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第六十三話 トーナメント組み合わせ

1日遅れたー! 最近仕事内容が1歩進んだので気力が……。でも更新は頑張ります。

部活動での練習、休日や自由時間における自主練。そこにプラスされる良質な指導者。これらの要素は中々の相乗効果を齎し、フリットカップにむけて順調な日々をおくっていた。

今日も今日とて練習。いつもの場所で、いつものメンバー。ついでにゼクスとバルムが加わり、練習が始まるかと思いきや。


「今日は練習の前にミーティングを行うわ」


そんなコーチの言葉によって、一旦全員が集合することに。

何か話し合うことなんてあったかなと首を傾げていたのだけど、僕以外のメンバーは僅かに緊張気味。ゼクスとバルムも『ああ、そろそろか』みたいな感じで得心のいった表情を浮かべている。どうやら僕だけがわからないだけのようだ。


「さて。それじゃあミーティングを始めるわ。もう皆も勘づいてると思うけど、遂に地区予選トーナメントの組み合わせが発表されたわ」

「……きましたか」

「……きたわね」

「……うん」

「……ふぅ」


……なるほど。それは確かに重要だ。少し前にエントリーは済ませていたけど、遂に組み合わせが確定したのか。

皆が緊張気味なのも当然と理解する。この組み合わせ次第で、大会の成績が決定すると言っても過言ではないし、場合によっては同門対決なんてことも有り得る訳で。同じ男女混合の部に出場する僕たち一年トリオ、女子の部に出場する先輩コンビ。それぞれが潰し合う可能性があると言うのは、それがスポーツ大会というものだと分かっていても見たいものではない。

皆が祈り気味なのもそういうことなのだろう。戦うとなれば全力でぶつかり合うのに否やなくとも、できれば避けたいというのが皆の本音。そうでなくとも、地区予選ではなく、せめて都市本戦のような大舞台でというのが人情というもの。

つまり、僕も割と緊張している。皆と同じ気持ちで、コーチの言葉を待っている。


「……それでは発表するわ。まず女子の部から」

「はい」

「お願いします!」


最初は女子の部。つまりレイ先輩とルナ先輩だ。どうなる?


「レイ、第1ブロック。ルナ第4ブロック」

「よっしゃぁ!」

「セーフ!」


コーチの言葉に先輩たちは飛び跳ねて喜んだ。地区予選は4ブロックのトーナメントだ。そこから上位8人が都市本戦に進める。つまり、同じブロックにさえならなければ同門対決は無い。なので二人ともベスト8まで勝ち抜ければ都市本戦に出場決定となる。1つ目の懸念は解除された。


「次。男女混合の部!」

「はい!」

「いざ!」

「お願いします」


次は僕たち。はてさて?


「セフィ、第2ブロック! シズク、第4ブロック! ナナ、第1ブロック!」

「やったぁ!」

「ついてますね!」

「よし!」


全員バラけた! これでベスト4までは同門対決は無い!

結果としては最上。皆ガッツポーズで歓声を上げている。上手くいけば全員が都市本戦まで進めるのだから当然だ。いつかは戦うことになるし、公式の場でお互いの実力を比べ合うのも魅力的ではあるのだろうけど、今はただこの幸運を噛み締めるべきだ。

ミーティング中に騒ぐのはもってのほかだけど、今回ばかりはコーチも見逃してくれている。その顔に僅かな安堵の色があるのは、僕の勘違いじゃないと思う。

ゼクスとバルムも、皆を微笑ましそうな目で……何か僕を見る時だけ生暖かくない?


「……何か言いたいことでもあるの?」

「いや? 戦場の覇王様が随分微笑ましい反応をするなと思っただけだが」

「……以前から思っていたが、見事に猫を被ってるよな」


機動隊の時の僕を知ってるからか、2人はニヤニヤと笑いながらそうコメントをしてきた。……凄いイラッときた。


「吹っ飛べ」

「ぬおおおお!?」

「おまっ!?」


気付けば魔法で馬鹿2人を空に放り投げていた。どうやら無意識でぶん投げるぐらい腹が立っていたらしい。

そして宙を舞う2人を見て気付く。あ、これやったなと。


「……えーと、な、ナナさん?」

「……ゴメン」


恐る恐る振り向くと、そこには呆気に取られた皆の姿が。

魔法を使っての折檻。割と機動隊ではポピュラーな行為なのだけど、一般的にはとんでもない暴挙に当たる。なにせ特定状況下を除き、攻撃目的で魔法を使用するのは完璧な法律違反。タイラー少年の例からも分かるように、普通なら1発で逮捕案件だ。


