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異世界の黒蝶  作者: ちょうちょ
~プロローグ~
3/36

異世界へ

愛華は直ぐに自分の座席を見つけた。

隣の席はいつもお下げが可愛い田中(たなか) 美羽(みう)ちゃんだ。

田中さんは真下さん・小田切さんと仲の良い三人組でつまりはそういうことだ。

つまり、奇数のために一人が私の隣に来て、残りの二人が後ろの座席ということだ。

だが、彼女達は別に攻撃してくるタイプではなく大人しい子達なので楽である。

それどころか、座る時には


「よろしくね、小嶋さん。」


と恥ずかしそうに話しかけてくれた。

嬉しい。凄く嬉しい。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


愛華もできる限りの笑顔で返す。

しかしこの後の会話が続かないのが悲しいところだ。


いつからだろう?

他人と話すのが・・・関わるのが苦手になった。

窓の外に映る空港員の作業風景をぼーっと眺めながら考え始めた。


小学生の頃は東北から転向してきた和代(かずよ)という親友がいた。

滅茶苦茶訛りのある話し方をする子で、素直で何でもストレートに物を言う子だったが嫌味ではなくすんなり仲良くなれた。

毎日のように学校の黒板に絵を描いたり、学校帰りに犬の糞を見つけて一緒に観察したりしたっけ。

彼女は中学入学と共にまた東北へ帰って行ってしまった。

それからは特定の仲のいい友達はいない。

それどころか、男子からは告られる→女子からは虐められるの繰り返しだ。


「よぉーし、全員いるなー。」

担任の谷先生が生徒の名簿を片手にチェックを終えて何処かへ報告に行った。


和代、元気かな?

もう流石に路上のうんこ観察なんてしてないよね。

会いたいな。


『昇陽高校・開星高校の皆様、まもなく、当機は台北桃園国際空港へ向けて発進いたします。約4時間の空の旅をどうぞお楽しみくださいませ。』


飛行機は動き出した。








台湾の台北に向けて飛行機が飛び立ってから一時間が経過した頃だろうか?

『皆様、積乱雲の発生により揺れが発生する恐れがございます。シートベルトの着用サインが点灯いたしました。どうぞお座席へお戻りくださいませ。』

ゲーム機で遊んでいた愛華は、その放送に耳を疑った。

気付けばあんなに晴れていた空が暗くなりつつある。

不安な気持ちで再び窓の外を覗き込んだ。


!!

そんな・・・

あんなのに突っ込むの??


飛行機前方の方には見たこともないような赤黒い雲が壁のように存在し、

中では雷だろうか、パチパチと光を放っていた。


愛華はごくりと唾を飲む。


『皆様、激しい揺れが予想されます。シートベルトをしっかりと閉めどうか落ち着いてご着席ください。』


そんな事を言われると余計に不安になってくる。

愛華の気持ちとは裏腹に飛行機はみるみる内に雲に近づいていく。


ダメダメダメ!!

愛華は心の中で拒否した。

他の生徒も積乱雲を見ているようであちこちで小さな叫び声を漏らしている。

「あ、あんな赤い雲見た事ないよ。」

「気味が悪い。」

「で、でも飛行機って結構揺れるけど大丈夫なものなんでしょ?」

隣の座席の田中さん・後ろの真下さん・小田切さんは心配そうに話している。

「前に北海道の千歳行きに乗った時も凄い揺れてこの世の終わりかと思ったけど、案外大丈夫だったよ。」

「へ、へぇ。」

後ろの小田切さんは強気の発言だ。

「私は絶叫系ダメだからあまり揺れるのは嫌だなぁ。」

「無重力になる時が気持ち悪いよねっ。」

「わかあああああああああっ!」

同意をした田中さんが「わかるー」の「わか」まで言って

  ガクッッ!!!

と飛行機の高度が下がった。

ふわりと頭の中に変な感覚が走る。

愛華の心臓がドクドクと脈打つ。


「きゃあああああああ!!!」

「いやーーーーーーーー!!」

またガクンと高度が落ちる感覚に背筋が凍る。

『当機・・・乱気流に・・ザザ・・ど・・・落ち着い・・・』

機内放送が揺れるたびに飛んで聞き取れない。

「落ち着けーーーー、騒ぐなーーーーー!」

「死ぬーー!!!」

「大丈夫だから!!!」

-ガコンッ!!-

席の上部から酸素マスクが落ちた。

それを必死に口に当てる生徒、泣き叫ぶ生徒、目をつむり必死に食いしばる生徒、色んな人が色んな事を叫んでいたが、皆、恐怖の顔をしている。


凄い・・・何これ。

全部スローモーションに見える。。

え、なに。こんな時にも私は他人事感覚なの???


