第二十八話 吹き荒れる颶風、跳ねる少年
最新話書けたので投稿。つまり残基プラマイゼロ。尚今回は短いです。
「っ、ちょこまか跳ね回りおって! スーパーボールかお主は!?」
「なら少しぐらいクリーンヒットしても良いと思うんですが!」
「それとこれとは話が別じゃ!」
軽口を叩き合いながらも、僕とラピスさんの攻防は続く。
僕が空中からの回し蹴りを放てば、ラピスさんは鉄扇を突き出し擦り上げるように受け流す。そして僕の体勢が泳いだ瞬間、【グフウ】を振るい暴風をーー。
「させっ、ませんっ!」
「ぬっ!?」
放とうとした所で、腕の軌道上に障壁の魔法を展開し、攻撃の発動そのものを潰す。
これには流石のラピスさんも面食らったらしく、一瞬だけ動きが鈍くなった。
出鼻をくじかれ不自然となった体勢、予想外の一手による思考の空白。
「これならぁ!」
「アグっ!?」
複数の要因が重なり、やっと僕の一撃がマトモにラピスさんの胴体に突き刺さる。
とは言え、僕は僕で体勢が悪かった。無理矢理軌道修正して放った一撃であった為に、十分な力が乗っておらず、ダメージは炸裂魔法の衝撃のみ。しかも驚異的な反射神経で後ろに飛ばれたので、僅かに距離が開いてしまった。
つまり、ここは無理にでも畳み掛けなきゃ不味い!
「障壁はぁ、足場ぁ!」
体勢を立て直す時間も惜しいと、炸裂魔法の反動で無理矢理身体を動かし、更に障壁魔法で空中に足場を作り出す。
空中において無理矢理踏み込みの体勢を取る僕は、一体どんな姿になっているのか。さぞ愉快な事になっているのだろうなと一瞬だけ苦笑し、そのまま突撃。
そうして、たたらを踏むラピスさんが体勢を立て直すよりも早く、僕は再びその懐へと潜り込んだ。
「はぁぁぁぁ!!!」
そして、無防備な胴体に渾身の一撃を!
「っ、なんのぉ!!」
「これも防ぐの!?」
しかし、不安定な姿勢であっても尚、ラピスさんは僕の一撃をギリギリ鉄扇で逸らしてみせた。これには流石にビックリだ。
そして状況は、超至近距離による格闘戦へと移行する。
だが、格闘戦においてもラピスさんは僕より上手。マトモに打ち合っても勝ち目が無いのは、今までの攻防で明らか。僕が唯一有利なのは、未だにラピスさんの体勢が戻りきっていない事のみ。
ならば、この場で必要になるのは威力よりも手数だ。最速でラッシュを打ち込み続け、ブラストアーツによるノックバックで体勢を立て直させない事が最善手!
「ウララァァ!」
「っ、ヌグッ、嫌な手を打ってくる!」
即座に僕の狙い気付くあたり、やはりラピスさんは流石だ。だが、だからと言って対応なんかさせてあげない。
ラピスさんの姿勢を整えようとする動きを、ブラストアーツのノックバックと障壁魔法を駆使して抑え込む!
「ぐっ、また障壁か!? こんなの曲芸の域じゃぞ!!」
「障壁魔法に秀でた師匠がいるもので!」
僕の障壁魔法は、ユメ姉さんと並ぶリアルレジェンドであり、障壁魔法のスペシャリストたるロア姉さん直伝だ。
千を越す障壁を任意の座標に一瞬で展開してみせるロア姉さんには遠く及ばないが、それでもこの程度の範囲なら格闘戦と織り交ぜて展開するぐらいなら出来る!
「チィッ、これは流石に鬱陶しいのう……!!」
障壁魔法によって何度も動きを潰され、堪らずラピスさんが舌打ちする。
うん、そうなんだよ。この妨害は思った以上に効くんだ。咄嗟に展開するから強度はめっちゃ低いし、一度に展開出来る数も三枚程度だけど、それでも障壁を手足の軌道上に置かれるだけで、行動が一気に制限されるんだ。これがロア姉さんクラスになってくると、一瞬で全身を固定されて身動き取れなくされるし。
まあ、僕にそこまでの技術は無いけどね。精々、相手の初動を潰すのが精一杯だ。それでも、こと格闘戦においては馬鹿みたいに効果的だ!
