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第三十五話 さらば強敵(とも)よ、またいつか

活動報告でも書きましたが、ユーザー名と作者名をみづどりで統一しました。……あ、どうでも良い? ですよねー。


「では皆。整列して」

「「「「「「はい!」」」」」」


茜色の空の下、僕たちはコーチの指示で一列に並んでいた。


「ラクシア魔法女学院の皆さん。この度は練習にお招き頂き、まことにありがとうございました」

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」


時刻は夕方。色々あった練習試合も無事に終わり、ラクシアの方々とはお別れの時間が迫っていた。


「こちらこそありがとうございました。今回の試合は、我々としても大変得るものが多かった。是非また試合をしましょう」

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」


僕たちのお辞儀に、ラクシアのメンバーもまた頭を下げることで返してきた。

今回の練習試合は、結果としては上々の形で終わったと言えるだろう。シズクちゃんのファインプレーから決まった今回の練習試合は、ラクシア側からすれば返礼と格下を使った調整試合という面があった。しかし蓋を開けて見れば、僕たちはラクシア側の選抜メンバーとほぼ互角の戦いを繰り広げた。調整という思惑こそ達成できなかっただろうが、単純な練習試合という意味では大成功と言って良い筈。コイルさんの得るものが多かったという言葉も、決してお世辞の類ではないのだろう。

事実、試合をしたメンバーは皆、確かな友情を築いたのだから。


「セフィ。次こそはちゃんとした試合をしてみせるからね!」

「ええ。その時は私も本気でリーナと向き合いますよ」

「……それまた瞬殺するってことじゃない?」

「さあどうでしょうね」

「ちょっと!?」


セフィとリーナさんは、互いに冗談を交わせるような仲となった。第一印象としてはマイナスだったリーナさんも、お昼に頭を下げたことで決着がついた。その後はリーナさん生来の熱心な性格によって、僕たちとは見事に打ち解けた。……まあ、セフィとリーナさんの場合、曲者のセフィが直情型のリーナさんを揶揄う関係に落ち着いてしまったようだけど。


「ピグマさん。今度一緒に遊びませんか?」

「あ、良いですね。実はオススメの喫茶店があるんです。ケーキが凄い美味しいんですが、どうですか?」

「素晴らしいと思います!」


逆にシズクちゃんとピグマさんは、極めて真っ当な友好関係を結んだ様子。天真爛漫で活発なシズクちゃんと、大人しい性格のピグマさんは、正反対故にウマが合ったようなのだ。……まあ、2人とも試合となると性格が変わるんだけどね。シズクちゃんは相変わらず妖しくなるし、ピグマさんはゴーレムに乗ると愉快な人になるし。


「ルナー。今度アンタん家行くから」

「唐突にどしたのよ?」

「いやアンタの顔みたら、久々にシラタマに会いたくなった。後ママさんの料理食べたい」

「他人の家を猫カフェ扱いすんな」


そして安定の関係性を見せつけるのは、ルナ先輩とシロさんだ。気安い会話がこれまでの時間というものを感じさせる。


「シエラ。約束の件、頼んだぞ」

「分かってますよ。みっちりシゴいてあげますから、覚悟してくださいね?」

「望むところだ!」

「シエラ、本当にごめんなさいねー。ウチのレイちゃんが無理言って」

「良いんですよ。レイさんのようなスピード型なら、こちらとしても良い練習になります。……それに報酬もありますからね」

「うぐっ。それは勘弁して欲しいぞ……」

「駄目よーレイちゃん。約束は約束だもの」

「んなこと言ってユーリが1番楽しみにしてるだろ!」

「うふふふ」


……個人的に1番意外だったのは、レイ先輩とユーリ先輩とシエラさんの3人だ。この3人、というかユーリ先輩とシエラさんだが、レイ先輩という共通の素材を見つけることで一気に仲良くなった。どうにもシエラさんは、綺麗なものを磨くことを趣味としているようで、容姿端麗の癖して身嗜みに頓着しないレイ先輩をターゲットにしたのだ。これに対して、普段からレイ先輩の無頓智さに苦言を呈していたユーリ先輩が賛同。一瞬でレイ先輩立派なレディ計画が始動したのであった。……尚、レイ先輩は面倒そうにしているが、シエラさん自体は嫌っていないようで、尚且つトレーニングに付き合うという条件によって懐柔された模様。


