第六十九話 フリットカップ第1地区予選、2回戦(セフィ) その1
ギリギリセウト? まあ更新です。
尚セフィ視点。
タイトルちょっと足りなかったので即修正
──会場の準備ができましたので、以下の番号の選手は指定のリングまで起こしください。
「時間ね」
「準備は万端かしらー?」
「問題ありません」
呼び出しのアナウンスに従い、私たちは選手控え室を後にしました。
これから始まるのは男女混合の部の第2回戦。相手となるのは私と同じ二刀流、レイピアとマウンゴーシュを使用するゾイ・ランクル選手。ユーリ先輩曰く、今大会がデビューとなるルーキーだそうで。
「セフィ? 念押ししておくけど、相手の情報は一切無しよ。分かっているのはそこそこの剣の使い手ということと」
「何らかの切り札がある可能性が高い、ということですよね」
「よろしい」
要警戒。それが私たちが抱くランクル選手の印象。コーチと私。それぞれ異なる理由から、彼のことを警戒対象として認識しています。
初戦の映像を見る限りでは、ランクル選手の実力は並以上ではありますが、私ほどではありません。剣技の腕前はそこそこ。正確無比の鋭い刺突は目を見張るものがありましたが、戦い方自体はとても素直。その辺りの要素を並べると、ここまで警戒する必要は無いかのように感じるでしょう。
しかし、コーチは長年の経験から、ランクル選手には『何か』があると判断しました。私たちと同じく、状況次第で即座にカードを切れるように、油断のない戦い方をしていると感じたそうです。
対して私は、ランクル選手の刺突が引っかかりました。あれ程までの正確無比かつ鋭い刺突。幾らレイピア使いでも、ただの刺突をあそこまで練り上げる必要は無いでしょう。普通の指導者なら、それ以上に戦い方、フェイントなどの戦闘における立ち回りを教え込む方が重要な筈。なのにそれをしていないということは、翻せばしなくても問題が無い戦術、ポテンシャルがランクル選手にあるという証拠なのではと、私は考えました。
故にこその要警戒。杞憂ならばそれで良しですが、懸念が当たった場合を考えると油断など全くできません。
「できれば魔法は隠しておきたいですけど、状況によっては出し惜しみしません。不味いと思ったら【スタンビート】で一気に刈り取ります」
音魔法は初見殺しとしても非常に優秀です。それ故に強敵との対戦までは温存しておきたいというのが本音。しかし、下手に出し渋って敗北の可能性を上げるのは本末転倒。
その辺りの見極めが、今回の試合ではキモとなるでしょう。
「分かってるなら結構。それじゃあ行ってきなさい」
「はい!」
肯定とともに背中を押されます。
「頑張ってねー」
「勿論です」
更にユーリ先輩からのエール。
2人の声を推進力として、指定のリングの上に登ります。
リングの上には人影。既に到着していたランクル選手です。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしく」
挨拶の為に手を差し出すと、返ってきたのはオドオドとした声。おっかなびっくり差し出された手は、ランクル選手がどんな人物なのかを如実に現していました。
性格は恐らく気弱。更に言うなら1つの物事にのめり込むタイプですか。あの偏執的なまでに正確無比な刺突も、この辺りの性格が関係していそうですね。
対してフィジカル面。年齢的には私たちと同年代らしいですが、体格や筋肉は男子の平均よりも下でしょう。但しその反面、肉体の靱やかさは大きく上回ってる印象です。試合の映像を見る限りだと、なんていうか、最低限の男性的な身体特徴を残して、女性的な筋肉の付き方をしているというか。
いやそもそもこの人、近くで見ると男性に見えないんですよね。映像の時点で感じてましたけど、顔立ちと良いシルエットといい女性的過ぎるんですよ。後は声。今の挨拶もキレイなアルトでした。本当に男なんですかね?……失礼過ぎるので口には出しませんが。
総評すると気弱で女性寄りの中性な男性です。自分で言ってて訳分かんなくなってきましたね。
「それではデバイスの起動を」
いつの間にか試合の始まる直前に。どうやらランクル選手の分析に夢中になり過ぎていたようです。
これはいけないと意識を切り替え、シンセサイザを起動します。ランクル選手も同様に、デバイスを起動して初戦の映像と同じ構えを取ります。
そして僅かな間、お互いに睨み合い
「──試合、開始!」
始まりの号令と同時に突撃。
「シッ!」
「っ、チッ」
先手を取ったのはランクル選手です。刺突という攻撃の関係上、どうしても私よりも間合いが広い。故に先手を取られたことに驚きはしません。
