嘘から出た実
グロ回注意
「まさか・・・」
小倉の顔色が悪くなる。
「おいっ、子供たちはどこだ!?」
血相を変えて小倉が大人たちに問いただす。
「え?今頃一昨日拾ってきた小動物にエサでもあげているんじゃ?」
「ああ、子供はあれでバレないと思っているんだからな。」
「お前んとこのナイルも一緒だろ?夕飯後にこっそり残飯を与えに行ってるの。」
態度が急変した勇者を不思議に思いつつも、思い当たる節があるようで大人たちは次々に話し出す。
「二日前!?」
尋常ではない小倉の様子に柳瀬も焦りを覚え始める。
「どうした、尚麒。何を焦っている?」
「そうですよ、勇者様。一体どうしたんです?」
ケヴィンも訳が分からないといった様子だ。
「ポチだよっ!」
「なに?」
少し考えて柳瀬の顔色も段々青くなる。
「ああ・・・まずい!!」
「おいっ、子供たちが危ない・・・かもしれないっ!んでっ、その拾ってきた小動物は今どこにいる!?」
「わ、わかりません。でももしかしたらこの家の後ろにある藪奥に自然とできた洞があるのでそこで飼っているのかもしれません。」
「それで、子供たちがどうしたっていうんです?」
親たちもしびれを切らして教えてくれと問いただす。
「足跡は本物かもしれねーって話だ!!」
そこまで行って大人たちの顔からも血の気が引いてくる。
「て、手分けして子供達を探すぞ!!」
「拓、行くぞ!!」
「ああっ!!」
「僕も行きますっ!!」
大人の男たちは一旦家に帰って武器を用意した後に村中を探すことなった。
ケヴィンは馬車で待機していた御者兼護衛のお付きにも同じように捜索を命じていた。
村長と女たちは子供たちが帰って来た時のために家に残る。
そして小倉と柳瀬はケヴィンと共に足跡が消えて行った畑横の砂利道から奥の藪の中へ入った。
あたりはもう暗くなり始め星が輝き始める頃だった。
「クッソ~、なんだよポチってネーミング~!咄嗟に子犬かと思っちまったじゃねーか。」
「確かに。この世界でポチと言っても犬とは限らないからな。」
二人は剣と槍で草木を斬りながら大人たちの言っていた洞を探す。
その後ろからケヴィンがひっついてくる。
「ぜぇっ、ぜぇっ、待ってくださいよ、勇者様ぁ~!」
後ろを見もせずに二人は進む。
「しかも二日前は残飯で良かったのが今日は大きくなってあのバケツの量を食べるんだろ?」
「まぁ、確実に犬ではないな。」
「・・・っと。」
背丈の高い草を斬ると、その先にもう草は生えていなかった。
その代わり、目の前に現れたのは2m以上ある段差。
段差の上段部分には藪の続きがそのまま繋がっている。
随分昔に地殻変動かなにかで盛り上がったのだろう。
そしてその段差が横に続いており、その途中に小さな黒い穴らしきものを見つけた。
ご丁寧にその穴まで何かが通るような細い獣道が出来上がっている。
「あれか?」
「行ってみよう。」
「ああっ!待ってくださいよ~っ!」
傍まで来ると、直ぐにここが正解だとわかった。
子供達が運んでいた木のバケツが三つ置いてあり、一つは倒れて中身が出ている。
地面には子供たちの足跡と一緒に、あの独特なラグビーボールを細くしたような形の足跡もあった。
そして洞の中にもう一つ。
「ひぃぃぃ!!!」
ケヴィンは悲鳴を上げて小倉と柳瀬の後ろに隠れた。
洞の中には150cmくらいある茶色い半透明のモンスターがじっと動かずにこちらを見ていた。
「これは・・・・」
柳瀬が近づき手で触る。
「抜け殻だな。」
足が異様に太いが足の先は細い。
虫のような節のある足。
地面に着く範囲は丁度ラグビーボールのような形になる。
しかし頭の大きさは小さく逆向きの三角形に近い。
そして一番特徴的なのは太い鎌のような前足。
「カマキリ?のモンスター?」
「ああ、大分近いな。」
「おいおい、俺の知っているカマキリは雑食で凶暴なんだが?」
「奇遇だな、俺もだ。」
