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第三十三話 試合は終わり、かくて語りき

大型の休みが取れたお陰でいっぱい書けるなー!

「だぁー! 負けたぞこんちくしょう!」


試合を終えたレイ先輩が悔しげに帰ってきた。……まあ、うん。物の見事にやられてたし、あの反応はしょうがないと思う。


「お疲れ様です。良い試合でした」

「最後とかすっごい迫力でしたよ!」

「見ているこっちが熱くなりました」


ただ試合自体は素晴らしかった。圧倒こそされていたけれど、胸を昂らせるような戦いだった。特に最後の部分など、正に『魅せる』ような展開。シズクちゃんたちか興奮してるのがその証明だ。


「そりゃ良かったよ。最後にカッコつけた甲斐があった」

「カッコつけるのは良いけど、無理し過ぎよー? 最後のなんて必要なかったでしょうに。何で真正面から迎撃なんてしたのー?」

「だから意地だって! 悪かったからそんな詰め寄るなユーリ!」


尚、ユーリ先輩には不評だった模様。……まあ、最後の激突はぶっちゃけ要らなかったからね。ノリと勢いに分類されるアレだったから、そりゃ心配されるよ。


「はいはい。2人ともそこまで。さっさと反省会するわよ」


最終的にコーチの助け舟でレイ先輩は解放された。やっぱりこの部のボスってユーリ先輩だよね。

それはそれとして反省会だ。


「まずはお疲れ様と言っておくわ。それでレイ。貴女の思った反省点を挙げてみて」

「はい。1番大きいのは、やはり最初の被弾っスね。アレは明らかにオレの油断が原因です。アレさえなければ、また展開は違っていた」

「そうね。射撃特化選手の魔法弾がたった1種類だと思い込んだのは大きなミス。魔法弾は種類ごとに微妙な違いがあるし、思い込みさえなければ違和感ぐらいはおぼえた筈よ」

「全くもってその通りっス……」


割とガチのお叱りを受けて、レイ先輩はガックリと項垂れていた。


「魔法弾は大きく分けて『威力』『弾速』『操作性』の3要素で構成されている魔法。使用魔力に制限がある以上、どれかを伸ばせば必ず他の要素が低下するわ。それをまず徹底的に頭に叩き込んで、一瞬でどのタイプの魔法弾か判断できるようになることが第一ね」

「はい!」


どうやらレイ先輩の今後のトレーニング内容が決まったらしい。魔法弾の瞬間把握。一定レベル以上の射撃型に対抗する為の必須技能でもあるし、試合結果からして順当だろうか。


「後はやっぱり、後衛型選手との戦い方よね。これはレイだけじゃく全員に言えることだけど、どうしても経験不足な部分が出てくるわね。私もちゃんと指導はしているつもりだし、貴方たちの実力ならそれなりの相手だったら十分戦える筈。でも、シエラ選手のようなトップ選手が相手となると厳しいでしょうね」

「……そうっすね。ウチには後衛型の選手はいねぇ。だからどうしてもこの部だけだと練習するにも限界がある」

「まあ、そもそもウチの設備じゃ後衛型選手がいたところで、普段から練習なんてできませんし……」

「そうなのよねぇ……」


ルナ先輩の尤もな指摘に、今度はコーチがガックリと項垂れる。……使ってるのボクシングリング(推定)だからねウチの部活。屋外設備すりゃないんだから、そりゃ遠距離攻撃の練習なんてできないよねぇ。


「でも、だからと言って放っておける問題でもないのよ。シエラ選手のような遠距離射撃特化のスタイルは珍しいけど、遠距離主体という選手はトップ層にも沢山いるわ。魔導戦技の上を目指すのなら、必ず彼ら彼女らとぶつかることになる」


そんな中で後衛型との戦闘経験少ないですっていうのは、どう考えてもカモと言うか。明らかに致命的よね。


「現状で遠距離主体のトップ選手と勝負になるのは、ナナとセフィぐらいかしら?」

「僕ですか?」


急にこっちに矛先向いたな。


「ラピスラズリ選手相手に接近戦へと持ち込めるなら、他のトップ選手とも十分に戦えるでしょう」

「あ、はい」


……期待が重いなぁ。何かラピスさんと試合してから、部の中での僕の評価が爆上がりしてる気がする。それだけ試合内容が良かったのか、ラピスさんに対する評価が高かったのか。……まあ、普通に考えて後者だよね。ラピスさんの実績のお陰で、ノックアウトされなかった僕の評価が相対的に上がった感じか。