驚いたのは刺突の精度と速度です。一息で身体の真ん中、眉間・胸・腹を狙った3連撃を放ってきました。防ぎはしましたが、予想以上のキレに思わず舌打ちが出てしまいました。正確無比かつ鋭い刺突。警戒はしてましたがここまでですか……。
「ならっ!」
「っ!?」
お返しとして一刀。放たれた刺突に右手の剣を沿わし、そのまま絡めるようにしてレイピアを拘束。まともに逸らそうとしても、レイピアの『しなり』とランクル選手の靱やかさで、逆にいなされてカウンターの一閃をくらいかねないという判断です。
そしてメイン武器を無効化したところで、カウンターで左の剣を叩き込みました。
「ツッ!!」
しかし、カウンターはランクル選手のマウンゴーシュによって防がれます。防御の衝撃で僅かに眉を顰めていますが、それだけ。ダメージらしいダメージは無しですね。
まあ、予想はしてました。マウンゴーシュは防御用の短剣です。元々がレイピアなどとセットにされることが多い武器ですが、それでもちゃんと扱えなければお荷物以外の何物でもありません。それをわざわざ装備しているということは、防御の方も相応の心得があるということ。
事実、ランクル選手は私のカウンターを防ぐだけでなく、シンセサイザの拘束をスルリとすり抜け、防いだ衝撃を見事に利用して私の間合いから逃れています。身体のバネも中々ですか。
「……つ、つおい」
「そちらもかなりの腕前で」
「え、そっちのが絶対強いじゃん……。完全お世辞じゃん」
「ネガティブ過ぎません?」
気弱な性格だなとは予想してましたが、返答がアレすぎます。大丈夫ですかこの人?
とは言え、やはり剣技の方はそこそこですね。あの1連の攻防で彼我の力量差をほぼ理解できたようで。今は油断なく構えながら、私の出方を伺っています。
「さて……」
どうしたものですかね。剣技だけなら私が上でしょうけど、ランクル選手に存在するであろう切り札が不穏なところです。
しかし、それは恐らくランクル選手も同じ。私の情報は皆無に近いのですから。同じく公式戦初参加のルーキーで、かつ初戦はアレ。出回ってる情報量だけならランクル選手よりも少ないです。
「はっ!」
「シッ!」
故にお互いが探り探り。本気ではあるものの全力ではない。そんなレベルの攻防をもう1度。
結果は私の方は無傷。攻撃自体は鋭いですが、攻め方が素直なので順当でしょう。対してランクル選手ですが、クリーンヒットはしていませんが、剣先がかする程度の当たりがあり。割とギリギリの回避が多かったです。
……しかし、微妙なところですね。理想は剣技のみで切り札を使わせる前にKOでしたが、それをするにはランクル選手の技量が高過ぎる。全力でじっくり挑めばまあ勝てるでしょうが、そうなれば切り札で反撃されます。かと言って魔法を解禁するには、ランクル選手の脅威度が足りない。今のところ、音魔法の初見殺しというアドバンテージを失ってまで勝ちにいく必要は感じません。
「うん。無理」
──そんな私の悩みは、この試合において致命的なモノでした。
「強すぎクラウン選手。勝てないコレ」
「え?」
予想外の台詞でした。敗北宣言に似た言葉が耳に入ったことで生まれた、一瞬の思考の空白。
その隙にランクル選手がバックステップ。一気に私から距離を取りました。
「しまっ!?」
開いた距離に背筋が泡立ちます。この唐突な行動、どう考えても意味がある!
ほぼ間違いなく切り札を切るつもりです。たった2合の打ち合い、それも全力ですらない探り合いのですよ!? それで決めるとかどんな判断力してるんです!?
「くっ!」
兎にも角にも、何がきても問題無いよう警戒レベルをはね上げます。更には魔法を何時でも解禁できるよう集中。そしてランクル選手目掛けて突撃。
距離を取ったということは、魔法を使った遠距離攻撃……いや、ランクル選手は刺突の構えを崩していません。それでいてより深い踏み込みをする為か、先程の構えよりも腰の位置が低い。となれば、狙いは恐らく魔法を併用した強力な突撃!!
ならば速度と勢いが乗り切る前に叩くまで!!
──ですが、
「【トランスポート】」
そんな私の判断を嘲笑うかのように、ランクル選手のレイピアが私の腹部を貫きました。
因みに、ランクル選手が速攻で魔法を切った理由は、『剣技じゃ絶対勝てないじゃん』というネガティブ思考故。普通に剣技だけでもセフィ相手に食らいつけるぐらいの腕前だったりするのに、剣技オンリーは超速で諦めた模様。
まあ、そのお陰でセフィの虚を完璧につくことができたんですがね。
あ、ちな次でセフィの試合は終わりの予定。予定は未定なので前後編にはしてませんけど。




