森で一泊
「うわあああん!許してよ!」
ヒュンヒュン
「うわあああ、死んじゃうよ!」
ヒュンヒュン
「私は死にかけたんですが・・・(泣)」
愛華は涙目になりながらも二人の妖精にお仕置き中だ。
逃げる妖精にあえてちゃんと当てずに撃ちながら逃げ道を無くしている。
太いモミの木まで追い詰められた緑の方の妖精が涙目でガクガク震えている。
「つつつつ次こそはちゃんとナンディーのいるところまで案内するからさっ!!」
「本当に居場所を知ってるんですか?」
愛華はイマイチ信用できなかった。
「ほほほほ本当!本当だよっ!!」
「本当に?」
「うんうんうんうんうんうんうんうん!!!」
もう一人の妖精も首が折れるほど頷いている。
愛華は悩みつつも『双月』を撃つ手を止めた。
「じゃあ・・・今度こそお願いします。絶対ですよ?」
「うんうんうんうんうん!!勇者様、優しい!!!」
「あ、ああありがとう!勇者様!!今度こそコッチだよ!!」
妖精たちは涙ながらにお礼を言うと西の方へと案内し始めた。
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ノーザ王国学業地区。
王都を北と南に二分する中央通から南側、農業地区に近い場所に貴族たちが通う学校が密集する地区がある。
その中に一般人も出入りができる大きな建物が一つ。
国立図書館だ。
その中から黒髪のお下げをした小さな女子が出てくる。
その子を待っていたかのように金髪のピアスをした別の女子が駆け寄った。
「くるみん、どうだった?」
「駄目。ここも置いてないんだって。」
「またぁ?どうなってんのよ。」
木村は不機嫌そうにサラサラの髪をかき上げた。
城内図書室に勇者戦記の6巻以降が置いていないためだ。
元の世界に戻るため、当初は神話や魔術書を読んでいたのだかが、ただおとぎ話のような話ばかりで何のヒントも得られなかった。
いや、正しくはこの世界には信仰される神々がいてその中でも女神サザンドラが絶対的な存在だと思い知っただけであった。
どんな神話でもサザンドラが負けたことはない。
サザンドラが決めた神羅万象の節理は絶対的として描かれていた。
サランも言ってた「魔王を倒すまでは帰れない」が現実味を帯びてくる。
「城の図書室と王都の図書館に無かったら後はどこにあるんだろう?」
「えー?本屋とかぁ?」
「本屋さん探してみようか?」
「んもー、メンドいし。とりあえず5巻まで先に読んじゃえばいいんじゃん?」
木村は一切興味は無さそうだ。
しかし森は釈然としない。
サランは確かに勇者戦記9巻まであると言っていたはずだ。
「うん・・・、じゃあ読んでからまた探そうか。」
「そーそー。それでさ、帰りにあっちにあるっていう美味しいパン屋寄ってこーよ♪」
木村は悪戯っ子のような顔をして言った。
「えーっと、玲奈。その前に図書館の外で頼まれていたあれはやったの?」
「小倉君に頼まれたやつでしょ?ちゃんとやったわよ。パン屋に行くのもその調査の一環よ。」
心外ねと言わんばかりの反応だ。
「え?そうなの?」
「んーとね、『アメリカ』『中国』とか国はダメ、『掃除機』『パソコン』の家電もダメ。でも食べ物は『焼きそば』はダメでも『ケーキ』『焼き鳥』『パン』は通じたのよねー。よくわからないわ。」
「ああ、それでその『パン』が私たちのいうパンなのか確かめに行くのね。」
「そーゆーこと❤」
小倉は城を離れる前に二人に言葉の調査をお願いしていた。
以前、サランに『テレビ』はわかるのに『テレビカメラ』という単語が通じないことがあった。
小倉はそのことが気になっていたようだった。
「っていうか、知らない人に単語が通じなかった時すっごい変な目で見られたわよ、私!若い男は逆ナンだと勘違いしてくる奴もいたし!!次はくるみんもやってよねー!」
