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第二十四話 対戦相手のヤバい人(色んな意味で)

くっ……! 今回は1週間以内に1話書けなかったか……!

書きだめ(余裕)マイナス1

んー、対戦相手の人から話があるって言われたから、ラクシア側に来たんだけど……。


「案の定、注目されてるなぁ」

「皆ナナ君を見てるわねー」

「あー、すみません。うち女子校だから、男の子と接点無い子が多くて」

「いや、不快な視線が混じってる訳じゃないんで、別に良いんですけど」


リリカさんは申し訳無さそうにしているけど、本当にただ見られいるだけだ。気にはなるけど、それ以上ではない。

フィクションでは、女の園に男が侵入すると白い目で見られたりするけど、そんな事も当然無いし。というか、現代の都会のド真ん中にある学校で、そんな雰囲気が出るかって話だ。そもそもコイルさんとかいるからね。

単純に、校舎の中に同年代の男子がいる状況ってのが、珍しいだけみたい。

僕を見て交わされる会話も、可愛いとか、ちっちゃいとか、小学生?とか、何年生なんだろ?とか、そんな心が抉られるようなものだし……。


「……小さいかぁ……」

「本当にゴメンね! ーーこら! 相手チームの人に失礼な事言わない!」

「「「すみません!」」」

「私に謝るんじゃなくて、彼に謝罪するの! そんな事も分からないの!?」

「「「申し訳ありませんでした!!」」」

「あ、いえ、大丈夫です……」


周りの女の子たちから一斉に謝罪され、ちょっと引き気味になりながらも返答する。

それにしても、ラクシアって結構凄いね。挨拶の時も思ったけど、動きが戦闘部隊っぽいというか。上下関係が厳しくて、規律もしっかりしてる感じがする。

うちの部の空気とは正反対だ。強い運動部って、何処もこんな感じなのかな?


「本当にゴメンね。わざわざ呼び出しておいて、不快な思いさせて」

「いや、謝罪も頂いたんで……」


あんな一斉のごめんなさいを貰った以上、グチグチ言うのはみっともないと思う。

なのでそんな風にペコペコされると、僕も困るというか……。


「ところで、ナナ君の相手というのはどなたなんですかー?」


困っていたら、ユーリ先輩が助け船を出してくれた。ありがとうございます!


「あ、それ僕も気になります! どなたなんですか?」


すかさずユーリ先輩の助け船に乗り込み、話題の転換を試みる。

実際、相手がどんな人なのかは気になってはいるのだ。というか、なにか話し合う事があるらしいので、興味とか関係なく出て来て欲しくもある。

ただ、ユーリ先輩は僕とは違う意味で、対戦相手が気になっているみたい。


「唯一混合をやっている方って言ってましたけど、確かラクシア魔法女学院の混合の選手って……」

「うむ。妾じゃな」


ユーリ先輩の疑問に答えたのは、全く知らない人だった。

というか待って。今凄い一人称聞いた気がする。


「えーと……え?」

「ん? 一体どうした? 何か珍妙なものが現れたかのような反応をしておるが」


珍妙なものが現れた反応をしてるんです。

困惑しながら、声のした方に顔を向けると、そこには。


「……わぁ、凄い綺麗」


驚くぐらい綺麗な人がいた。


「んお!? い、いきなり褒めるな! ビックリするじゃろ!」

「あ、すみません。綺麗だったんで、つい」

「だから止めよと言うておる!」


美人さん(仮)は顔赤くして、ウガーっと僕に向かって吠えるけど、そんな姿も綺麗だった。

いや、口説くとかそういう邪な感情じゃなくて、本当にビックリしてるんだ。ユメ姉さんを筆頭とした美人なお姉さんたちや、シズクちゃんを筆頭とした美少女たちと接点の多い僕だけど、この人みたいなタイプは初めてみたから。

なんというか、凄い高貴な雰囲気を感じる。姫口調を聞いた時は、濃い人が来たなぁって思ってたけど、一目見てその感想が打ち砕かれた。違和感がない。いやむしろ、普通に喋るよりも似合っている。

……いや、そりゃそうだ。今更になって思い出したけど、姫口調が似合ってるのは当然だよ。


「まさかとは思ってましたが、やっぱりですか……」

「ラピスラズリ・ファナ第4王女殿下……」


だってこの美人さんは、正真正銘のお姫様なのだから。


「如何にも、妾がラピスラズリ・ファナ。花と水晶の世界【クレアリール】の第4王女である!……あ、初対面じゃし名乗りはカッコつけたが、堅苦しい喋り方はせんでよいぞ。妾は癖になっておる故これで通すが、今は学生じゃしの」

「意外と緩いんですね……」

「今のご時世、世界の王族なんてこんなもんじゃよ。家格が無駄に高いだけで、一般市民と変わらんて」


本人はこんな事を言っているけど、そんな訳無いです。そもそも多世界文化が浸透した現代における王族なんて、絶滅危惧種みたいなものだし。

数多の世界が存在する以上、その1つ1つには幾つもの国がある。多世界全体を管理するのが統括局の仕事である以上、その世界の運営はその世界の代表たちが集まった世界政府によって行われるのが通例となっている。

……因みに、ちょくちょく話に出てくる保安隊というのは、統括局から世界政府に貸し出された、1つの世界全体の治安維持を行う組織である。警察、国軍、衛兵などの世界規模版と言えば分かり易いか。

それは兎も角。世界政府の代表となる人たちの中には、かつては国王と呼ばれていた人もいる。そういった人たちの一族の事を、王族と呼ぶ……訳ではない。

現代における王族とは、統括局を受け入れる以前に、その世界を統一していた人たち、文字通りの意味で世界の王であった一族を指す、特別な身分なのだ。


「いやいやいや。現代社会で王族や姫と呼ばれるのも、中々に面映ゆいのじゃぞ?」

「御自分の身分でしょうに……」


当の本人は、王族呼びは恥ずかしい、というか面倒くさそうにしているけれど。

何度も言うけど、貴方は正真正銘の貴人です!


