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異世界の黒蝶  作者: ちょうちょ
~第1章 ノーザ動乱編~
16/36

導き出される解

「どどどどういう事ですか、勇者様!?」

ケヴィンは納得できないと二人に訴える。

「ここで話すとまずいな。」

小倉は目についた畑の脇の木まで二人を誘った。

「じゃあまず俺が感じた違和感な。」

小倉から畑を回った所見を切り出した。

「食われてる実の中身がそんなに無くなってない。それとバンさんだっけ?白い柄の話でどもってた。アルベルトさんに至っては俺らを見ただけでキョドってた。俺らが来たのが想定外って顔してたぜ、あれ。」

「えええー。そうですかぁ?僕らの威光に驚いていただけじゃあ?」

ケヴィンはうーんと考え込む。

「じゃあ次は俺だな。まず、畑の配置と食われた実の位置関係が滅茶苦茶だ。ランダムすぎる。もしモンスターなら畑に入った方から重点的に食べていくだろう?色んな方角から出没するわけないと思うんだが。次に、あの歯型が同じ形過ぎて不自然に感じた。生き物ならもっと大小色んな角度から噛みつくと思うんだが。」

「ええええー。そう言われてみればそんな気が・・・」

ケヴィンはううんと唸る。

「「あと足跡。」」

小倉と柳瀬の声が被る。

「村長の畑にしか足跡が無かった。」

「それ。」

「おおおおお、言われてみれば確かに!!!いやぁ~僕も気付いてましたよ、もちろん!」

ケヴィンは「流石勇者様!」なんて調子のいいことを言っている。

「ここから導き出される解は・・・」

柳瀬は小倉を複雑そうな表情で見た。

まるでどうする?と言わんばかりの表情だ。

小倉はその意図を呼んでため息をついた。

「良い村だよな・・・のどかでさ。」

三人は村の景色を見渡した。

見るとまた子供たちがせっせとバケツで生ごみを運んでいる。

目が合うと「あ!ゆうしゃさまーーー!」と言いながら笑顔で駆けて来た。

「あのねあのね、今わたしたちねー、これでポチにエサをあげてるのー!」

「すっごくかわいいんだよっ!」

「ぼくら、ひろってめんどうみてるんだ!だいぶ育っていっぱい食べれるようになったんだ!」

「大人たちにはナイショだよ!」

なんて可愛い事を言っている。

「おー、大事に育てるんだぞ。」

頭をなでなでしてあげると、子供たちは喜んでどこかへ駆けて行った。

柳瀬が心配そうに小倉を見ている。

「はぁー。でもやるっきゃないよなぁ。」

小倉は面倒臭そうにゴロンと木の下に寝転がる。

できればこんな平和な村をかき回したくない。

「まだ証拠が揃っていない。」

その横に柳瀬が腰掛けた。

「うーん、今夜畑を見回るならそこがチャンスか?」

「いや、離れて見回りした他の家が主張したら成り立たない。」

「物的証拠でも探すか?面倒くせーな。」

「見つけても作り物だと主張されて終わりかもしれないぞ?」

「だよなぁ。」

ケヴィンは訳が分からないといった表情で二人の会話を聞いている。

柳瀬はうーんとかあーとか言ってる親友が何か言い出すのを待つ。

こういう時、柳瀬はいつも小倉の行動力に委ねている。

自分の頭脳よりも小倉を信頼しているのだ。

「あー、もう面倒くせーからカマ賭け作戦で行くぞ!それでダメなら深入りせずにこの村を離れるだけだ。村の大人を全員集めろ!」

「わかった。」

「ケヴィン、お前にも一肌脱いでもらうぞ!」

「えええっ!?」

小倉はケヴィンの肩に腕をかけ悪い顔をした。



10分くらいして村の大人全員が村長の家に集められた。

と言っても四世帯しかいないので9人しかいないが。

「して、勇者様、大事な話というのはなんですかな?」

まずは村長のラルクが発言した。

「ああ、飯時にすまないな!この村の領主のご子息、ケヴィン様から大事なお話があるってよ。」

「ぎゃっ!」

そう言って小倉はケヴィンの背中をドンっと押して前に出させた。

村人は皆不安そうな顔をしている。

「ぼぼぼぼ僕が畑を見て回ったところ、多くのホカの実にしし白い色が確認された!こ、これについて何か説明はあるかな!?」

ケヴィンは一生懸命に暗記した台詞をわざとらしく言った。

「なんだって!?」

これに一番最初に反応したのは村長の息子アビだった。

「そんな話は俺は聞いてないぞ!?」

周りの村人を責めるように見る。

バンやアルベルトは困ったように顔を見合わせた。

小倉は小声で「ほー、アビさんは知らなかったみたいだな。」と相棒に耳打ちした。

「それにやはりあの白い柄・・・普通じゃないという線は当たりだな。」

なんて村人の反応を見て確信する。

「何かケヴィン様へご説明はありますか?」

さらに柳瀬が迫る。

