黒蝶の誕生
翌日、愛華は朝早くから東の森へ発った。
途中に出くわすモンスターを撃ちながら今まで行ったことのない森の深部へ向かう。
愛華は森までいつも徒歩だが、日に日に早く着くようになってきた。
走った時の速度が違うのだ。
やはり【瞬発力】が成長すると走る速度が早くなる。
そのうち馬車のヒッチハイクも要らなくなる日が来るかもしれない。
ピュンピュンと木と木を移動しながらそんな事を考えてた。
「あ、おい!あれ!」
「なんだあれ!?」
しかしそれをまたハンターに見られていたとは愛華は気付いていなかった。
マップも森の中心部を示し始めた頃、いきなり周囲が霧に包まれた。
「ん?」
なにか全身に魔力的なものを感じ皮膚がピリピリしている。
「なんだろ?周りが見えづらくて邪魔だな。」
愛華は枝を踏み外したくないので一度地面に降りた。
すると、少し先に魔力の発生源的な何かを感じ近づいてみた。
それは石碑のようなものだった。
明らかにこれから霧が出ている。
自分が勇者だからかマジシャンクラスのおかげなのかはわからないが、魔力の霧がここから出ているという確信があった。
どうしよう。
たぶん何かを守ってるんだ。
うーん、昨日女将さんが言ってた強いモンスターが自分を守るために置いたのかもしれない。
「壊しちゃえ。」
ヒュン
ピキッ・・・
『双月』で撃つと石碑にヒビが入る。
すると霧がみるみる晴れて行く。
「よし!」
これでこの先にいるであろうモンスターと戦える!
それからさらに奥へ進むと遠くに池が見え始めた。
「池?」
愛華が木の枝と枝を飛び移りながら近づくと、美しい水場が姿を現した。
水面が大きな鏡のように静かに周りの木々を写している。
「綺麗・・・でも・・・」
愛華は静かすぎるこの空間に確かに何かの気配を感じていた。
「誰だい?この森を荒らすのは・・・」
おぞましい声とともに水面が激しく揺れる。
池の中央に穴が空き、長く禍々しい爪をした紫色の大きな細いてが伸びて出た。
その手が水面に手を置きぐいっと力むと、黒い髪を振り乱しながらその手の主の上半身が出て来た。
それは上半身が裸の女性のようだが肌の色が紫色にくすんでいて、男か女かわからないイカツイ顔には大きな牙が生えていた。
瞳の色は黄色く蛇のようで確実に人間ではない。
水面をまるで地面の様に扱えるのもなにか能力でもあるのだろう。
「お前だね、最近この森で暴れまわっている気配は!!」
シーッ!と威嚇の音を出しながら愛華を睨みつけた。
「随分昔に人間と不可侵契約を結んだんだけどねぇ。約束を破ったとみていいんだろうねぇ。」
愛華はこの上半身を水面からうねうねさせた紫色の人型モンスターを前にしても、そこまで恐怖を感じなかった。
この前のウォーグウルフの時は恐怖で体がガクガクしたので大違いだ。
私、勇者として成長できてるってことかな?
「あなたは・・・何?」
「私?私はこの森の主さ!」
おお、そうか。
よくあるパターンだ。
「不可侵契約って?」
「なんだい、知らずに足を踏み入れたのかい?数千年以上前に私に勝てないと悟った人間達と不可侵の約束をしたのさ!お互いの領分に手は出さないとね!つまらない契約をしちまったよ。後悔したさ、ああ。」
「ん?」
あれ?
「知らなかったとはいえ、契約を破ったのはそっちだ・・・ヒヒヒ!」
ちょっと待って。
さっきの石碑・・・私もしかしてやっちゃった??
「ああ~っ!余計な事しちゃったの、私!?」
愛華はフードを被っている頭を抱えた。
「ヒヒヒ!もう遅い!!これから森の軍勢を従えて昔の様に町を襲いに行ってやる!!!」
「ええっ!?」
「当たり前だろう?契約を反故にしたのだから。」
「あー。」
そう言われればそうだ。
逆に愛華は覚悟が決まった。
「やるっきゃない!」
町には行かせない、その前に殺す!
