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少年魔導師の魔法スポーツ部活録〜これでも最強戦闘組織に所属してます〜   作者: みづどり
第三章 フリットカップに向けて
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第五十一話 英雄ブートキャンプ(小手調べ)

今回はセフィ視点かつちょっと短めです。本当なら女子組の練習はこの話で終わらせるつもりだったんですが、何か無駄にキレよくひと段落したので、次に続きます。

障壁に区切れたフィールドの中で私は、いや私たちは臨戦態勢を取りました。

相対するは水無月ユメさん。機動隊のオーバーS魔導師にして、次元世界にその名を轟かせる大英雄。正真正銘の【最強】の1人。


「それじゃあいくよー?」


とても気軽に、それこそ雑談をするかのような気負いのなさで、ユメさんは準備は良いかと訊ねてきます。対して、私の身体は固く強ばっていました。……いえ、これは私だけではありませんね。障壁の向こう側で、全員が身体を固くしています。幾つもの世界を救った(文字通りの意味で)英雄の肩書きに、私たちは気負ってしまっているのです。

別に戦う訳ではありません。むしろ逆。大英雄が直々に稽古をつけてくれるという、とても貴重で名誉な体験です。更に言えば、その内容も私たちに配慮されているもの。威力的にもルール的にも、被弾しても問題ないというのです。普段ユメさんが行っている訓練、ナナから伝え聞くところの機動隊の訓練なんかよりは、遥かに優しい内容と言えるものでしょう。

それでも身体に力が入るのは、私たちの中にユメさんに対する、いえ『機動隊に所属するオーバーS魔導師』に対する憧れという感情があるからで。


「お願いします!」


だからこそ思うのです。ソレを今は切り捨てなければならないと。だってそんな理由で、こんなまたとない機会にケチをつけるなんて、あまりにも勿体なさ過ぎるから。

そしてそれは、私だけでなくメンバーの総意のようで。障壁越しに、それぞれが闘志を滾らせ構えを取るのが見えました。


「うん。良い気合いだね。じゃあまずはウォーミングアップ兼小手調べ!」


そんな私たちを満足そうに眺めながら、ユメさんは自身の周りに魔法弾を展開しました。


その数、凡そ20。


「っ」


呼吸のように自然と行われた絶技に、思わず息を飲みました。いえ、できるということは知っていました。ナナの話からも、ユメさんの経歴からも、この程度は余裕にこなすだろうとは予想はしていました。

しかし、実際に目にすると気圧されます。ビジュアルも然ることながら、その実態もまた凄まじい。20発の魔法弾。それ即ち20の魔法を同時に発動しているということに他なりません。幾ら威力を落とそうとも、使用魔力も魔法領域への負荷も相当な筈です。常人にはまず不可能ですし、プロの魔導戦技選手であっても恐らく苦戦するレベルです。

それをこうも容易くやってみせるとは。これがオーバーS。魔導師としての、いや生物としての次元が違う!


「それ!」


ユメさんの掛け声と共に、20発の内の5発が私目掛けて飛んできました。

その中の3発は私に直撃しないコースだと即座に判断。恐らく回避のルートを潰す為が目的。弾速も若干遅いので【操作】か【威力】……目的的に【操作】の魔法弾でしょう。軌道の変化が怖いのであまり近付きたくはありませんね。

しかし、残りの2発の軌道が問題です。2発とも弾速が若干速いので恐らく【速度】の魔法弾。その2発は絶妙な軌道で私の方に向かってきています。何もせずに留まればそのまま直撃しますし、かといって回避すれば遅れてやってくる【操作】の弾が私を狙うでしょう。

……となれば、やるべきことは回避ではなく。


「迎撃!」


【速度】の魔法弾に向けて、シンセサイザを振るいます。魔法弾はまだ間合いの外ですが、直接斬払う訳ではないのでこれで十分。

刃に纏わせた魔力の軌跡。そこには私の【振動】の魔力性質が強く宿っています。斬撃によって発生した空気の揺れ。そこに齎される【振動】の魔力。


「【ビートスラッシュ】!」


ーードンッッ!


【ビートスラッシュ】。斬撃の軌跡を起点に、衝撃波を発生させる私のオリジナル魔法剣。接近戦なら斬撃と衝撃が連続で襲ってくる2段構えの強力な攻撃技になり、遠距離戦なら衝撃波で攻撃を防ぐ防御技になる、そんな攻防一体の技。……まあ、防御方面に関しては、魔法の威力によっては普通に衝撃波を貫通してくるので、大した性能ではないのですが。

とはいえ、今回のような威力の抑えられた魔法弾なら問題ありません。事実、発生した衝撃波は【速度】の魔法弾を見事にかき消しました。

2発の魔法弾は回避を誘発させる為のもの。逆に言ってしまえば、その軌道から外れなければ本命の射程範囲には入らないということ。なので発生した弾幕の穴を潜れば、回避は完了です。


「おー! 皆ちゃんと避けるね!」


フィールドの端から、ユメさんが関心したような声を上げました。それにつられて左右を伺えば、他のメンバーも方法は様々に今の射撃を乗り越えたようです。

そしてパッと見た限り、全員の表情に焦りの類は存在していません。どうやら全員、余裕をもってクリアすることができたようです。


「それじゃあ、お次はコレだよ!」


そんな私たちに満足したのか、ユメさんは次の魔法弾を展開しました。


夥しいという形容詞が付くレベルで。


「なっ!?」


流石にコレには声を上げてしまいました。なにせパッと数えられる量ではありません。少なくとも先程の倍……いや3倍以上はあります! というかどんどん増えてません!?


「それ!」


そんな膨大の量の魔法弾を、ユメさんはとても気軽な様子で放ちました。いや、幾らなんでもその量はないですよ!? 4つに分散されたとしても、それでも尚トンデモない数です!

先程のような迎撃……まず追いつきません! 障壁魔法なら威力的にも防げますが……それでは練習の意味が無い。となれば全力で回避一択!


「くっ!?」


正に弾幕と言うべき魔法弾の雨を、なんとかフィールド内を駆け回ることで回避していきます。幸いなことに、今回のそれは先程のような【巧い】射撃ではありませんでした。どちらかと言えば乱射に近く、魔法弾の種類にしても【速度】や【威力】といった単純な軌道のものしかありません。恐らく精度を犠牲にして数を増やした……いえ、有り得ませんね。普通ならこの考えで間違いではないでしょうけど、相手はあの水無月ユメです。手加減して貰ったと考えた方が妥当です。

それでもこんなに必死に回避することになる辺り、流石としか言いようがありません。こんな片鱗だけでも、私たちからすれば格上なんて言葉じゃ足りないレベルですよ。

そうして魔法弾の雨が止む頃には、私は大きく息を乱していました。いや本当、短くて長い時間でした。体感時間的には5倍近かったです。軽く意識を向けて見た感じでは、障壁の向こう側も私と似たような様子でした。


「おー。これも避けるのね」


そんな私たちに対して、ユメさんが関心したよう様子を見せます。……ええ。流石にこれは褒めて貰いたいレベルです。あんな雨みたいな弾幕、フリットカップでもそうそう見られませんよ。


「うんうん。皆のレベルも大体把握できたし、身体も温まった感じだね。これなら本番に入っても大丈夫そうだね」


……今何て言いましたか?

なんとなく察してる人もいるかもしれませんが、この章?のスポットはあの子です。


好評価とブックマークお願いします。




……すっごいアレなんですけど、作品名とあらすじを変えたい欲が少し出てきてます。……理由? 衝撃的に発生したコレジャナイ感が9割。人それを発作という。

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