「一応弁解しときますけど、これ合法ですからね? ついでに言うと職場で良くある光景です」


とは言え、それはあくまで一般人の話。僕ら機動隊は攻撃魔法の専門家だ。怪我しない程度で、それでいて折檻になるレベルに効果を抑えるぐらい造作もない。違法にならない程度の魔法で、更には受ける側も受ける側でしっかり訓練を積んでいるので、全く問題は無いのである。むしろこれで怪我する、させる方が恥ずかしいという空気まである。……治安維持組織の割に荒っぽいのは、うん。武装組織故としか。

実際、数メートルは吹っ飛んだ2人も難なく着地しているので、コレは最早そういうものなのだ。傍から見ると極めて危なっかしいけど。


「それは事実かしら?」

「はい。だよね2人とも?」

「ええ。驚かせたようで申し訳ないです。機動隊の習慣、身内ノリのようなものですので」

「……失礼しました」


馬鹿をやった男3人で頭を下げる。僕らにとっては日常でも、一般的視点ではこの手の行為は刺激的過ぎる。無意識で内輪ネタを繰り出したのは本当に申し訳ないと思う。

そんな訳で誠心誠意謝ったところ、コーチは小さくため息を吐いた。


「そちらが問題無いと言うのなら、此方は何も言いません。ナナも今回は不問とします。でも、ここは子供たちの教育の場。例え問題無かろうが、競技以外の暴力行為は控えるように」

「はい。心に刻みます」


コーチの言い分は至極真っ当なものだった。コレに関しては全面的に僕に非があるので大人しく頷いておく。


「……それはそれとして、さっきのは魔法? 魔力の気配が一切無かったけど」

「あー……」


次に待っていたのは、僕の魔法についての質問だった。2人を吹っ飛ばしたのは結構特殊な魔法なので、コーチの興味を引いたようだ。他のメンバーも口には出さないが興味津々の様子。

さて、どうしよう? 僕の本来の魔法にも関わる、というより応用みたいなものなので、喋るべきか悩むところだ。隠すようなことでもないけど、普段と真逆のスタイルを取ってる負い目もあるので、個人的には説明しにくい。

……とは言え、さっきのやらかしのことを考えると、話さないという選択肢は無いのだけど。


「アレは物質操作の類ですよ。大気、厳密に言うと分子を操って擬似的な力場を作った上で、ぶん投げたんです」

「魔力が動く気配が無かったのはどうして?」

「僕の魔力性質ですね。侵蝕と同化のダブルでして。周囲の物質と完全に一体化してるので感知が効かないんですよ」

「ダブル!?」

「しかもどっちも現象系! 両方レア性質とかマジかお前!?」

「ついでに言うとどっちも強さは最高レベルです」

「アンタそれはズルくない!?」


僕の言葉に部のメンバー、それこそコーチですら驚愕の声を上げた。まあ、そんな反応になるよね。

魔力性質は分かりやすい魔法の才能だ。魔力性質持ち自体は割といるけど、大抵の性質はありきたりなもの。炎熱や冷気など、十把一絡げに【属性系】なんて呼ばれるものが多い。レイ先輩の雷の魔力性質がこれに当たる。セフィの振動は、ギリギリ【風】の属性に入るかもって感じか。

対してレア性質、【現象系】と呼ばれる魔力性質は極めて少ない。属性系は効果の強さを無視すれば10人に1人ぐらいの割合でいるが、現象系は1000人に1人ぐらいの割合となる。実戦レベルとなれば1万人に1人ぐらい。最高レベルとなれば100万人に1人ぐらいとなる。つまり、シズクちゃんはそのレベルの逸材ということになる。

尚、属性系と現象系の違いであるが、ザックリ纏めることができるかできないかという分類の仕方になっている。まあ、属性系も厳密に言うと加熱や冷却など細かい種類があり、突き詰めれば現象系に分類されるものもあるそうだけど、【炎】や【氷】などにザックリ纏めてしまえるので属性系扱いされている。この辺りは所詮俗称なのでそんなものである。

で、レア性質が何故こうまで持ち上げられるのかと言うと、まず単純に珍しいということが1つ。そして第2に、ザックリ纏めることができない尖った効果故に、魔法や戦闘スタイルとシナジーを起こした時の爆発力が途轍もないからだ。シズクちゃんなんかが良い例で、あのバインドアーツは嵌った時は格上だろうと完封されかねないポテンシャルがある。100万人に1人の才能というのは、誇張でもなんでもない訳だ。


