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第四話 魔導戦技部

ぶっちゃけ真面目にスポーツやってきてないので、大会やらルールみたいな部分はかなりあやふやです

水無月って苗字だけど出身世界は地球なの?

いや保護者が地球出身ってだけで生まれはレストレード(という事になってる)。


運動系の部活に入りたいって言ってたけど、具体的には?

んー、どんな部活があるのか分からないからアレだけど、あるなら魔導戦技、なければ純粋戦技系かなぁ。


シズクと仲良さげだったけどどういう関係なの?

ビリヤードのキューとボールな関係。


主にされた質問はこんなもんかな?

立場的には編入生と変わらないせいか、そこそこの数の質問が飛んできたけど、地味にシズクちゃん関係の質問が多かった。男女ともに結構な人気みたいだ。

まあシズクちゃん系の質問についてははぐらかしてるように思われたみたいだけど、本当にビリヤードのキューとボールな関係(ボーリングの球とピンでも可)なだけなので、妙な誤解が広がらない事を祈る。ただ僕が質問に答える度に違う意味でシズクちゃんが顔を赤くしてたせいで、広がってそうなんだよなぁ。

授業中にこれまでのノートとかを見せて貰う度に、コソコソと何か言われてたし。

まあ、きっかけはアレだったけど、今日1日で何だかんだシズクちゃんとは仲良くなったので、それは良かったと思う。

そして帰りのホームルーム。


「それでは皆さん、気をつけて帰ってください」


さて、これで1日は終わった訳だけど、どうしようか?

これからすぐに帰って食べ歩きか、それとも機動隊の訓練に混ざるか、久々に開発地区に顔を出すのもいいかもしれない。


「あ、ねえナナ。ちょっといい?」

「うん?」


色々と考えていたところで、シズクちゃんが話しかけてきた。

因みに呼び方は、仲良くなった途中で名前呼び、敬語無しって言う風になった。僕は基本ユルいし、シズクちゃんも性格は元気っ子だから、苗字呼びとか敬語とかが自然となくなっていった。まあ、今朝の事を引きずられて距離取られるのが嫌だったっていうのが本音だけど。

で、それは兎も角。


「どしたの?」

「ナナって部活決めた? 魔導戦技や純粋戦技がやりたいって言ってたけど」

「うん。その手の部活があったら入りたいよ。まあ、まだどんな部活があるのか知らないんだけど」


て、自分で言って気付いたけど、どんな部活があるのか調べないと。サッカー部や野球部、吹奏楽部はクラスメートにいたから知ってるけど、他の部活は知らないんだよね。


「私、魔導戦技部に入ってるんだ。今日活動日だけど、見学する?」

「是非」


二つ返事で頷いた。今日の予定は決まったね。





二人で魔導戦技部の部室まで歩く。


「それにしても、凄い偶然だよね。事故みたいな出会いから、同じクラスで再開して、同じスポーツに興味を持ってるなんて。こういうとちょっと変だけど、運命とか感じちゃうかも」

「確かに。妙な縁があるのは認めるかな」


僕自身も、この1日でここまでシズクちゃんと仲良くなるなんて思ってみなかったしね。一番最初に交わしたのが言語ではなく肉体言語だったし、再開しても険悪とまでは言わずとも、気まずい関係に落ち着くと思ってたし。

それが蓋を開けてみたら、まあ馬が合う事。


「ただ、女の子が運命的なんて事を軽々しく言っちゃダメだよ。年頃の男の子が勘違いしゃうから」

「じゃあナナも?」

「残念ながら僕はそこまで純粋じゃないかなぁ……」


元ストリートチルドレンに思春期的なあれこれは期待しないで欲しい。

女の子の下着や裸で我を忘れたり、顔を赤くしたりはしないし、恋愛は甘酸っぱいものというより痴情のもつれを連想しちゃうし。何でお水のお嬢と野暮天な客の言い合いに一桁のガキを仲裁に向かわすかな。


「何か遠い目してるけどどうしたの?」


おっと、シズクちゃんが不思議そうな顔をしてる。

昔を振り返るのは僕の悪い癖だな。事情を知ってる人の前なら兎も角、何も知らない人の前で振り返るのは出来るだけ控えなきゃ。


「いや、何でもない。ところで部室ってまだ?」

「ん? ああ、もうすぐもうすぐ。ほらここ」


誤魔化すために話題を変えたけど、本当にすぐ近くまで来てたみたいだ。

取り敢えず、部室を見て一言。


「……なんというか、古い?」

「あはは……。まあ少しボロっちいかな?」


僕の感想に、苦笑いするシズクちゃん。

見学者の分際で言う事じゃないが、既に所属しているシズクちゃんから否定されない程度には、その場所は古かった。

何ていうんだろう、外観は廃業寸前のボクシングジム? そんで窓から中を覗くと、格闘技用のリングに、使い込まれたサンドバッグをはじめとしたトレーニング器具が幾つかと、それ等を使用する女の子たち。……あ、一人と目があった。


「……」

『……』


暫く中の女の子と見つめ合う。あ、こっち来た。


「……覗きですか?」

「開口一番でそれかぁ……」


ドア開けて最初に言われたのがコレだよ。何で覗きが選択肢の一番上にあるの?


