死闘の末に
愛華とモラクスの戦いの音は遠くまで響いていた。
それはフリュッセイドの勇者パーティの雨宿り場所も例外ではなかった。
ウオォォォォォ!!
「なんだ!?」
「今、獣の声が・・・?」
狭いイビルベアの巣を見つけ雨宿りしていた一行が、突如遠くで聞こえたモンスターの声に驚いた。
前衛組が警戒して入口まで出て武器を構える。
しかし入口の周りに声の主のようなモンスターはいない。
その代わりレイが遠くの何かに気付いた。
「あれは・・・」
レイが一歩前へ出たことで、雨にうたれ始める。
南西の方角、数km先の木々が揺れて鳥たちが飛び立っている。
少し高台にあるこの巣の入り口からは背の高い森の木の中間くらいの高さに存在する。
普通に地面に立っていては到底見ることはできない少し離れた景色もなんとなくだが見ることができた。
鉄之助も巣から出て真っ直ぐに音の方角を見つめた。
雨にうたれながらじっと遠くを見ている。
「何かが・・・戦っている・・・・。」
「なに?」
レイの表情が変わる。
するとドーンという音がして自分たちの立っている地面がわずかに揺れた。
そのせいか後衛のメンバーもつられて入口近くまで出てきた。
「本当か?俺には見えないが。」
智康が目を細めてその南西の方角を見た。
「本当だ。骨・・・のようなものと・・・光・・・も見える・・・。」
「鉄之助は視力が恐ろしく良いですものね。」
全員でその方角を見つめる。
わずかしか見えないが遠くで無数の細いピンクの光が雷雲に向けて直線を描いては消えている。
あとは木の先が揺れてるようなモゾモゾしたものしか見えない。
レイはしばらく考えた後、口を開いた。
「和代。」
「はい。」
「君にリーダーを任せるよ?」
「!?」
レイはそう言って水色のメニュー画面を開いた。
「お、お待ちください、レイ様!」
レイは待たずに【パーティ】から【メンバー】で【泉 和代】を選択後、【リーダー委譲】を選ぶ。
「おいおい、俺たちはどうするんだ?」
「予定通り、ヘイゲル神殿へ帰還しろ。」
そして自分は【抜ける】でパーティを抜け一気にパラメーターが下がるのを感じる。
他のメンバーも【攻撃力】がわずかに下がるのを感じた。
和代の顔が一気に青くなる。
「な、何故パーティまで抜けるのですか!?」
「マップに表示さたままでは追いかけてきてしまうだろう?」
和代の焦った声にフッと笑って答えた。
「そんなっ!危険です!」
和代は胸に手をあてて必死に止めた。
鉄之助と毘奏は無言で、智康はあーあーと言って諦めている。
「本気ですの?」
彩乃だけは鋭い視線を送った。
「ああ、別に戦ったりはしないよ。少し様子を見てから帰る。」
にっこり笑った顔を見たメンバー全員が「嘘だ。」と内心感じた。
「わたくしもお供いたします!」
「ダメだ。」
「・・・っ!」
レイの即答に和代は言葉を詰まらせてしまう。
「このパーティは個性が強いからね。リーダーがいないと空中分解してしまうよ。それだけ君を信頼している、ということなんだけどな。」
レイは困ったような笑顔で首を傾げ和代におねだりした。
「そんな言い方は・・・。」
「ずるいですわね。」
和代が言いかけたが彩乃が代わりに言った。
「すまない。なるべく早く戻るよ。」
そう言ってレイは予備の『スベラの滴』を和代の手に渡し雨の中に消えた。
和代はその姿が見えなくなった後も、不安そうな顔で見つめ続けた。
「良いんですの?今なら追いかければまだ間に合いますわよ?」
彩乃が太い腕を組みながら言ったその言葉に「では追いかけましょう」と言いそうになる。
しかし、和代の中で「信頼している」というレイの言葉がそれを止める。
それに二泊で帰るという評議会との約束だ。
防人もいる中、この異世界で後ろ盾に不信感を与えるような行動はできない。
「いえ、予定通り今日中に二つの川を渡ります。」
和代の瞳は力強かった。
「はぁー。」
「オーケー。」
「わかった・・・。」
「・・・」
全員が諦めてイビルベアの巣に戻る。
和代は振り返りレイが消えた方角を見つめた。
「レイ様・・・。」
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ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・!!!