ヒュン
愛華は直ぐに右月で化け物の腹を撃った。
「アギャアアアアア!!!」
その紫色のモンスターはたまらず水面をのた打ち回った。
その時に水中に隠れていた下半身が露出したのだが、下半身は紫色の蛇だった。
その長い下半身をうねらせて水をバシャバシャ跳ねらせている。
しかし愛華が驚いたのはそこではない。
「うそ!一発で死なない!!!」
愛華は今までサボってきたHPゲージの透視を咄嗟に行う。
のた打ち回っている上半身女で下半身蛇の紫の化け物の頭のところらへんに、1/3くらいになったHPゲージが見えた。
あと一発!
「き、貴様なんだ、その威力の武器はぁぁぁ!?」
直ぐに二発目を撃とうとしたが、化け物は池の中に潜って見えなくなってしまった。
「ちょ、ちょっと逃げたの!?それは困る!」
愛華はいつでも撃てるように『双月』を構えたまま、先の影響でまだ揺れの激しい池の水面を睨んだ。
どこ?どこにいる?
一番まずいのはこの大きな池がどこかの川と繋がっていて、そこから人里へ出てしまうケースだ。
しかし、この後最悪の予想は外れて安堵する。
ブシャアアアアア!
「うっぶはああ!」
池からいきなり大きな水鉄砲が愛華を直撃したのだ。
愛華の体はその衝撃で後ろへ5・6m程ふっ飛ばされた。
「い、痛い。」
見ると愛華の視界のHPゲージが1割弱削られていて、さらには毒マークが付いていた。
つまり、10回程くらうとゲームオーバーだということだ。
その途端、忘れていた恐怖が襲ってくる。
「待って、やらなきゃ。私がやらなきゃ。恐がっちゃダメ。」
愛華は震えた手で起き上がり、池の周りに沢山生えている太い木の影へ素早く飛び込む。
その時-
ブシャアアアアア!
飛び込んだ木をめがけて、再び太い強烈な水鉄砲が飛んできた。
愛華が隠れていた木は上半分が消えて木端になり、バラバラと大小の欠片が愛華の頭に振りかかる。
ええっ、本当はこんな威力だったの!?
愛華は両腕でフードを被った頭をガードしながら力んで衝撃を我慢する。
「~~~っ!」
枝や木端が降り終わったところで急いで【毒消し草】を使い毒を治す。
また、念のため【コキュの実】でHPも全快にしておく。
とりあえず、お互い逃げるつもりはないみたいで良かった。
でもどうしよう。池の中にいるっていうのはなんとなく感じるんだけど、細かい位置まではわからないし。
立ち歩くと直ぐに水の中から攻撃されそうだし。
いっそ池に飛び込む?
でもそのまま引きずり込まれたら息が続かなくて溺死する可能性も。
ブシャアアアアア!
そこまで考えてまた水鉄砲が愛華の頭上をかすめた。
「~~~~っ!」
水が収まるのを堪えて待つ。
んなっ!なんでここがわかるの!?
物音立ててないのに!!
ん?でも蛇だからもしかして温度感知で場所を特定しているの?
水中から!?
ヒヒヒ!
隠れても無駄だ!
貴様の場所は手に取るようにわかる。
池の底で化け物は余裕の笑みを浮かべている。
見ると下半身の蛇の尻尾の先を少しだけ水面から出している。
その先から赤外線センサーのようなものを出し周囲を伺っている、いわゆるピット官と呼ばれる温度感知器官だ。
そのおかげで愛華が木の陰に座っていることもお見通しだ。
しかし、水中からの攻撃なので角度的に愛華に当てることはできないが。
それでもこの化け物が余裕なのは今まで戦ってきた人間が、温度で周りを感知するという答えに辿り着けずあたふたと動き回ってくれた経験からだ。
人間は必ず我慢できずに動き出す。
少し手助けをしてやろう。
化け物は池の水を吸い込みだした。
蛇の腹部が膨れていく。
そして先程とは違い、ほぼ真上の水面を見ながら一気に放出した。
ちなみに、この水鉄砲に毒効果が付くのは化け物の唾液が混じるせいである。
ブシャアアアアア!