「これで押し切る……!!」
「っ、調子に乗るでない!!」
「にゅあ!?」
上手くいけばこのまま封殺出来るかと期待したが、やはり現実は甘くなかった。
僕のラッシュを防ぎながら、ラピスさんが手首だけでグフウを振るう。それだけなら障壁で妨害する事が出来たが、ラピスさんは地面目掛けて【グフウ】を振るった為に、反応が遅れた。
足元に発生した暴風によって、僕は見事に上へと押し上げられてしまう。
「そこじゃぁ!!」
「っぐぅ!?」
そうして出来た隙をラピスさんが見逃す筈が無く、熱風を叩き込まれて僕は無様にリングを転がった。
「ダウン!」
そこでコイルさんのジャッジが入り、試合は一時中断。カウントが始まる前に立ち上がるが、当然試合は仕切り直し。
結局、振り出しに戻った状態で試合を再開する事に。
「……全く。お主、本当にとんでもないのぅ。これで初心者とか嘘じゃろ……」
お互いに構えながら睨み合っていると、ラピスさんがそんな事を呟いた。
何か色々と誤解されていそうだったので、思わず苦笑を浮かべてしまう。
「初心者ですよ。だからこうして苦戦してる訳で」
「善戦の間違いじゃろう?」
「あんだけ攻撃防がれてちゃ、善戦なんて言えませんって」
これは謙遜ではなく本心である。
これまでの展開では、惜しい所までもっていっても、結局最後にはラピスさんに防がれている。つまり僕とラピスさんの間には、小細工では埋めきれない実力差があるという事だ。大量の初見殺しを駆使しても攻めきれないのだから、善戦とは口が裂けても言えないだろう。
「ブラストアーツも駄目、障壁妨害も駄目となると……どうしたものかなぁ……」
ぶっちゃけ手詰まり。僕のスタイルだと、何をするにも距離を詰めなきゃ始まらないんだけど、今はもうそれすら難しい訳で。
最初はラピスさんの好意。二回目はブラストアーツを駆使したアクロバットな移動で距離を詰めた。三回目は、かなりアレな騙し討ち。最初は例外だから除外しても、後はどちらも初見殺しの方法で距離を詰めたに過ぎない。次は通用しないだろうし、警戒もされてるから他の初見殺しの類も効かないだろう。いや、もうタネ無いけど。かと言って、正攻法はまず無理だし……。
「来ないのか? ならば此方からゆくぞ!!」
距離を詰める事は難しく、それでいて此処はラピスさんの間合い。
「……っ、これは詰んだかな?」
襲い来る熱風や冷風、鎌鼬等を炸裂魔法で防ぎながら、この試合の結末を見据える。
一応、攻撃の方はまだ防ぐ事が出来るが、こっちに攻撃手段が無い以上、ジリ貧になるのは明白だ。試合中防ぎきったとしても、判定負けになるだろうし。
ならダメージ覚悟で突っ込むか? いや、ラピスさんの腕なら普通に迎撃されて終わりか。決死の突撃をするには、あと一手足りない。何か初見殺しになるようなタネないかなぁ……。
「うーむ……」
「試合中に考え事とは余裕じゃのう!」
「のわっ!?」
打開策を考えていたら、何かラピスさんが竜巻みたいな攻撃をぶっぱなしてきた。
あっぶな!? 危うく当たる事所だったよ!?
やっぱりそう甘くないか。思考に意識を割けばKOされかねず、かと言って考えるのを止めればジリ貧だ。
「どんどん行くぞ!」
「っ、ぐぬぬ!」
んー、困った!
「そこまで!」
結局、試合は僕に不利な状態で膠着し、第一ラウンドは終了した。
主人公視点はまだまだ続きます。だってナナって主人公だもの!(あまり戦績良くないけど)
後前回の個人的な質問に対して、ハイファンタジーが1票入りました。他にもドシドシお願いします。




