第二十五話 ルール説明からの開戦の狼煙
今回はセフィ視点となります。練習試合は該当キャラ視点で回る予定です。つまり後4人(ナナ含め)のキャラ視点がががが……。
後、単純に格闘技のそれっぽいルールをつくるのむつかしいです。ぶっちゃけスポーツみないタイプなので。つまり違和感あるかもしれませんが生温く見守って。……ガ、ガチのスポーツ知識からの指摘でも、い、良いのよ?(カタカタ)
「いいなぁいいなぁ!」
「いや、そんなに羨ましがられても困るんだけど……」
「こればかりはシズクに同意します」
ナナが何やらラクシア側に呼び出され、対戦相手との細々とした話し合いから戻ってきた後。
私とシズクは、全力でナナに集っていました。
その理由は。
「私だってラピスラズリ選手と試合したいなぁ!」
「そうですよ。ズルいですよ」
「ズルいって言われてもね……」
人気選手であり、ラクシアのエースの1人であるラピスラズリ・ファナ選手と、ナナが試合をする事になったからです。
改めて言います。ズルいです。
「一応、僕がラピスさんと試合する事になったのって、向こうで他に混合やってる人がいなかったからだよ? 仕方ない事なんだって」
「理屈と感情は別なんですよ」
こればかりは、分かっていてもという奴です。なので無駄な抵抗はしないで、大人しく受け止めてください。
……というか今、サラッと愛称で呼んでませんでした?
「まーたこいつは口説いてきたのか。しかも今度は相手のエースを」
同じ部分が引っかかったらしいルナ先輩が、軽くナナの頭を小突きました。
小突かれたナナは、ものすごく心外そうな顔をしています。
「口説いてなんかいませんよ。単にあの人、畏まった呼ばれ方を面倒がってるだけです」
「ふーん? でもユーリ先輩の話を聞く限り、気に入られはしたんでしょ?」
「まあ、一応は……」
ルナ先輩に胡散臭そうな目で見られ、ナナは気まずそうな顔で詳細を白状する事に。
結局、ナナの人たらし兼女たらしは、監視があっても発動したようです。
ですが、経緯自体は大変興味をそそられる内容でした。
あの自信無さげというか、戦意の低めなナナが、ラピスラズリ選手に宣戦布告をしたのですから。
「ナナの悪癖は兎も角、トップ選手相手に一矢報いるってのは、良い意気込みね。見直したわよ」
「ああ。圧倒的な格上相手に全力勝負を挑むたぁ、中々出来る事じゃねぇ」
「あんたも案外男の子ね」
最初は頭を抱えていたコーチや先輩方も、良くぞ言ったとナナを褒めました。
「ふあぁ……」
シズクなんて、その時のシーンを勝手に想像して、1人でときめいています。断言しますけど、ときめくような場面はゼロだったと思いますよ?
……まあ、シズクの反応はアレですけど、私もナナの事は見直しました。ナナは毎回自分の実力を低く設定していたので、こういう面で自信を見せるとは思いませんでしたから。
「さて、うちの1番のルーキーが見事な意気込みを見せてくれた事だし、他の皆も気持ちで負けるんじゃないわよ?」
「「「「はい!」」」」
コーチにこう言われては、私たちも遅れを取る訳にはいきません。
全員、ナナに負けじと気を引き締めます。
そんな私たちを見て良しと頷き、コーチは先程決まったらしい試合の組み分け表を手に取りました。
「それじゃあ、試合についての説明ね。ルールは話し合いの結果、フリットカップでも採用されているアンダー19の公式ルールを一部変更したもの。デバイスの魔力上限は300で変わらず。3分1Rで、時間の関係上本来なら5Rのところを3R。インターバルは1分。ここまでは良いかしら?」
コーチの確認に全員が頷きます。
試合経験が無いナナが少しおぼつかない感じでしたけど、他の試合を見ていればなんとかなるでしょう。
まあ、コーチがその辺を気付いていない訳が無いので、スルーしているという事は問題無いって事でしょうし。
「じゃあ、組み合わせを発表するわよ。まずは第1試合だけど、セフィ。あなたが出る事になったわ」
おや、いきなり私ですか。