そして愛華は見た。

飛行機の外の雷が愛華たちの乗っている飛行機を包み込むのを・・・




ー来マセリー




飛行機が落ちている感覚がする・・・


光がまぶしい・・・?


目が開けられないが瞼越しに強烈な光のようなものを感じる


光が段々強くなる・・・いや近づいてる??


その後、頭の中がぐにゃりとする感覚と体の中を何かが蠢く感覚に襲われる。


何かが・・・何かが入ってくる!!!!


やだ!やめて!!出て行って!!


しかし身体は動かせず目も開けられないまま。


大声で叫びたいが口も動かせない。


何とも気持ち悪い感覚に愛華は心で叫んだ。


いやっ、やめてええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!




-----------------------------------------------------------------------------



最初の感覚は頬だった。

何かひんやりした固い物が自分の右頬にあたっている。

次に臭いだ。

土のような香り。そして鼻につく湿気。

「ぅ・・・」

あまり声が出ない。

床の上にうつ伏せになっている??

目は・・・微妙に動くけど開かない。

怖い。

状況がわからない。

とにかく、起き上がりたい・・・!


すると自分の周りでも布ずれのような音が沢山聞こえ始める。

!?

誰かいる!!

早く起き上がろうとするが身体に上手く力が入らない。

落ち着け。

ゆっくり、ゆっくりやろう。

まずは指から。

少しずつ身体に力が入る個所を増やして行く。

動け動け動け。

さらに数秒後、ようやく全身に力が入り起き上れる頃には目を開けられるようになっていたのだが・・・


んん?


ぼんやりと映し出された光景が理解できず思わず目を擦った。

そこには、変なコスプレ(三角の黒いとんがりフード付きのローブを着ていて、フードの部分は鼻と口しか露出していない)をした5人の集団と、煌びやかな装飾の偉そうなコスプレイヤー数人が、まだかすれた視界に映っていた。


同時に自分の周りに幾人かの顔見知りがいることも認識できる。


魔方陣??

ふと足元を見ると、愛華は自分たちが魔方陣のような模様の上に寝ていたことがわかった。


「なんだここ!?」

「どうなってんの!?」

「飛行機は!!??」

彼らの反応は至極自然なものだった。

中には半分泣いている子もいる。


ダメだ、全然状況が理解できない。

飛行機で台湾に向かっていたはず・・・まさか飛行機事故!?

良くない推察が頭をよぎる。


とりあえず、周りを見渡すと7・8人の同い年くらいの男女がいることがわかった。

小倉君、柳瀬君、木村さん、顔見知りもいるが知らない人もいる。

修学旅行で同じ飛行機に乗っていたはずなのに、何故、こんな場所にいるのか見当もつかない。


たまらず見覚えのある男子が正面のコスプレイヤーに向かい合った。

「おい、お前ら誰だよ!?」


わお、小倉君・・・勇気あるな。

最悪誘拐犯の可能性もあるわけで。

映画の様に刃物や銃などを向けられないか身構えてしまう。


「目覚められたな・・・」

しかし予想した返答はもらえなかった。。

そして声が響くと思ったらどうやらここは岩づくりのドームのような建物の中のようだ。

日の光は無いので沢山の蝋燭が灯されている。

地下なの?


「まずは召喚の成功を祝おうぞ!!!」

威厳のある低い声が部屋の中に響いた。

「よくぞ参られた!!!勇者たちよ!!!」


「いや、何言ってんだあんた。」

愛華たちの反応は ポカーン に他ならなかった。


・・・

沈黙が流れる。

コスプレイヤー集団と若者達が見つめ合う。

「王様、まずは状況を説明いたしませんと・・・勇者様方が戸惑われております。」

沈黙を破ったのはとんがりフード5人の中で一番豪華なフードを被った背の低いコスプレイヤーだ。

声からすると若そうな男性、いや、男の子だろうか。

「うぬ、そうか?」

「はい、やはり伝承通り勇者様と言えども最初は戸惑い、怒り、悲しみ、情緒が乱れるのかと思われます。まずはゆっくりご自身の置かれた状況を理解していただくことが先決かと。」