「ナナよ。お主、フリットカップには出るのじゃろう?」

「あ、はい」

「では次は公式戦にて戦おう。決して負けるでないぞ?」

「はい!」


そして僕だけど、どうにも今日1日でラピスさんに随分気に入られた。いや認められたと言った方が正しいのかもしれない。まあ、午後は午後で人間スーパーボール戦術(ラピスさん命名)で割と大暴れしたから当然かもしれないけど。……あ、大暴れといってもそういうことじゃないから。射撃魔法の的みたいなことやっただけだから。

兎にも角にも、練習試合に出たメンバーは、全員仲良くなったと言える。成り行きとはいえ全員の連絡先も交換したしね。


「ではコイルさん。次会うのはフリットカップ。コーチとして、お互いにベストを尽くしましょう」

「そうですね。そちらの選手たちに負けないよう、気合いを入れて指導していきますよ」


そうしてコーチ同士が熱い握手を交わし、僕たちはラクシア魔法女学院を立ち去るのだった。







そんなこんなで学校に戻り、部室の中で寛ぐことに。


「……アレだな。ラクシアを見た後だと、ウチの設備は悲しくなるな」

「初っ端からその感想はどうなんですかね」


確かに公式戦レベルの闘技場と古ぼけたボクシング?リングじゃ雲泥の差だけども。


「あのレベルだと比べるのが間違いですよ絶対」

「そうよー。アレは超名門私立だからこその設備ってものよー」

「公立の弱小部にゃ絶対に無理ってことね」


ルナ先輩とユーリ先輩の反論に対して、レイ先輩は肩竦めてみせる。高望みは分不相応かとでも言いたげなリアクションだ。


「いや、強豪部だろうと公立である限りあのレベルは絶対無理ですよ。公的な予算というどうしようもない壁がありましてねレイ先輩」


尚、実際は高望みとかそういう問題では無い模様。


「あそこは上流階級の趣味部屋みたいなもんだと思っといた方が良いですよ」


実際そんなもんだと思うし。アレは魔導戦技が好きな金持ちたちが、寄付という名目で散財した結果出来上がった代物だって絶対。

つまりルナ先輩の言う通り、比べるようなものじゃない。単純に『すごーい』で片付けてしまうべき類のものだ。


「むしろ僕としては、あっちよりもこっちの方が落ち着きますね。ここの雰囲気は居心地が良いですし」

「あらー。嬉しいこと言ってくれるわねー」


僕が本心でそういうと、この部室の管理をしているユーリ先輩がニコニコ顔で頭を撫でてきた。どうやら居心地が良いという評価が嬉しかったらしい。……ここで居心地が良い理由が『ストリートチルドレン時代に根城にしていた、開発地区の廃工場の一角に似ているから』って言ったら、多分なでなでがアイアンクローに変化するんだろうなぁ。

雄弁は銀、沈黙は金。僕知ってる。


「あの、私も撫でたいです!」

「そこで飛びつかれても困るんだけど」

「シズク……。アナタ、本当にブレーキがなくなりましたね……」


安定の熱暴走で僕の方に向かってきたシズクちゃんを宥め、セフィの方にパス。流石にこの場でシズクちゃんの暴走を許すとルナ先輩が怖い。

それはそれとして、だ。


「で、これ結局何の集まりなんです? 用事ないないなら来いって引っ張ってこられた訳ですが」


本来なら、終了後はラクシアの最寄り駅で解散という予定だった。しかしレイ先輩の鶴の一声で、こうして部室に集まることになったのだ。

珍しく、というよりもキャラに似合わず『部長命令』なんてものをわざわざ使ったのだから、この集まりには相応の理由がある筈。

そんな僕の考えは、どうやら的中していたらしい。


「いやな? 今日の練習試合を踏まえた上で、ちょっと本音で話し合おうと思ったんだよ。ラクシアでは勿論、コーチの前じゃ言えないようなあけすけな話をな」


レイ先輩曰く、僕たちが出ることになっているフリットカップの地区予選が6月中旬、つまり約1ヶ月後に行われるので、その前に1度全員で胸の内を打ち明けようということらしい。

