第六四話 開会式
盛大に遅れましたゴメンなさい!
中々筆が進まない+仕事が忙しかったせいです! 書く時間がない! 泣きたい!
トーナメントの組み合わせが発表されてから、僕たちの日々は加速していった。ユーリ先輩は僕たちの対戦相手の情報収集に走り回り、僕たちは集められた情報を元に対策と訓練を重ねていき。
「ふぅー……」
ついに、フリットカップ当日がやってきた。
会場となる第1地区魔導競技場を前に、ゆっくりと息を吐く。
「ナナ。もしかして緊張してる?」
「まあね」
「へえ。意外ですね」
シズクちゃんの問い掛けに頷くと、横にいたセフィが僅かに目を丸くした。全く。僕を何だと思ってるのか。
「緊張だってするよ。こういうのは初めてなんだから」
公式の場で、衆人環視の中戦うというのだから、どうしたって身体が固くなる。
命を賭けた修羅場には慣れているけれど、この緊張はそれとは別種のものだ。公の場に対する経験の無さからくるもの。僕がこれまでやってきたのは機動隊の訓練だし、数少ない観客も必然的に仲間内に留まる。だからこういう不特定多数の観客がいるという状況は慣れてない。
「そう。それならこの機会にしっかり慣れておきなさい」
「コーチ」
「スポーツは競い合うことが第1だけども、同時に大衆娯楽でもあるわ。観られることに慣れておくのは大事よ。貴方が将来どんな道に進むかは分からないけど、損にはならない経験の筈」
「そうですね」
コーチの言葉に素直に頷いておく。それが間違ってないことは、身近にいる人達で嫌という実感している。ユメ姉さんにロア姉さん。他のオーバーSの面々に、機動隊の英雄たち。彼ら彼女らは全員が世界的なスター。衆目に晒されるなんて言葉じゃ足りないぐらいの知名度を誇る。メディアに出演するのは当たり前だし、定期的に行われる公開演習は全世界に放映される。全体の一部ではあるけれど、機動隊もまた人の目と関わり深い職なのだ。
そして機動隊としての道を歩む以上、僕がその末席に加わる可能性はゼロではない。だから今から慣れておいた方が良いというコーチの言い分は、僕にもしっかり当てはまる。
「と言っても、注目されるにゃ勝ち進まなきゃならねえがな。始めのうちは数試合を纏めてやるからよ」
レイ先輩曰く、最初のうちは人数も多いので、分割された小コートで一気に試合が行われるとのこと。会場がフルコートになるのは、ベスト16辺りにやってかららしく、それまでは観客の目も分散されてしまうのだとか。
「つまり?」
「勝て。そんで会場の目をかっさらってこい」
「なるほど」
「ナナだけじゃないぞ。全員その気でいけ」
「「「はい!」」」
力強い返事。全員気合いは十分だ。
「さて。全員、この後の予定は頭に入れてるわね? 受付でゼッケンを貰って、開会式。その後は男女混合の部の第一試合よ。シズク、セフィ、ナナ。改めて言うまでもないけど、気合いを入れなさい」
「「「はい!」」」
「よし! それじゃあ行くわよ」
そして僕たちは、フリットカップの会場となる第1地区魔導競技場へと足を踏み入れた。
で、受付やら着替えやらを済ませて開会式直前。
僕たち魔導戦技部のメンバーは、運営から指定された場所で整列して待機中。他の人達も同様で、それぞれの所属で整列して待機している。
目立たない程度に周囲を見回してみると、壮観という感想が頭に浮かぶ。僕たちもそうではあるけど、何処もかしこも揃いのチームウェアを身にまとい、闘志と緊張が一体になった表情を浮かべているのだから、当然の感想かもしれない。
僕の知っているものとはまた違った空気感。しかし、中々どうして。良い具合に昂ってくる。コレがスポーツ大会特有の熱気という奴か。
「ナナ」
「っと」
後ろに並んでいたセフィに、小声で名前を呼ばれた。話しかけられている訳ではないのは、声のトーンで分かる。ソワソワしてたのを見咎められたのだ。
小さくゴメンと呟いてから、意識を切り替える。身体の中央に芯をいれるイメージで、ピシリと直立。周りの雰囲気に流されないよう、思考はクリアに。
そうして気を付けの姿勢を保っていると、自然と時間が気にならなくなり、いつの間にか開会式の始まる時刻となっていた。
「──以上です。皆さんの健闘を祈ります」
開会式自体はとてもありきたりな流れだった。運営による始まりの宣言。魔導競技連合の役員や第1地区の区長など、お偉いさんからのお言葉。運営からの諸注意など。
