3話
四月十一日
何故か由美ちゃんと連絡が取れない。それに、橘先輩とも、2人が一緒に遊んだ日までは連絡が取れていたのに、何かあったのだろうか?
そして未だに小森さんは連絡がつかない、店長の元には、『バイト辞めます』としか連絡がなく、急にやめた理由など何一つわからない。それ以降なんの連絡もない。2人と連絡がつかないのに関係しているるのだろうか。
空きコマのため、食堂で3人のことを心配していると。
「幸治くんおはよう。どうしたのそんな怖い顔して。」
「あっ、おはよう千歳さん。」
声のする方を見ると、千歳さんがいた。千歳さんは僕の前に座った。どうやら僕は3人のことを心配しすぎて、自然と顔がこわばっていたみたいだ。
「何かあったの?幸治くんがそんな顔するなんて初めて見たけど。」
僕は千歳さんに何があったのか話した。
「そんなことがあったの。確かに小森が急に辞めた時私も心配したわ。連絡もあの日から一切つかないし、でも由美ちゃんも、橘先輩も連絡が取れないなんて。」
千歳さんはとても心配している。3人とも千歳さんと仲がいいから、心配なのも当然だ。
「幸治くん、私達で3人を探しましょ。」
千歳さんは僕の目を真っ直ぐと見てそう言ってきた。僕はすぐに頷けなかった。警察に任せた方が最適だと思ったからだ。
「そういったことは警察に任せた方が。」
「まずは、私達だけで調べて、危険だったら警察に連絡しましょ。あまり大きな問題でもないのに、警察に連絡したら、迷惑かもしれないし。」
何かが引っかかるけど、千歳さんの言ってることは間違ってないように思う。とりあえず、2人で調べて見よう。
四月十二日
僕達は今、由美ちゃんの家の前にいる。
由美ちゃんのご両親は海外に出張で今家にいない、なのでこの家には由美ちゃん1人で住んでいる、近所には千歳さんの家があるから、由美ちゃんは出張に付いて行かずに、一人暮らしが許されたらしい。
僕達はインターホンを押した。しかし、返事はない。昼間なのにカーテンが全て閉まっている。
「家には帰ってないのかな?」
千歳さんはカーテンの隙間から家の中を覗きながら呟いた。
僕も千歳さんと同じように覗いて見たが、確かに人が住んでいる気配はない。
「一旦休憩でもしよっか。朝からずっと歩きっぱなしだし。」
確かに、今日は朝早くから大学の人に聴き込みをしたり、連絡が取れなくなった日、2人が遊んだ場所をまわったり、ずっと歩きっぱなしだ。
「私の家が近くだし、休憩しに行かない?この辺に休憩できるような場所ないし。」
この辺にある喫茶店はココから20分位かかるし、休憩するだけならいいか。
「そうだな。千歳さんの家にお邪魔になるよ。」
僕達は千歳さんの家へと向かった。
家にあがるため玄関で靴を脱ごうとすると、見た事のあるヒールを見つけた。あのヒールは、由美ちゃんの物だどうして千歳さんの家にあるのだろう。
「千歳さん、このヒールって由美ちゃんの?」
「えぇ、私ヒール持ってないから、由美ちゃんに貸してもらってるの。」
「そうなんだ。」
それから30分程休憩しながら、今後どうするか話し合った。
「僕達の力じゃこれ以上はどうしようもない。」
「そうね、やっぱり警察に相談するしか方法はないのかもしれないわね。」
「これから警察署に向かおうか。」
僕達は警察署に行くために家を出た。
日和つづきだった天気が今日だけは雨が降りそうなほど、空は曇っていた。
僕は今日までの日々を振り返った。何度も、何度も、その度にある答えにたどり着く。不正解であってほし答えに。
「千歳さんソコの公園によって行かない。」
「別にいいけど、どうしたの?」
「聞きたいことがあるんだ。」
チャノキ畑の隣にある公園に僕達は入っていった。
頼む間違っていてくれ、そう思いながら僕は千歳さんに質問をした。
「千歳さんの家にあったヒール、あれ由美ちゃんとの連絡が取れなくなった日に由美ちゃんが履いてたヒールなのにどうして千歳さんが持ってるの?」
ポツポツと雨が降り始めた。雨なんてどうでもいい、僕は千歳さんの言葉を待った。
雨が強くなる中、千歳は俯いて言葉を発しない。
「千歳!!」
僕は痺れを切らし、叫んだ。
千歳は俯いていた顔を上げた。
そこには、狂気的な笑みを浮かべ目がどす黒く濁っている千歳がいた。
「幸治さん。」
チャノキの葉にどしゃぶりの雨が打ち付ける中、公園の真ん中に、傘すらささずに男と女が対峙していた。