第二十六話 少女の拳と人形
仕事が忙しくてまたも書ききれなかった……。という訳で残機マイナス1。
今回もまた別視点です。
セフィの試合が一瞬で終わった。
「……うわぁ……」
私の横で試合を眺めていたナナが、唖然とした感じで呻いている。
セフィの容赦の無い試合運びに、ドン引きしたらしい。
「……あれは強いじゃなくて、エグいって言うんじゃ……」
「あはは……」
ナナのあんまりと言えばあんまりで、それでも妥当な感想に、思わず苦笑してしまった。
セフィがやったのは、とても簡単な事だ。大音量を放つ魔法を至近距離で浴びせかけ、リーナ選手が怯んだ隙に切りつけただけ。
ただ実際はナナの言う通りエグい。魔法は単純な音であるためシールド系の魔法じゃ防ぎ難く、まともに喰らえばほぼ確定で怯むし、酷い場合は平衡感覚が潰されるか気絶する。そこに都市本戦でも通用するレベルの剣術が加わるのだから、やられた方はたまったもんじゃないと思う。
まあ、大音量での妨害なんて初見殺しだし、情報が広まれば簡単に防がれると思うけど。……逆に言うと、初見だと致命的なレベルで刺さるって事なんだけどね。
「それにしても、あれがセフィの得意魔法?」
「うん。【音魔法】が得意なんだ。基本的に、音魔法で相手を撹乱しながら、近接戦を仕掛けるのがセフィのスタイル」
「音魔法……。またマイナーな魔法を使うねぇ」
ナナが関心とも呆れともつかない様子で呟いた。
ナナの言う通り、音魔法の使い手はかなり珍しい。ましてや戦闘で使用するとなると、珍しいを通り越して絶滅危惧種だと思う。
音なんて複雑なものを扱うためか、魔法としての難易度自体が無駄に高いし、余程の大音量じゃなければ戦闘中は無視される。しかもちゃんと音を操る事が出来なければ、自分も巻き添えくらうし。根本的な事を言っちゃうと、音魔法は芸術とかそっち系の魔法であって、戦闘用の魔法じゃないんだよね。
「ただセフィの場合、魔力性質が振動だからか、音を操るのが尋常じゃないレベルで巧いの。あんな風に大きな音で怯ませたりもするし、逆に超音波でこっそり相手の平衡感覚を奪ったりもする。他にも武器の風切り音とかを起こして相手を騙したり、逆位相の音で任意の音を消したりとかね」
「……なにその嫌がらせ特化……」
「それだけじゃないよ。近接戦では刃を振動させて高周波ブレードにしたりとか、打撃に交えて内部に浸透させたりもしてくるし」
「……自分も強化する訳ね……」
ナナのセフィに対する印象が、ゲームとかのボスキャラみたいになっていってる気がするけど、そこはスルーしておいた。実際、幼地味兼ライバルの私も、セフィのスタイルは碌でもないと常々思ってるし。
揃ってため息をついていると、セフィが戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「おかえり。勝つとは思ってたけど、かなり容赦無かったね?」
「色々と侮られてたので、サクッと認識の矯正を」
ちょっと気になったので瞬殺した理由を聞いたら、また反応に困る答えが返ってきた。
試合が始まる前に少し話してたのは分かるけど、一体どんな会話をしてたんだろ……。一瞬だけ不機嫌になってたし、何か不快になる事を言われたのは確かだろうけどさ。
「ま、詳しくは試合がひと段落ついてからでしょう。リーナ選手もそこまで捻くれてないでしょうし、多分自分から謝りにきますよ」
そう言って、セフィは話を打ち切ってしまう。
これには皆困り顔だ。練習試合としてはあんまりな試合内容で皆で頭を抱えていたのに、当の本人が説明する気が無いんだから当然だけど。
まあ、何か理由があったのは確実なので、セフィへのお説教は保留という事になった。それぐらいには、セフィは信頼されている。
「ところでナナ、私は貴方の期待を超えましたか?」
「斜め上はぶっちぎったかなぁ……」
サラッと雑談を始めた2人に、つい苦笑が浮かんでしまった。
本当にセフィはマイペースだ。それに付き合うナナもナナだけど。
結局、セフィのやらかしはマイペースな2人のせいで有耶無耶になってしまった。
「はぁ……じゃあ次はシズクよ。少ししたら呼ばれるだろうから、最後に簡単な柔軟ぐらいはやっておきなさい」
「分かりました」
指示された通り身体を解していると、準備が完了したらしく名前を呼ばれる。
「アトラクナカ」
デバイスを完全起動させ、全ての装備を着用する。
身体にフィットするタイプの薄緑色のバトルスーツと、その上からジャケットを身にまとい、両手には特殊な形状のバンテージ。両足にはバンテージと同色の脚甲。
「シズクちゃんもカッコ可愛いね」
「ふふっ。ありがと!」
完全装備、ある意味での勝負服をナナが褒めてくれた。それが凄い嬉しい。
それだけで気分が舞い上がって、どんどん力が溢れてくる。これなら負ける気がしない!