とにかく撃ち続けるっ!!!
『アハハ!いいよいいよ!』
エルカの楽しそうな声が頭に響く。
「エエイ!チョコマカト!!!」
モラクスは巨大な角を闘牛のように暴れながら振り回す。
枝分かれした巨大な角が何度も激しい雨を裂き水飛沫が舞う。
愛華は集中して角と角をくるりと回転しながら足場にして避ける。
その間も《撃つ》と念じるのを止めない。
モラクスのHPは残り4割になろうとしていた。
ガチン!
「きゃ!」
顔の周りをうろつく愛華を食おうとするがすんでで避けられる。
愛華はゴロゴロとぬかるんだ地面を転がった。
危なかった!
「はっ!」
ドォーーーーン!!!
前足で踏みつけられそうになるところを、またしてもすんでで避ける。
愛華がいた場所に大きな手形が残り直ぐに雨水が溜まって水たまりになる。
急いで体勢を立て直し『双月』での両撃ちを再開する。
「ウオォォォォォ!!!!」
モラクスは上半身を持ち上げて立ち上がり、ゴロゴロと鳴る暗い空へむかって叫んだ。
赤い目が一層怪しく光るとモラクスの足元から、ワラワラと牛や羊や鹿が出て来て愛華に向かって一直線に走り出した。
「何それ!?」
50匹くらいは出てきただろう、しかしよく見るとどの動物も目が赤く体が腐っている。
「ゾンビ家畜!?」
慌てて『双月』の標準をゾンビ家畜たちに変更して撃ち始める。
「我ハ家畜ヲ守ル神デモアルノダ。」
撃たれたゾンビ家畜たちは一発で倒れるものの、その倒れたものを踏み超えてワラワラと愛華に向けて走ってくる。
『双月』じゃ間に合わない!!
《ストーンブレード》!!!
魔方陣が出現したのを見てモラクスの赤い目が光る。
「ナルホド魔法モ使用デキルノカ。」
数秒後に愛華から放たれた複数の石の棘が迫っていたゾンビ家畜たちを切り裂いていく。
残りは10匹程度だ。
これで残りを撃てばいいわ!
そう思って再び『双月』を構え後方に下がり距離をとると、モラクスが頭を垂らして角をこちらへ向けている。
また突進が来るのかと思いきや、左右の角の間に赤い魔方陣が出現した。
「まさかっ!!」
気付いた時には遅かった。
大きな赤い魔方陣から赤黒いトルネードのような魔法がうねりながら、ゾンビ家畜たちを粉砕し、その先の愛華を直撃する。
「きゃああああああああっ!!!」
全身が焼けるようだった。
一瞬気が飛んだが、必死に意識を保つ。
「ぅ・・・」
身体に力が入らない。
薄目を開けると愛華のHPバーは赤く点滅しており瀕死だと伝えている。
エルカの頭の中の声ももうしない。
元いた場所からはかなり押し出され、バラバラの木々と一緒に倒れて雨にうたれていた。
倒れている足元のさらに先の方には赤い目が二つ浮かんで近づいてくる。
自身の魔力(MP)のほとんどを使用する奥義が決まって勝利を確信しているようだった。
「久々ノ人間ノ魂ガ楽シメソウダ。実二三年ブリダ。前回ハ子供ダッタガ女モイイ。」
「!!」
愛華は左ポケットのキュアボトルを取ろうとするが、左手があまり動かないので右手を震わせながら【メニュー画面】を開いた。
せっかく余裕のモラクスさんがゆっくり近づいてくれているから、私は堂々と【アイテム】から使用する!!
【キュアボトル】を選ぶ
動け、動け私の指!!
