろう。


「なるほど。【岩石操作】か。それが本来のキミのスタイルな訳ね」

「いや違いますよ」

「は?」


まあ確かに岩というか、魔法で地面を使ったけども。それとこれとは別というか。あ、待って。そんな怖い顔しないで。この期に及んで舐めプとかじゃないから。


「僕の得意魔法は結構複雑なんで。ああいう状況だと、あんな感じの単純な奴の方が手っ取り早いんですよ」

「あの構築・発動速度で単純ねぇ……。知ってはいたけど、随分と魔法が達者みたいだね?」


芝居がかった皮肉めいた言い回し。だが、その中に僅かに混ざる探りの気配。それ即ち、僕の魔法はファルシオン選手にとっても警戒に値するものであることの証明だ。


「ええ。吹っ切れた今だから言っちゃいますけど、僕も魔法能力だけなら、アナタと同じで10代最強クラスなんですよ」

「……そりゃまた大きく出たね。私を前にして最強を名乗るか!」


ファルシオン選手の闘志が膨れ上がった。なにせ相手は多世界最強の称号持ち。その立場からすれば、僕の言葉は挑発のように聞こえたのだろう。


「吐いた唾は飲み込めないよ!」


そして再び一気に間合いを詰めてくる。一見すると挑発に乗った愚かな突撃。しかし、多世界最強と呼ばれる程の選手がそんな単純な訳がない。それを抜きにしても、恐ろしい程の判断能力の持ち主だということは既に分かっている。

恐らく本気で仕留めに来てはいない。先程のような魔法ならば対処できると判断した上で、僕の情報を引き出す為に攻めてきている。危なくなったら深追いせずに引くだろうし、イケそうならそのまま押し切ってくる筈。

となれば、ここは一旦引かせる程度で攻めるに限る。カウンターで逆に仕留められるとは到底思えないし、消極的な対応で勢いづいても厄介だ。


「いけ!!」


言葉と共に地面を操り、ファルシオン選手を妨害していく。

真っ直ぐ間合いを詰めてきたら、間の地面から槍を生み出し勢いを殺す。周り込もうとすれば、その進路に壁を生み出し狙った場所への移動を阻む。それでも突破された時は、地面を操作すると共にブラストアーツで一気に距離を取る。

邪魔する。邪魔する。逃げる。邪魔する。逃げる。邪魔する。邪魔する。


「チッ! 嫌になるぐらい的確に妨害してくるね!?」

「そりゃそうしなきゃそのまま負かされますから!!」


舌打ち混じりの文句。しかし、僕もまた負けないトーンでファルシオン選手に言い返す。

簡単にやってるように見えるが、こっちだって必死なのだ。さっきも言ったように、僕ではファルシオン選手の挙動についていけない。つまり下手を打つとそのまま振り切られるのだ。だから必死に、それこそ僕の戦闘経験を全て駆使して、ファルシオン選手の一挙一動を観察し、初動を捉えてその先を予測しているのだ。その上で魔法を使って妨害しているのだから、実情はかなりの綱渡りだ。


「っ、仕方ないか……」


だが、そんな危険な綱をなんとか渡りきることに成功した。このままでは埒が明かないと考えたのか、再びファルシオン選手がバックステップで距離を取る。


「……癪だけど言うだけのことはあるね。攻めきれない。元々ギリギリですり抜けてたけど、魔法を本格的に使われるとこうも面倒になるか」

「ファルシオン選手なら、ゴリ押しでなんとかできそうですけどね」

「全力で突破しにいけばね。でも、切り札を残してる相手に不用意に突っ込むとでも? なんだかんだ言って、キミの得意魔法とやらはお披露目されてないじゃないの」

「そりゃアナタが果敢に攻めてくるからですよ」

「嘘くさい」

「本当なんだけどなぁ……」


距離が離れてた方が好都合というか、色々とできることが増えるし。


「私の感覚が言ってるの。嘘じゃないだけで事実じゃないって。キミの言葉を鵜呑みにすれば、致命的な結果になる」

「……」

「否定しないか。この狸め」


吐き捨てるような言葉。しかし、先程よりも幾分棘が減っているような気もする。僕が勝つ為に手段を選ばなくなってきたからかな?