わざわざコーチに断りをいれ、日が落ちるまで部室を開放して貰ったのだから、かなり本気の試みのようだ。


「だから遠慮もいらねぇ。上下関係も無視だ。思った通りのことを言え。今回に関しては、誰に何を言われても遺恨は無しだ」

「駄目だしでも?」

「駄目だしでもだ。……だが具体的なアドバイス、改善点ぐらいは添えろよ?」

「それは勿論」


それらが無い駄目だしなんて、聞く耳を持つ必要のない野次みたいなものだし。その辺りの区別ぐらいはできる。


「じゃ、始めるぞ。……ぶっちゃけお前ら、フリットカップでどれぐらいやれると思う?」

「どれぐらい、ですか?」

「ああ。ラクシアはフリットカップの常連。オレたちは今日そんな選手たちと戦い、共に練習をした。オレやナナに至っては、フリットカップの上位選手と戦った訳だ。直接戦い、観戦した感想から、オレたちがどのレベルまで通用するかを聞きたい」


そう前置きしたレイ先輩は、言い出しっぺの法則にのっとって自論を語り始める。


「まずオレ自身の結論を話そう。オレ的には、組み合わせにもよるが、せいぜい地区予選で2・3勝が良いところだと思ってる」

「え!? いや流石にそれはないでしょう!」


レイ先輩の自己分析に、驚いた様子のルナ先輩が異議を唱える。

しかし、レイ先輩は冷静に反論した。


「ルナ。それは身内贔屓みたいなもんだ。そりゃオレだって有名選手の端くれさ。でもな、それはアンダー15の枠組みの中でしかない。アンダー19のフリットカップじゃ、恐らくオレは少し強い程度の評価に落ち着くだろうよ」

「それは……」


年齢層の違いという正論に対して、ルナ先輩は言葉を返すことができなかった。

まあ、ね。これに関してはレイ先輩の方が正しい。魔法能力というものは、一部の例外を覗いて20歳ぐらいが成長のピークだ。当然ながら、20代に近ければ近い程、肉体的・魔法能力的に成長していることになる。幾ら伸び代があろうとも、未だ成長途中のレイ先輩では、成熟した成人間近の選手たちの相手は少々キツいだろう。

それに年齢制限の上昇は、単純な間口の増加を意味している。上限が上がればそれだけ多くの選手が参加するだろうし、分母が増えれば実力者の割合だって増える。更にフリットカップの知名度を踏まえれば、その辺りが倍々になってもおかしくない。

つまり10代前半で活躍するような選手というのは本当に稀で、都市本戦出場者のラピスさんやシエラさん、都市本戦に届くであろうとコーチから言われているセフィやシズクちゃんなんかは、例外中の例外なのだ。


「オレの予想じゃ、一般の選手が相手で勝率7・8割。ラクシア中等部の一軍や、同年代の有名ジム所属の選手なら勝率6割。ラクシア高等部、年上の有名ジム所属の選手だと7割ぐらいで負けると見てる。相手がシード選手なら敗北はほぼ確実だな」


はいストップ。冷静に客観視してるところ申し訳ないですけど、気になる単語が聞こえましたよ?