【使う】を選ぶ。
キラキラッ
ついでにもう一回【使う】を押す。
残数3になってしまったがしょうがない。
キラキラッ
これで全快だ。
「その・・・三年前の子供は男の子でしたか?」
愛華は泥だらけの体を起こした。
「!!マダ立ツカ・・・勇者トイッタノハ真ダッタカ!?」
『双月』を構えた愛華のフードの奥の目は真剣だった。
「その子の名前はトキといったんじゃありませんか!?」
そう言うと愛華は両撃ちを再開した。
「贄ノコトナド知ラヌ!」
モラクスは頭に魔弾をくらいながら突進した。
愛華は撃ちながらモラクスの前へ飛び込む。
巨大な角の一部が愛華に刺さりそうになったところで体をねじりながら右月で受け流す。
右月と角が擦れた摩擦で雨の中に火花が散る。
そのままモラクスの巨体を横切り尾の先へ。
くるりとモラクスの方へ体を方向転換しズサァ―――!とぬかるんだ地面に着地する。
その間ももちろん撃ちっぱなしだ。
しかしモラクスもズサァ――――!と巨大な足でブレーキをかけて体をドリフトのようにしながら方向転換させ、勢いを崩さないまま愛華へ角を突きだし突進してくる。
愛華は撃ちながら再びモラクスの前面へ飛び出す。
今度は逆サイド側へ左月と角を滑らせて受け流し火花をあげながらモラクスの横を通り越していく。
「なんて戦いだ・・・」
雨の中、レイは距離を取りながらその戦いを見つめていた。
先程出したオレンジ色の【メニュー画面】からいってあの黒いローブの女性が勇者であることは間違いない。
しかしあの跳躍力・・・彼女はいったいレベルいくつなんだ?
レイは睨むように戦っている愛華を見つめた。
妖精の秘儀によって一時的に跳躍力が飛び上がっていることをレイは知らない。
圧倒的な戦いを前に加勢することすら躊躇われた。
「さっきの魔法を使う暇は与えない!!」
実はモラクスにもうMPはほとんど残っていないのだが、それを知る由もない愛華は必死にまとわりついて撃ち続ける。
撃ち続けた『双月』の魔弾はモラクスのHPの実に9割近くを削っていた。
「オノレェェェェェェ!!!」
最後の抵抗とばかりにモラクスは頭を振り回す。
「う!きゃあ!」
今までとは比べものにならない速さで角を振り回し、愛華の避け動作が間に合わなくなってくる。
「まず・・・あぅ!!」
ついに角にあたり愛華の体が大きく空中に投げ出される。
態勢を!!!
空中でそう考えるが落ちてくるところを見計らってモラクスが突進を決めた。
ドーンという音と共に衝撃が走る。
「んあああああ!!!!」
愛華の体に激痛が走る。
モラクスは突進を止めないので、愛華は角の先端が腹部に刺さったまま空中を押され続ける。
「く・・・」
《アイスエッジ》!!!
愛華も角が刺さったまま魔法を唱える。
数秒後、魔方陣から複数の氷のつららが発生し、突進を続けるモラクスの頭に刺さる。
「オオオオォォォォォ!」
モラクスは苦しそうな声をあげるがそれでも突進を止めずに頭を下げて走り続ける。
この先は・・・!?
ちらりと後ろを見ると岩の壁のようなものが見えた。
マズイ!!!
愛華は奥歯に仕込んでいた【コキュの実】を全て噛み砕いた。
キラキラッ
ズドーーーーーーーン!!
愛華の体にさらに激痛が走る。
モラクスは岩場に衝突しガラガラと一部の岩が崩れて雨の降る地面にバシャバシャと落ちた。
愛華はより一層腹部に角の先が刺さり岩とモラクスに挟まれる形で磔にされていた。
フー!フー!と下を向いたままのモラクスの荒い息遣いを感じる。
「ぅぅ・・・」
愛華の腹部からモラクスの角に血が伝っては雨に流される。
「ココマデダ。人間ヨ。」
やけに雨音が大きく聞こえる。
目を開けると愛華のHPゲージは再び瀕死の状態だった。
しかしそれはモラクスも同じ、既にHPは1割程度しか残っていなかった。
ああ、もう少しなのに・・・
「我ヲ追イ詰メタ人間ヨ。ヨイ糧トナルダロウ。」
ここまでなの?
愛華は弱々しい手つきで左のポケットへ手を伸ばす。
しかしその前にモラクスが愛華を角で張り付けたまま前足の鋭い爪を振り上げた。
回復は間に合いそうにない。
《聖閃》!!!!!