「来た!」
ん?来ない?
衝撃が来ないと思ったその瞬間、愛華の真上から大量の水が滝のように降って来た。
「うぶぶぶ!」
息を吸う暇がない!!
「ぶはっ!!はっ・・・はっ・・・」
先程までの水鉄砲と違い、勢いが弱いためダメージは5%程しか受けてないが、折角治した毒にまたかかってしまった。
「ぐぬぬ。キリが無い。」
愛華はまた素早く【毒消し草】を使う。
さぁ、立ちあがり動け!
走れ!逃げろ!
しかし愛華が動く気配はない。
それどころか赤く染まっていた愛華の体温がみるみると黄色→緑と低くなっていく。
うん?
おかしい。
奴の体温がどんどん低くなっている!!
死んだのか?
いや、それにしては急激に低くなり過ぎている。
なんだ?何が起きている?
これ以上は・・・まずい、奴を見失う!
ここまで来ると目視確認しなければわからない。
しかし、姿を見せるのはリスクがある。
化け物は考えた結果、好奇心に勝てず顔だけ出すことにした。
チャプ・・・
化け物は目から上の頭部だけ静かに水面から出した。
愛華がいた方を確認する。
すると愛華がいたあたりの植物や地面は半分凍っているが陽ざしを浴びて溶けかけていた。
化け物の位置から見るとそれがキラキラと反射して輝いている。
うん?なんだ?
奴はどこに-・・・
ヒュン
「え?」
化け物はその言葉を最後に目をぐるりとさせ息絶えた。
右頭部に穴をあけたまま水の中へトプンと浸かり沈んでいく。
「はぁっ・・・はあっっ・・・ガチガチガチ」
化け物の右側には、体中を氷に覆われて顎をガクガクさせた愛華が匍匐姿勢のまま震えて構えていた。
愛華の昨日のレベルアップで獲得したスキルの中に《アイ》という氷魔法があったのだ。
愛華はそれを自身へとかけた。
おかげでダメージをくらい、HPは半分以下の黄色表示だ。
自分で自分に攻撃魔法をかける。
一種の賭けのようだが、魔法において攻撃も防御もどちらも【魔力】値が参照される。
つまり同じ魔法攻撃力と魔法防御力がぶつかることになるので、愛華はほぼダメージが無いのではないのかと安易に考えていた。
くらったとしても最悪死にはしないだろうと。
「ばさか半分いいいがにだるだんで・・・!!!」
危なかった!死ぬところだった!
愛華はもしもの時に備えて口の中に仕込んでいたコキュの実をかじった。
キラキラッ
HPの20%程度が回復し、身体が楽に動くようになってきた。
まだ寒さでブルブルするが、ここまで回復すれば、メニュー画面の操作も難なくできる。
後はゆっくり【使う】で回復すればいい。
【データ】を確認すると先程の化け物はナーガの亜種だったらしい。
東の森の主と固有名称の明記がある。推定レベルは46。
【ステータス】を見ると、愛華のレベルは36になっていた。
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小倉は何度か愛華の件でサランの執務室を訪れた。
しかし、現在ノーザにはエルフの国の特使が来ているとかでサランも対応中らしく中々会えなかった。
小倉は外出はせずに根気よくサランの空く時間を待った。
そしてようやくサランに会えたのは夕方になる頃だった。
「さて、申し訳ありませんでした、勇者小倉様。何分エルフもプライドが高い種族ですので、袖に扱うわけにもいかず・・・」
「ああ、そういうのはいいから。小嶋さんの情報は?」
小倉はサランの言い訳を途中で切り、本題に入った。
サランはまるで「せっかちですねぇ」と言わんばかりの笑みを浮かべて答えた。
「・・・まず、数日前に北の通門所を通った記録がございました。」
「北か!」
「・・・そしてこれを。」
サランは小倉に新聞らしきものを見せた。
「これは??」
「ノーザ北部で浸透している新聞です。本日の夕刊ですが、内容をご覧ください。」
「!!!」
小倉はその内容に目玉が飛び出そうになった。
「なっ・・・!!」
「おかしいでしょう?」
サランはクスクスと笑った。
「失礼。もちろん、この新聞社には訂正記事を書かせるよう圧力をかけております。明日にはその記事も発行されることでしょう。」
「お、おう・・・」
小嶋さん、大丈夫かなぁ?