「相手は同じ1年のリーナ・レオル選手。ラクシアの中では2軍みたいだけど、アンダー12のジュニア大会で結構な活躍をしているわ。将来のエース候補ね。獲物は槍。魔法で牽制しながら、間合いの差を上手く使って一方的な攻撃を行うスタイル。どう? やれる?」
「問題有りません。完封して、一軍を引きずり出してみせます」
「戦意が高いの結構だけど、油断して足元掬われないようにね?」
「当然です」
まだまだ完璧とはいきませんが、それでも瞑想の効果はちゃんと出ています。
昂っているように捉えられるかもしれませんが、私としては単なる事実を言ったまでです。先日のブリーフィングの際に、注目選手としてリーナ選手の映像も幾つか拝見しましたが、苦戦する事は無いでしょう。
コーチもそれを分かっているので、私に簡単な注意してから、次に移りました。
「第2試合はシズクよ。相手は同じ1年のピグマ・リオール選手。この子は公式戦はまだ出てないから、あまり情報が無いの。分かっているのは、リーナ選手と同じく2軍って事と、後衛タイプって事だけ。ただし、1年で練習試合に出れる実力はあるって事だから、油断は禁物よ」
「はい!」
どうやらシズクの相手は、一筋縄ではいかない雰囲気ですね。情報が無いというのは、結構なディスアドバンテージです。実力は私の対戦相手のリーナ選手と同程度と見積もっても、スタイルの相性によっては苦戦するかもしれません。
……まあ、それはラクシアも同じですが。私たちの情報はほぼ無いでしょうし、ある意味でフェアな試合が出来ると言えます。
「そして第3試合。ナナね。既に知っての通り、対戦相手は3年のラピスラズリ・ファナ選手。最高戦績、フリットカップ都市本戦男女混合の部第5位。獲物は2つの鉄扇。基本は熱風と冷風の魔法を得意する後衛型だけど、近接戦の腕も相当。少なくともシズク以上はあるわ。間違い無く、ラクシアの最強選手よ」
「……後衛型の癖に近接能力もシズクちゃん並かぁ。そりゃ凄い」
「最低でも一矢報いるって吼えたんだから、今更弱音なんて吐かないように」
「……まあ、問題無いと思いますよ。魔力上限が300なら、ある程度は戦えます。難しいでしょうけど、苦戦ぐらいはさせたいですね」
「へぇ……。指導者として、こういうぶっつけ本番ってのは忸怩たる思いだけど、お手並み拝見といかせてもらうわ。期待してるから」
流れ的に予想はしてましたが、やはり次の試合はナナですか。ラピスラズリ選手が相手ですし、トリになる可能性もありましたが、そうはならなかったみたいですね。
それにしても、ナナの宣言は意外でした。まさか、ここまでハッキリ言うとは。
シズクとのスパーでの対応能力、魔法能力を見る限り、かなりの実力があるだろうと予想はしてましたが、それでもナナの持つ物腰の柔らかさから、予想の域を出ていません。
ですが今のセリフから、トップ選手を相手に善戦出来るかもしれない、ぐらいの実力はあるのが伺えます。ただの誇張という可能性もありますけど、普段はむしろ控えめな自己申告をしている事を考えると、嘘という線は無いでしょう。
実際、ナナを見るコーチの目も変わりました。今までは困難に挑む生徒を見る目でしたが、一角の選手を見る目になっています。
やはり、ナナの試合が今日の目玉みたいですね。
「第4試合はルナね。相手は2年のシロ・クラークス選手。……説明いる?」
「あー、要りません。……にしてもシロかぁ。まさか練習試合でもやらされるとは」
「向こうからの熱烈なリクエストよ。最近1軍に入ったから、成長した私を見せてやる、ですって」
「あんにゃろう……。どうせ個人的に戦うんだから、今度でも良いでしょうに」
ルナ先輩の相手は自他ともに認めるライバルであるシロ選手ですか。
そういえば、シロ選手はラクシアの生徒でしたね。2人は幼馴染だそうなので、私とシズクのような関係です。そういう意味でも楽しみなマッチングです。
