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第六十七話 男女混合の部、初戦感想会話

ギリギリセーフ、かな? はい。遅れてごめんなさい。


えー、それはそれとしてご報告。本作、ネット小説大賞の感想サービスを設定してたのですが、まさかまさかの感想を頂き、該当サービスのページで紹介されました(いぇーいどんどんぱふぱふ)。やったぜ。


……アレ本当に来るなんて思ってなかったから、凄いビビったんよな。

「うん。まずまずの結果ね」


試合の結果が書き足されたトーナメント表を片手に、コーチは満足そうに頷いた。


「3人とも、初戦突破おめでとう。素晴らしい試合だったわ」

「やった!」

「はい!」

「ありがとうございます!」


コーチのコメントに、3人で仲良く歓声を上げる。僕は勿論、シズクちゃんもセフィも公式戦は初。デビュー戦が華々しい結果となったのは、とても喜ばしいことだ。


「本当によくやったわね。という訳で、1試合ずつ振り返ってみましょうか」

「「「はい!」」」


コーチの言葉で意識を切り替える。取り敢えず、お褒めの言葉は一旦ここまでだ。ユメ姉さんの故郷には『鉄は熱いうちに打て』なんて諺があるように、試合の印象が鮮明なうちに振り返った方が得るものが多いから。ということで、コーチによる個別の感想と試合の分析が始まった。

まずは僕。


「ナナ。貴方はしっかり手札を隠した上で、相手を終始圧倒していたわね。どう? 最初は不安がってたけど、実際に試合をした感想は」

「……そうですね。なんというか、割とあっさり勝てたなって感じでした」

「でしょうね」


僕が素直に思ったことを口に出すと、コーチは肩を竦めてみせた。


「貴方は普通に使っているし、周りのメンバーも何だかんだ対応できてるから実感しずらいでしょうけど、重ね掛けはそれ1つで切り札になる決戦技術よ。並の選手が相手なら身体能力だけでもごり押せるんだもの。そんな技術を前情報無しでぶつけられたら、そりゃあっさり勝てるわよ」

「なるほど」


車のレースで片方だけこっそりジェットエンジン積んでるようなもんだもんね。スタートと同時に圧倒的にリードされて初めて馬力の差に気付くとなれば、まあ相手方に勝てる道理は無いだろう。

うん。確かにミルファ選手もそんな感じだった。試合が終わってから暫くポカンとしてたし、僕が重ね掛けを使ったことに気付くと『……えぇ』って顔をしていた。最終的に『いやー、ちょっとボク強過ぎない? むしろお姉さんに手加減して欲しかったんだけど』と苦笑されたし。負けて悔しいというよりは、運が悪かったという諦観が言葉の端に滲んでた。

重ね掛けの習得は一流選手の登竜門であり、使える選手は並より1段上の扱いを受ける。前々から聞いてはいたけど、その事実を今日初めて実感したよ。


「とは言え、これはある種の初見殺しよ。少なくとも以降の試合では、貴方が重ね掛けの使い手であることは知られている。相手はしっかり対策を取ってくるでしょうから、気を抜いちゃ駄目よ」

「はい!」

「まあ、貴方の場合は手札が多いから、重ね掛けを対策されても問題無いのだけど。……とは言え、温存する方針なのは変わらないわ。来たるべき大一番に備えて、できるだけ情報は秘匿すること」

「はい」


来たるべき大一番。言うまでもなく、多世界最強選手であるアテナ・ファルシオン選手との試合だ。彼女との試合で少しでも勝率を上げる為に、初見殺しよりの僕の戦い方は隠しておいた方が良いというのが、僕とコーチ共通の見解だった。


「でも、出し渋って負けることだけはないように。情報の秘匿も大事だけど、そもそも勝てなきゃ意味がないわ。その辺りの見極めは間違えないこと」

「分かりました!」


そうコーチが締めくくったことで、で僕の番は終わった。次はシズクちゃんだ。

シズクちゃんの試合はかなり見応えのあるものだった。相手は同じ格闘型で年上の男性選手。体格もパワーも圧倒的に不利であったが、丁寧に相手の攻撃を捌いて的確に拳を打ち込んでいった。軽妙なフットワークで被弾らしい被弾は殆どせず、一方的に攻め続け、最終的に疲労した相手の顎に綺麗なフックが炸裂。3R終盤でKO勝利となった。


「シズク。貴女も格闘オンリーで、見事に相手を翻弄していたわね。高機動型インファイターのお手本のような戦い方だったわ」

「ありがとうございます!」


コーチの言う通り、シズクちゃんの試合は観ていてとても興奮する内容だった。『蝶のように舞い、蜂のように刺す』。地球世界の格闘技界隈から広がった表現だけど、正しくその言葉を体現するかのような立ち回りだった。


「それに魔力性質を温存したことも良かったわ。次回以降に手札を持ち越せたのは大きいわね」


それでいて本来のスタイルはしっかり隠しているのだから、十分過ぎるぐらいの結果だろう。


「あれはシズクの判断でしょう? 私は特に何も言ってないし」

「はい。バインドアーツを使うかどうかは、試合の展開で決めようかなって。で、戦ったら格闘オンリーでも勝てそうだったので。……まあ、念の為いつでも使えるように用心はしてましたけど」