「ウオオ!?」
ビクンと何かに反応したモラクスはその反動で角に刺していた愛華を上空へ放り投げる形になってしまう。
「・・・え?」
かなり上空に打ち上げられた愛華には、ゴロゴロと光る雨雲が視界一杯に映った。
ああ、今、空にいるんだ・・・私死んだのかな?
ふわりと無重力の感覚がした後、体が地上へ落ち始めたのがわかる。
ふと下を見ると、背後を気にしているモラクスが見える。
HPは残りわずかだ。
愛華の目に力が戻る。
私・・・私っ・・・戦ってる!!
まだ・・・やれる!!
愛華は穴の開いた腹に力を込めて叫んだ。
《サンダァァボルトォォォォ》!!!!!
上空に魔方陣が光る。
「ナニ!?」
モラクス上空を見上げると愛華の落下と共に雷が地上に向かって落ちてくる。
「ウオオオオオオオオ!!!」
その立派な角から蹄の先まで落雷が走り抜ける。
感電しているモラクスのHPは0に向かってどんどん減っていく。
「死んでぇーーーーーーーーーーっ!!!」
愛華は落ちながら叫ぶ。
その時、上空からさらに大きな光と爆音が響く。
愛華の目の前を黄色い光が目にもとまらぬ速さで通り過ぎ、愛華が発生させた落雷に重なった。
地上を更に黄色い光で包む。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
落下中に愛華が見た地上の光景は、ただの光だけだった。
見渡す限り白い世界。
光が消え暗さが蘇ると焼け焦げた匂いが漂った。
静寂が戻り雨音が戻ってくる。
「人間メ・・・都合ノ良イ時ダケ頼ッテオキナガラ・・・」
ドスーン!
モラクスはプスプスと焦げた体で力なく倒れた。
「殺スノ・・・カ・・・」
HPが0になる。
ドスン!
それと同時に愛華も地面に落ちる。
「・・・凄い。」
レイは息をのんだ。
つい『聖閃』(剣圧で遠くから聖なる波動を出す長距離スキル技)を放ってしまった。
しかしこの聖剣『デュランダル』をもってしても少ししかHPを削ることができなかた。
そんな相手と一人で戦う彼女は何者なんだ?
遠くから愛華を見つめているが、その彼女が動かない。
「まずい!!」
急いで愛華に近付いて行くが、HPゲージを見ると半分近く残っていることを確認してホッとする。
レイは足を止めて【アイテム】から【白いローブ】を選んで取り出した。
「はああー!!危なかった!!!」
愛華は雨にうたれながら地面から動かずに空を見ていた。
顔にあたる雨が泥だらけの顔を少し綺麗にしてくれる。
その手にはキュアボトルの空ボトルが握られている。
実は落下直前に左ポケットのキュアボトルを口に運んでいた。
でなければ瀕死の状態で落下して今頃落下ダメージで死んでたかもしれない。
そう思うと涙が溢れてきた。
「・・あれ?今頃になって?」
仰向けになりながらゴシゴシと涙を拭う。
なんだか体に力も入らないや。
愛華はしばらく目をつぶって雨音と雷の音を楽しんだ。
するとその音の中に不可解な音も混じり始める。
人の足音だ。
驚いて飛び起き『双月』を構える。
「あっ・・・驚かせてしまいましたか。」
そこには白い長いローブに身を包んでフードを深くかぶった男性が立っていた。
「誰ですか?何の用です?」
フードを被って見るからに怪しい。
男は両手を上げて敵意が無いことを示しながら話し出した。
「僕は・・・フリュッセイドのハンターです。大きな音がしたので見にきてみると、あなたが戦っていました。」
「ハンター?」
そう言えばナンディーを倒すのは凄腕のハンターだってクレイリーさんが言ってたっけ。
あれ?
にしてもどっかで聞いたことあるような優しい声だな・・・。
「・・・ナンディーというモンスターを知っていますか?」
「ナンディーですか・・・本でしか見たことありませんが。」
レイは召喚されこの世界について調べた時に、本で見た知識を生かして答えた。
「そう・・・ですか。」
「それがどうかしたのですか?」
愛華はこんな会ったばかりのハンターに話してもしょうがないので話すのを躊躇った。
「・・・素材が・・・欲しいんです。革の。」
「・・・」
レイはすぐそこに倒れている巨大なモラクスの死骸を見た。
「このモンスターの革では代わりにはならないのですか?」
「!!!!」
愛華は驚愕した。
その手があった!!!!