大会の場ではあるので、選手全員が真面目な顔で気をつけの姿勢をとっているけど、途中から何とも言えない空気がチラホラと漂ってきた。こういう式典の場での常というべきか、性格の差みたいなのが顕著に出てくるからね。……実際、僕も態度には出さないけどそんな感じ。こう、聞くべきところと聞かなくて良いところを意識的に選り分けてるというか。あまり褒められたことでは無いんだけど、知らない人の言葉はあまり興味が湧かないんだ。勿論、表面上は超真面目にしてる。
そうして真面目な顔で必要箇所以外を聞き流していると、大会運営によるアナウンスが入る。
『次は選手による宣誓と激励のお言葉です』
選手宣誓。これも定番だなーと思いながら、聞き流す準備に入ろうとしたところで、
『尚、宣誓は出場選手の中で、前回大会の成績が最も良かった選手に依頼していました。しかし、今回は依頼した選手から、自分よりももっと相応しい選手がいると辞退され、運営側で協議した結果。特例として当該選手による宣誓が行われることになりました。ご了承ください』
とても気になる情報が下された。
予想外の情報にざわめく会場。これまでは式典ということもあり沈黙を保っていた選手たちが、どういうことだ?と首を傾げている。
『ではアテナ・ファルシオン選手。檀上へ!』
特例となった選手の名前が呼ばれる。そして更に広がるざわめき。
「聞いたことない名前ですね……」
「あ、そうなの?」
セフィの呟きに思わず振り返る。式典の場ではよろしくない行為だけど、今は周りの選手も騒がしいので見逃して欲しい。
話を振られたセフィも同じことを考えたのか、一瞬迷った末に応えてくれた。
「はい。少なくとも私は聞いたことないです。一応、混合の部の組み分け表に載ってたので名前は把握してますけど」
「あ、そうなんだ」
特例が通るってことは有名選手なのかと思ったんだけど、セフィの話を聞く限り違う感じだ。魔導戦技大好きっ娘なセフィが知らないとなれば、そういうことの筈だし。
じゃあ何で特例が通ったのだろう?と首を傾げていると、件のファルシオン選手と思わしき人物が檀上へと現れた。
「……ふむ」
名前から予想していけど、ファルシオン選手は女性、いや女の子だった。パッと見では中学生。但し僕たちよりは年上っぽい感じ。髪は短くボーイッシュな見た目だけど、表情から感じる印象は可愛らしい少女だろうか?
『え、えっと! ご紹介にあずかりました、アテナ・ファルシオンです!』
マイクを通して発せられた言葉は、かなりの緊張の色が混ざっていた。やはりというか、性格的には普通の女の子な気がする。容姿も相当整ってるので、大人しめなクラスのアイドルみたいなイメージが浮かぶ。
つまり何が言いたいのかというと、何であの子が特例で通ったのかが分からないのだ。そもそも見た目だけなら、魔導戦技をやってることが違和感があるレベル。まあ、これは僕の目の前にいるシズクちゃんにも言えることだけど。
そんな僕の疑問は他の選手も当然のように抱いたようで、ざわめき、いや最早どよめきと言って良いレベルに──
「嘘っ……」
「……まさか……!」
……あれ? 何か周りの反応、思ってたのと違くない?
シズクちゃんやセフィは思わずといった感じで言葉が漏れてるし、前に並んでいるルナ先輩やレイ先輩、ユーリ先輩も驚愕しているのが分かる。他の選手たちからも、大なり小なり驚きの気配が漂ってきている。
あの子、何者?
『あ、あはは……。やっぱり驚きますよね。実は少し前に親が再婚しまして。それで苗字が変わったんですよ』
親の再婚による名前の変化。セフィが知らないと言った理由はそれか!
それじゃあ、あの子は──
『えっと、私を知っている人、知らない人もいるかもしれませんので、まずは自己紹介をさせてください。──アテナ・ファルシオン、旧姓はクロムエル。前々回のフリットカップ次元大会、男女混合の部で優勝者した者です』
次元大会、男女混合の部の優勝者。即ち都市本戦を勝ち進み、世界選抜によって1つの世界の最強となり、全ての世界の代表者たちを降したもの。
僕たち魔導戦技選手の頂点の1人。
──正真正銘、10代最強の魔導戦技選手。
頂点登場。最強選手アテナちゃん。ぶっちゃけると、この物語のキーパーソンの1人。(なんならヒロインよりも物語的に重要キャラ)。
因みに何で最強が地区予選にいるのかと言うのは次回。作者の大会周りの設定忘れじゃないです。
追記。
何で部門が3つあるのに最強なのかというと、男女混合の部は性別関係無しで強い奴を決める部門扱いされてるから。ただの意識の問題なので男子女子の部が劣ってる訳ではないですが、ある意味分かりやすい部門なのでそういう認識になってます。
まあ、ナナ君は知るよしも無いですが、アテナちゃんに関してはマジモンの最強なのでどっちにしろ間違ってない。