「第5試合はレイ。あなたよ。相手は3年のシエラ・シャイン選手。最高戦績、フリットカップ都市本戦女子の部7位のトップ選手。知っての通り、射撃魔法を使った遠距離戦を得意としているわ。はっきり言って厳しい戦いになると思うけど、頑張れるわよね?」
「シエラ選手っすか……。良いっすよ。ベストを尽くしてやりますよ!」
「期待してるわよ」
レイ先輩の相手はシエラ選手ですか……。これは中々に厳しい試合になりますね。
レイ先輩は有名選手ではありますが、主な活躍の場はアンダー15の学生大会です。それに対して、シエラ選手はフリットカップの常連。この差はやはり大きいでしょう。
そもそもラクシアは、フリットカップをメインの大会に置いています。それを前提とした練習を行い、参加する選手を厳選している以上、どうしても慣れという面で差が出てきてしまいます。
実力的にも、経験的にも上の相手との試合。得られるものは豊富でしょうが、勝利を得る事は難しいでしょう。
「取り敢えず、今決まっている試合はこんな感じね。五試合目が終わった後にお昼休憩で、その後は合同練習。なので最低限の余力は残しておく事。これは本番じゃなくて、練習試合だという事を忘れないように」
最後にコーチから注意が飛んで、試合前の説明は終わりました。
「それじゃあ、そろそろ第1試合の開始時間よ。セフィは準備して。皆もね」
「はい」
コーチに促され、自分のデバイスを起動します。
今回はちゃんとした練習試合ですので、スパーのように一部の武装だけを起動するのではなく、フル装備での起動となります。
「【シンセサイザ】完全起動」
その言葉をトリガーに、デバイスの全機能が解放されました。
原理がいまいちよく分からない光が私の全身を包み、ただの練習着から、特殊な繊維と魔法で織られた戦闘着へと一瞬で変化。黒地のシャツの上から、頑丈な深紅のハーフコートを羽織った姿になりました。
更に2振りのブレードが忽然と現れ、腰に装着された事で武装は完了です。
「おー。カッコイイ」
「ありがとうございます」
私の武装を見て、ナナがパチパチと拍手してくれました。
個人的には少し派手かなと思う反面、かなり気に入ってもいるので、この評価は嬉しいですね。
「というかセフィ、二刀流なんだね」
「そういえば、ナナの前で武装したのは初めてでしたね」
私の装備を見て、ナナは意外そうな声を挙げます。
既に部内での立ち位置というか、キャラを確立しているせいで忘れますが、ナナはまだ入部して10日も経ってません。更にそのうちの半分以上を欠席しているので、まともな戦闘はお互いに見た事が無い訳です。
「うちで最強なんでしょ? 僕も楽しみにしてるよ」
「ならその期待すらも超えてみせましょう」
これは気合いが入りますね。
心意気をあらたに、リングへと向かいます。
そこには既に、リーナ選手が槍を片手に待ち構えていました。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
軽く頭を下げると、返ってきたのは素っ気ない返事でした。
何か気に食わない事があるのか、それともデフォルトでこんな感じなのかは不明ですが、なんとなく前者な気がします。
まあ、そういうのは刃を交えて語れば良いでしょう。
疑問は一旦棚上げし、審判であるコイルさんから注意に耳を傾けます。地味にこの方、試合での審判資格もあるそうです。やはり強豪校だけあって、痒いところに手が届く感じですね。
「では既に説明されただろうが、1R3分で、合計3R。勝利条件は、KO、降参、試合続行不可能と判断された場合。デバイスの魔力上限は300だ。問題無いな?」
「大丈夫でーす」
「無いです」
コイルさんの確認に頷きます。
あと、リーナ選手の返事が軽かったので、デフォルトで素っ気ないという可能性は消えましたね。
そんな事を考えていると、コイルさんがリングの外に移動します。技の規模によっては巻き込まれる事があるので、審判は基本的にリングの外にいるのが決まりです。
そしてコイルさんが離れたところで、リーナ選手が口を開きました。
