第三十二話 煌めけ雷光、魔弾を落とせ
次はレイ先輩視点です。
「あ〜。負けた負けた。流石に重ねがけされたら耐えれないわよねぇ……」
「「「お疲れ様です」」」
試合を終えたルナが、くたびれた様子でリングから戻ってくる。
勝負の結果はルナの敗北。最初は良い感じてシロ選手の攻撃を防いでたんだが、強化魔法の重ねがけが出てきた辺りで流れが一気に変わっちまった。強烈な攻撃を何度も防いで善戦はしてたが、最終的にはデバイスを飛ばされてそのままKOされていた。
ま、流石にアレはしゃーないな。重ねがけをできる奴とできない奴が対峙した場合、余程の技術差がなければできない奴が負ける。難易度は高いが、それに相応しいリターンが得られるからこその決戦技術だ。むしろ良くもった方だろうよ。防御特化の面目躍如か。
「おう。良い試合だったぞルナ」
「終始押されっぱなしでしたけどねー」
「謙遜すんな。重ねがけさえなければ互角と言っても良い内容だ。ラクシアの一軍相手にそれだけやれれば十分過ぎる」
「十分、ってのもライバルとしては微妙な感じです」
オレの言葉にルナはなんとも言えない顔をする。
……ああ、そういう認識か。ルナにとってシロ選手は『ラクシアの一軍選手』ではなく『幼馴染のライバル』。元々は同等の相手だからこそ、負けても仕方ない的な評価は気に食わないかようだ。
「悔しいか?」
「……そう、ですね。私はアイツのライバルですから。勝ち負けは兎も角、離されるのは嫌ですね」
「そうか。なら強くならんとな」
「ですね」
……これは良い兆候だな。ルナは良い意味で割り切るタイプだ。ただそのせいで闘争心が薄いところがあった。自分は自分。他人は他人。相手の強さは素直に賞賛し、才能に嫉妬することをしない。これは人としては美点だが、選手としては少しよろしくない。嫉妬もまた奮起の材料。良い方に転べば、これ以上ない起爆剤となる。それがないというのは、それだけ強くなる機会を逃していると言える。
しかし、シロ選手のお陰でそれが変わった。ライバルが決戦技術で重ねがけを習得し、選手として1つ上のステージに上がったことで闘争心に火がついた。これでルナも更に強くなるだろう。
「奮起することは良いことね。それだけでルナにとっては収穫。練習試合をした意味があるわ」
「はいコーチ!」
コーチもオレと同じ考えのようで、ルナに対して満足そうに頷いている。
「試合内容に関してはいつも通り。やはり攻撃面が今ひとつよね。そこは今後も重点的にやるとして……何かトレーニングに希望はあるかしら?」
「重ねがけを教えてください。シロに追いつく為には必ず必要になるので」
「……やっぱりそうくるわよね。まあ、その辺りはルナだけでなく、そろそろ全員に教えるつもりでいたわ。特に今年の1年生は優秀だし。……重ねがけどころか多重がけまで習得してる新人もいるし」
「「本当ですか!?」」
おっと。コーチの言葉に試合の感想を言い合っていた1年どもが反応した。
まあしょうがないか。重ねがけは高等技術な分失敗すると危険だから、コーチの許可なく練習することは禁止されてたからな。それが解禁されるとなれば、ウチの魔導戦技大好きコンビが反応しない訳がない。
「はいはい落ち着きなさい。詳しい話は今度よ今度。今は他所にお邪魔してるんだから」
「はい! 今後の練習が楽しみです!」
「詳しい話を期待しています!」
「2人とも。今はルナ先輩の反省会だからちょっと下がろうか」
……見かねたナナが、未だにテンションの高い2人を引っ張っていったな。
「全く……。熱心なのは良いことだけど、あそこまでだと考えものね」
「良いじゃないですか。大人しい2人なんて逆に不安になりますし」
「それも分かるのが教育者兼コーチとしては微妙なところね……」
コーチの尤も過ぎる感想に、この場の全員が苦笑いを浮かべた。
アイツらはなー……。もうちょい分別というか、落ち着きが欲しいような気がするんだが、それと同時に大人しいシズクとセフィは想像できんからな……。本当になんとも言えねぇ。
「ま、それは兎も角。ここでの反省はこれで良いでしょう。今後はルナの希望に沿ったトレーニングを行っていくわ」
「はい!」