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ハイロへ戻ると何やら道行く人々からの目線を感じた。
フードをかぶっているのに!
愛華は嫌な感じがして足早にピオリィへ戻る。
カラン-
扉を開けると女将さんが愛華の所へ新聞を持って駆けて来た。
「ああっ!勇者様!待ってたよ!大変なんだよ!」
ん?この世界に新聞ってあったんだ。
「これを見とくれ!!」
「?はい。」
『東の森に強力なモンスター出現か!?』
見出しはこうだが、それよりも目を引くのは挿絵だった。
誰が描いたのかわからないが、その挿絵は愛華にそっくりな黒いポンチョ風ローブを来た人のような蛾のようなモンスターが描かれていた。
ん?
愛華は本文を読んでみた。
「ここ何日間で森のモンスターが強力なモンスターにより狩られているようだ。目撃したハンターによると大きな黒い蛾のようなモンスターで非常に素早い。やられたモンスターには皆同じような穴が空いており、口のストローから体液を啜って・・・って!!えええええ!!!!」
わ、私の事か!?私の事なのかっ!?
「酷い誤解だろう?さっきの夕刊を見たらこんな記事が書かれてたんだよ。」
ど、どうしよう。
「あたしゃ、これから新聞社まで抗議しに・・・ってどこ行くんだい!?」
「えっ・・・私・・・行かなきゃ・・・。」
「あっ、勇者様、待ちな!」
愛華はピオリィを飛び出した。
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ここはハイロにあるノーザン北陸新聞の小さな支部。
今ここは数時間前に発刊した夕刊の件で大騒動になっていた。
「おい!なんだって勇者様とモンスターを間違える記事なんか書いたんだ!?」
編集者と思われる一人が、隣で何やら万年筆を殴り書いている同僚に怒鳴る。
「うるさいっ!今、訂正記事を編集中だ!!」
言われた同僚は手を止めることなくひたすらに何かを書き続けている。
実は先程、この支部に王都から二つの書類を持った早馬が到着していた。
一つは王国スクレテール直々の抗議文書。
もう一つは王都にある本社からの指示書。
どちらも夕刊の内容を直ちに訂正するようにという内容だ。
「くそう!ハンターめ!適当なタレこみしやがって!」
ハンターは良かれと思ったので悪意はないことは、この編集者もわかっている。
そもそも勇者がこの町に来ているという情報すら入っていなかった。
しかし、まさか千年に一度の神の使いをモンスターとして記事にするという歴史的なミスを犯す新聞記者に自分がなるとは思ってもみなかった。
記者としての誇りもあまって、怒りが収まりはしなかった。
「ああーっ!駄目だ!この町に来ている勇者様の紹介部分が弱い!!!」
書き途中の書類をぐちゃぐちゃと丸めてゴミ箱へ投げるが、既に箱にはゴミが山の様に積まれていたのでコロコロと床に転がる。
「おい、どこ行くんだよ!?」
「取材だ!!出る!!」
記者は上着を取って大急ぎで部屋を出た。
後ろから同僚の「締め切り時刻忘れるなよー!!」の声に振り返らず親指を立てて答えた。
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もうこの町にはいられない。
凶暴なモンスターだと思われてるなんて!
恥ずかしすぎるっ!!