「お、お許しください!ご報告を忘れていただけで・・・それにモンスター騒ぎでそれどころではなくなってしまったのです!!」

「そ、そうなんです!発見した直後にこの騒動ですから!!」

彼らは必死に釈明する。

アビはそれを聞いて「そ、そうか。」と少し納得しつつも「だが村長の親父や俺にくらい直ぐに言ってくれてもいいだろ?」と村人を責める。

村人は「すまない。」なんて言ってその場を収めようとしているが、そこに柳瀬がさらに爆弾を投下する。

「食い荒らされた実を見ましたが・・・そのほとんどが白い色が付いたものでしたね。モンスターは白が付いた実を好んで食べたのでしょうか??それともたまたまでしょうか?」

村人たちの顔が青くなっていく。

「そ、それはたまたまでしょう。」

「ええ、病気じゃない実だって食われてますし・・・」

「ええっ!?白色は病気なのかっ!?」

ケヴィンが思わず叫んだ。

「・・・馬鹿。」

小倉は片手で顔を覆い、柳瀬はげんなりといった感じで眼鏡の位置を直した。

「え?ケヴィン様ご存知なかったんですか??じゃあいったい何の話を??」

「そ、そういえばうちの畑に来たときは白い柄と言って納得していましたよね!?」

村人は三人に詰め寄る。

「えっ!?えっ!?」

ケヴィンはオロオロして小倉と柳瀬に助けを求める視線を送った。

「あーやめやめ!」

見かねた小倉が村人の前に出た。

「俺らもお前らも全員演技をやめて真実を話そうぜ。んなっ、村長?」

「え?村長?」

ケヴィンや村人は座ったままの村長に視線を移す。

村長のラルクは至って冷静に構えていた。

「おや?なんのことですかな?」

「村長もグルだろ?」

「何!?親父本当か!?白染病のことを知っていたのか!?」

「あなた・・・落ち着いて。」

嫁のヒラリーがアビの肩に触れ宥めようとした。

「お前まで・・・、皆、皆知ってたのか!?」

バン・アルベルト・ナターとその嫁は皆気まずそうに下を向いてしまった。

非常に気まずい雰囲気である、その中で柳瀬が説明を始める。

「まず、村のホカの実に数日前から白染病・・・というのだな、それが蔓延した。そうだな?畑の様子を見る限りバンやアルベルトの畑からか?まぁ、いい。そこで村人は真っ先に村長に相談したことだろう。そこで、白染病の蔓延の事実をモンスター被害という形で揉み消す方向になった。ここまでは合ってるか?」

「どうなんだ、親父!?皆!?」

アビはショックを受けているようだ。

バンは違うと言い放ち小倉に言い返す。

「い、言いがかりです!歯型まで付いているではないですか!」

「ああ、あの雑な噛み跡ね。悪いけどバンさん、あなたの家でアレを見つけたぜ?歯形を付けるためのアレ。ここに持ってこようか?」

「そ・・・そんなっ!確かに床下に隠したはず!!!」

「いつの間にっ!?」

バンとその嫁は慌てふためいている。

もちろん、小倉たちにバンの家を捜索する時間なんてなかった。

これは、バンの世帯が唯一子供がいないという理由で家に隠していると踏んだ、小倉のはったりだった。

「お前ら・・・!皆で俺を騙してたのか!」

アビは怒り村人に詰め寄っている。

だが、村人は暗い表情で下を向いたままアビと目を合わせようとはしなかった。

村長に至っては表情が変わらず読み取れない。

「し、しかし何故揉み消すだなんて大それたことを・・・!?」

ケヴィンは納得がいかない様子だ。

「はぁ~。お前・・・さっき俺と話したろ?助成金の話。忘れちまったのかよ?」

「そっそれは覚えています。つまり・・・?」

「つまり、病気で収穫が減ってもそれは作り手の過失ということで僅かな減税処置しかとられないが、モンスター被害となった場合、損失のほぼ全額が国と領主から補てんされるからだ。」

柳瀬が丁寧に全て説明した。

「ええええ!!そういう事か!!!」

ケヴィンはようやく納得がいったらしい、それと同時に騙されたという怒りが沸いてきた。

「よ、よくも領主であるこのハイラー家を騙そうとしてくれたな!」

当然の台詞だった。

ケヴィンは領主の代表としてモンスター被害の視察のために王都から馬車でこの村まで来ていた。

しかもこの後、ハイラー家の誇りに賭けて国へ派兵依頼までして助成金まで出すつもりでいたのだ。


大方、ケヴィンなら騙せると思ったんだろう。

だが予想外に二人の勇者まで来てしまったってところか。

小倉はこんな事を考えていたが口には出さなかった。


「この村は・・・」

ラルクがようやく口を開いた。

「・・・貧しいのですじゃ、勇者様。」

皆の視線がまた村長に集まる。

「もし、白染病の実を廃棄して残りの実だけで商売をしたとしたら、来年の収穫まで生活がもたないでしょう。ホカの実の収穫時期は年に一度。その売上からハイラー家に収める税も含めて一年をなんとか越さなければならないのですじゃ。」