「良い判断ね。貴女のスタイルは対策が難しいものだけど、初見殺しの要素も備えている。必要な時まで温存できるのなら、それに越したことはないわ」


シズクちゃんのスタイル、事前情報無しだと下手すると詰みかねないからなぁ。そういう意味では、バインドアーツを温存できたことは大きい筈だ。……凶悪なのは、事前情報有りでも近接戦では詰みかねないとこなんだけどね。いや本当に、単純に強いよねバインドアーツって。


「ただ格闘オンリーに絞ったせいで、試合時間は伸びちゃったのが個人的には反省点かなと……」

「そこは仕方ないわよ。純粋な攻撃力に関しては、貴女の体質的な問題もあるのだから」

「ですよねー。一応、その辺りはラティさんとの特訓で目処も立ったんですけど……」

「それこそ貴女の切り札でしょう? 初戦で切るようなものではないわ」

「はい」


コーチとシズクちゃんの意味深な会話。どうやらラティ、現役の英雄による指導は、シズクちゃんの攻撃力不足という弱点を克服させたらしい。まあ、僕はその切り札の詳細は知らないんだけどね。

同じ部活の仲間と言えど、フリットカップでは共に競い合うライバルでもある。そういう理由から、僕らは本当の切り札、具体的に言うと機動隊メンバーによる個人指導の成果などは、共有しないという話になっているのだ。だから指導者であるコーチを除いて、最終的に誰がどれぐらい成長したのかは皆知らない。試合でお披露目されて、初めて知ることになる。……尚、あのメンバーからの指導を受けていない僕だけは、大した成長はしてないという。まあ、本来のスタイルを隠しているので、それで仲間外れじゃないということにしているけども。

それは兎も角。コーチの総評は最上と言って良いものだった。特に指摘らしい指摘も無し。バインドアーツの切り時に関しても、好きなタイミングで切って良しとのこと。まあ、シズクちゃんの場合は元からそんな感じだったんだけど。

という感じで、シズクちゃんの番は終了。次はセフィ……なんだけど。


「セフィは……そうね。どうだった?」

「なんというか、ですね……」


コーチも、セフィも。割とズバズバ言うタイプ2人が、お互いに口篭る。なんなら僕たち全員が似た感じだった。

いや、だってねぇ……。


「あの内容じゃ、特に何も言えません」


セフィ、またしても相手を瞬殺しちゃったんだもん。しかも今回に限っては、魔法すら使わず純粋な剣技のみで。

どういうことかと言うと、相手選手が見事に緊張でガッチガチだったのだ。しかも構え方を見る限り、ぼぼぼ初心者に近いレベル。

そんな相手にセフィが苦戦するかと言うと、そんな訳がなく。


「あの人、何でアンダー19のフリットカップ、それも男女混合の部に出たんでしょうね?」

「何でだろうね……」


セフィが首を傾げるが、僕はなんとなく理由を察していた。

セフィの対戦相手であるレロ・ザール選手は、僕たちとそう変わらない年齢の少年選手だった。実力的にほぼ初心者と言ってよく、あの緊張具合から試合慣れもしてないであろう少年選手が、成人近い選手が多く参加する大会、それも他の部門より1段上の扱いを受けている男女混合の部に出場する理由。

……全く知らない相手である以上、何を言っても推論以外の何ものでもない。更に僕の予想が外れていた場合、非常に不名誉な言いがかりになるので、それを口に出すつもりもない。ただ敢えて言わせて貰えば、セフィがリングに上がった時、ザール選手は非常に嬉しそうな、それでいて少々アレな表情を一瞬だけ浮かべていたとだけ。


「ま、まあ、初心者だって大会に出るものよ。試合慣れとか、経験を積むとか、色々と理由はあるわ」

「それはそうですね」


セフィはそう言って肩を竦めた。どうやら『そういう』ことに思い当たっていないらしい。逆にコーチの方は、大人故か元選手としての経験故か、なんとなく理由を察しているっぽい。多分、僕と同じ理由で口には出してない感じだ。

まあ、うん。ザール選手の思惑は知らないけど、何もできずに一刀のもとに斬り伏せられた時点で、それはもう終わった話だ。今更何を言っても意味は無いだろう。

という訳で、これ以上ほじくり返すのは気まずいだけ。それでいて内容らしい内容も無いので、セフィの番は終了となった。……コーチがセフィに話を振ったのも、あくまで今日の試合の振り返りという形式を重視しただけだろう。


「さて。最後にもう一度言うわ。3人とも、素晴らしい試合だったわ。良くやったわね」

「「「ありがとうございます!」」」

「それじゃあ、今日は皆ゆっくり休んで英気を養いなさい。これからドンドン大変になるわよ」

「「「「「「はい!!!」」」」」」


そんなこんなで、僕らのフリットカップ初日は終了した。

という訳でナナ君以外の試合は大幅カット。メンバー全員の全試合とかやってたらくそめんど──ゲフンゲフン。いつ終わるか分からないので、こんな形になりました。それぞれにとって、また物語の進行的に重要な試合のみ焦点を当てていきます。なので基本はサックリ結果だけか、今回みたいな纏めて回想での解説でいきます。


……ところでふと思ったんですが、セフィの戦闘シーンってもしかしてマトモなのない? ヒロ──ゲフンゲフン。主要キャラなのに? あれ……?

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