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少年魔導師の魔法スポーツ部活録〜これでも最強戦闘組織に所属してます〜   作者: みづどり
第三章 フリットカップに向けて
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第五十三話 英雄ブートキャンプ(小休止)

期限ギリギリでなんとか書き上げて、投稿しようとした瞬間に安心したのか寝落ちする阿呆なんておりゅ?……私です。結果的に間に合ってねぇんだよなぁ。


……3時間ちょいはロスタイム。良いね?

皆のトレーニングが終わった。そして案の定というか、全員がユメ姉さんにコテンパンにされていた。

見学しながら数えてたけど、シズクちゃんが24回。セフィが17回。ルナ先輩が15回。レイ先輩が27回ほど地面に転がされていた。……セフィよりもルナ先輩の方が倒された回数が少ないのは意外だったけど、よくよく考えたら先輩は防御特化だ。そう考えると不思議ではないか。

まあ、どっちにしろ全員がコテンパンにされたことには変わりない。


「お疲れ様」


戻ってきたメンバーに労いの言葉を掛けても、予想通りの反応の鈍さ。荒い息と混じりの返事が、皆の疲労具合を表している。


「いやー、ナナ君から聞いてたけど、全員筋は良いね。まだ荒削りだけど」


それに対してユメ姉さんはコレである。一般人視点で神業に分類されるようなことをやっておきながら、一切息を乱していない。そもそもからして地力が違うのだ。

そんな超人が容赦なく指導したのだから、全員がぶっ倒れるのも仕方ない。取り敢えず合掌。


「にしても、ユメ姉さんも相変わらず容赦無いというか。余念が無いというか」

「でもコレである程度のノウハウは憶えたでしょう?」

「叩き込んだの間違いでしょうに」


事も無げに言うユメ姉さんに対して、僕は小さくため息を吐いた。アレだけ転がされれば、嫌でも多少のノウハウは身に付くだろうさ。


「……ただ的になってただけな気もしますけどね」


尚、やられてた本人たちはそう思っていない模様。まあ、ボッコボコにされてたからそう感じるのも仕方ない。

ただ断言するけど、全員トレーニング始める前より確実に成長してるよ。


「転がされ過ぎて実感してないだけね」

「そうそう。皆ちゃんと成長してるから」

「そうでしょうか……?」


ユメ姉さんとロア姉さん、2人のリアルレジェンドに断言され、皆は困惑した様子を見せる。余程失敗体験の印象が強かったみたいだ。


「因みに何で成長してないって思うんです?」

「いやだってな……マジで何も分からず被弾してばっかだったし……」

「何発喰らってもマトモに防げなかったから……」

「私も同じく……」

「何もできなかったもんね……」


理由を聞いてみたところ、出るわ出るわネガティブな意見が。総括すると『レベルが高すぎて何が何だか分からなかった』ということになる。


「うーん、これはちょっと……」


皆の感想に対して、コーチが少し渋い顔に。被弾することが如何にマズイかを叩き込むのが趣旨だと説明したとはいえ、皆の自信が揺らぐのは宜しくないと考えているのだろう。幾ら英雄からの指導と言えど、モチベーションが低下するなら無意味なモノなのだから。

だが僕としては、そもそもからして勘違いしているなぁと言わせて貰いたい。


「あのですね。皆ちょっと意識高過ぎません?」

「意識高い、ですか?」

「ええ。ここは敢えてキツめに良いますけど、学生風情が初見でユメ姉さんの射撃に対応できる訳ないでしょう?」

「「「「え」」」」


僕の容赦ないツッコミで、皆揃って言葉を詰まらせることに。【学生風情】という言葉が余程衝撃的だったのか、正に絶句といった様相だ。

とは言え、これは事実であるのだから仕方ない。だってユメ姉さんの射撃なんて機動隊隊員でも対応できないし。


「単純に目的が違うんですよ。今回のトレーニングは【全力で避ける】のが目的なんですから。ユメ姉さんだって【射撃に対応できるようになれ】なんて言ってないでしょう?」

「そうだねー。それならちゃんと頑張れば避けれるレベルにしてるねー」

「「「「え……」」」」


僕の言葉にユメ姉さんが同意したことで、皆の中に戸惑いが広まっていく。

そうなのだ。ユメ姉さんレベルの技量になってくると、相手の力量に合わせて難易度を調整するぐらいは容易である。さっきのトレーニングを例とすれば、被弾しないことがクリア条件だった場合、それぞれが死力を尽くせば被弾ゼロになるぐらいの難易度になる訳で。決してあんなレベル、タネが分かってれば絶句するような攻撃はしないのである。