「だからと言って・・・!!!」

ケヴィンが奮起するのを小倉が「まぁまぁ。」と抑えた。

「今年の白染病は異常なんだ・・・。数が多すぎるんだ!」

バンは手を強く握りしめている。

「普通の白染病は少し白い斑点ができるからわかるんだ。その実を見つけたら周りの実に感染しないように急いで処分する。それで毎年数個を処分すれば残りは無事なんだ。でもっ、今年は違うんだ・・・!」

「ああ、気付いたら実の表面の大部分が白く染まってしまった実が6~7個はできている。処分しても処分しても次の日にはまたできているんだ!!」

「毎年、ギリギリで生活しているのに全体の3~4割の収穫が減ったら・・・俺たちはもう生きていけないんです!!」

ナターも必死に訴えた。

「お前ら・・・。」

アビはもう仲間を責めることはできなかった。

生まれてからずっとこの村で生きて来たアビは一年を乗り越えるのがどれだけ大変か身に染みてわかっている。

それに今は育ちざかりのビビという愛娘もおり、今この村の置かれた危機的状況が理解できるからだ。

「そんな・・・」

ケヴィンはフラフラしながら椅子に座った。


「それで、わざわざ白染病にもなっていない村長の畑の実まで穴を開けて村単位での隠ぺいが始まったというわけか。」

柳瀬が綺麗にまとめた。

「その通りですじゃ。ケヴィン様、勇者様、申し訳ありませぬ。」

ラルクは杖をつきながらよろよろと立ち上がり、ケヴィンの前に出た。

「全ての罪は村の代表であるこのラルクが受けまする。どうか、他の者には寛大な処置をお願いいたします・・・どうか・・・どうか。」

深く頭を下げたまま動こうとしないラルクを見て村の大人たちは目が赤くなっている。

「親父・・・。何で言ってくれなかったんだ。」

アビは膝をついて愕然とその様子を見ている。

その答えを告げたのは妻のヒラリーだった。

「あなた・・・もし何かあってもあなたに罪が及ばないようにするために皆で話し合ったのよ。あなたは、あなたは次期村長だから。」

膝をつくアビを支えながら告げるその声は震えていた。


「ほらっ!」

バンッ

「ぎゃっ!」

小倉は力が出せないといった状態で椅子に座りこんだケヴィンの肩を叩いた。

「どーすんだ?次期領主様?これを仕切るのはお前の仕事だろ?」

ケヴィンはハッとして姿勢を正した。

彼は真剣な表情で何かを考えた後、大きく深呼吸して口を開いた。

「状況と真相はわかった。この件は持ち帰りハイラー家当主のハイラー男爵へ報告する。何らかの処罰は免れないと思うが詳細は追って沙汰する!それまで村長ラルク以外の民は自宅で大人しく待つように。ラルクは僕と一緒にハイラー家まで来てもらう!」

小倉と柳瀬は目を合わせて苦笑いした。

その目には「やればできるじゃん。」というような会話が含まれているように見えた。

「仰せのままに。」

ラルクはそれだけ言うと息子のアビに向き直る。

「後の事は任せたぞ。」

「親父・・・わかったよ。」

他の村人のすすり泣く音が室内に響く。


はぁ~だから嫌だったんだよ。

俺らがこの村に来たことで村を引っ掻き回すことになった。

この結末に小倉は少し自分を責めていた。

柳瀬もそれに気付いている様で小倉を気にかけている。


気まずい空気に小倉が我慢できず口を開く。

「あ。そういや、なんで村長の畑だけわざわざモンスターの足跡まで付けたんだ?」

「ああ、あれは余計だったな、それか全ての被害畑に付けるべきだった。」

最後に二人は残っている疑問を雑談としてぶつける。

「足跡?そのような偽装はしておりませぬが・・・」

ラルクは白い髭を触りながら知らないと答えた。

「え?でも確かに足跡があったぞ?勇者様も一緒に見たんだ。他の畑には無かったのか?」

アビも一緒になって混乱している。


その途端、小倉の顔色が変わる。

「まさか・・・・」



【名 前】柳瀬 拓     【クラス】ランサー

【レベル】1

【 Next 】5


【H P】 45      【装備中】

【M P】 20       【武器】   上等兵の槍

【攻撃力】 88       【頭】    なし

【防御力】1017       【腕】    なし

【魔 力】 579       【胴体】   天竜の鎧

【命中力】  6       【脚】    訓練兵のブーツ

【瞬発力】  6       【アクセサリー1】なし

【 運 】  2       【アクセサリー2】なし

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