なんて皮肉を言い合っているが二人の苦笑いには焦りが見える。
一人ケヴィンだけカマキリの話にはついていけないが、その代わりに「マンティス・・・」という単語を漏らす。
「マンティス?」
「は、はい、おそらく。本で読んだだけで僕も見たことはないのですが、この近郊の森の奥に生息するモンスターです。滅多に森からは出ません。」
「それで・・・性質は?」
「ひ、非常に大喰らいで動くものならなんでも食す、と。」
こっちの世界も同じかよ~。
三人の顔が暗くなった。
その時、三人の後方で沢山鳴いていた虫の声が止んだ。
そして少し後からザザッという草を踏む音が聞こえ始める。
その事に気付いた三人は真剣な表情で音の方を見守った。
小倉と柳瀬は武器を構える。
音が段々近づいてくる。
ザッ
音の主が姿を見せた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
ケヴィンはこの世の終わりのような叫び声をあげる。
しかし星明りに照らされて見せたその姿は、村長の孫のビビだった。
「ヒック・・・ぐすん。」
「ビビ!!」
小倉は直ぐにビビに駆け寄った。
「!!ゆ、ゆうしゃさまぁ!!!うえぇぇぇぇん!」
ビビは泣きながら小倉の鎧に抱き着いた。
「何があった、ビビ!?無事か!?他の皆は!?」
「びぇぇぇぇぇん!」
返事はさらに激しい泣き声で返って来た。
子供にまくし立てても意味が無い。
そんな当たり前の事を思い出した小倉は反省して抱き着いているビビの後頭部を優しく撫でた。
「大丈夫・・・大丈夫だ。」
背中をさすり頭を撫でて何度も「大丈夫だから」と言い聞かせる。
「ひっく・・・ひっく・・・。」
少しビビの泣き方が落ち着いたところで改めて聞き直す。
「何があったんだ?」
「ひっく・・・あのね、ポチがいなくなってたの。ひっく。」
「うん、それで?」
「それで・・・ひっく・・・皆で探したの。そしたら・・・迷子になっちゃったのぉうわあああん!!」
三人は最悪のケースを想像していただけにそれを聞いてホッとする。
「そうか・・・怖かったな。」
そう言って小倉はビビの頭を撫で続けた。
「尚麒、他の子供たちもまだこの辺にいるかもしれない。探そう。」
「ああ、ビビ、付いてこれるか?」
「うん!」
ビビは鼻水をすすって元気に答えた。
四人は洞の周りの藪をもう少し探すことにした。
「おーーーーーい!!ナイルーーーーーー!!!」
「ビビーーーーーーーー!!!」
「いるなら返事しろーーーーーーー!!!」
村の男たちは片手に鎌や鍬を持ちながらもう一方の手で松明を照らして畑や街道を手分けして探していた。
自分の持ち回りを一回りし終えてナターとアルベルトが鉢合わせてしまう。
「いたか?」
「いや・・・。」
二人は険しい表情で結果を報告しあう。
「二人にもしものことがあったら俺は・・・・」
アルベルトの声が震えている。
彼には二人の男女の子供がいる。
普段は厳しく接しているが二人の子供を心から愛していた。
そんな子供になにかあったらと思うと気が気ではない。
「おい、よせ。そんな滅多な事言うもんじゃない。」
ナターも一人息子のナイルの事が心配でたまらないのだ。
「俺はあっちを探してみる。お前はそっちを・・・」
その時、ナターは目の錯覚かと思った。
遠く畑の横で複数の小さな影がうごめいている。
「もしかして・・・ナイルーーーーーー!!!お前なのかーー!!!??」
ナターが叫ぶと小さな影たちは走り出した。
「!!っパパーーーーーーー!!!うわああああああん!!!」
「ぱぱぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「びぇえええええええん!!!」
次々に鼻水を垂らしながらそれぞれの父親に抱き着く。
「ああっ、良かった!ああっ神様!!ありがとうございます・・・ありがとうございます!!」