「見たところ、非常に強いモンスターなので貴重な素材が取れそうですが・・・」
「そ、そうですよね!!!こんだけ強かったんですから!!!」
愛華は【メニュー画面】から【アイテム】を選んで「New!」を確認した。
【モラクスの角】
【モラクスの蹄】
ガーン!!
革が無い!
革はドロップしてない!!!
「ダメそうです・・・(泣)」
「・・・それは勇者の能力ですね?あなた様は勇者様だったのですね。」
レイはわざと今気付いたふりをした。
「あ、そうです、はい。これに勝手に倒したモンスターの素材が入る仕組みなんですけど、革は入ってなくって・・・」
「???」
レイは不思議そうな顔をした。
「勇者様、この死体をその能力で持ち運べば良いのではないですか?」
「へ?」
「勇者様の能力があればどんな大きな物も別の世界へしまうことができるのではないですか?」
まるで知らないの?と言わんばかりの口ぶりだ。
「えええええ!!!」
でも・・・そうか!
できるのか!?
愛華は雨にうたれたまま横たわっているモラクスの死体に近付き、その大きな足に触れた。
《しまう》
念じると、死体は異次元へぬるりと消えた。
「できたぁ!!!」
急いで【メニュー画面】から【アイテム】を確認した。
【モラクスの死体】
が「New!」で表示される。
「す、すごい!!!」
この人・・・・・・賢い!
愛華は白いローブのハンターを恐れと尊敬の眼差しで見つめた。
レイからはフードに隠れて見えないが。
「あ、ありがとうございいます!これを持ち帰ってみます!」
愛華の声は飴をもらった子供のように明るい。
とても先程まであの化け物と死闘を繰り広げていたとは思えない。
「・・・フ・・・クスクス。」
レイは人差し指を口にあてて優雅に笑い出した。
ええー。
笑われた!
なぜ!?(泣)
「クスクス・・・いや、失礼。それで、素材入手のためにわざわざこんな森の端まで国境を超えて来たのですか?」
「あ。」
ししししまった!!
密入国!!
ばれた!!!
今の笑いは「帰れるワケねーだろ」の意味!?
しっかりフラグ回収してしまった!!!
「あ、す、すみませんっ!あの・・・」
「はい?」
「や、やっぱり私は捕まるんでしょうか?」
「プフッッ!!・・・クックック!!!」
今度は後ろを向いてお腹をかかえて肩を震わせている。
ええー。
酷い(泣)
「あの・・・」
「クック・・・失礼。フフッ。どうなんでしょうね。なにせ勇者様の密入国など前例が無いものでして。」
「そ、そうですよね!」
それではこのまま有耶無耶にできるのではと少し期待してしまう。
「ふむ・・・じゃあこうしましょう。」
唐突に話し出した。
「その素材をどう使用するのかだけ見届けさせてください。本当に純粋な素材目的ならば世界のためということでお咎めはしません。いいですね?」
レイはグイッと愛華に顔を寄せて言い聞かせる。
「わ、わかりました。」
愛華は少し後ろに反りながら涙目で答えた。
了承を得るとレイは片膝をついて愛華の手をとり胸に手をあてて名乗る。
「僕のことはレイとお呼びください、勇者様。」
「!?」
驚いた愛華は恥ずかしくなったがイルベ伯爵の時と違いいやらしさを感じない彼の優雅な動作を拒否はしなかった。
何この姫扱い!!
フリュッセイドのハンターって皆こんな優雅な感じなの!?
愛華はハイロの東の森で遠目に見たハンターを思い浮かべてつい比べてしまう。
フリュッセイドという国の株が少し上がる。
「して、勇者様は?」
「あ、私は小嶋 愛華といいます。」
「小嶋・・・愛華様・・・短い間ですがよろしくお願いいたします。」
レイの顔は白いフードで愛華に見えることはないが、にっこり笑ったような、そんな素敵な笑顔が想像できるイケメンボイスだった。
フリュッセイドのハンター恐るべし!
「あ、はい。こちらこそ。」
かくして、このお互いにフードを被り顔も見せないペアでカッサ村まで戻ることになったのだった。




