第2話 帰ってきたカブちゃん(結構しつこいよ)
息子が初めて飼った生き物の話です。ほのぼのとしていますが、体験した私は少し気味悪く感じました。
息子が2~3歳の頃のことだったと思う。夏に,近所の方から,カブトムシを息子が頂いた。近くの公園で見つけたそうだ。虫かごに入れて,息子は「カブちゃん」と命名し,毎日食い入るように見つめ,時に会話していた。もちろん,子ども特有の一方的な会話である。
親としては,それだけかわいがっているカブトムシがやがて動かなくなる日が来るのをあまり見せたくなかった。そこで,夏が終わりに近づいた頃,息子に「カブちゃんもお嫁さんを探したいかもしれないよ。近くの森に返してあげようか」と話してみた。すると息子は,「うんそうだね。近くの公園なら,いつでも遊べるしね」と答えた。
息子と二人で近くの公園に行って虫かごを開けた。やがてゆっくりと出てきたカブちゃんは,自分の置かれた状況を分かったのか分かっていないのか,頭をひねりながら息子の方を向いてやがて羽を広げ,飛び立った。「バイバイ~また遊ぼうね~」息子の声に反応したのか,カブちゃんは息子の周りをグルグルと2~3周回転してからすぐに見えなくなった。
息子と帰宅すると・・・玄関の前に一匹のカブトムシがいた。昼間である。なぜ???昼間なのに???と思いながらも,息子は,「カブちゃん帰ってきた~」とニコニコ顔である。そのカブトムシと少し遊ばせたあと,その日の夕方また息子と公園に放しに行った。
「バイバイ~」二度目も,カブトムシは,息子の周りを2~3周して消えた。
家に帰って,驚愕したのは,またも,玄関の前にカブトムシがいたのである・・・。
断っておくが,私の家の周りにそんなにカブトムシがいるわけではない。近所の方も,最近では珍しいからと,息子にプレゼントしてくれたぐらいである。誰かのいたずらか???とも一瞬思ったが,そんな手の込んだいたずらがある訳がない。第一に,私と息子がカブトムシを放つタイミングを見計らうほど暇な人はいない。
少し気味が悪くなって,その日は,虫かごに入れておくことにした。次の日は,息子が幼稚園だったため,息子の了解を取ってから,私が放ちに行った。帰って来たとき,また玄関にいるのではないか・・・と不安に思ったがそれはなかった。
しかし,二度あることは,三度ある。その日の夜,網戸に張りついたのは,やはりカブトムシだった。普段は,カナブンぐらいしか張り付かないのに・・・。
「カブちゃん」で間違いないだろう。カブトムシって帰巣本能あるのかな?とも考え,調べてみたが,そんなことはどこにも書いていない。近所の公園が近いから?といっても,徒歩20分の距離である。ピンポイントで我が家に来る可能性はあるのだろうか?
妻もさすがに気味悪がったので,(息子はカブちゃんが言葉通り遊びに来てくれていると信じているが)車で10㎞ほど離れた場所で放した。
さすがに今度は帰ってこなかった・・・。と思いたい。その年の冬,大掃除の時に玄関の靴箱の裏から,カラカラに乾いたカブトムシの死骸が出てきたのである。
やさしい感想・評価をお願いします。また、カブトムシの生態について、このようなことが起こりえるのか詳しい方がいらっしゃいましたら教えてください。