「セフィ、違うの! ナナは私が見学で連れてきたの!」


微妙な空気となった僕とセフィと呼ばれた女の子の間に、慌ててシズクちゃんが割って入る。


「……シズクの知り合いですか?」

「うん。今日から私と同じクラスになった水無月ナナ君。ナナ、こっちは一年二組のセフィリア・クラウン。私の友達だよ」


シズクちゃんに促され、簡単な挨拶を行う事に。


「あ、どうも。ナナって呼んでください」

「セフィリア。私もセフィで構いません」

「分かった。セフィちゃんね」

「……ちゃんはいりません。呼び捨てで」

「じゃあセフィで」


シズクちゃんと同じ感じにしたんだけど、どうやらお気に召さなかったみたい。

まあでも、シズクちゃんと違って物静かでクールな雰囲気があるから、確かにちゃん付けは合わないかも。


「で、見学ですか?」

「うん。ナナが魔導戦技をやりたいって言ってたから」

「……資格は?」


僕の方を向いて、セフィがそう聞いてきた。

セフィが言っているのは、魔法発動を補助するデバイスの所持資格についてだろう。

魔法というのは、個人が所持する魔法領域で魔法の術式を構築する事によって発動する。だが、基本的に人の持つ魔法領域というのはそこまで広くない。1つの術式を構築するのにも時間が掛かるし、術式を複数領域内で保持しておくことも難しい。はっきり言って、魔法は独力で使うものじゃない。

……まあ、先天的に魔法領域が膨大だったり、魔法を何度も使用する事によって魔法領域が拡大したりして、有り得ない規模と効果の魔法を補助無しで平然と操る人種もいるけれども。それはあくまで例外中の例外だ。

だが、じゃあ使わない要らない、なんて事になるには魔法は有用過ぎた。そして何とか個人で扱えるように研究した結果、『自前じゃ足りないなら外から足せ』の精神で出来上がったのがデバイスである。デバイスの誕生により、人間が扱う魔法は量、質ともに大きく上昇した。

ただ、忘れてはならない事がある。それは魔法が容易く人を害せる技術だという事だ。


「魔導戦技をやるなら、3級デバイスの所持資格がないといけませんよ?」

「あ」

「何でシズクが反応してるんですか……」


デバイスの誕生によって魔法は大きな進歩を遂げたが、それは武力の進歩とほぼイコールだ。当然、それを可能とさせるデバイスはおいそれと普及させる訳にはいかない。所持するには対応する資格が求められる。

まず、デバイスは5つの種類に分類され、それは魔法領域の大きさと構築出来る術式によって決まる。

4級デバイスは日常で役立つ程度の規模の魔法領域と、非殺傷性の魔法しか構築出来ない。その代わりに通話機能や空間投影機能、その他諸々の日常生活を快適に送れる機能が搭載されている。便利グッズの延長線上にあるため、所持するのに資格は必要無い。

3級デバイスはスポーツ用に多く用いられる為、魔法領域が比較的大きく、また殺傷性があるのか無いのか判断しづらい競技用の特殊な魔法を構築出来る。魔法領域の大きさから、試験難易度が高く、資格を取得するのは十代以降の人間が多い。ただスポーツで用いられるため所持者は結構いる。

2級デバイスは一言で言えば自衛用のデバイスで、3級よりも魔法領域は小さいが、殺傷性のある魔法を構築出来る。民間人で所持してるものは少ないが、統括局所属の人間は多くが所持している。

1級は所謂軍用デバイス。魔法領域が大きく、殺傷性の高い魔法を構築出来る。資格取得者は確実に戦闘系の職に就いていると言える。機動隊や保安隊の面々が所持している。

最後は特殊な仕事や研究で使われる業務用デバイス。これに関しては種類が多すぎて説明しづらい。所持者は殆どいないのでそこまで気にする必要もない。

で、だ。僕がやろうとしている魔導戦技だが、魔法を使う以上当然デバイスが必要となる。この場合は3級デバイス所持資格を持っていないと、魔導戦技というスポーツは行えない。


「あー、そう言えば聞いてなかったね。ナナ、デバイス所持資格は何級まで持ってるの?……あ、別に3級を持ってないと入部出来ないって事はないからね。ただ練習の他に資格試験の勉強を自主的にやって貰わないといけないんだけど……」

「個人的な意見ですが、資格勉強まではコーチも面倒見きれないでしょうし、ないなら諦めてくれると助かります。見ての通り、ウチはあまり余裕がありませんので」

「セフィ!」


説明不足だった事に気まずい表情を浮かべるシズクちゃんと、中々に辛辣な事を言い放つセフィ。

慌ててシズクちゃんが窘めるが、当の本人は素知らぬ顔で僕の方を見ていた。

取り敢えず、シズクちゃんに無駄な心配をさせないように、僕のデバイスから空間ウィンドウを投影する。

そこには、3級デバイスの所持を認める旨が記されたデータが映されている。


「一応、資格はあるから大丈夫だよ」


これでも僕は機動隊の嘱託魔導師だ。デバイスの所持資格は業務用を除いて全て取得している。というよりさせられたんだけど。

資格を所持している事を証明すると、シズクちゃんからは安堵、セフィからは満足そうな雰囲気が感じられた。


「大丈夫そうですね。なら部室の方に案内します。既に先輩たちはいらっしゃるので、挨拶をお願いします」

「あ、セフィ! ナナを案内するのは私が請け負ったんだよー!」

「あはは。色々と教えてねシズクちゃん」

「まっかせて!」


二人に連れられる形で、僕は魔導戦技部への部室へと入っていく。

はてさて、一体どんな部活なのか。ちょっと楽しみだ。……ところで、さっき覗いた時、男子の姿が見えなかったんだけど? そこんとこどうなの?

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