父親と子供達はぐりぐりと頭や頬を寄せ合って親子の再開をお互いの温もりをもって確かめた。
「でも・・・パパ、ビビがいなくなちゃったんだ!ごめんなさい!ひっく・・・」
「ビビが・・・」
「うん。ぐすっ・・・ポチを探してたらいなくなっちゃったの。」
「そうか。それでビビを探していてお前たちも遅くなったんだな。」
「うん。ぐすん。」
ナターとアルベルトは深刻な表情を見合わせた。
「俺は、急いでそのことを村長とアビに伝えてくる。」
アルベルトは伝言役を買って出た。
そのことでアルベルトの子供達は「えっパパ行っちゃうの!?」と少しぐ愚図ったがナターが「皆一緒に家まで送るから大丈夫だ。」とたしなめた。
「じゃあ、子供達を頼んだぞ。」
アルベルトは急いで村長の家に向かった。
その背中を見送って、「さて、おうちに帰るぞ!」と子供達とゆっくり歩きだした時だった。
「ああっ!ポチ!!」
子供達はナターの後ろを見て何かをポチと呼んでいる。
ナターは嫌な予感がした。
「さがしたんだぞー。」なんて言って無邪気な笑顔を見せている。
確かに自分の後ろに気配がする。
ならば子供たちの目線の先、自分の後方を確認せずにはいられなかった。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
ナターが後ろを振り向くと、大きな鎌を持った2mくらいあるカマキリが牙を剥き出して立っていた。
夜の星明りで口の牙の間から滴る唾液が光って見える。
ナターは尻餅をついて後方に後ずさった。
しかしナターの息子のナイルは「どこに行ってたんだよー?」なんて言って近づいて行く。
「待て!近付くなナイル!ダメだ!」
ナターは息子を抱くために地面に転がしていた鍬を拾い、子供たちを守るためポチに向かっていく。
「え?まってパパ!!!だいじょうぶだよ!!!」
「お前たちは逃げろ!!」
ナターは思いっきり鍬をポチに振り下ろした。
「キーッ!」
しかしポチは大きな鎌で受け止めて少しの傷もついていない。
「やめて、ナイルのパパ!ポチをいじめないで!!!」
「そうだよ!かわいそうだよ!!」
ナターは再び鍬を振り下ろす。
「キキー!」
ポチは少し後ろへ体制を崩したが後ろの太い足ですぐに体制を立て直す。
「こいつは人も食う、クレオマンティスだ!!!早く逃げろ!!!」
「そ、そんなわけないっ!!ぼくたちなかよしなんだ!!!」
「う・・・うん!そうだよ!ぼくたちおそわれてないよ!」
「いいからお前たちは逃げ・・・」
一瞬だった。
一瞬ナターが後ろの子供たちを見た瞬間に、ポチは防いでいるのとは逆の鎌でナターを挟んだ。
「ろ・・・」
凄い音がした。
彼の体は鎌に挟まれ胴体部分が拉げ、血が噴き出ている。
ポチの鎌の部分に一番触れてしまった外側の左腕は二の腕部分から切断されかけてブラブラと揺れて皮だけで繋がっている。
「ぐふぁっ」
血を吐きだし今にもことが切れそうだ。
「あ・・・あ・・・・・」
「きゃああああああああああああああ!!!!」
「わあああああああああああああああ!!!!」
この子供たちの魂の叫びは、静かな夜に響き渡る。
村の奥の藪を探索していた小倉パーティにも例外ではない。
「ぎゃあ!今の!」
「この叫び声は!?」
「ナイルたちのこえだよ!!!」
「あっちは・・・村の方からですね!!」
「クッソ!入れ違いかよ!!急げ!!」
小倉はビビをおんぶして全速力で村へ走った。
【名 前】サラン・ユル・リベラス 【クラス】スクレテール
【レベル】推定60前後
【 Next 】???
【H P】??? 【装備中】
【M P】??? 【武器】 ???
【攻撃力】??? 【頭】 なし
【防御力】??? 【腕】 なし
【魔 力】??? 【胴体】 スクレテールのローブ
【命中力】??? 【脚】 高級靴
【瞬発力】??? 【アクセサリー1】???
【 運 】??? 【アクセサリー2】???