「……えっと……つまり、あの原理不明な魔法弾はその……躱させるつもりの無い攻撃だったと……?」

「んー、回避不可能な類ではなかったけど、多分避けるのは無理かなーとは思ってたレベルかな? だから何人か反応しててちょっとビックリしたよ」

「そんな……」


にゃははと笑うユメ姉さんに対して、愕然とした表情を浮かべるセフィ。他の皆も似たり寄ったりの反応で、ドっと疲れた様子を見せている。


「因みに種明かしすると、皆が被弾してた射撃は大まかに2種類あります。1つは【死角撃ち】。他の魔法弾の軌道と被せることで意図的に死角を発生させるものです。皆の視線から完璧に隠される形になるので、相手視点ではいきなり現れる形になるタチの悪い奴です」


尚、シズクちゃんが最初に喰らった奴だったりする。

あの時の状況を解説すると、2つの魔法弾が全く同じ軌道で飛んでいた為に、シズクちゃんには奥の魔法弾が死角となり認識できず。そしてその魔法弾の片側には、見える形で追従する魔法弾。となれば当然、逆サイドに移動する訳だが、それを読んでいたユメ姉さんは死角の魔法弾をそっちに動かし、直撃と相成ったのである。

これの何が凄いって、相手の視線を完全に把握してるからこその芸当であるということ。弾幕を利用して人為的に死角を造るなど、控えめに言っても神業なんだよなぁ。

……まあ、もう一種の奴はもっとえげつないんだけど。


「次のは【魔弾】と言って……なんて言うんだろ? 皆の認識の薄い場所? まあ意識の隙間みたいな場所や、盲点みたいな肉体の構造上の欠点みたいな奴を利用した射撃。すっごい簡単に言えば【見えてる筈なのに見えないor反応できない】射撃」


……コレ、自分で言ってても相変わらず意味わかんないな。

いやでも、本当にこうとしか言えないんだよね。純粋戦技の【無拍子】の射撃番というか。原理とか方法は意味不明の癖して、事実として存在する初見殺しを超えるハメ技の類だ。

実際、【死角撃ち】には皆も多少は反応できていたけど、【魔弾】の方には一切反応できずに被弾してたからね。

とまあ、そんなことを説明した結果。


「……なんですかそれ……」


全員がガックリと項垂れていた。……なんて言うんだっけコレ? 地球世界風に言うところの『orz』?

まあ、客観的に不可能な難易度だったことが判明したのだから、コレも当然の反応だろう。


「あの、何故わざわざそんなことを……?」

「んー、とね。まず始めに、不本意な被弾の危険性を皆に叩き込む為。不本意な被弾は必ず後手に回り、結果として敗北に繋がるからね」

「それは……確かにそうですね」


ユメ姉さんにそう言われ、皆はゆっくりと頷いた。実際、先程までユメ姉さんの言うところの不本意な被弾で、全員が混乱などを起こして地面に転がる羽目になったのだから、否定などできる筈もない。


「次に上を体験して欲しかったから。1度こういう体験をすれば、こと遠距離戦では大抵のことに動じなくなるよ」

「……それはなんとなく想像できます」


1度高みを経験すれば、それ以下の技術に驚くことはなくなる。いや正確に言えば、驚きはあっても【アレ】よりはマシと思えるようになる。そういう比較対象があれば、精神的にポジティブになれるし、そうなれば戦闘での動揺も少なくなる。これは中々のメリットだ。


「そしてなにより、ああいうのを混ぜると単純に技量が上がるんだよね。常に先を警戒するようになるし、被弾してからの立ち上がりとかも全然違うのよ」

「そうなんですか?」

「うん」


そう頷いてから、ユメ姉さんは僕の方に視線を向けた。


「その辺りは、これからナナ君が実演してくれるよ。もしさっきみたいなトレーニングを続けたらどうなるか。……魔道戦技部の水無月ナナではなく、機動隊嘱託魔導師としての水無月ナナ君がね」


……何か嫌な前フリされたなぁ。

次回、ナナ君の良いところ。

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