尚、このメンバーの前で明確に勝ったことは無い模様。成績に対して評価が釣り合ってないというね。流石に口には出さないけど。


「因みにセフィはどういう判断基準なんです?」

「得意魔法と実力よ。セフィは音魔法での妨害が大層得意でね。やりよう次第では遠距離魔法も何とかできる筈なの。それでいて体捌きや判断能力も高いから、回避も上手い。『狙えない』状況を作れて、例え狙えたとしても『当たらない』。そういう芸当ができるのよセフィは」


はぇー……。そこまでガッツリ後衛型の対抗手段持ってたのね。しかも、その手段が魔法の応用力と体捌きとか。どっちも相当な練度が必要になってくる『技術』だ。才能もあるんだろうけど、相当修練を詰んだんだろうね。


「セフィ。キミってマジで強かったんだね……」

「? 今さらですか? さっきの試合でも圧勝したじゃないですか。アレで察してくださいよ」

「むしろ圧勝したからなんですがそれは」


だって瞬殺してたじゃないのキミ。しかも初見殺しで。アレじゃあ強いのは分かるけど、何がどれくらいできるのかとか全く分からないから。


「……むー。私だけ仲間外れだ」

「そう言えば今回の練習試合で、私たちの代ではシズクが最弱だと証明されましたね。精進しなさいシズク」

「むー!」

「セフィ。煽らないの」


シズクちゃんで遊ぶセフィにチョップ。


「おいコラ1年トリオ。反省会中にじゃれるな」


そしてレイ先輩に怒られた。


「で、話を戻すが……お前ら2人ならシエラ選手をどう対処する? ぶっちゃけ勝てるか?」

「また答えにくい質問を……」


負けた人を前にして何て言えば良いのさそれ。


「……可能性はある、といったところでしょうか。爆音による妨害、衝撃を利用した誘爆などを駆使すれば、まあ戦いにはなるでしょう」

「キミはあっさり答えるのね……」


遠慮とか気まずさとか、そういうのないのキミ? これ僕も言わなきゃ駄目な奴じゃん。


「ナナはどうだ? 気を使う必要はねぇ。思った通り言ってくれ」

「僕は……んー……」


思った通りって言われてもねぇ。流石に答えにくいよなぁこれ。……まあ、真面目な質問みたいだし、言っちゃっても良いか。


「レイ先輩の前で言うのもアレだし、あんまり大きな声では言えないんですけどね」

「おん? よう分からんが、遠慮しないで良いぞ」

「あ、はい。……ぶっちゃけると、シエラ選手が相手なら8割勝てます」

「……随分大きく出たな」


結論を言ったら驚かれました。でも不機嫌にはなってなくてホッとしたよ。遠回しに『僕の方がずっと強い』って言ってると捉えられてもおかしくないし。


「私も興味あるわね。ナナ、何で貴方はそこまで言い切れるのかしら?」

「あ、はい。まず僕のスタイルですけど、さっきお見せした通り機動力がかなり高いです。試合中のレイ先輩が見せたトップスピード程ではないですが、アレに近い速度で動き回り続けることができます」


レイ先輩のトップスピードはまさに雷。セフィ曰く、アレは類まれなる雷魔法の才能が可能とさせる神経伝達速度の上昇と、強化の重ね掛けを同時発動させたもので、レイ先輩の代名詞となっている攻撃だとか。但し、強力な反面肉体への負担が大きく、連発や長時間の発動には向かないらしい。

対して僕の場合、機動力の大半は炸裂魔法を利用した外的なモノ。魔力消費にさえ目を瞑れば、そこそこの速度で延々と動き回ることができる。


「いやいやいや。それだけなら多分駄目だぞ? オレのトップスピードですら普通に合わせられたんだ。それ以下の速度で動き回っても狙い撃ちだ」

「まあそうなんですけど、僕の場合は立体的に動けるんで。挙動が完全に不規則ですし多分いけます」


ラピスさん曰く、人間スーパーボール。リングという平面だけでなく、空中を含めた3次元を縦横無尽に跳ね回る僕を捉えきるのは、例え射撃特化のシエラ選手でも難しい筈。


「直進の体勢のまま直角に曲がったりしますからね僕」

「絵面が完全にギャグですよそれ」

「知ってる」


想像しただけでキモイもんね。今度機動隊の面子にドッキリでやってみようかな?