「それじゃあルナ。最後にコーチとしてお説教です。幾ら幼馴染兼ライバルと言え、試合中に雑談するのはほどほどにしなさい」
「……はい」
最後の最後でコーチに注意されて、ルナが気まずそうに顔を逸らした。あの反応だと話し過ぎの自覚はあったみたいだな。
クククッ。まあ、顔馴染みだとそうなるのも仕方無しか。白熱してくるとテンションも上がるからな。会話だって同時に弾む。
コーチもそれは理解しているんだろうが、指導者として念の為指摘した感じだろう。気を引き締めさせる意味も含めてってところか。……ルナは勿論、オレの方もな。
「さて。それじゃ次はレイ。貴女の試合よ。準備は良い?」
「ええ。万全っスよ」
コーチの掛け声と共に、意識を試合のものへと切り替える。後輩想いの先輩は一旦ストップし、溢れ出る想いを闘志に塗り替えていく。
「起きろ【マグネ】」
オレの言葉と同時に、バングル型のデバイスが完全起動する。オレンジのバトルスーツを纏い、虚空から現れた大振りのナイフ掴み取る。
「ヨッと」
そのまま手首のスナップでナイフを回し、3回転ほどさせたところで腰のホルスターへと納める。……良し。調子は上々だな。手首も良くほぐれてる。
「おー」
するとナナからパチパチと拍手が飛んできた。……ああ、コイツはオレのルーティンを見るのは初めてか。
「拍手なんてすんな。カッコつけてるみたいだろうが」
「有名選手としてのパフォーマンスではなく?」
「阿呆。分かってて言ってるだろお前。コンディションの確認と意識を切り替える為のルーティンだ」
「でも実際カッコイイですよ?」
「そりゃどうも」
ったく……。まーたコイツの悪い癖が出やがったなコレ。例え本心だろうが、いちいち言葉にして褒めなくて良いんだよこの女誑しが。
……まあ、良い。これもまた後輩からのエールってことにしておこう。実際、呆れのお陰で余計な力も抜けた。コレを狙ってやったんなら大したもんなんだが……いや余計にタチ悪いだけか。
ま、それは兎も角。試合だ試合。丁度オレの相手、シエラ選手もリングに上がってきたし、本格的に切り替えていこう。
「よろしくお願いします。レイニー選手。良い試合をしましょう」
「こちらこそですよ。シエラ選手」
まずはお互いに軽く挨拶。これも重要なことだ。選手としての礼儀は勿論、挨拶一つで相手の性格も分かるんだからな。
そして見たところ、シエラ選手は冷静なタイプだ。穏やかな口調は緊張の無さの現れ。リラックスした声音は無駄な力みを感じさせない。一見すると脅威と思われていないようにも思えるが、オレを観察するような視線がその考えを否定する。
シエラ選手は魔法による射撃がメインのスタイル。ラピスラズリ選手が津波のように広範囲を一掃するとすれば、シエラ選手は針のように鋭い一撃を的確に打ち込んでくるタイプだ。幾つかある後衛型の中でも特に戦略性が重視されるスタイルで、滲み出る冷静さはそれ故のものだろう。
この手のタイプは、自分で組み上げた流れに相手を巻き込み一方的に封殺してくる。その為に必要なのは高い状況把握能力と、最適解の選択肢で状況を作り出す構築能力。大雑把に纏めるなら『冷静さ』。つまり現状のシエラ選手は理想的なコンディション。更に言えば、このコンディションは恐らく造られたもの。最適な状態というものを身体に染み込ませていると思われる。
ああ、厄介だ。あれだけの観察で、シエラ選手がどれ程の実力者なのかというのが実感できる。
「では両者位置について」
開始位置で構えながら、この後の展開を考える。
既にシエラ選手の実力の一端は垣間みた。相対するだけで肌がひりつくようなこの感じ。明らかな格上だ。状況はとてもよろしくない。
戦略タイプの一般的な対処法は、予想外の挙動で相手のつくる流れから逸脱するor純粋な実力で流れそのものを突破するかのどちらかだが、格上の選手となればそう簡単にはいかない。更に駄目押しで相性の問題もある。オレはナイフを使う超近接型だ。近付けさせないことが大前提のシエラ選手との相性は最悪。
これだけなら勝てる見込みは無い。だが勝機が無い訳じゃない。近付けさせないことが大前提のスタイルということは、逆に言えば近付ければこちらの土俵ということ。つまりこの試合は、距離を詰めれるかどうかが肝!
