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少年魔導師の魔法スポーツ部活録〜これでも最強戦闘組織に所属してます〜   作者: みづどり
第三章 フリットカップに向けて
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第四十三話 意外な彼女の姿

あぶねー。また期限ギリギリでなんとか新作書き上げられた。お陰で残基のマイナス無し。

最近仕事が繁忙期のせいで時間がない……。

さて。姉さんと愉快な悪巧みを計画した翌日。僕は学校にあた。

如何に事件に巻き込まれ、帰るのが遅くなったとしても。残念ながら僕は機動隊で、この程度の徹夜は慣れっこでして。普通に起きて、普通に登校したのである。

尚、意外なことにシズクちゃんも登校していた。危険な事態になる前に解決したとは言え、普通はああいうトラブルに遭遇したら堪えていてもおかしくないのに。シズクちゃんは案外平気そうにしていた。理由を訊いたら『ナナが守ってくれたから怖くなかった。それに今日はレイ先輩の宿題があるし』とのこと。そこまで信頼されると面映ゆいと感じる反面、意外と図太い性格をしているなと思ったのは内緒だ。

因みに学校では事件のことは広まっていなかった。一応学校には連絡が入っていたようで、アドラ先生から『大丈夫?』とは訊かれたけれど、揃って大丈夫ですと答えたらそれで終了。まあ見てわかるぐらいには僕たちピンピンしてたし。

という訳で、平穏無事に学校を過ごすことはできた。普通に授業をして、仲良くなったクラスメートと雑談をして休み時間を過ごして。問題らしい問題はなかったと言え……いや、1つだけあったな。


「シズク。迎えに来ましたよ。部活に行きましょうか。ナナも一緒に」

「セフィってばもう……」


それはセフィのことだ。どういう訳か、セフィは朝からこの調子、簡単に言うとシズクちゃんに対して超過保護になっていた。それはもう凄いレベルで、朝一緒に登校する時は手を繋いで。休み時間の度にはわざわざ教室を訪ねてシズクちゃんに会いに来て。学年でもクール系で通っているらしいセフィがそんな様子なので、クラスメートも何事かとザワついていた。

まあ、セフィがこうなった理由自体は想像つく。親友兼幼馴染の2人だ。本人経由か親経由かは知らないけど、昨日の事件ことを聞いたのだろうさ。……それで何でこのレベルでシズクちゃんに構っているのかは謎だけど。


(ねえナナちょっと良いかな)


そんな風に僕がセフィの変化に戸惑っていると、今もまたセフィに手を握られてるシズクちゃんがこしょこしょと耳打ちしてきた。


(どしたの?)

(セフィになんだけどさ、ナナが機動隊の嘱託魔導師だってこと話して良い?)

(へ?)


シズクちゃんの提案が意外なものだったので、思わず変な声が出た。

実は昨日の夜遅くに、シズクちゃんからメールで僕の所属についての相談があったのだ。知らない振りをするべきなのか、それとも普通に話して大丈夫なのか、とか。

所属を隠してるのは、あくまで騒がれたくないという僕の個人的な理由。任務という訳でもなく、機密が絡むこともないので、ペナルティとかそういうものはないと返信した。

結果として『別に話すこと自体は問題ないけど、できれば無闇に広めないでくれると助かる。セフィや部活の皆とかなら大丈夫だよ』という旨を伝え、『伝えても大丈夫な範囲は分かったけど、取り敢えず必要な時以外は秘密にする』という方向で落ち着いたのだ。

……まさかその話をした翌日に、こんなことを訊かれるとは思わなかったけど。


(昨日言った通り、セフィや先輩たちなら大丈夫だけど……。どうして?)

(あー、その、ね。実はセフィってね)


僕の疑問に対し、シズクちゃんは僅かに逡巡した後、


(犯罪とかそういうの、凄い怖がるんだ)


と、中々に衝撃的な言葉を告げてきた。

あまりに予想外だった為に、一瞬思考回路が停止したよ。いやマジで。


(……セフィが? あの基本飄々としているセフィが?)

(うん。ほら、前にセフィが機動隊のロア・アストレアさんのファンだった言ったじゃん?)

(あー、うん。……あ)


そう言われて、全容みたいなのがなんとなくだけど理解できた。確かセフィ、前に大きな事件に巻き込まれて、それをロア姉さんに助けられたんだっけ?


(つまりその時のトラウマ?)