「……ラクシア高等部って何ですか?」

「そこかよ……。あそこは中高一貫校だぞ? そりゃ高等部の部活だってあるだろ。オレたちが今日いったのは中等部の方だ」

「え、でも。レイ先輩、シロさんたち一軍がシード候補云々って言ってませんでした?」

「団体のシードはその組織に与えられるって言ったんだよ。この場合、シード選手は高等部と中等部の一軍から選ばれるんだ。で、普通に団体として参加する場合、高等部と中等部でそれぞれ別扱いって訳だ」

「ややこしい……」

「年齢上限が高い大会だと割とよくあることよー?」

「ならせめて高等部と中等部で呼び方分ければ良いのに……」


色々と紛らわしいでしょそれ絶対。実際、僕なんてラクシアは中等部しかないと思ってたし。


「そりゃまあ、相手側からすればどっちにしろ強敵なのは変わんねぇからな。猛威を振るうのはどちらかと言えば高等部の方だが、中等部の一軍だって相当やるんだ。で、背負ってる看板だって同じなんだから、一々呼び分けてたら面倒なんだろ。だから一纏めに『ラクシア選手』で纏められてんだよ」

「……その辺りの区別が必要なのはラクシア生徒だけってことですか」

「そういうこった」


何ともまぁ適当な……。

そんな僕の呆れを他所に、レイ先輩は真剣な様子で言葉を続ける。


「さて、話を戻すぞ。今言った通り、オレの今の実力じゃフリットカップには通用しない。そしてこれは、必然的にルナの方にも適用される」

「んぐ……やっぱりこっちにも来ましたか」

「そりゃな。お前だって自覚あるだろ」

「まあ、はい」


矛先を向けられたルナ先輩は、苦笑を浮かべながらもレイ先輩の言葉を肯定してみせた。


「ま、この中じゃ私が最弱ですしねー。レイ先輩の予想を踏まえるなら、私なんて下手すると初戦負けしかねない訳ですし」

「攻撃の方が上達すれば一気に化けるのにな」

「それはもう散々試したじゃないですか」

「あっけらかんと言うことではないのでは……」


ルナ先輩、前々から思ってたけど勝ち負けに拘らな過ぎじゃない……?


「これで良いのよ。本音を吐き出すってことだから言うけど、ぶっちゃけ私ってエンジョイ勢だもの。そりゃ勿論、真剣にはやってるわよ? 勝てれば嬉しいし、負ければ悔しいわ。ただそれ以前に、私は魔導戦技が好きなの。練習して、試合ができればそれで満足なのよ」

「そこまで完璧なエンジョイ勢だったんですか!?」

「うん。勝ち負けは割と二の次ね。コーチの手前あんまり大声では言えないけど」

「マジですかー……」


まさかの趣味スタンス。台詞と考え方がスポーツ好きの社会人のそれだ。

……というか、幾ら本音トークでもコレって大丈夫なの? 何処の界隈でも、エンジョイ勢とガチ勢の衝突って掃いて捨てるほどあるよ?


「……えーと、レイ先輩たち的には、ルナ先輩のコレは良いのですか?」

「ん? ああ。何を心配してるのかは分かるが、別に問題無いぞ。ルナはエンジョイ勢を自称してる割に真剣にやってるからな。普段の練習は勿論、自主練だってしっかりやってる。コレで不真面目ってなら叩き出すが、ちゃんとやってるなら五月蝿く言うことでもないだろ。所詮は中学の部活だしな」

「うわぁ大人……」


考え方が柔軟というか、懐が大きいなレイ先輩。こんな考えができる人が大勢いたら、こういうエンジョイ勢VSガチ勢の諍いは少しは減るんだろうなぁ。


「因みにシズクちゃんとセフィは、この考え有り無しどっち? てか、そもそも2人ともルナ先輩のスタンス知ってた?」

「んー、実際に言葉で聞いたのは始めてだけど」

「雰囲気からそんな気はしてましたね」


あ、一応察してはいたのね。


「で、有り無しについてだけど」

「好きの形は人それぞれですし」

「好きならそれで良いんじゃない?」


そして2人も大人だなー。


「……そういうアンタはどうなのよ? 私の考え、不真面目とでも思ってたりする?」

「いえ全然。ルナ先輩はルナ先輩なりに真面目に向き合ってると思いますよ?」


僕もシズクちゃんと同じ意見で、こういうのは好きならそれで良い派。周りに迷惑掛けてないなら万事オッケーだと思います。……そもそも縛りプレイしてる僕が、不真面目云々なんて言える立場じゃないしね。