それを2つ兼ね備えてるのが僕です。だからこそめっちゃ驚かれてるのです。


「ダブルとか本当にいるんですね……」

「私も噂話かと思ってた……」

「まあ、目にしないと中々想像できないよねぇ」


ダブルというのはそれぐらい珍しいのだ。1つの世界に2桁はまずいないレベルなのだから。


「因みにどういう効果なんです? 名前からだと絶妙に想像しにくいのですが」

「あー、そうだね。侵蝕の魔力性質は、文字通り魔力で物質を侵蝕するんだ。で、物質を自分の魔力と同じように操ることができる。同化の方もそのまま。魔力と物質を同化させて操ることができる」

「……同じでは?」

「同系統ではあるね。流石に1つの魔力に全く違う性質を宿すことはできないっぽい。ただまあ、使ってると結構違うよ」


侵蝕の特徴はそのスピードだ。1度魔力を込めると、凄まじい勢いで物質に魔力が浸透していく。乾いた大地に水を注ぐ勢いで広がる為、一瞬で周囲を支配下における。

対して同化の特徴は隠密性と持続性。侵蝕は周囲の物質を僕の魔力で染め上げる感じなので魔力の気配はバレバレだし、魔力が抜けると元の普通の物質に戻る。しかし同化の方は魔力を周囲の物質に一体化させるので、物質に気配が紛れて魔力の感知が殆ど効かなくなるし、魔力と物質がほぼ完全に一体化する為に恐ろしく持続性が高い。あと地味に操作性も高くなる。


「……え? それ凄いシナジーじゃない?」

「両方の性質の良いとこ取りじゃねえか?」

「そうですよ? だからさっき2人に完璧な不意打ちをかませたんです」


周囲の物質を支配下におくのは一瞬。それでいて恐ろしく気付かれ難いし、支配は半永久的に持続する。更には支配下においた物質は手足のように動かせるという。機動隊の人間にも不意打ちが通用するのだから、その強さは推して知るべしだ。


「……ナナ。何でブラストアーツ使ってるんです? どう考えても貴方って中〜遠距離の操作系魔導師ですよね?」


だからこそ、誰しもが必然的にその質問へと辿りついてしまう。……まあ、こういう時の為の言い訳は既に考えてるんだけど。


「いやねー、魔力性質を使ったスタイルは確かに強力なんだけどさ」

「強力なんてレベルじゃないですが」

「うん。でも使えないのよ、これ。競技だと」

「え、何で? 魔力性質はルール上問題無いよ?」


そうだね。魔力性質自体はルール上セーフだね。じゃないとシズクちゃんのスタイルが許可されないし。でも、僕の言い訳はそういう意味じゃないんだ。


「隠密性が高過ぎるんだ。魔力観測機も普通にすり抜けるから、やるやらないは別にして、デバイスを通さないで魔法を使ってもバレないのよ」

「それは……」

「だから使わないに越したことないんだ。余計な疑念を持たれるからね」


変に疑われない為にも、得意なスタイルは封印している。そう言われてしまえば、他のメンバーも何も言うことはできなかった。


「ま、後は単純に僕の本来のスタイルは支援系だから。直接戦闘ではちょっと立ち回りが不安ということも」

「……支援系なんですか?」

「支援系なんです」


あれおかしいな? 事実を言ったのに皆から信じられないみたいな顔されたぞ。……尚、全部知ってる2人からは何言ってんだコイツという表情をされた。いや間違ってはないでしょうが。


「……何かもう、貴方のことでどうこう言うのは止めておくことにするわ」

「その反応は流石に心外なんですが」


人を非常識みたいに言わないでください。


「十分に非常識よ。しかも、規格外とかそういうコッチの常識が通じないタイプじゃなくて、言動がチグハグな感じの非常識。歪過ぎて理解できないタイプ」

「それ1番タチの悪い奴では?」

「だから考えるのを止めると言ってるのよ」

「えー……」


その思考停止の仕方はちょっと納得いかない。


「はぁ……。話が逸れたけど、ミーティングに戻るわよ。今からユーリが組み合わせ表を配るわ。名前の横にマルが付いてる選手は、貴方たちが対戦するであろう選手の中で注意するべき選手。チェックが付いてる選手は、対戦とか関係無しの実力者よ。これを元にそれぞれの──」


無視しないで。

この話で書きたかったこと。同門対決は無し。以上。


ナナの魔法云々は蛇足というか、そろそろ触れていかないとハイライトでの盛り上がりに欠けるからという理由です。


因みに部のメンバーからの非常識扱いについては、時折見せる力が明らかに戦闘の実力者で、尚且つ最高クラスの魔導師の資質を持っているのに、本人がサポーターを自称してるので、全員が『何で?』となってる感じです。

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