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第二十一話 出発前のわちゃわちゃ

取り敢えず予約投稿の確認を兼ねて投稿。まあ月曜更新と思って頂ければ。

うっかり口を滑らしたせいで、散々お説教をされてしまった。


「ったく、先輩を相棒とか言うんじゃないわよ」

「すみません。つい」

「ついって、そんなノリで相棒にされても困るからね? というか、シズクと手を繋いだ状態で言う事か!」

「あ、そういえば」


ルナ先輩に言われて気付く。誰からもツッコミらしいツッコミが入らなかったから忘れてたけど、ずっとシズクちゃんと恋人繋ぎしてたまんまだった。

指摘されたので、そろそろ手を離そうかと力を緩めたら、そうはさせまいとシズクちゃんがぎゅっと握ってきた。


「えーと、このままがいいの?」

「……うん」

「そっかぁ」

「部室でイチャつかない! とっとと離れる!!」


しょうがないなぁと、離れるのを諦めたら、余計に怒られた。

ゴンっ、ゴンっ、と2人揃ってルナ先輩から拳骨を貰い、強制的に距離を取らされてしまう。


「……むぅ……」


シズクちゃんが、名残惜しそうに繋いでいた手を撫でる。

そんなシズクちゃんを見て、ルナ先輩が盛大に頬を引き攣らせた。


「……あの恋愛無関心勢だったシズクが、ここまで変わるか……っ! ここ数日、時折女の顔になってはいたけど、それにしたって変わり過ぎでしょう!?」


戦慄の表情で、ルナ先輩が後ずさる。

なんだろう。この、格下がいつの間にか急成長して、戦慄する序盤のライバルキャラみたいな感じは……。凄い噛ませ犬っぽい。

というか、恋愛無関心勢は失礼なのでは……?


「そんなに変わったんですか? 確かに、最初は無邪気な感じしてましたけど」

「あー、あんたは出会ったその日のうちにシズクを墜したからね。知らなくても無理ないか。そりゃもう酷いもんだったわよ?」

「とても悪意ある前置きをされた気がしますけど……。そんなにですか」

「そんなによ。友達付き合いはしても、恋愛的な意味では男子とか一切眼中に無し。アプローチされても気付かない。他人の恋バナにも食いつかない。誰と誰が付き合ってるのかも興味無い。年頃の女子の癖に、恋愛レーダーが壊れてたのよねぇ」

「ルナ先輩!?」


あまりにもあんまりな評価をされ、シズクちゃんが悲鳴を上げる。


「何よ? 全部事実でしょうが」

「だからってナナに言う事ないじゃないですか!」


どうも、僕にバラされたのが恥ずかしかったようだ。

赤い顔でチラチラと僕の方を見てくるので、気にしてないよという意味を込めて、頭を撫でておく。


「だからイチャつくな!」


また拳骨された。今度は僕だけ。

拳骨を落としたルナ先輩は、こめかみを揉みながらため息を吐く。


「というかあんた、こんだけイチャつく癖に、よく私の事を相棒とか言ったわね? 普通シズクでしょ」

「ああいや、別にそういう意味での相棒ではなく。この部って、力関係が明白なコンビだらけでしょ? ユーリ先輩とレイ先輩、セフィとシズクちゃんって感じで。なので仲間はずれ同士、同じようにコンビ組むべきかなぁと」