(そう。それも結構根深い感じのね。自分が巻き込まれるのは勿論、身近な人が巻き込まれるのも駄目なんだ)

(ありゃま)


そっかー。うん、まあ。意外ではあるけれど、割と良くある話ではあるかな。事件のせいで対人恐怖症になったりとか、そういう人は何人もいたし。

ただ不謹慎なのを承知で言わせて貰えば、普段は飄々としてるセフィが有事の際に弱くて、逆に普段は振り回されてるシズクちゃんが有事には強いっていうのは、うん。何か趣深いものを感じる。


(……っていうかナナ、気付いてる? セフィ、私に会うふりしてナナのことも気にしてたんだよ?)

(えっ……!? ウッソ……。いや、確かにチラチラ様子伺われてるなとは思ってたけど……)


まさかそんな理由だったとは。てっきり昨日の様子とかを聞きたがってるとばかり。……でもそっか。セフィにとっては、僕も危ない目に遭って欲しくないぐらいには身近な人なのか。んー、結構嬉しいかもしれない。

ま、それはそれとして。


(えーとつまり、僕が嘱託魔導師だってことを知らせれば、僕たちが危ない目に遭ってないって証明できるってことかな?)

(うん。セフィ、前の事件以降、機動隊の人をすっごい尊敬してるから。ナナがそうだって知れば、ちゃんと安心してくれる筈)

(……なるほど。了解)


そう言われたら僕としても頷くしかない。セフィに心配させ続けるのは忍びないし。まあ、セフィ相手なら僕に伺わなくても良かったんだけど。

そんな訳で、シズクちゃんがチョイチョイとセフィを手招き。一応周りに人がいるからか、耳打ちで告げる選択をしたようだ。


「何ですかシズク?」

「実は昨日のことでセフィに話しておきたいことが」

「っ、まさか何か……!?」

「いや、うん。そういうんじゃないから大人しく聞いて」


じれったいとばかりにシズクちゃんがセフィを引き寄せ、そしてコショコショ。

いきなりことに驚いていたセフィだったが、次第に瞳が大きく見開いていき、耳打ちが終わる頃には僕の方を見て固まっていた。


「……」

「……」


そして暫く無言で見つめ合うことに。


「……っ!」


あ、動いた。

そう思った瞬間には、セフィは僕の方に詰めよっていた。……それだけじゃない。決して離すまいと掴んでいたシズクちゃんの腕すら放り出し、両手でもってギュッ僕の手を抱き締めていた。


「……あの、セフィさん?」

「セフィ!?」


これには思わず面食らう。シズクちゃんなんて、自分の幼馴染の行動に絶句していた。

それぐらいセフィの変化は劇的だった。普段のキリッとしたクールな表情も、常に纏っている曲者じみた飄々とした雰囲気も何処へやら。


ーー瞳はうっすらと滲む涙で潤み、どうしようもなく吸い寄せられる魅力を放ち。


ーー頬は僅かに紅く染まり、雪解けを連想させる淡い熱を帯びて。


ーー静かに綻ぶ口元は、朝日と共に花開く美しい蕾のようで。


ーー抱き締める腕は、決して離さないとばかりに強く力が込められている。


その姿はまるで、待ち焦がれた想い人と再開した恋する乙女。内に秘められた想いも、溢れ出した情熱も、ただの友人に向けるには余りあるもの。


「ーーナナ。貴方にお願いがあります」


そして吐き出される言葉もまた、膨大な熱が篭っている。


「……こんなことをお願いするなんて、筋違いにも程があるというのは理解しています」


切なそうに、しかし確たる意思のもと、セフィは僕のことを真っ直ぐに見つめてくる。

思わずゴクリと喉が鳴った。……別にセフィの様子に変な期待をしたとか、そういうのじゃない。ただ、セフィの尋常ならざる様子に気圧されたんだ。


「それにこれは、シズクを裏切る行為です。……それでも私は、貴方に縋らずにはいられない……!」


それはあまりにも真摯で、悲痛な叫びだった。思い詰めたようなその表情は、まるで秘めた想いを打ち明けるかのようで。

まさか、と思った。それは僕だけじゃなくて、シズクちゃんも同じようで。いやむしろ、シズクちゃんの方が最悪の事態を想像しているらしかった。


「せ、セフィ……?」


泣きそうな顔で、絶望の表情で、シズクちゃんは幼馴染兼親友の変化に呆然としている。

……そんな顔をさせてしまったことに、思わず胸が痛くなる。申し訳なさでこっちまで動揺しそうだ。

急にどうしたのかと、反射的にセフィを問い詰めそうになった。しかし、僕が言葉を続けるより一瞬早く、セフィが口を開いてしまった。


「一生のお願いです。ナナ」


一生のお願い。人によっては軽い言葉であるが、普段のセフィの印象と今の雰囲気を鑑みるに、本当に一生の、またはそれに匹敵するぐらいには重い願いの筈。

そんなレベルの願いを、セフィは口にしようとしているのだ。それもシズクちゃんを裏切るようなことを!