「えええ!?小倉君の頼みだから私がやりたい!って言ってたの玲奈じゃなかったっけ?」
「う・・・。」
木村は言葉に詰まった。
「わかってる。わかってるわ、ちゃんとやるわよ。でも私のボキャブラリーにも限界があるし、くるみんも思いつく言葉あったら教えてよ?」
先程までの勝気な態度とは打って変わって真っ赤になりながら小さな声で訴えた木村は恋する女の子そのもだ。
「うん、わかったよ。」
木村がとても可愛く見えて、森は勇者戦記6巻以降が見つからないもやもやを忘れなんだか笑顔になってしまう。
「あ、そう言えば『冷蔵庫』と『冷凍庫』は通じたのよ!!スレンダーなお姉さんが『アイスつくるやつでしょ』って言ってたの!!!この世界にもアイスクリームがあるのよ、きっと!!!探さなきゃ!!!」
木村の目に炎が浮かび上がる。
「んもー、玲奈ったら、小松原君と北野君の事言えないじゃない。」
「えへへ。」
テヘペロという表現がこれ程似合う表情も無いだろう。
ギャル雑誌からモデルがそのまま出てきたような見事なテヘペロだ。
「あ、そう言えば・・・、小松原君と北野君のペアは今日南に向けて出発したみたいだよ?」
森はついでに思い出したように告げた。
「はぁ?あの二人が?」
木村はテヘペロから一転、眉をひそめて信じられないといった表情だ。
「うん。なんか朝見かけたんだけど貴族のお嬢様達に囲まれてたんだよね。」
「うげ。まぁ、それなら納得?っていうかキモイ?っていうか死ね?」
「うん。でも戦いに行くのにお嬢様達が一緒って大丈夫なのかなぁ?」
「さぁ?」
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「フフフ。勇者様、コッチコッチ!」
妖精たちは今度は急がずに愛華の歩調に合わせて案内してくれている。
大分北西まで来たつもりでいたが、どうやらまだ西の方らしい。
山頂に雪化粧がかかっているアドルフ山脈も少しずつ近づいて大きく見えるようになってきた。
「はぁ~、まだ先なんですね。」
でもクレイリーさんが言うには一泊は最低でも必要だって言ってたし。
やっぱりナンディーがいるのはもっと森の奥なんだろうな。
納得しつつも少しげんなりしながら西へゆっくり進む。
途中ビショーネという大蛇に遭遇し、撃退した。
全長15~16mはあり太さも一番太いところで1mはあろうかという大きさだった。
人間だろうが牛だろうが容易に丸飲みにされてしまうだろう。
一瞬また騙されたのかと思ったが妖精もビビッていたので違うと判断した。
お陰でレベルがさらに上がり40にまで達していた。
「ねぇねぇ、勇者様!勇者様は寝るときどうするの?」
「フフフ、ヴァナラみたいに木の上で寝るの?」
「そうなの?アハハ!!」
「あ、寝る場所どうしよう。」
言われて気付く。
見ると日も傾きかけてもう少しで夕方になろうとしていた。
うーん。
別に地面に毛布を敷いて寝てもいいんだけど、流石になぁ。
愛華は駐屯地で魔物避けのクリスタル『女神の目』をいくつか貰っていた。
そのクリスタルに魔力を込めて囲めばその空間にはモンスターの類は近寄れないといった、街やお金持ちの家にセキュリティとして使われているアイテムだ。
しかしいくら安全に寝れると言っても、森の真ん中にそのままというわけにはいかない気がした。
そんな環境で寝れる自信も無い。
悩みながら妖精に案内されるままに歩いていると、左奥の木と木の間から真っ黒な丸が見えた。
よく見れば、穴だ。
愛華は穴へと進路を変えた。
「あ、勇者様!どこ行くの!?」
妖精たちも慌てて進路を変え追いかける。
近付くと洞窟のような岩穴だった。
しかも入口付近には大昔に自炊をしたような跡がある。
「勇者様!そこはダメだよ!」
「僕たち恐いよ!」
妖精たちは身震いしながら怖がっている。