「途端にえげつない手を使い出してさ。何が原因な訳?」

「あれ? 心変わりの原因なんて興味がないって言ってませんでした?」

「気が変わったの。腹立たしいけどキミは強い。だからその強さに免じて、組手しながら話ぐらいは聞いてあげるよ」

「んー、なるほど」


口調からして単純な興味が3割、攻略方を考える為の時間稼ぎが7割って感じかなぁ。

まあ、真意の方は兎も角。話を聞いてくれるというなら乗っておこうか。僕としても失望されたままというのはアレだし。言い訳ぐらいはしておきたいところだ。


「ではお言葉に甘えて」

「ほら来なさい」


という訳で、再び始まる攻防。しかし先程までのそれと違って苛烈さはない。実態は長々とした会話での指導が入らないようにする為だけに行われるカモフラージュ。ファルシオン選手の言葉通りの組手だ。


「まあ、心変わりの理由は凄く単純なんですがね。僕ってすっごい意地っ張りだったみたいで。自覚した今だから言うと、ことの発端もそれでしたし」

「と言うと?」


口を開こうとして、僅かに逡巡する。中々に恥ずかしく子供っぽい理由が故に、羞恥の感情が湧き出てくるのだ。

……だが、それはここでは要らぬと振り払う。


「いやね? 僕って強いじゃないですか」

「自分で言うか」

「そこはまあ、目をつぶって頂いて」


実際強い方だからね。


「でもこれ、魔導戦技で培った強さじゃないんですよ。詳細は省きますけど、実戦由来というかね。機動隊と水無月って苗字を言えば、ある程度理解して貰えるかと思うんですが」

「……え!? まさかそういうこと!?」

「そういうことですね」


流石はユメ姉さんのネームバリュー。2つキーワードを出しただけで、ファルシオン選手も普通に察してくれた。……まあ、実際は全然違うんだけども。大筋とは関係ないし、わざわざ機動隊の嘱託魔導師ってことを出す必要もないので、『大英雄の家族に鍛えられた』ってことで通しておく。


「まあそんな訳で、僕にも力に対して相応の自負ってもんがあったんですよ」

「それを証明する為に魔導戦技を?」

「いえ。切っ掛けは保護者からの部活参加の命令でして。それなら強くなれる魔導戦技をって考えたんです。近接を始めたのも、苦手を克服してより強くなろうとしたからで」


始めはそういう単純な理由だった。近接能力を上げる為だけに、魔導戦技をやっていた。


「でも、幸か不幸かうちの部のメンバーは優秀でした。全員が近接型で、それでいて強かった」


バインドアーツという必殺のスタイルを持つシズクちゃん。音魔法と高レベルの剣技で相手を翻弄するセフィ。鉄壁の防御を誇るルナ先輩。雷魔法と体術、攻守ともにバランスの良い万能型選手のレイ先輩。

魔導戦技部はどういう訳か、才能の宝庫と言って良い程に優秀な選手たちが揃っていた。


「いやもうびっくりでしたよ。皆強いんですもの。内心ではスポーツ選手、それも学生レベルで僕がするなんて思ってもみなかった」


僕は機動隊の嘱託魔導師だ。最強戦闘組織に所属する者だ。幾ら苦手なスタイルをとっていても、学生レベルで苦戦するなどありえない。そうタカをくくっていたのだ。

そしたら見事に苦戦した。最初は凄い子もいるなと思ったけど、それが魔導戦技というスポーツのレベルだと思い知った。


「で、気付けば固執してたんですよ。近接戦に、ブラストアーツに。ちっぽけなプライドから、実戦で鍛えられた僕もあの高みにいかなければならないと決め付けて」

「へえ?」

「……そんな胡乱な声を出さなくても分かってますよ。そんなことを言う割には、僕には『飢え』が足りなかった。近接に固執してたのにも関わらず、勝利を求めていなかった」


スタイルを近接に絞る。それだけなら多分、今みたいに失望なんてされなかっただろう。求道は実績の積み重ね。ならば勝利という最も分かりやすい実績を求めることこそが正道。