「まあ後は単純に、僕の身内が身内なんで。あの手の射撃戦は慣れてるんですよね」

「「「「「あー……」」」」」


なんということでしょう。僕の勝率予想に疑問を抱いていた面々が、たった一言で納得したではありませんか。

【天閃】水無月ユメ。機動隊の大英雄にして、SSランクの大魔導。そして次元世界最強と名高い射撃魔法使い。この圧倒的なネームバリューは、ただそれだけで周囲を納得させる。いや本当に凄いわユメ姉さん。


「……なるほどね。あの水無月ユメさんに鍛えられているというのなら、確かにその自信も頷けるわ」

「ぶっちゃけると、ユメ姉さんのしごきに比べれば、シエラ選手の射撃は遥かにマシなんですよ。……比べる方が圧倒的に間違いなんですけどね」


ユメ姉さんが相手だと、下手すると1歩も歩けないで封殺されるからねマジで。


「……そんなに違うのか?」

「非殺傷の魔法弾を秒間何百発ってくらえば分かりますよ」

「死ぬわそんなん」


うん死ねるんですよマジで。いや本当に頭おかしいからね! あの人小規模な魔法弾だと連射速度が最新の機関銃超えるんだよ!? それを訓練とはいえ弟に撃ってくるんですよ! 怒濤の衝撃で全身がミンチになる錯覚をするとか、ガチのトラウマ案件だから!


「……やっぱり英雄って呼ばれる人たちは桁違いなんだな」

「あれはもう生物としての基礎スペックが違いますからね……。オーバーSになるような人って、大抵が魔力量と魔法領域がぶっ飛んでますし。ユメ姉さんじゃなくても、オーバーSなら使用魔力300ぐらいの魔法弾だと、自前の魔法領域で秒間数十発は普通にいける筈ですし。例えプロが相手だろうと初手ブッパで瞬殺かと」

「試合になんねー……」


そうなんだよねぇ……。オーバーSってこと戦闘に限れば基本理不尽だから。ユメ姉さんの射撃魔法、ロア姉さんの障壁魔法みたいに、その人の本領で戦えば瞬殺がほぼ確定。遠距離に徹すれば本領じゃなくても瞬殺確定っていう鬼畜仕様だから……。


「まあお陰で、十分以上の経験を積めたんですがね」

「……なるほどのぅ。あの強さは身近な英雄故のものか」

「んにゃ?」


何か違う人の声が聞こえた気がするのですが。


「ラピスさん? 何でこっちに?」

「この後の予定を伝えにきたのじゃよ。そしたらあまりに興味深い話が聞こえてきての。つい口を挟んでしまったわ。スマンの。盗み聞きするつもりは無かったのじゃが」

「……因みに何処から聞いてました?」

「ん?お主がかの英雄に鍛えられている、ぐらいかの」

「あ、じゃあ大丈夫です」


良かったぁ……。シエラ選手に8割勝てるって言った辺りは聞こえてないっぽい。流石にそこを聞かれてら気まずかった。

そんな僕の様子に不思議そうにしながら、ラピスさんはコーチの方に向き直った。


「アドラコーチ。話し合いを中断して申し訳ないのじゃが、少々お時間よろしいですかの?」

「ええ。勿論です」

「感謝します。この後のお昼休憩ですが、取り敢えず1時間を予定しております。お昼の場所ですが、この格闘場でよろしいですか?」

「大丈夫です」

「ではそのように。休憩後の合同練習ですが、そちらは初めに話した通りに進めようかと。ただ、予定に加えて試合形式の練習も加えたいと思うのですが、どうでしょう?」

「それはこちらとしては願ってもないですが……良いのですか?」

「ええ。そちらは少数ながら大変な粒揃い。リングの上で矛を交えた方が、得るものもお互いに多いでしょう」


つまりこの後も試合は続くってことか。中々にハードな1日になりそうだ。……そう思ってるのは僕だけみたいだけど。レイ先輩とルナ先輩は僅かに口角が上がってるし、セフィも機嫌が明らかに良くなってる。シズクちゃんに至ってはガッツポーズまでして……あ、ルナ先輩に小突かれた。


「連絡は以上ですな」

「分かりました。皆話は聞いてたわね? この後も試合を重ねるけど、問題は無い?」

「「「「大丈夫です!」」」」


アドラコーチの問に、僕らは揃って返事をする。それを見ていたラピスさんも、満足そうに頷いている。


「それはそうとラピスラズリ選手。一つ宜しいですか?」

「なんでしょう?」

「何故選手の貴女が連絡係を? それはマネージャーの仕事では?」


あ、それは僕も思った。何でラピスさんがこんなことやってるの? リリカさんは?


「それは妾がこちらに用事があったからですな。リリカにちと変わって貰ったのですよ」

「用事ですか?」

「ええ」


そう言ってニンマリと笑ったラピスさんは、僕らの方に向き直った。


「ナナ。それと他の方々も。折角の縁じゃ。練習だけして終わりというのは少々寂しかろう。どうじゃ? 感想会も兼ねて、試合にでたメンバーで一緒に昼食を食べようではないか」


まさかのランチのお誘いだった。

もう少しだ。もう少ししたらナナを活躍させられる……! 具体的にいえば次の章あたりから。

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