「そうか。よし、ではその件はサラン、お前に一任する。」

「3日だ。」

王様と呼ばれた男性は3本の指をサランと呼んだとんがりに向かって立てた。

「3日でなんとかせよ。よいな?」

「ははっ。仰せのままに。」

サランは演劇のようなオーバーなお辞儀をして見せた。


------------------------------------------------------------------


愛華たちは部屋を移された。

その際に長い螺旋階段や重そうな扉を何度もくぐったがあまり覚えていない。

いつの間にかカビ臭い地下から豪華な調度品が並ぶ見事なお城にいるとわかった。

通された部屋も凄い。

夢なんじゃないだろうか?

途中、メイドのような人が道を譲りお辞儀をしている。

遠くで人が話しているのも聞こえたが日本語だ。

日本語が話せる人達がいる西洋のお城のどこかなんだろうか?


サランは愛華たちをフカフカのソファに座らせると自らのとんがりフードを外した。

驚いた。水色の髪をした綺麗な男の子だった。

歳は11歳か12歳くらいだろうか。

「綺麗・・・」

木村さんが思わず口にしたであろう言葉は皆の意見を代表していた。

染めたにしては透明感のある水色なのだ。

そして彼によく似合っている。


「コホン。っえー、皆さん色々思うところもおありかと思いますが、とりあえずやっていただくことは1つです。」

ゴクリ。

全員が息をのむ。

「皆さんにはー・・・」



「勇者となって、魔王を倒していただきまーす!!」




何その笑顔、疲れる。

彼の話を聞いてどっと疲れが押し寄せた。

皆死んだ目をして沈黙を守っている。

向いの小倉君はそうだな、あれはモアイ像だな。


「あ~やっぱりピンと来ませんよね!」

うんうんと頷きながら満面の笑みで話を続ける。

「この世界は皆さんのいた世界ではありません!今からそのことを証明したいと思います。」

そう言うとサランの後ろにいたとんがりローブの人が、木の棒の先に水晶のような玉が付いている、どこから見てもゲームに出てくるステッキのようなものを丁重に差し出した。

サランはそれを受け取るとぶつぶつと何かを呟きだす。

すると、ステッキのような物の先に青い魔方陣のようなものが突如現れた。

!!

「えっ!?」

「スゲー!」


《ミスト》

サランが確かに最後にそう言った。


すると部屋の中にどこからともなく霧が発生し、向かいに座っていた小倉や木村の姿が少しずつ見えづらくなるまで濃くなった。


「何よ、これ!?」

あ、この声は木村さんだ。


「いやあああ!」

隣に座っていた女の子が叫んで愛華に抱き着いてきた。


「毒ガスじゃないのか!?」

右の方からそんな不安な声もする。


「ただの霧です、大丈夫ですよ。」

サランが立っていたらしき位置からひょうひょうとした答えが聞こえた。

「これが魔法です。」


え!?

「これが・・・魔法??」

抱き着かれていない左の手で愛華は空気中の霧を確かめるように撫でる。

「皆さんも使えるようになりますよ。イーネスの書によると得手不得手はあるようですがね。」


「イーネスの書って何ですか?」

気付けば自然と私の口が開いていた。

「イーネスの書とは歴代の勇者戦記から共通項をまとめた基本の手引きのような本で、この世界に古くから引き継がれている宝書です。私はその内容をあなた達へお教えするご用意がございます。」

霧で見えないがサランが答えた。

「はぁ。」

頭が追いつかない。

「また、私はその宝書の管理者でもあり世界で数名しかいない追記を許された者でもあります。」

サランは誇らしげに続けた。

「皆さんの今回の戦記も詳細に記録させていただきますよ。まぁ、魔王軍に負けてしまっては記録も何も全部無意味になっちゃうんですけどね。」

あははなんて笑ってるけど、ちょっと待て。

これって最近よくある異世界ものなんじゃ・・・本当に私が魔王とやらと戦うことになるとか?