しかし、僕がしたのは違う。縛るだけ縛って、勝利を求めない『舐めプ』だ。その時その時で色んな理由を付けてきた。なんなら後悔だってしてきた。……だが、吹っ切れた今なら分かる。僕の醜悪さが理解できる。


「結局、僕がしてたのはカッコつけだ。強くなるという目的がすり変わり、スタイルを縛ることそのものに意味を見出してた。そして負ければ『苦手な近接だから』って言い訳を内心で浮かべる。馬鹿みたいなプライドのせいで、馬鹿そのものなことをしてたんですよ」


変に意地を張ってブラストアーツに固執して。その癖舐めプを言い訳に負けを肯定する。そんなことを無意識の内にやっていた。結局、僕の心の根本にあったのはそんな浅ましい感情だったのだ。


「……なるほど。聞けば聞くだけ不愉快だね」

「ええ。我ながら反吐が出そうですよ」


向けられる冷たい瞳も甘んじて受け入る。今までの僕はそれだけ愚かだった。僕自身、自分の中にそんな醜悪な部分が存在しているとは思ってもみなかった。


「で、それをどういう訳かさっき自覚したと?」

「……ええ。と言っても、自覚したのもまた無意識に意地を張ったからなんですがね」

「はあ?」


意味が分からないと首を傾げるファルシオン選手。意地を張った行為を、意地を張ることで止めたと言われたのだから当然か。


「結局のところ、僕って度し難い意地っ張りだったんですよね」

「だからどういう意味それ?」

「いやね、さっきファルシオン選手に吹っ飛ばされたじゃないですか。『応援してる人も泣いてるよ』っていう罵倒つきで」

「うん。したね」

「そん時意識が一瞬飛んだんですよね。ただ、意識のない中で『負けるな!』って声が聞こえた気がしましてね」


そしたら自然と踏ん張っていた。無意識で負けないようにしていた。

そう伝えると、ファルシオン選手は呆れが混ざった表情を浮かべる。


「……つまり何? 仲間の応援で力を貰って、仲間の応援で間違いに気付いたと?」

「ははは。んな訳ないじゃないですか。頭の悪いフィクションじゃないんだから」

「……ああ、うん。そりゃ良かった。いけしゃあしゃあとそんなことのたまってたら、どの口でと本気で殴り飛ばすところだったよ」

「でしょうねー」


僕だって組手を止めて即座に全力で殴るよそれは。色んな意味でペラッペラだもん。印象そのものが最底辺に落ちるわ。


「幸いなことに、僕が踏ん張れたのは別の理由です。まあ、ある意味で超絶単純で俗な理由なんですがね」


そう前置きしながら、僕は観客席の方へと視線を向ける。それに合わせて、ファルシオン選手も軽く距離を取る。


「ファルシオン選手、僕の仲間のシズクちゃん……ストライム選手って分かります?」

「そりゃ勿論。……キミとは全然違う素晴らしい選手だよ」

「ははは」


チクリと飛ばされる皮肉に苦笑。ただそれとは別に誇らしい感情も湧き上がる。

単純に同じ部活の仲間が多世界最強に賞賛されたことが嬉しかったからか。


「それで、彼女がどうした訳?」

「いやね? どうやら僕、彼女のことがとんでもなく好きだったみたいでして」

「……は?」


それともついさっき自覚した、僕の中に宿る恋心が原因か。

という訳でナナ君の心象暴露ⅹ2。

舐めプの真意は実に下らない理由でした。密かに存在していたプライドというか、傲慢な部分が悪い方向に転がってしまったという。それを色んな言い訳で塗装してたのだから手に負えない。……まあナナ君も現在進行形で思春期だったというオチですな。

そして第2の暴露は……うん。詳細は次回。予想はできるでしょうけど。


あー、にしても長いなぁ! いや、本当ならこの回で得意魔法お披露目+反撃って感じにしたかったのに! 長くなりそう遅くなりそうって理由で更に後ろにズレた……。これ下手したら十数話つぎ込みそうなのよ。


因みに組手要素はアレです。割と短い1Rで棒立ちのまま込み入った会話なんかできるか、という作者のリアルを捨てきれなかったが故の苦肉の作だったりします。許して?

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