「まあルナのスタンスは別に良いんだよ。オレが言いたいのは、オレとルナはこの1ヶ月でガッツリ鍛える必要があるってことだからな」

「そうですね。それは本当にそう思います。私は特に重ねがけを習得しないといけないですし」

「そこでそう即答するんだから、お前やっぱり自称エンジョイ勢だよな」

「いやだから、れっきとしたエンジョイ勢ですよ」


これはレイ先輩に1票かな。パッと見る限り、周りの皆も同意見らしい。

ま、それはそれとして。ルナ先輩が終わったのなら、勿論次は。


「で、次は1年トリオだな」


僕たちだよね。


「お前ら、今日の試合でどこまでいけると思った? 実際にトップ選手の戦い方を目にした訳だが」


トップ選手。つまりラピスさんやシエラさんのことだ。あの人たちの実力は共に都市本戦上位レベル。個人的な所感では、魔導戦技のルール内に限り、ラピスさんは魔導師ランクB+、シエラさんは魔導師ランクBかB-といったところ。

それが都市本戦のレベルだとしたら、僕らは果たしてそこにいけるのだろうか。


「うーん……ナナとの試合を見る限り、ラピスさんは厳しい感じで、シエラさんはやり方次第ですかね。……となると、やっぱり都市本戦の真ん中あたりかなーと」

「ラクシアでは誤魔化しましたが、ぶっちゃけるとラピスさんなら五分五分。シエラさんなら問題ないレベルです。組み合わせ次第ですが、都市本戦の上位はまずいけると思います」


うん。この2人は、そこにいくと自信満々に言えるんだよね。

自惚れでもなんでもなく、この2人には才能があり、そしてそれを自覚している。だからこの子たちは強いんだ。等身大の自分を常に見て、油断も慢心もしないのだから。


「ナナの方は?」

「僕は……まあ、相手にもよるかなと。並の選手なら勝てるでしょうけど、かと言って都市本戦に絶対いけるかと言われれば、って感じです」


……それに比べると、自分の答えが情けない。ここで2人と同じように断言できれば良いのだけれど、僕にはそれができないのだ。

別に自信がない訳じゃない。なにせ僕の実力は、自惚れでも何でもなくシズクちゃんやセフィの上を行く。子供ながらに機動隊に所属するとはそういうことだ。はっきり言ってしまえば、大抵の選手には勝とうとすれば勝てる。勝ててしまう。


「あのラピスと互角の試合をした奴の台詞じゃねえな。もうちょい自分の実力を考えろよ」

「そこはまあほら。勝負事に絶対はないですから」


故に断言できないのは、単純な罪悪感だ。1人だけセルフ縛りで舐めプをしている罪悪感。魔導戦技を鍛えるだけの手段として捉え、マトモに向き合っていない罪悪感。スポーツという踏み入るべきではない領域に踏み入っている罪悪感。その辺りの感情がない混ぜになって、真実を述べることができない。真剣にやっている皆に対して、負い目を感じてしまっているから。