いや、でも・・・まだテレビのドッキリの可能性も・・・。

愛華の心臓がドキドキと脈打ち始めたその時、


パンッ


と手をたたく音がした。

するとあれだけ濃かった霧がスーッと引き始める。

「信じていただけましたか?」

サランの笑顔が見えるほど霧は消え去っていく。


「んなわきゃねーだろ。」

小倉が脱力した声を挙げる。

「どっかにテレビカメラ仕込んでるんだろ?」

「さっきの霧も専用の装置があればいくらでも発生させることができるしな。」

相方の柳瀬も小倉に加勢する。

当然の反応だ。

「そ、そうだ!騙されないぞ!」

愛華の右側の女子のさらに右の方に座っていた男子Aと男子Bも、落ち着きを取り戻したようでキョロキョロとカメラを探し始める。

「てれびかめら?初めて聞く単語ですね・・・確かテレビという単語は四角い箱に映像を映す装置・・・でしたね。それにかめらが付くとどのような意味なのですか?」

「その装置に映し出されている元の映像を記録する装置です。」

「なるほど~、イーネスの書に新たに追加項目ができました。感謝いたします、え~っと・・」

「小嶋です。」

「勇者、小嶋様!!!!」


「いや、小嶋さん何普通に答えてんの。」

小倉は苦笑いで愛華に突っ込む。

「この子変な子だから関わらない方が良いよ、小倉君。」

グサッ

愛華の心が傷つく。

木村の毒舌は愛華にバッチリ聞こえていた。


気にしたら負けだ。

それに私にはこのお城のような内装もサランという男の子もさっきの霧も演技やセットには見えない。

私は・・・私はずっと現実から逃げたいと思っていた。


愛華は今、「もしかしたら本当に異世界に来ているのかも」という期待が止められなかった。


「おっと!」

サランが何かを思い出したように驚いた顔をした。

「今度はなんだ?井戸から冴子でも出すのか?」

「えええっ!?私ホラー苦手なんです~っ!!」

小倉の発言に反応した右腕にしがみつく女子が、泣きそうな声で力を強めた。


「私とした事が・・・まだ名乗っていませんでしたね!」

「本当に今更だな。」

「サランだろ?」

柳瀬が即答する。

「さすがは勇者様。王様のお言葉をお見逃さなかったようですね!ですが名乗る場合はフルネームでご紹介するのが礼儀というもの・・・ましてや世界を救う勇者様ご一行にならば尚の事。」

そう言うとサランは左手を胸に当て、さっきの地下で王様にするような優雅なお辞儀をしながら名乗り始めた。


「わたくし、このノーザ王国でスクレテールの地位にあります、サラン・ユル・リベラスと申します。スクレテールとは世界聖戦に関する記録者の事です。」


「では、勇者様ご一行もご紹介頂ければと思いますが・・・まだそのてれびかめらとやらをお探しで?」

「う、うるさい!どこかにあるだろ!?」

「カメラが・・・見つからない!超小型なのかもしれない!!」

男子Aと男子Bは諦めていない。

「ちょっと!!」

向いのソファの裏を探している男子Bが、丁度木村のスカートを覗き込む体制になってしまった。


あーそれは不味いと愛華はこれから起こることを想像し眉をしかめた。

「ぐへっ!」

案の定彼は木村に思いっきり顔面を踏みつけられた。


言い出しっぺの小倉と柳瀬は最初からソファにどーんと座ったままだが。

「あっ!」

愛華の右隣の女子はしがみついている手を放した。

ようやく愛華に抱き着いていた事を自覚したようで顔を赤くしている。


「ご、ごめんなさいっ!」

「い、いえ。お気になさらず。」

愛華はその女子の仕草をちょっと可愛いと思ってしまった。

外見は並だが、表情というか仕草が女の子らしくて可愛らしい子だ。



「うーん、困りましたね。イーネスの書にも『最初は信じてもらい難し』なんて記述がありますがここまでとは・・・」

言葉とは裏腹に全然困ったようには見えない。

彼が目で窓側に立っていたフードの人に合図した。


ザッー!!


という音に全員がビクぅ!!と驚くと同時に部屋の中が急に一層明るくなる。

向かいに座っていた小倉の目が徐々に丸くなっていくのがわかった。

柳瀬は立ち上がり愛華の後ろを立ち尽くして見ている。


「おい、何だよあれ?」

「え?何?」

愛華も皆の視線の先、自らの後ろを振り返った。


そこには・・・見事な景色が広がっていた。

いや景色、そう景色も凄いが、それだけじゃない・・・空飛ぶ生き物もセットだった。

「あれは・・・」







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