「ここは?」
「そこは、昔人間達が戦争した時に使ってた洞窟だよ!」
「そうそう!供養されてない死体がそのままだよ!」
「げ!死体!?」
愛華も死体は見たくない。
と言っても昔ならもう骨になっているだろう。
愛華は悩む。
うーん、今夜泊まる場所に良いと思ったんだけどなぁ。
でも骨と一緒に寝るのは嫌だなぁ。
どうしよう。
「早くしないと夜になっちゃうよ!」
「行こうよ!」
妖精が愛華を急かした。
確かに、もう夕方も終わりかけて暗くなり始めていた。
太陽の反対側では星が少し輝き始めている。
では尚更、この洞窟に決めた方がいいのではないかと愛華は考えた。
「ちょっと中を見てみます。」
そう言って洞窟に近付く。
「ええ!?本気なの勇者様!?」
「生者が近づいたら起きちゃうよ!!」
「え?」
愛華はどういう意味なのか聞く前になんとなく理解した。
洞窟の奥から「カタカタ」と音がし始めたからだ。
『双月』を構え洞窟から距離を取り見守る。
洞窟の暗闇から奴らはゆっくりと姿を現した。
「アンデットか・・・」
洞窟の入り口にカタカタと顎を鳴らしながら、古いバックラーを付けたりボロボロの剣を持った骸骨たちが姿を現した。
しかし、顎を鳴らすだけで洞窟から外に出ようとはしない。
「???襲ってこない?」
「違うよ!勇者様!奴ら待ってるんだよ!」
「待ってる?」
見るとアンデットたちは少しずつだが洞窟の外へ出始めた。
太陽がアドルフ山脈に陰り、日の光が段々と消えて行く。
すると骸骨達はカタカタと数歩進んだ。
太陽が山に沈むにあたり日があたらない場所が段々と愛華の立っている場所へ近づいてくる。
それと同じスピードで骸骨たちが前進しているのだ。
「そういうこと。」
ならば待つ必要はないと、愛華は『双月』で撃ち始めた。
撃たれた骸骨たちはバラバラと音を立てて崩れる。
HPバーを見る限り八体くらいはいただろうか、全部の骸骨たちをただの骨に戻した。
「凄い!全部一発でやっつけた!」
「さすが勇者様!」
妖精たちはキャッキャッと喜んだ。
どうやら妖精たちはアンデットが苦手なようだ。
愛華は近くにあった太めの木の枝を拾い『ファイ』で先端を燃やした。
「ええ!!勇者様、魔法使えたの!?」
銃を撃ちまくっていたので意外だったのだろう。
かなり驚いた様子だった。
しかし愛華はそのまま無言で右月だけ構えてゆっくりと洞窟の中に入る。
「え!勇者様入っちゃうの!?」
妖精たちは慌てて愛華の後を追う。
洞窟を少し進むと、何が入っていたのかはわからないが古ぼけた樽や木箱があった。
そして即席で作ったのであろう、不恰好なベッドもいくつか見つけた。
これは収穫だ。
喜んだ矢先、また奥の方から「カタカタ」音が聞こえ始めた。
奥に眠っていた骸骨が愛華に気付いて起き上がったのだろう。
短剣を片手にもった骸骨と手ぶらの骸骨が奥から姿を見せた。
ヒュンヒュン
姿が見えた途端、直ぐに右月で撃ち抜き骨に返す。
「あ、しまった!」
「え!何?勇者様!?」
妖精たちはびくりとして何事かと聞いた。
「外におびき出してから撃てば掃除しなくても済んだわ!」
「なんだ、そんなことか。」
「別に少し寝るだけなら掃除しなくてもいいよぉ。」
「ええー、そうですか?」
同じ空間に人骨があっては寝れる気がしないが自分が変なのだろうか。
まぁいい。
そのまま奥に行くと行き止まりだった。
そして行き止まりには大きな金属製のケージがあった。
嫌な記憶がよみがえる。
案の定、ケージの中には人骨が二人分。
しかも一つは小さく明らかに子供だった。
愛華の中で一気に嫌な思いが湧きあがる。
「勇者様!ここが一番嫌な感じがするよ!」
「恐いよ!」
妖精たちは身を寄せ合って震えている。
愛華も一応右月で警戒はするが、この大人と子供の人骨が動く気配は無い。