「……まあ良い。今日の練習試合を見るかぎり、自分の実力を全く客観視できてないって訳でもないんだろう。取り敢えず、用心深いってことにしといてやるよ」

「それはどうも」


結局、レイ先輩はそれ以上踏み込んではこなかった。本音の語り合いといえど、プライベートな部分には必要以上に踏み込む気はないと言いたげな表情を浮かべて。


「ま、アレだ。1年トリオは全員、都市本戦までは余裕と頼もしいことを言ってくれた訳だが」

「言ってないのですがそれは」

「うるせえ。本音トークの趣旨を理解してない奴の文句はきかん」

「えー」


なんて横暴。でも非は100%僕にあるから何も言えない。

という訳で、その後は静聴。


「さて1年トリオ。というよりシズクとセフィ。お前らは都市本戦までで満足か?」

「……それは最終成績ということですか?」

「そうだ。もっと上を目指したいとは思わねぇか?」

「それは勿論!」

「言うまでもないです」


上を目指すのは当然だと、2人は断言してみせる。……僕が外されたのは、内心をある程度は見透かされてるということなんだろうなぁ。


「なら修行しかねぇよな?」

「「はい!」」

「自称エンジョイ勢のルナもナナもそうだよな?」

「はい!」

「まあ、はい」


勝手に分類分けされたことはさておいて。修行することに反対は無いです。そもそもこれ部活だし。


「ということで、各々が強くなる為の修行を考えてこい。これ宿題な」

「「「「はい?」」」」


はいストップ。何かいきなり宿題が出てきたんですが。


「えーと、そういうのってコーチが考えるんじゃないんですか?」

「何でも人任せにすんじゃねぇ。自分で考えるのも大事だろ」

「言ってることは尤もですけど」


確かに自分で試行錯誤するのは、強くなる上で大事だけども。でもこういうトレーニングは、ちゃんとした知識のある人が考えないと逆効果だったりするし……。


「別に完璧な修行内容を考えろって言ってんじゃねぇよ。単純にこうしたい、こうしたら強くなれるかもってことを考えてこい。後はそれをコーチに伝えて、一緒に形にしていけば良い」

「……それならコーチの前で話し合った方が手間が無いんじゃ」

「だーかーらー。自主性が大事だって言ってんだろ。それにコーチの前じゃ、どうしても現実的な内容にしかならん。こういうのは突飛な方が案外良かったりするだろ?」

「まあ確かに」


特に発明や研究方面で言われていることだけど、柔軟だったり突飛な意見というのは、往々にして事態を好転させたりするものだ。そういう意味では、レイ先輩の言ってることは間違ってない。


「そもそもウチのメンバーは個性的過ぎるんだよ。防御特化で攻撃がてんで駄目なルナ。マイナーな音魔法使いのセフィ。炸裂魔法で近接戦をするナナ。……こんなオリジナリティ溢れる奴らにマッチしたトレーニングを、コーチ1人に考えさせんのか? どう考えてもクソ大変だろうが」

「「「うっ……」」」


僕を含めた個性的なスタイルなメンバーが思わず呻く。それを言われると反論ができない。なにせ僕たちは『特化型』『マイナー』『欠陥技術』の個性的三銃士だ。それぞれの持ち味を潰さずにトレーニングメニューを考えるというのは、確かに1人じゃキツい。

因みにレイ先輩とシズクちゃんが除外された理由だが。レイ先輩はオーソドックスな魔法戦士タイプ故に、練習メニューを組むのが容易だから。シズクちゃんは戦闘スタイルこそオンリーワンだけど、練習内容が格闘型の選手のそれで流用できるから、だそうだ。


「分かったらちゃんと考えてこい。勿論、今話した内容、例えば自分たちの現状のレベルとかを踏まえモノにするんだぞ」

「「「「はい!」」」」

「期限は次の練習までだ」

「明日は試合明けということでお休みだから、つまり3の日ねー」


ウチの部活は基本的に1・3・5・6の日(地球世界基準の月・水・金・土曜日)が練習日となっている。因みに3と6の日が外練だ。

だが今回は7の日(地球世界基準の日曜日)に練習試合を行った為、振替兼リフレッシュとして1の日が休みなのだ。


「という訳で、しっかり考えてこいよ。完璧にしろとは言わねぇが、ある程度は形にしておくこと。忘れた奴は筋トレと外周な」

「「「「はい!」」」」

「よし。じゃあ解散!」

「「「「お疲れ様です!」」」」


皆で礼。はい今度こそさようなら!

因みにこれでラクシア編は終わりです。次は修行+フリットカップ前半編って感じですかねー。フリットカップまでいけるかは不明ですけど。

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