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第三話 出会いは突然に(物理)

ヒロイン登場回です

一通りの準備を終え、ユメ姉さんと別れた僕は、特に何事も無く学校に着く、


「きゃぁぁあっ!?」

「危ない! ーーって、危ないですっ!?」


事は出来なかった。


「……へ?」


何事かと振り返ろうとしたら、目の前は何故か真っ黒。

そして次の瞬間、視界は黒色から肌色に。それに続いてドンという衝撃が身体を襲った。


「うわっ…ぐふ!?」


結果、僕は後ろにひっくり返り、追い討ちとして何かが腹の上に降ってきた。

……何が起きたの?


「……っくりした、何事……?」


状況を把握しようと目を開けると、僕の上には女の子と女の子が乗っていた。

もう一度言おう。女の子と女の子が乗っていた。


「いや待って本当に何起きたの?」


状況的には何となく分かる。多分片方の女の子が突っ込んできて、その着地点に偶然僕がいて潰されたんだろう。ただ普通に考えて、女の子は突っ込んでこない。後、もう一人の女の子が謎過ぎる。マジで分からない。分かる事は、片方が3歳ぐらい幼児だという事と、もう片方の女の子が来ている服が僕と同じ第一地区中学校の制服だと言う事だ。後制服のスカートの下にスパッツを履いているって事か。

……ちょっと混乱してるかもしれない。落ち着こう。


「うわぁぁ!」

「あ、あのっ! 大丈夫!?」


客観的に見て、エロガキ方面に思考が向きかけていた事に自己嫌悪していたら、女の子が慌てた様子で僕の顔を覗き込んできた。


「……頭打った。キモチワルイ……」

「ふわわっ!? き、救急車!?」

「うわぁぁぁん!!!」


タックルの仕返し的な意味でそんな事を呟いてみたら、女の子は結構本気で慌てていた。多分、頭打って吐き気がするという事が、洒落にならない事態である事を理解しているんだろう。この時点で、制服の子はある程度の知識があるという事が分かった。

さて、本当に救急車を呼ばれても困るので、上に乗っている二人を退かして、立ち上がる。


「急に体勢を変えたら危ないです! 大人しく横になってくださいっ! 今救急車呼びますから!」

「いや気持ち悪いってのは冗談。ピンピンしてるから大丈夫」

「でも私凄い勢いでぶつかっちゃって! 大怪我してるかもっ!」

「あああっっ!」


うん、心配してくれるのは良いんだけど、その前に状況を説明してくれないかな? 後この幼女のギャン泣き止めて?

そう女の子に向けて言おうとしたら、切羽詰まった様子の女の人がこっち向かって走ってきた。


「ラン!」


今度は何?


「うわぁぁん、まあまーっ!!」


ギャン泣き幼女のお母さんですか。そうですか。


「娘を助けて頂いて、本当にありがとうございます!」


そう言って、ギャン泣き幼女のお母さんは、女の子に向かって頭を下げた。

……そろそろ本気で説明が欲しいんだけど。




「ーーという訳なんです」


さて、何がどうしてあんな事になったのか、制服の女の子、シズク・ストライムちゃんに説明してもらいました。

どうやらランちゃん(ギャン泣き幼女)が、お母さんの手を振り切って車道に突撃を掛け、車に轢かれそうになったらしい。それを目にしたシズクちゃんが、咄嗟に身体強化の魔法を掛けて走り出し、ランちゃんを無事救出したそうだ。……で、ここまでは良かったんだけど、ここから僕が巻きこまれた。

緊急事態だった為、シズクちゃんは身体強化の魔法を掛けた全力ダッシュ。なんとかランちゃんを抱える事は出来たが、咄嗟だった為にバランスを崩した状態で車道を飛び越え、偶然その場にいた僕目掛けタックルをぶちかましてしまったのだと言う。


「……なんというか、タイミングの悪い」


よくもまあ、そんな不運が重なったもんだよ。


「本っ当にごめんなさい!」


いやうん、完全に事故だからそれは良いんだけどさ。編入初日からこれって幸先悪過ぎだよね。しかもこのままじゃ遅刻する。


「まあ怪我人ゼロなのは、不幸中の幸いかなー」


一番重症であろう僕ですら、少しのかすり傷と制服が汚れたぐらいだし。最悪の場合は死者が出ていた可能性もあった訳で、そう考えると十分か。とばっちり喰らった僕が一番重症ってのは微妙に釈然としないけど。


「……はぁ……まあ、いいや。じゃ、僕急ぐんで」


グチグチ言っても仕方ないし、今はそれどころじゃない。何やかんやで少し早めに家を出てたのに、指定された時間はもうすぐだ。遅刻なんてしたら、ユメ姉さんに何言われるか。怒られるならまだいいけど、心配されたらかなりクル。

そんな訳で、保安隊に捕まらない程度で魔力を活性化。身体を強化して、走り出す。


「あっ、ちょっと待ってください! 急に動くと身体が! それにーー」


シズクちゃんが何か叫んでいたが、既に結構な距離が開いていたので、全部聞き取る事は出来なかった。






「それじゃあ、呼んだら教室に入ってね」

「はーい」


先生にそう言われて、僕は教室の外で待つことになった。

あ、無事学校には到着しました。遅刻ギリギリで小言を言われるかと思ったけど、転びましたって言ったら『気を付けなさい』で済んだ。制服が汚れていたお陰かな?