まぁ、動いたとしてもケージの中だが。
他に何かあるのかと周囲を炎で見渡すが、それでも何もない。
洞窟の岩壁が映るだけだ。
「???何も来ませんね。」
愛華は首を傾げる。
「でも感じるんだもん!」
「ふむ。」
とりあえず引き返そうと踵を返したその瞬間、外の太陽が完全に沈んだ。
洞窟の外は完全に夜になった。
静けさがだけが残り、愛華が左手に持つ即席松明の燃えるパチパチという音だけが洞窟内に響く。
すると洞窟内に一瞬フワりと嫌な風が通った。
「ひぃぃ!」
妖精たちは恐がり始めた。
愛華も風が通った後、後ろに嫌な感じがし始める。
ケージ内の骨が脈を打った気がしたのだ。
まさかと思い振り返ると、大人の方の骨の口がクワっと開いた。
「!!」
「うわあああん!」
二人の妖精は一目散に逃げ出した。
「動いた!」
愛華は右月でケージ内の大人の頭蓋骨を撃った。
頭蓋骨に穴が空いたが、動きが止まる事は無い。
「!?」
よく見ると骨にHPバーが無い。
骨がもう一度ドクンと脈打つと、骨の全身からブワッと何かが飛び出した。
「きゃあ!」
飛び出した何かが愛華を通り抜けた。
それが痛い。
見るとそれだけで愛華のHPゲージが少し減っている。
「何!?攻撃された!?」
愛華は左手の松明を頼りに飛び出した何かを探すが見つからない。
すると突然岩壁の中から「キアアアアアアアアアッ!」という女の叫び声のようなものが聞こえる。
怯えているような怒っているようなよくわからないが耳を塞ぎたくなるような苦しい奇声だ。
「何!?何!?」
愛華の心臓が脈打つ。
その咆哮が岩壁の中を移動しているので、声の方向に合わせて愛華も右月を構えて一緒に回転する。
叫びが止んだところを見つめていると、いきなり岩壁から白く半透明な女が愛華に飛び掛かって来た。
女は半分体が腐ったようなゾンビのようなボロボロの肉をしていて、顔も左頬の肉が落ちていて歯茎がむき出しだ。
目玉も落ちていて暗い穴二つだけだが、何故だか凄い恨みの形相だということは愛華にもわかる。
そんな透明で物体を通り抜ける空飛ぶ女が、愛華に両手を上げて襲いかかって来たのだ。
「きゃああ!」
叫びながらも右月で撃つが、魔弾は女の体を通り抜けて岩壁に当たってしまう。
女はそのまま愛華の体に手を伸ばし何かを探るように、体の中を引っ掻いた。
「いやああ!」
体の中をかき回されるような何とも言えない気持ち悪さと痛みで叫ぶが、松明や腕を振り回してもその白い女には当たらない。
愛華はたまらず洞窟の入り口まで走り出した。
見るとHPゲージの1/3は減っている。
攻撃が当たらない!!
後ろからまたあの耳を塞ぎたくなるような叫び声をあげながら、半透明な女が髪を振り乱して追ってくる。
走りながらまた右月で撃ってみるがやはり攻撃はすり抜けた。
「くっ・・・!」
洞窟を外に出たところで見ていた妖精たちが叫ぶ。
「勇者様!魔法だよ!」
「魔法でやっつけて!!」
それを聞いて愛華は松明を足元へ放り投げ、両手で『双月』を装備した。
両手銃なので両手に装備しないと【命中力】と【魔力】がフル適応されないからだ。
「ええー!銃じゃなくて魔法だよ!」
それを見て不安に思ったピンクの妖精がブーイングをする。
愛華は気にせず魔法を唱えようと振り返ったが、思いのほか追いつかれていたらしい、目の前にあの恨みの顔があった。
「うきゃ!」
「アアアアアアアアア!!」
恨みのこもった声で愛華の体をかき回す。
「きゃああ痛い!」
愛華はたまらず後ろへ飛びのいた。
!!
そうか、外なら洞窟内と違って回避行動がとれる!
半透明の白い女は愛華を追って迫ってくる。
宙に浮いている女の動きは素早いが、レベル40の愛華ならひょいっと右へ飛びのいてかわすことができた。
「今がチャンス!」
《ブレイズファイア》!!!