「試合開始!」
「っらァァァァ!!」
「っ!」
開始の合図と共に全力で駆け出す。出し惜しみは無しだ! 重ね掛けで身体能力をはね上げろ! 更にはオレの奥の手、雷の魔力性質を利用した神経質の活性化で、挙動そのものを高速化させる!
なにせ後衛型に対して距離を詰めるなど、猿でも考えつくような作戦だ。トップ選手であるシエラ選手が、そんな単純なことを対策していない訳が無い。下手に思考を回していれば、瞬く間に距離を取られて一方的に封殺される。
故に開幕からの全力突撃。何故なら開始位置はお互いに固定。後衛型のシエラ選手が唯一、こちらの間合いの中にいるこの瞬間。それこそが最後にして最大の好機なんだからなぁ!!
「【ライトニングチャージ】!!!」
紫電を纏っての突撃は、着実にシエラ選手との距離を喰らい尽くす。時間は刹那の領域に。活性化した神経系が、その一瞬を鮮明に認識させる。
「【ショット】!」
しかし、相手もまたトップ選手。オレの最高速度兼至近距離の突撃に対して、バッグステップしながら平然と射撃魔法を合わせてきた。やはりそこいらの選手とはレベルが違う!
だが。
「当たるかァ!!」
肉体面でのあらゆる能力が上昇している今のオレなら、正確に合わせられた射撃魔法だろうが躱せるんだよ!
「1 ーー!」
顔面目掛けて飛んできた1発目は、首を僅かに傾けることで回避。
「ーー2ーー!!」
胸狙いの2発目は、スライディングの容量で地面を滑り減速することなく躱す。
「ーーーー3!!!」
そして腰狙いの3発目! ギリギリで全身を捻ってすり抜ける! これで突撃だ!
「貰ったぁぁぁ!!」
既に完全にオレの間合い! 例え迎撃用の魔法を打ったとしても、この距離ならオレのナイフの方が速い! 流れは掴んーー
「残念でした」
「グァッ!?」
右太ももに衝撃。遅れてやってくる痛み。予想外のダメージに身体が泳ぐ。
何だっ!? 何をされた!? 攻撃は全部躱した筈! 新しい魔法だって発動していない!
「いやッ、まだーー!!」
「遅いですよ!」
「ガフッ!?」
混乱は一瞬。しかし、その一瞬の思考の乱れをシエラ選手は見逃さなかった。
腹部に強い衝撃が走り、そのままリングの上を転がる。咄嗟に腹に魔力を集めて防御したとはいえ、集束がイマイチのせいか割と効いた。
「ダウン!」
くそっ。流石にダウンは取られるか! ……いや、問題はそこじゃねぇ。今ので一気に距離を稼がれた! オレが転がったのと同時に後ろに下がられ、更に追い討ちとばかりにダウン判定での仕切り直し。これで流れは完璧に向こうのもんだ。
「……一応訊きますけど、さっきの手品のタネ明かしってして貰えます?」
雑談を振って時間を稼げ。その間に頭を回せ。このシエラ選手が圧倒的に有利な状況を、なんとか打破する術を考えろ!