宿を飛び出し細い通りに出た。
愛華を見た道行く女性から「キャ!」と驚きの声が漏れる。
その声で周りの人々が一斉にこちらを向いた。
「おい、あれって・・・?」
「新聞のモンスター?」
「え?でもあれ人だよな?」
そんな戸惑う声が聞こえる。
た、たた、耐えられない!
愛華は2mくらいの高さの物置小屋に飛び乗り、そこから家の屋根に飛び乗った。
「うぉ!?」とか「やっぱりモンスター!?」とか色々言われたが屋根の上なら人目を避けられると思い、そのまま屋根伝いにぴょんぴょん飛びながら北へ向かう。
カランッ!
休み処ピオリィの扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは先程のノーザン北陸新聞の記者だ。
息を切らして入って来た見知らぬ男性客を見て機嫌の悪い女将さんは横目で睨みつける。
「あん?ここは女性専用宿だよ?表に書いてあんだろう?」
「宿泊客じゃないです!ここに勇者様がいると聞いて取材に来たんで・・・」
言ってる途中で記者は女将さんに胸倉をつかまれた。
「え?え?」
記者は何故会っていきなりこんなことをされるのかわからないといった様子だ。
「アンタかい、あの記事を書いた奴は・・・」
女将さんは胸倉を掴んだまま今にも殴りそうな形相だ。
「勇者様はね、モンスターどころか物凄く美人で華奢で大人しいお人さね・・・それをアンタ・・・」
記者は途中まで苦しそうな顔をしていたが、女将さんの勇者話を聞いてハッと明るい顔をした。
「それれす!!!それれすよ!!!もっと勇者様の事教えてくらさい!!!」
見ると記者の目は輝いている。
「アンタ・・・」
愛華の情報を心から懇願する彼を見て、女将さんは手を放した。
「はぁ、訂正記事を急いで仕上げなくちゃいけないんです!!!勇者様の正しい情報で紹介したいんです!!協力してくださいよ!!!!それで・・・勇者様はどこに??」
「今しがた出て行ったよ。たぶんこの町から出て行くおつもりだろうさ。」
「そんな!!!」
記者は慌ててピオリィを飛び出した。
まだ間に合うかもしれない!という想いで目撃情報を元に走る。
愛華はひたすら街道沿いの建物の屋根の上を北へ走った。
屋根から屋根へ夕暮れの空を黒いローブをはためかせて飛んだ。
「わぁ!!見てママ!黒いちょうちょみたい!!」
小さな女の子が屋根と屋根の隙間に見えた飛んでいる愛華を指さしてそう言った。
しかし母親が振り向いた時には既に愛華はいなかった。
「え?蝶々?ええ、綺麗ね。」
娘が何かを見間違えたのだと思い適当に相槌を打った。
それよりもさっきどこかで「モンスターがいるぞ」という声が聞こえたので不安になる。
「今っ!!!なんて!!!??」
「きゃああ!何ですかいきなり!?」
いきなり知らない男が娘に飛びつくように話しかけてきたのだ。
母親の警戒は当然だ。
その男は愛華を追っていた記者だった。
心を落ち着かせて小さな女の子に質問する。
「何を見たんだい!?」
「あのね、さっき黒くてきれいなちょうちょさんがいたの!!」
女の子は赤く染まった空を指さした。
記者が何かを確信したのか目を見開く。
「だから、どちら様ですか!?娘に近付かないでください!!!」
親子は記者を残して直ぐに離れたが、不審者と間違われた記者はそれでも幸せそうな顔で空を見つめていた。
「これだ・・・!」
翌朝、ノーザン北陸新聞の朝刊の見出しはこうだった。
『千年に一度の美しい黒蝶現る!!』
【名 前】小嶋 愛華 【クラス】マジシャン
【レベル】36
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【H P】 199 【装備中】
【M P】 323 【武器】 双月
【攻撃力】 154 【頭】 なし
【防御力】 815 【腕】 スターブレスレット
【魔 力】 821 【胴体】 夜の帳
【命中力】1091 【脚】 ニーハイ+らくちんパンプス
【瞬発力】 159 【アクセサリー1】なし
【 運 】 157 【アクセサリー2】なし