「絶対勝つよ!」
「うん。頑張って」
ナナを筆頭に、皆が私にエールをくれる。
セフィのお陰で相手の油断は消えちゃったけど、それでも関係ないって言い切れるぐらい、今の私には力が溢れていた。
リングの上に立っても、緊張なんかしなかった。セフィと一緒にした瞑想の効果と、皆の応援のお陰で、今の私は絶好調だ。
……むしろ、対戦相手のピグマ選手の方がガチガチに固まっている。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
取り敢えず一礼してみたけど、見事に声が震えていた。……大丈夫かなぁ。
ちょっと不安になった私は、コイルさんが合図のためにリングを離れたタイミングで、ピグマ選手に話しかけてみた。
「えっと、お互い頑張りましょうね?」
「ひゃ、ひゃい! こちらこそ!」
……駄目かもしれない。
噛み噛みで答えられたせいで、余計に不安が増してしまった。
いや、考え直そう。多分、これがピグマ選手の地なんだ。オレンジの髪にタレ気味な瞳。私よりは大きいけど、それでも小柄に入る体躯。うん、パッと見でも気弱そうな印象だし、その可能性が高い。つまりガチガチなのは平時通りであって、実力とは別問題という事だ。……ちょっと無理がある気もするけど、そうであって欲しいなぁ。
「それでは、試合開始!」
不安が解消されないまま、試合が始まってしまった。
んー、カチコチな相手に仕掛けるのは気が引けるけど、これも試合だし割り切ろう。
そういう訳で、まずは突撃!
「はっ!」
「わっ、わっ!?」
まずは小手試しとジャブを2発程打ってみたけど、ギリギリのところで躱された。
でもやはり動きが固い。ならこのまま畳み掛ける!
「わっ、わっ、わっ!?」
慌てふためきながらも、ピグマ選手が私の拳を避けていく。
ただ、未だに緊張は解けていないらしく、避けるだけで精一杯って感じだ。
出来ればこのまま押し切りたいけど……。
「……っ、避けるの上手ですね!」
「わっ、わっ!?」
もう既に結構な数の拳を打っているのに、ピグマはその全てをギリギリのところで避けていた。動きは始めよりはマシになってきているが、まだ少し固い。でもそれ以上に避けるのが巧い。
少しでも掠れば、そこから魔力接着で捕えられるのにっ。
(避けるのは巧いけど、避けるのに必死みたいで攻撃は飛んでこない。……回避特化のスタイル?)