「仲間はずれとか言うな! あと、そんな不名誉なコンビは組まないから」


それは僕が相方だと不名誉という意味でしょうか? 少し悲しい。


「ちょっ、そんなショック受けた顔しないでよ。別にあんたが不名誉って訳じゃなくて、溢れ者扱いが不名誉ってだけだから」

「良かったです。僕、ルナ先輩に嫌われてるかと」

「さ、流石に嫌いにはならないわよ!?」

「まあ、ショック受けたフリなんですけど」

「あんた本当にいい度胸してるわね!?」


ペロっと舌を出した瞬間、ルナ先輩が胸ぐらを掴んできた。そのままガクガクと揺さぶられたけど、リアクションが面白かったので良しとする。……あ、ちょっと苦しい。

そんな僕たちを見て、シズクちゃんとセフィが一言。


「……既にコンビ組んでるじゃないですか……」

「うーん……。羨ましいような、そうじゃないような……」


どうもこの部活は、コンビが生まれやすいようだ。




そんなやり取りをしながら、10分ちょいが経過した。

さて、散々わちゃわちゃした訳だけど。忘れてはならないのが、僕たちは練習試合を控えた身であるという事。

それはつまり。


「全員、準備はいいわね?」

「「「「はい!」」」」


どんなに騒いでいても、時間が経つにつれて意識が真面目な方向に向かうという事だ。

幸か不幸か、騒ぎ過ぎてコーチからお説教、なんて事にはならなかった。それぐらいには、全員が魔導戦技に対して真剣だった。


「ナナ、キミは大丈夫? 体調とか」

「問題ないです。これでも体力はある方なんで」


コーチの確認に、僕は頷きで返した。

実際、コンディションに問題は無い。昨日は1日中寝てたお陰で、体力気力は完全に回復している。

そんな僕を見て、コーチは目を細めた。


「一般市民としては、統括局でのお仕事お疲れ様です、って言いたいところだけど、今はコーチとして敢えて注意をしておくわ。まだ身体が出来上がってない状態で、無理をするのは控えなさい。選手として、それ以上に人としてガタが来るわよ。今日も、少しでも調子がおかしかったら言いなさい。いいわね?」

「はい。ありがとうございます」


言い方は少しキツいけど、これはちゃんとした心配からきてる言葉だ。コーチとして、なんて前置きしているけど、本心から言っているのが感じられる。

なので素直に頷いたんだけど……。何かコーチが微妙な表情をしている。後、少し顔が赤い。


「……なるほど。皆の言ってる意味がよく分かったわ。これは確かに女殺しね」

「ゴメンなさい急になんですか?」


頷いただけで女殺し認定って何?

自分の頬が引き攣るのを感じながら、コーチにセリフの理由を尋ねると、呆れた表情で返された。


「キミぐらいの年頃で、こんな注意をされれば、大抵は反発するか、そこまで深く考えないで頷くだけよ。なのに凄い柔らかい表情を浮かべるんだから。それにありがとうなんて……」

「え、そんな顔してました?」

「してたわよ。言葉の意味も真意もしっかり察した上で、感謝の念がちゃんと伝わるような顔をね」


そんな顔してたんだ……。完全に無意識だった。


「あんな柔らかい顔、大人でも中々出来ないわよ? そんな表情出来るんだから、これからさぞかしモテるでしょうね。真性ホストって言葉も納得。教師としては、とても遺憾ではあるけれど」

「僕の方も大変遺憾なんですがそれは」


教える側として困った表情をするコーチには悪いけど、それ以上に頷いただけで女殺し認定された僕の方がショックだ。


「一応言っておくけど、ラクシアでは自重するのよ?」

「ちゃんと紳士的に対応しますけど!?」

「……皆、しっかり見張っておくように。特にシズクとセフィ」

「「「「はい」」」」

「何故に!?」


心外な忠告に全力で反論したら、監視が決定した模様。ちょっと酷い


「シズク。この際、多少イチャつくぐらいは許すから、出来るだけナナの隣にいなさい」

「はい! ナナは絶対に渡しません!」

「セフィ。あなたはラクシアの方を見張って。危ないと感じた娘がいたら、さりげなく注意を逸らして」

「分かりました」


僕と特に仲の良い2人が、僕の直属の監視役に任命された。というかコーチ、教育者がイチャつくのを推奨するのはダメでしょ……。

そこまで信用ないのか僕……。


「初日に部員を1人惚れさせたんだから、当然でしょ」


ぐうの音も出なかった。がっくし。

そんな僕を見て、全員がため息を吐く。何その、しょうがない子を見る目……。

ちょっとムッときたので、目を潤ませて上目遣いで皆を睨む。

男がやる仕草ではないけど、残念な事にサイズがミニマムな僕がやると、結構サマになってしまう。小さい子をイジめてる気分になると、体験者に言わしめる僕の武器。ショタっ子ムーブだ。

結果として、シズクちゃん以外の全員が、気まずそうに目を逸らす事になった。シズクちゃんはキュンとした顔で胸を抑えてた。違うそうじゃない。


「……ンンっ。さて、妙な不安要素が出てきたけど、皆ちゃんと試合に望むようにね。分かった?」

「「「はい」」」

「あ、はいっ」

「……はーい」


微妙な空気をなんとかするため、コーチは咳払いをして話を締めに掛かる。

シズクちゃん以外の4人はこれ幸いとそれに乗っかり、1人だけときめいていたシズクちゃんは、ワンテンポ遅れて返事をする。

僕も不服そうな様子は崩さなかったけど、それでも返事はしておいた。

でもコーチにはスルーされた。多分、フリだと気付かれてる。……なら止めるか。


「それじゃあ……練習試合、気合い入れて行くわよ!」

「「「「「「はい!!」」」」」」


コーチの号令に、僕たちは大声で応える。

皆の気合いは十分。醸し出す雰囲気は違えど、全員がやる気を漲らているのは変わらない。

さあ、ラクシアに出発だ!

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