しかし覚えたての魔法は直ぐには発動しない。
「しまっ・・・」
女は振り向いて滑らかに方向転換し再び愛華に迫ってくる。
「待っ・・・ちかっ!!」
マズイ!そろそろ魔法が発動する!
ヒュゥゥゥゥ・・・・
更に後ろにジャンプして距離をとろうとするが間に合わない。
ドッカーン!ボウッ!
「あああああっ!!」
女が手を伸ばして愛華に触れそうになったところで、透明な女の内側から大きな爆発と共に炎が発生する。
「キアアアアアアアアアァァァァ!!!」
女は苦しそうな叫び声をあげて宙を舞う。
その間も女の体に炎がまとわりつき、燃え続けて夜の森を明るく照らす。
「ぅ・・・」
爆発の衝撃で地面に倒された愛華は細目を開けて女のHPが0になるのを確認する。
「・・・ぼぅ・・・・ゃ・・・」
白い半透明の女はキラキラと空気の中に溶けて消えて行った。
愛華の視界の下にあるHPゲージは赤く点滅し1割ほどしか残っていない。
火傷を負って感覚の無い指をなんとか動かし、【コキュの実】を使う。
キラキラッ
しかしレベル40の愛華のHPでは少ししか回復しない。
そのまま【使う】を連打する。
キラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッ
キラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッ
キラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッキラキラッ
ほぼMAXになったことでようやく手を止める。
「あれれ?勇者様死んだ?」
「フフフ。勇者様死んじゃった?」
二人の妖精が覗き込んできた。
妖精たちにさっきまでのような恐怖の表情は一切無かった。
「よいしょっと。」
「うわ起き上がった!!!!」
愛華はすっかり無傷まで戻った体を起こして状況を確認した。
倒れていたあたりの地面は草が焼け焦げて剥げて地面が見えている。
白い半透明の女の気配は無い。
たぶん大丈夫だろうが、それでも念のために確認する。
「まだ恐い気配はしますか?」
「えっ!ううん!しないよ!」
「うん!もう怖くないよ!」
「そうですか、では寝床の準備にとりかかります。」
愛華は洞窟の入り口付近を『女神の目』で広めに囲み魔力を込めた。
すると女神の目は青く輝き出す。
目には見えないが魔力の結界のようなものができたと感じる。
「ちょっと、勇者様!僕たちも近づけないじゃない!」
「そうだよ、中に入れてよ!」
「ダメです。」
「「ええーーーー!」」
二人はキラキラと光りながら結界の外を飛び回りブーブー文句を言っているが、まだ人外の彼らを信用することはできなかった。
寝ている間にどんな悪戯をされるのかわかったもんじゃない。
「勇者様がそんな態度じゃ僕たちここでサヨナラしちゃうけどいいの!?」
「そうだよ、もう知らない!」
「別にいいですよ?西の方なんですよね?」
愛華は【メニュー画面】から駐屯地で貰った【鍋】や【着火剤】を取り出し魔法で火をつけてお湯を沸かし始める。
後は自分一人で西の方に行ってもいいと素直に思った。
何なら食べ物も多めにあるしあと数泊しても良い。
「く・・・悔しいぃ~!」
「覚えてろぉ~!」
「プ・・・クスクス。」
何だか久々に笑った気がした。
いつも死にかけて・・・生き延びて・・・その後笑って・・・・
「なんだ・・・生きてるって結構良いことかもしれない。」
「何か言ってるけど、今更謝ったってダメだからね!!」
「そうだよ、もう遅いよ!?」
愛華のフードに隠れた笑顔は今までで一番生き生きとしていた。
【名 前】小嶋 愛華 【クラス】マジシャン
【レベル】40
【 Next 】156
【H P】 219 【装備中】
【M P】 355 【武器】 双月
【攻撃力】 170 【頭】 なし
【防御力】 827 【腕】 スターブレスレット
【魔 力】 853 【胴体】 夜の帳
【命中力】1111 【脚】 ニーハイ+らくちんパンプス
【瞬発力】 226 【アクセサリー1】なし
【 運 】 173 【アクセサリー2】なし