まあ何にせよ、これでユメ姉さんを心配させる事はないだろう。タックル? あれぐらいなら問題無いよ。嘱託魔導師として活動してた時は、片腕が千切れかけたりしたし、それに比べればね。いや本当に、あの時は痛くて死ぬかと思ったし。


「入ってきてー」


っと、そんな事を考えてるうちに呼ばれたみたいだ。

言われた通り教室に入ると、教室内の視線が全て僕に集中する。……あ、さっきの子だ。


「あーっ!」


向こうも僕に気付いたみたいで、驚いた様子で立ち上がった。取り敢えず手を振っておこうかな?


「ストライムさん? ホームルーム中ですよ?」

「はっ!? す、すみません!」


大声を上げて立ち上がった為、先生に注意されるシズクちゃん。やらかした上にクラスメートからくすくす笑われてるせいか、シズクちゃんは真っ赤になって席についた。


「さて、それでは皆さんに新しいクラスメートを紹介します。それでは水無月君、自己紹介をお願いします」


そう言って、先生は僕にバトンをパスしてきた。


「水無月ナナです。本来なら皆さんと同じで入学式から出席する筈でしたが、家庭の事情で今日から出席する事になりました。よろしくお願いします」


まあ、実際のところ入学の時期がズレた理由は家庭の事情ではなく、機動隊の方で活動してたからなんだけども。何で災害救助の応援からテロリストの拠点にカチコミ掛ける事になったんだろ……。お陰で入学式から1ヶ月以上遅れて入学する事になったからね。


「えーと、水無月君?」


先日まで渦中にいた修羅場を遠い目をしながら思い出していたら、先生が困ったような顔で僕を見ていた。


「どうしました?」

「簡潔で丁寧な自己紹介なのはいいんだけど、ちょっと簡潔過ぎかなーって、先生は思うのよ。もっとこう、ない?」


どうやらざっくり纏め過ぎたみたいだ。んー、確かにちょっと味気ないかな?

でもなぁ、他に僕が言えるような事ってあんま無いんだよねぇ。嘱託魔導師って事は出来るだけ隠す方針だし。というか犯罪関連の事って態々話すことじゃない。かと言ってストリートチルドレン時代の事を話しても、似たような理由で子供には刺激が強すぎるというか。いや僕も子供だけど。兎も角困った。

うーんと首を捻っていると、見かねた先生がアドバイスをしてくれた。


「何か趣味とかないの? 後はやりたい部活とか」


あー、そんなのでいいんだ。何か複雑に考え過ぎてて色々と迷走してた。普通の中学生って何なのか無駄に考えちゃった。


「えっと、趣味は美味しいものを食べる事です。部活は運動系に入ろうかなと思ってます」


因みに部活はユメ姉さんとの約束だ。学生生活を送るなら何でもいいから部活に入っておこうね、なんて言われたので入る事は確定している。……本音を言えば機動隊の方で訓練とかしたいんだけどね。

ただそれは許されなかったので、ならば合法的に身体を鍛える事が出来る運動系の部活に入ろうと思ったのだ。……何で部活云々で合法的なんて言葉が出てきてんだろ?

まあそれはそれとして、この追加情報は合格ラインだったようで、先生は満足そうに頷いていた。


「それでは水無月君は、ストライムさんの隣に座ってください」


あらま。シズクちゃんの隣が空席みたいだったから、もしかしたらと思ってたけど、どうやら本当にお隣さんになるみたいだ。妙に縁があるみたい。

シズクちゃんも、大きな瞳を真ん丸にして驚いていた。


「んーと、さっきぶり?」

「えっと、はい。み、水無月君? た、体調とか大丈夫ですか……?」


シズクちゃんは戸惑いながらも、僕の調子を聞いてくる。まだタックルの事を気にしてるみたいだ。


「問題無いよ。見た目はちっこいけど、咄嗟に受け身を取れる程度には鍛えてるから」


因みに僕の身長は140ギリギリです。多分シズクちゃんの方が少し大きい。悲しい事にあんま成長しないんだよね……。

まあ? その代わり体格の割に筋肉質だし、腹筋とか割れてるし。子供っぽい体型に割には十分いい身体してる筈だし。


「……そうですか。なら良かったです」

「そっちはあの後どうなったの?」


遅刻しそうだったからトンズラしたけど、あの親子とかどうなったのかが気になります。


「えっと、簡単にお礼だけ受けて別れました。私も遅刻になっちゃいそうでしたから」


ああ、そりゃそうか。僕が遅刻しそうになってんだから、シズクちゃんも同じく遅刻ギリギリになるか。この様子だと間に合ったようだけど。


「でもびっくりしました。同じ学校だなとは思ってましたけど、まさか同じクラスで隣の席なんて」

「それは確かにね。どうも妙な縁があるみたい」

「そうですね。でしたら、これからよろしくお願いします」

「うん、こちらこそ」


「起立」


そんな風に話していたら、いつの間にかホームルームが終わりそうになっていた。

あー、もしかしたら何か聞き逃したかも。まあ後で訊けばいいか。

兎も角、これで今日から新しい生活が始まる訳だ。ユメ姉さんに楽しい報告が出来るよう、頑張るぞ。

……まずはこの後来るであろう質問攻めを捌く事からかなぁ。

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