拳を繰り出しながらも、頭の中で情報を整理する。
なんというか、妙な違和感を感じる。
(身のこなし的に、近接戦をやるタイプじゃない筈。……遠距離タイプかな? 立ち回りからみるに、回避だけを重点的に鍛えた感じだし)
ピグマ選手が遠距離タイプだった時を考え、距離を取られないように詰めていく。
「っ、【バースト】!」
「ちっ!」
流石に避けきれなくなってきたのか、ピグマ選手が自身を中心とした炸裂魔法を放った。
一応、反撃も警戒していたのでしっかり防御出来たけど、お陰で距離は取られてしまう。
「はぁ、はぁ、っ」
「……自爆覚悟ですか」
予想はしてたけど、さっきの炸裂魔法は自分も巻き込んでのものだったみたい。
ナナみたいな無茶するなぁと呆れながらも、頭の回転は止めない。
ピグマ選手の炸裂魔法は、地味に最適解だ。防御に回っていたら、魔力拘束を食らってた訳だし。私の魔力性質を何処かで知っていたのか、それとも幾らかのダメージを追ってでも距離を稼ぎたかったのか。どっちかによってこの後の対応は変えなければ。
「ふぅっ、いきます!」
ピグマ選手が地面に手を着ける。
これは恐らく後者! なら何かされる前に叩く!
「【シュート】!」
「あぐっ!?」
先程の炸裂魔法のようなタイプの魔法を警戒し、近接戦ではなく射撃魔法でピグマ選手の頭を撃ち抜く。
これで妨害出来れば……!
「っ、【クリエイション】!」
しかし、ピグマ選手は意地で魔法を完全させた。
ピグマ選手を中心に、地面が湧き上がる。それは彼女の包み込み、3m近いの土塊の巨人となった!
「……うわぁ!」
目の前の光景につい歓声が漏れる。
どうもピグマ選手、セフィの同類だったみたい。戦闘向きではない魔法で戦うキワモノ魔導師。セフィの場合は音魔法だけど、ピグマ選手の場合は。
「【ゴーレムマジック】……!」
土や岩などを素体とし、自在に動く人形を創りだす魔法。音魔法以上に難易度が高く、マトモに使える人間が滅多にいない、半ば固有魔法のように扱われている魔法。
ただ、凄い魔法であるのは確かだけど、戦闘で使えるかと言われるとそうでもない。分類的には補助魔法だし。
岩石製の自在に動く人形、と言えば聞こえがいいけど、ゴーレムの自在度は術者の習熟度によって異なるし、創り出すのにも時間が掛かる。そして1番致命的なのが、余程適正が高くない限り術者の方が無防備になる事だ。ぶっちゃけていうと、戦闘するなら生身を魔法で強化した方が色々と便利なんだよね。
勿論、ゴーレムマジックにも利点はある。単純に人手を増やせるし、ある程度自立行動させた上で単純作業に従事させれば、作業効率はうんと上がる。人形だからスタミナとかも気にしなくいいしね。
総括すると、ゴーレムマジックは後方支援系の補助魔法で、戦闘には今ひとつ向かない魔法って事だ。
「……向かない筈なんだけどなぁ」
その筈なんだけど、ピグマ選手はどうも例外らしい。
『これから反撃タイムです!』
そんな掛け声と共に、ゴーレムが動きだす。
どういう原理か、取り込まれたピグマ選手の声が聞こえるみたい。あと、声から硬さが抜けている。どうやら物理的にも精神的にも、これからが本番みたいだ。
そんな風に関心していると、ゴーレムが拳を突き出してきた。
「っと!」
幸いな事に、ゴーレムの攻撃は大きさもあって動きはそこまで速くない。
ズガァァァン!
けど、3m近い土塊だけあって、一撃の威力は折り紙付きみたい。本当に動きが速くなくて助かったかな?
「……んー、操作性は中々みたい? あは、凄い凄い」
改めて考察してみると、ピグマ選手のスタイルはゴーレムマジックの弱点を大分克服しているみたい。
制作時間は、回避に特化した立ち回りで稼がれてしまった。操作性も、ゴーレムを鎧のように見に纏っているせいか良好みたい。術者が弱点というのも、ゴーレムを身に纏う事である程度は改善されている。
こうなってくると、結構な強敵かもしれない! わくわくしてきた!
「はっ!」
『効きません!』
「だよね!」
取り敢えず何発か殴ってみたけど、案の定ゴーレムの鎧で無効化されてしまう。
お返しとばかりにパンチが飛んできたけど、これはバックステップで回。
『パージです!』
避したと思ったら、拳が飛んできた!?