「身分と言われてものぅ。試合をする度に騒がれるし、結構面倒なんじゃよ」

「……そう言えば、ここにいるって事は魔導戦技を?」


やってるって事だよね? 更に言えば、僕の対戦相手って事らしいけど……。

え、マジで? この人、世界でも数少ないやんごとなき御方だよ? 魔導戦技なんて荒々しい競技、本当にやってるの?

予想外の事実に思わず唖然としてしまったけど、姫殿下は姫殿下で戸惑っていた。


「それ以外に何がある? お主、妾の事を魔導戦技で知ったのではないのか?」

「……僕は統括局の嘱託職員やってるんで、その関係で姫殿下の留学を知った感じです。流石にラクシアだとは知りませんでしたけど」


機動隊の所属として、レストレード内の要人の情報は、ある程度は頭の中に入っている。まあ、個人を重点的に調べたりはしなかったので、留学してるんだぁぐらいの知識だったんだけど。


「姫殿下は止めよ。様付けもじゃぞ? ラピスでよい」

「あ、はい。えっと、もしかしてラピスさん、有名選手だったりします?」

「有名も有名よー? 最高戦績は都市本戦の5位入賞。惜しくも世界選抜は逃してはいるけど、その実力はレストレードの中でもトップクラスよ。ご自身の身分と実力から【戦姫】の異名を付けられているわ」

「うわ強い」


僕の疑問は、ユーリ先輩の呆れを含んだ説明で解消された。

予想以上に高い戦績に驚いていると、周りからえーって感じの目で見られてしまったけど。

周りの反応から見るに、多分魔導戦技に限った話じゃなくて、スポーツ観戦してる人なら常識ってぐらい有名なんだろうなぁ。

詳しくなくてすみません。


「うーむ、この反応は予想外じゃの。まだまだ妾も精進が足りぬという事か……」

「それに関しては、うちのナナ君がスポーツ方面に疎いだけですので、お気になさらずー」

「スポーツやってる癖にか……?」

「ニュース以外で、テレビってあんまり観ないんです。魔導戦技も、最近始めたばかりでして」

「……まあ、そういう者もおるか」


微妙に釈然としない顔をされたけど、ラピスさんも個人の趣味嗜好までとやかく言うつもりは無いらしく、そういうものかと流された。

ただし、それとは別に悩み事が浮かんできた様子。


「ふーむ。そうなると手加減した方がいいかのう? まさか、ほぼ初心者とは……」


幾ら練習試合とはいえ、超実力派のトップ選手が、初心者相手に本気を出すのは如何なものか、という事らしい。

まあ、当然と言えば当然の悩みだね。僕がラピスさんの立場だったら、同じように悩むだろうし。

とは言え、僕としては手加減されるのは困るんだ。僕の目的は、強くなる事なんだから。


「あ。手加減は無しの方向でお願いします。是非とも全力でやって頂けると」


そんな訳で僕の希望を挙げると、困っていたラピスさんの雰囲気が一変する。凛々しくと優しげな貴人のものから、獰猛な戦士のそれにと変化した。


「……ほう? 中々に大きく出たではないか。それは自信ありという事で良いかの?」

「一応、そこらの初心者よりは強いと思います。まあ、確実に負けるとは思いますけど、一矢報いるぐらいは出来るかなぁと」


そう思いたいなぁ。

いやまあ、それぐらいの実力はある筈なんだよ、僕。ルールやらスタイルやらで縛りプレイ状態だけど、元はかなり強い方だし。

公式ルールと広いリングさえあれば、結構ちゃんと戦える筈。

そんな僕の希望的観測には気付かず、ラピスさんは口元を孤月に歪ませる。


「はっ。初心者が妾相手に一矢報いると吼えるか! それだけで十分に大口じゃぞ!」

「えーと、生意気ですかね?」

「まさか! 実に面白い! ナナよ、お主との試合が楽しみになったぞ!」


ラピスさんは呵呵大笑し、僕の頭を乱暴に撫でる。

いつの間にか呼び捨てされてるし、どうも僕は気に入られたみたいだ。

存分に僕の頭を撫で回した後、ラピスさんはトップ選手らしい気持ちの良い台詞を残し、立ち去っていった。……そして直ぐに戻ってきた。


「……そういえば、事務的な話し合いをするのじゃったな……」


顔を羞恥で赤くして、僕らを呼び出した本題をラピスさんは切り出した。

……結構うっかりさんかな?


「可愛いですね」

「……そうねぇ」

「やっぱり分かります?」

「う、うるさいぞ! それ褒めてないじゃろ!? リリカも便乗するでないっ!」


凛としたお姫様であるラピスさんの意外な一面に、僕らどころか周囲のラクシア生徒、全員がほっこりしたのだった。

因みに各世界の国における王族(貴族階級)とかは普通にいます。ただ次元世界レベルでみると地方の地主とかそんな感じです。

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