「どうか、どうか……!」


自然と身体が強ばった。シズクちゃんなんて、もはや固まって動かなくなっている。

そんな僕らの様子など見えてないかのように、いや必死過ぎて実際に見えてないのであろうセフィは、その言葉を口にした。


「ーーどうかシズクを、貰ってあげてくれませんか!?」


……。

…………。


「……はい?」

「……うん?」


あまりにも予想外の言葉に、僕とシズクちゃんは同時に首を傾げた。もはや僕らの間ち先程までの緊張感なんてない。あるのは只管に疑問だけだ。


「……えーと、貰うというのは、つまりそういうこと?」

「はい。シズクと結婚してください」

「……あのさ。あんな雰囲気出しといて、言うことがそれなの?」

「はい? 何か変でしたか?」

「そっかー……」


あれを無自覚かー。いや本当に冗談抜きで紛らわしいというかタチ悪いなオイ。

思わず脱力。というかどっと疲れたよ。この子は本当に人を振り回すな……!


「……セフィ?」


……いや、うん。僕はまだ良いな。それよりもシズクちゃんだよね。色んな意味で気が気じゃなかった筈だし、その不安の結果がコレなんてね。そりゃキレるよ。言葉は静かだけど、隣から凄い怒気を感じる。具体的には『ゴゴゴゴ……!』って音が聞こえてきてる気がする。

尚、セフィはそれに気付いていない様子。


「申し訳ありませんシズク。しかし、これはどうしても口にしなければと」

「そういうの良いから。取り敢えずここはまだ人目があるし、部室行こっか。話はそれから」

「……シズク? 怒ってますか? いえ当然ですか。アナタの気持ちを無視したのですから」

「そういうの良いから部室行くの……!!」

「え、シズク!?」


遂に我慢できなくなったのか、ズレたことを宣うセフィをシズクちゃんが無理矢理引っ張っていた。まあ自業自得だと思う。

取り敢えず、僕もついていくことに。






……で、部室で尋問、もといセフィの真意を問いただした結果。


『だって機動隊の人と結婚できれば、何かあっても守って貰えるじゃないですか』


と、セフィはすんなり話してくれました。

どうやらセフィにとって、身近な人が事件に巻き込まれるのは本当に耐え難いことのようで。昨日の一件家族から聞いた時は、足元が崩れるような錯覚に陥ったそうだ。

そんな中で告げられたのが僕の所属。セフィが尊敬してやまない機動隊の嘱託魔導師。更に言えば、セフィにとって命の恩人であるロア姉さんと、世界的な大英雄であるユメ姉さんの弟分。セフィからしたら天啓のように思えたそうだ。

血の繋がった妹、ともすれば半身のような存在のシズクちゃんだ。そんな彼女と僕が結婚すれば、彼女は機動隊隊員の武力に日夜守られ、更にはオーバーSの後ろ盾までついてくる。なればこそ、絶対に逃がしてはならないとセフィは考えた。

その結果がアレ。傍から見れば乙女の告白の如き様相で、素っ頓狂なことを抜かしてくれやがった訳だ。


『……何で泣きそうになってたの?』

『嬉し泣きを堪えてたんです。真にシズクを任せられる人が現れたので』

『……顔が紅くなってたのは?』

『紅くなってましたか? 興奮をなんとか抑えてたつもりなんですが』

『微笑んでたのは?』

『本当に嬉しかったので』

『……じゃあナナの腕を、む、胸に抱いてたのは?』

『……アレはお恥ずかしながら、ついやってしまったというか。絶対に逃がしたら駄目だと思ってたら、その……』

『……筋違いとか、私を裏切る行為というのはどういうこと?』

『だって2人の問題に、私が横から口を挟むんです。そんなの筋違いも甚だしいじゃないですか。ましてや私のお願いは、シズクの奮闘を台無しにするものです。あんなの裏切りと言われても否定できませんよ』


以上が尋問中のセフィの回答でありまして。そりゃもう尽くが誤解を招くというか、紛らわしい態度だった訳だ。しかも本人は完全な無自覚で、終始シズクちゃんのことしか考えていなかったという。


『……セフィの……セフィのこのお馬鹿ーーーー!!!』


尚、それを聞いて割とガチでシズクちゃんがブチ切れたのは言うまでもない。

セフィは実は臆病キャラ。





最近仕事が忙しいのです。そんな中、頭の中で違う物語のプロット(妄想ともいう)を考えてたりするのです。最近だと貞操観念逆転モノの、強制ハーレム系の世界観を考えてたりするのですよ。……アレ駄目です。ひたすら男主人公甘やかす内容を考えてるだけで、現実が辛くなってくる。……仕事辛いよぅ。

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