「うひゃい!?」
ギリギリで避けたけど、今のは危なかった! だって拳が飛ぶとか普通思わないじゃん!
「……まさかのロケットパンチ」
『これぞ正にロマン砲です!』
「だからって本当に砲撃するかな普通!?」
受ける側からすればタチの悪過ぎる冗談に、思わずツッコミを入れてしまった。
もしかしてピグマ選手、結構愉快な性格してるのでは? 冗談を言いながらも、サラッと地面から材料補給して拳を再生してるし。やっぱり良い性格してそうだ。
んー、それにしても本当にどうしようかな?私は手数で推すタイプだし、こういう相手は苦手なんだよねぇ。
(硬くても相手が生身だったら、動けなくしてからじっくり削るんだけど……)
修復可能なゴーレム相手に相手にそれやっても、あんまり意味ないし。さーて、どうしようかなぁ!
……おっと、危ない危ない。ついまた悪い癖が出てくるところだった。
皆の前じゃ兎も角、流石に他所様の前でスイッチ入るのまずい。くーるだうんくーるだうん。
よし、落ち着いた。気を取り直して。
(えーと、取り敢えず接着魔力の確認を。……でもパージがあるし、拘束は薄そうかな?)
既に何箇所か魔力の仕込みは済ませてるけど、ゴーレムだとパージなんて手がある以上、上手く機能しない可能性が高い。ピグマ選手本人には、躱されたせいで仕込みが出来てな……あ。
(そういえば仕込み1箇所できてたっけ。……なら、上手い事誘導すれば……いけるかな? んー、これが上手く決まればもしかしたらこのRでKO、失敗しても長期戦になるだけ……リスクは特になし)
これはもしかして、もしかするんじゃ?
咄嗟に思いついたバカみたいな作戦だけど、やってみる価値はあるのでは?
幾つか失敗パターンを想定してみたけど、自分に致命的な隙が出来るって訳でもないし。
(……うん。やろう)
内心で作戦を決行する事を決める。確率的には低いけど、勝てるかもしれないし。膠着するよりはずっと良い。なにより上手くハマれば絶対楽しい!
そうと決まれば即行動だ。接着魔力はあまり長い事もたないし、出来ればこのRでケリをつけたい。
「はぁぁぁっ!」
その為にまずは、ゴーレムの巨体に幾つもの拳を叩き込む!
『いくら攻撃しても、シズク選手の攻撃は効きませんよ!』
ダメージはなくても鬱陶しく思ったのか、ゴーレムはその巨体を回転させ、私の事を振り払いにかかる。
回転は小刻みにステップを踏みながら躱し、勢いが落ちたところで再びラッシュ。特に足回りは重点的に。
『足元を攻撃して、バランスでも崩すつもりですか!? そんな分かりやすい弱点、対処してないとでも!?』
侮らないでくださいと、ピグマ選手が吼えた。
ピグマ選手の言葉通り、ゴーレムの足回りは特に頑丈で、更にゴーレム自身が重心を下に置く形を取っているため、かなり安定している。
3m近い岩石の巨体で二足歩行を行うのだから、その辺りの対策は何重にも取られているのだろう。
でも、私の狙いはそれじゃないのだ。
「悪いですけど、そろそろ決めさせて貰います!」
右手にこれまで以上に魔力を集め、ゴーレム目掛け突進する。
狙うは反応しにくい背中側!