「ボクさ、キミたちの事、あんまり良く思ってないんだよね」
「……いきなりですね」
唐突にぶっちゃけたコメントをされ、眉間に皺がよるのを感じます。
「だってそうじゃん。5人しかいない弱小校の相手をするために、貴重な練習時間を潰すんだ。レイニー選手やルナ選手みたいな、実力のある選手がいたとしても割に合わない。そっちの部員がランちゃんを助けてくれたのは、ボクたちも感謝してる。でもそれとこれとは話が別だよ。得るものが殆どない練習試合なんて、時間の無駄だもん」
リーナ選手の言い分を聞いて、私たちが気に食わない理由を理解しました。
私たちを相手にするより、得るものが少な過ぎて、普通に練習した方がマシだと言いたいのでしょう。
ホスト側のセリフとしては不適格ではありますが、私たちの評価を考えると、事実なのが悲しいところです。団体競技なら兎も角、個人競技の練習試合だと、人数が少ないというのは結構致命的ですし。とばっちりのように言われても、あまり否定出来ません。その文句はそっちのコーチに言ってくれとも思いますが。
「なにより気に食わないのが、キミのところの男子だよ。どうも初心者って話じゃんか。初心者の癖にラピス先輩と練習試合なんて、釣り合ってないにも程がある。ましてや先輩相手に一矢報いるなんて生意気だよ」
なるほど。私たちが気に食わないというのも確かにあるみたいですが、1番はナナの事ですか。
大方、憧れの先輩が初心者の相手をしなきゃいけないというのが、気に食わないのでしょう。ナナがラピス選手に気に入られたというのも、少なからずありそうですが。
まあ、どれもぶっちゃけ言い掛かりですね。試合を申し込んだのはラクシア側ですし、ラピス選手がナナと試合するのだって、正当な理由がありますし。
なので不満を聞かされている私としては、逆にイライラするだけです。
「……リーナ選手の言い分は理解しました。客観的な評価から考えれば、抱くものとしては概ね間違ってない感想でしょう」
「……へぇ、怒らないの?」
「まさか。ちゃんと不愉快ですよ。ただ、リーナ選手のその感情は、私たち1年組の実力を知らないが故ですし」
事前情報が欠如している以上、多少の非礼は敢えて目を瞑ります。
実際問題、立場が逆なら私も微妙な気持ちになりますし。……流石に相手に直接言ってりはしませんが。
「なので今は苦情を言ったりはしません。判断を下すのは、一先ず組まれている試合の消化をしてからです」
そっちの方がフェアですしね。
「……ふーん。随分自信があるんだね?」
「どうせ考え直す事になるんです。無駄に今文句を言って拗れさせるより、思い違いだったと素直に頭を下げてもらった方が、後腐れがありません」
「へぇ、上等だよ!」
少しの意趣返しの意味を込めて挑発すると、リーナ選手が獰猛な笑みを浮かべて槍を構えました。
私もそれに合わせて、二刀を鞘から抜き放ちます。
そのタイミングで、コイルさんが試合開始の号令を下しました。
「それでは、試合開始!」
開始の掛け声と同時に、槍を構えたリーナ選手が猛然と突撃してきました。
「はぁぁぁっ!」
その迫力は中々のもの。ラクシアの将来のエース候補というのも、納得出来るぐらいには実力があるみたいです。
まあ、それでも私よりは数段弱いですが。
「ああ、それでも不愉快なのは変わらないので、一切容赦しませんから悪しからず」
そう断りを入れてから、槍の間合いに入ったところで、備えていた魔法を発動します。
「【スタンビート】」
結果、各登場全体を揺るがす轟音が響き渡り。
「っ、ぁ……!?」
切りつけられてマトモに動けなくなったリーナ選手が、リングの上に横たわっていました。
誰が見ても、試合の続行は不可能です。
「さて。これで考えを改めてくれるといいのですが」
あ、そういえば、ナナの期待を超える事が出来ましたかね?
戦闘描写はあっさりと。だってセフィ強いもん。
……それはそうと、今の更新ルールだとどうやっても書きだめが増えないのですよね。つまり後残りライフ(書きだめ)9。