「それを効くということは、さっきの手はまだ有効ということですね」
「……抜け目ないっすねぇ」
ッチ。時間稼ぎついでに情報を集めようとしたのが裏目に出たか。逆に嫌なことに気付かれた。
「ふふっ。冗談ですよ。公式戦なら兎も角、これは練習試合です。勝敗は勿論重要ですが、お互いに高め合うこともまた大事な目的。ですのでそんな険しい表情を浮かべないでください?」
「……こりゃ失礼を」
まるでオレの反応を楽しむかのように、シエラ選手はクスクスと笑いを零す。……不快ではないが、なんともまあ良い性格をしてんなぁこの人。
ただ朗報ではある。今の口ぶりからすると、いちおうタネ明かしをしてくれるようだ。時間稼ぎと情報収集ができるのなら万々歳だろう。……これで『やっぱり止めた』なんて言われたら、『良い性格』から『性格悪い』に評価を変える必要があるがな。
「さっきのは手品という程のものではありませんよ。ただ最初の2発が通常弾で、最後の1発だけホーミング弾にしていただけです。躱したというのは思い込みでしたね」
「ッ、そういうことか!」
つまり全てが避けられる前提の迎撃! 最初の2発は気を弛めさせる為のブラフで、本命は追尾する3発目による死角からの一撃! クリーンヒットすれば良し、そうでなくても死角からの攻撃は対処が難しい。防御に回るか回避に移るかのほぼ二択。その隙に距離を取るという二段構えの策。
「あの一瞬でそこまで……!」
「いえいえ。一瞬という訳じゃありませんよ。私のスタイルは近付かれたら終わりですからね。常日頃から、接近されそうになった際の対処法を考えているんです。それが功を奏しただけですよ」
「謙遜ですねぇ!」
何が功を奏しただ。考えただけと実効できるのとじゃ天と地ほどの差があるだろうに!
「んー、本当に謙遜じゃありませんよ? さっきのは運が良かっただけです。予想以上にレイニー選手の動きが速くて、内心間に合うかヒヤヒヤでした」
「……そりゃ朗報ですわ」
ガッツリ合わせられてた気がするんだがなぁ。いや、口ぶりからして嫌味って訳じゃねぇだろうけど。
単純に、シエラ選手にとってはあの程度の予想外は『予想内』なんだろう。不足の事態が起きることは当然で、その上で的確に対応する。それができるだけの実力と経験がある。
これで確信した。この試合、本当の意味でシエラ選手の予想を超えなきゃ話にならないと。生半な奇策や奥の手では普通に対応される。シエラ選手の間合いに強制的に囚われ続ける。
だが、そんなことができる手札はオレにはない。いや正確に言えば、練習試合で切れるような手札がない。この状況は事実上の詰み。それを打開するとなれば、オレの切り札の全てを切る必要がある。公式戦なら兎も角、練習試合でそんな情報を晒す訳にはいかない。
「……さて。タネ明かしもすんだことですし、再開といきましょうか」
「っ」
ったく。最悪だ。まだにこっちは作戦を練っているってのに!
しかし、そんなことはお構い無しとばかりにシエラ選手が構えを取る。……ああ、明らかに本気だ。朗らかに雑談を振ってきたのとはうって変わり、冷徹な狩人のような鋭い気配が漂ってくる。
はっ。ってことはオレは狩りの獲物か。自分勝手な想像だが、銃口まで鮮明にイメージできたぞ。
「ショット!」
そんなこと考えてたら銃口が火を吹きやがった! 試合中に考えごとしてる方が悪いとは言え、マジで容赦無しだなオイ!
「っ、クッソ!」
そうして始まる地獄の連続射撃。こちらの行動を的確に潰してくる牽制の射撃と、意識の隙間を突いてくる恐ろしく鋭い本命の射撃。この2種類の弾が織り交ざった致命の弾幕は、確実にオレの勝率を削っていく。
「こりゃ、堪らん、なぁ!」
最早防戦一方だ。リングを走り回ることでなんとかクリーンヒットは避けているが、それでもギリギリ。動き回る体力が尽きれば蜂の巣だろう。
「っ、【ライトニングボルト】!」
苦し紛れにオレの数少ない遠距離攻撃、雷の魔力弾をシエラ選手に放つがーー
「甘いです」
1発の魔法弾で見事に相殺された。
「射撃、魔法はそこ、まで得意、じゃないとは言え! 仮にも、属性弾を、無属性弾1発で落とすか!」
単純に魔力を弾にする無属性弾と、通常魔力の他に別エネルギーの要素を備える属性弾では、後者の方が威力が高い筈なんだがな!