『後ろですか!』
私が決め技に入ると警戒していたピグマ選手は、見事に私の動きに反応し。
『え、きゃぁぁっ!!?』
ズゥゥゥンと大きな音を立てながら横転した。
「やった! 作戦通り!」
自分で描いた通りに状況が進み、思わずガッツポーズ。
取り敢えず、ここまでは作戦通り。
『何で!? 上手く動けない!?』
ゴーレムの操作がおぼつかなくなったせいで、ピグマ選手が混乱している。
何をやったのかネタばらしをすると、地面とゴーレム両方に私の接着魔力を打ち込んだのだ。足と地面がくっ付いた状態で勢いよく振り向いたから、バランスを崩してそのまま倒れちゃったって訳。
実はアトラクナカのフル装備には、バンテージだけでなく脚甲にも魔力性質をサポートする機能がついている。今回はこの機能を活用させて貰いました。
バンテージで相手の行動を制限し、脚甲でフィールドそのものを制限する。これこそが私とアトラクナカの真骨頂。ナナ風に名付けるなら、【拘束格闘術】ってところかな。
「さて、次はちゃんと魔法を使って」
流石に魔力性質だけじゃ、ゴーレムを完全に抑える事は出来ない。なので拘束魔法をしっかりと使い、ゴーレムの動きを封じる。
魔力上限があるから少し心許ないけど、私の魔力性質の関係上、拘束魔法は超得意魔法だ。多分、これで大丈夫な筈。
実際、ゴーレムが動こうともがいても、起きあがる事は出来なかった。
「さて、これで勝負は付いたんじゃないですか?」
『うぐぐっ』
ゴーレムは何度も起きあがろうとしたが、結局動く事は出来なかった。
マトモに起きあがる事すら出来ない以上、普通ならこれで勝敗はついたようなものだけど。
『っく。でもまだです! フルパージ!』
中身入りとはいえ、相手はゴーレム。予想通り、ゴーレム部分を炸裂させて、ピグマ選手は拘束からの脱出を試みた。
しかもご丁寧に、炸裂させたゴーレムのパーツを、砲弾として広範囲にばら撒きながらだ。
「……ぇ、にが……?」
お陰で作戦は成功。
擬似ダメージで脳震盪を起こしたピグマ選手が、ドサリと地面に倒れる。
「えーと、種明かしをするとですね」
朦朧とした状態で聞こえているかは分からないけど、一応私が何をやったのかの説明を行う。
まず私の魔力性質が接着だという事を説明。
「で、その接着魔力を、ゴーレムマジックを妨害する為に撃った射撃魔法を媒介に、ピグマ選手の頭部に付着させたんです。まあ、正確にはしていた、ですけど」
私の魔力性質が、魔力自体が影響を及ぼす最高レベルのものであるから出来た状況だ。
「それで試合しているうち、ピグマ選手がロケットパンチ撃ったじゃないですか。そこからパージのあれこれを予想したんです」
パージという特性から、攻撃以外にも緊急脱出とかにも使うかもと予想。更にロケットパンチが出来るなら、散弾の真似事も出来るのでは予想して。
「じゃあフルパージさせる状況に持ち込めば、頭の接着魔力を利用出来るんじゃないかって思ったんです」
接着魔力で頭部とゴーレムの一部をくっ付けて、その状態でパージさせたら面白い事になるんじゃないかなって、思っちゃった訳ですよ。
「……そ、その場の思い付き、じゃないです、か……」
「ええ。ぶっちゃけると、成功率は1割ないって思ってました」
思い付きだし、半分ネタみたいな作戦だったから、本当にその通りになるとは思わなかったんだ。
「……上手く、いかなかった、ら、どうするつもり、だったんで、す?」
「え? 普通に戦いながら、攻略法考えてましたけど? あの作戦実行したの、単に膠着するのが嫌だっただけですし」
何を当然な事を訊いてるんだろう? あんな大博打、一点掛けする訳ないじゃないですか。勝つように立ち回りを考えて、それを実践するだけですよ?
私としては至極当然な回答だったんだけど、ピグマ選手はキョトンとした顔をした後。
「あ、ははは……お、大物過ぎますよ、シズク選手」
苦笑を浮かべて、そのまま意識を失ってしまった。
「えー……」
何で呆れたような反応されたんだろう。
凄く釈然としなかったけど、気絶してしまったものは仕方ない。問い詰める事も出来ないし。
という事で、気持ちを切り替えて。
「何はともあれ、勝利!」
応援してくれた皆に向けて、勝利のピースサインを決めたのだった。
昔何かの本かテレビで、ぐらついた乳歯と野球ボールを糸で繋いで、他の人がかっ飛ばすっていうものを見ましてね……。