やはり射撃魔法はとんでもない練度。連射性やコントロールだけでなく、相応の威力を備えているようだ。本命は勿論、牽制の方も後2・3発くらえば普段の動きはもう出来ないと見て良い。
「これが、シエラ選手の本気か……!」
先程までの1連の攻防で、シエラ選手の実力の高さは実感したつもりだった。しかし当然ながら、先程のアレはシエラ選手にとって相手を近付けさせない為の迎撃であり、防御手段でしかない。つまりアレは余技も余技で、この虚実入り交じった計画的な射撃の嵐こそがシエラ選手の本領!
走り回っていても身体を掠めるほど正確な射撃。移動先に置かれている魔法弾。まるで誘導するかのように張られる弾幕。
 
「そこです」
「ガハッ……!?」
そして、あらゆる選択肢が潰された上で放たれる本命の一撃。
ついに貰ったっ。クリーンヒット! 土手っ腹に衝撃。かなりの威力。だが耐えられない威力じゃ
「いやちげ、しまっーー」
まだ戦えると考えた瞬間、気付いてしまった。問題はそこじゃねぇ。今のは致命的だ。ダメージじゃねえ。やべぇのは、
「脚、止まってますよ?」
衝撃でよろめいたことだ。
「ッッ!!」
気付いた瞬間には遅かった。反射的に行った神経系の活性化。それによって加速した動体視力、思考能力がその光景を認識した。
ーー射線の檻。
向かってくる複数の牽制用魔法弾。その全てが、オレの左右上限を通過する軌道を描いていた。オレの動きが止まったと同時に、弾幕の性質が変化したのだ。選択肢を潰し、次の一手を誘導する策の性質から。逃げ道を封じ、その場に囚える檻の性質へと。
「これはーー」
もはや移動による回避は不可能。1度形成された射線の檻は、逃げようとしてもどれか1発は確実にオレに直撃する軌道を描いている。弾幕の厚さ的に威力は低いだろうが、まず間違いなく体勢を崩す程度の威力はある。そして体勢を崩してしまえば、後は坂道を転がる岩の如くだ。
そしてシエラ選手の手元には、これまでとは違い眩い輝きを放つ魔法弾が。明らかに込められた魔力が違う。間違いなく勝負を決めにきてる。
「ーー詰みか」
逃げ場はない。そしてシエラ選手の渾身の一撃を防ぐ手立てもない。全力で防御に徹すればアレは耐えれるだろうが、もうその後はない。
結末は見えた。この試合はオレの敗北だ。物の見事ににシエラ選手の術中に嵌り、完璧な形で封殺された。
「なら……っ!!」
勝敗は決まった。もうひっくり返すことはできないだろう。だからやるべきことは1つ。リングに倒れるその時まで、足掻き続けること。
「【エンチャントライトニング】……!!」
この試合では終始良いとこ無しだ。後輩たちは皆熱い試合を繰り広げたってのに、オレだけが無様な姿を見せちまった。その上で勝敗が見えたから諦めるってのは、流石にカッコが悪過ぎる。
これは意地だ。優秀な後輩たちに見せつける、先輩としての意地。そしてラクシア側に見せつける、第一地区中学魔導戦技部としての意地。
さあ、今できる全力を振り絞れ。身体能力、神経系を強化! マグネにも上限一杯の魔法を纏わせ、雷光の刃に変えろ!
「【シューティングスター】!!!」
それと同時に、シエラ選手の一撃が放たれる。やはり決戦魔法か。弾速は今までのどの魔法弾よりも速く、感じる圧力はこれまでにない程。
さあ、見ておけよ後輩ども。
「【ライトニングストライク】!!!」
これがお前たちの先輩だ……!!!
視点変化はこれで一旦終了ですね。試合をメインにしている関係上、マネージャーの存在が薄くなってしまうのが難点ですが。
あ、あと二・三話でラクシア編は終わります。
 




