第5話 ~分からない!~
第5話登場人物名前
小泉彼方:こいずみ かなた
小泉紗夜:こいずみ さや
安野渡:やすの わたる
日代明日葉:ひしろ あすは
連城成一:れんじょう なるい
星野檸檬:ほしの れもん
「檸檬さんって本当に最悪、男に媚びてるのが丸分かりなのんだよね~」
「分かる! ってこんな大きな声で喋ったら聞こえちゃうよ神奈ちゃん」
ああ、何でこんな夢見てるんだろ……この事はもう何も悔いがなかったのに……
「気持ち悪いんだよ! 死ねよ!」
ああ、場所が変わった……
「……痛い!」
トイレで、女子の集団に殴られ罵倒されている。あの時は、泣いていないつもりだったのに泣いている……泣いてたんだ……あの時。
「私達に見せびらかしたいの? 本……当に不愉快! あとさ、お詫びとしてその髪切ろうよ」
そう言い神奈はハサミを取り出し私の長い髪を無理やり切った。
「…………!」
「何睨んでるの? あんたは私達に抵抗する事は出来ないんだよ!」
そう言い私のお腹のを蹴った神奈。その友達も私を蹴ったりしている。あのときは痛かったな……。
「星野さん、ちょっと金払うからさ一緒にエッチな事しようよ」
また、場所が変わった
「……えっ? 嫌ですよ」
「何だよ……ビッチなんだろ? 早くあそこの茂みでさ」
「ちょっと……やめてください!」
学校の近くに居たくなかったから遠くの公園に行こうとしていたら、男子につけられてレイプされそうになったんだっけ……
「おい……嫌がってるだろその子」
「ああ? 何だよ? 俺達に喧嘩売る気か?」
「そうだぞ、止めとけ健ちゃん不良なんだからな」
そうだ、この時助けた人がいたんだっけ? その時私は緩んだ腕を抜けて走って帰ったんだ。あの子はどうしたんだろう、顔を覚えてない、何でその事を忘れていたんだろう。
そこで私は夢から覚めた。
「……夢で涙を流すなんて久しぶりだ」
こんな夢を見るのは今日、あいつが明日葉という友達を連れてくるからだろうな……。
私は服で涙を拭いて、また二度寝をした。今度はいい夢が見れる、そんな気がした。
檸檬の朝はいつもは遅い。いつもカーテンを閉め部屋を真っ暗な状態でゲームをしているため、日程感覚が分からない。
檸檬は寝たい時に寝て起きたい時に起きる。その為、起きる時間も寝る時間も全部バラバラだ。
そして、起きている時間何をしていかというと、ずっとゲームだ。最近はゲームをやりすぎてゲームが楽しいのか楽しくないのかが分からなくなってきた。
勿論、初めてやるゲームは楽しい。だけど、ずっとやるにつれワクワク感も無くなってくる。楽しいのは最初だけだ。だけど、最近楽しい事が増えた。
ここ最近土日以外、毎日来るようになった小泉彼方。あいつとやるゲームは楽しい。
私は中学校時代、友達は沢山いた。何故ならばゲームの様に人生をすすめるという性格をしていたからだ。その性格は正しい事しかしない間違えたことはない。
私を嫌っていた女の子もその子をゲームの様に攻略すると考えたら仲良くなった。学校一カッコイイ男の子は彼女が居たのに私に惚れさせ、その彼女は彼氏を取られた私を恨む。そうなるのは嫌だったでその子も攻略したら仲良くなった。この世は簡単だ。勉強も簡単、ゲームも簡単、人間関係も簡単。全てが簡単だった。
だが、ある日事件は起きた。ゲームでいうイベントのようなものだ。
今まで仲が良くしようとしなかった者達からの嫉妬やらのせいで虐めにあった。最初は些細な事だった。運動着が無くなるとか、陰口を聞こえるように言うとか、私はそんなのは気にしなかった。何故ならその者達に興味がなかったから。だが、日が変わる度に虐めはエスカレートした。今まで仲が良かった者もその虐めに参加し、仕舞いには彼氏にも裏切られた。たが、私はそれを学校に言ったが学校側は何もしなかった。そして、私はその学校でのゲームを終了させることにした。全員が不幸になるバットエンドへと……、それは簡単だ。
まず、学年の殆どの人間関係の裏話は知っていた。それを学年中に流してやった、そのせいで、皆の友達関係がバラバラになった、次は大人達だ。虐められている事を無視したと保護者全員に噂を流せばいい、そして悩み相談所に私はこの虐めを言った。後は大人達が勝手にやってくれた。そして、学校は連日テレビに出るほど人気になった。
そして、私のゲームが終わった。学校には興味がなくなり不登校になった。そして、月日は流れ私は鳩背高校へと入学した。だが、不登校で染み付いた怠けさが取れる訳がなく最初の2日は休んだ。
そして、意を決して高校へと行った時に小泉兄妹にあった。あの2人に会った時に胸が痛かった、怖かった。それは、知らずの間に虐めで心に負ったであろう傷が開いたからだ。
そこで、ああもう無理だと思った。そして、私はクラスのAINEにメールを送った、皆が私に距離を置くように……だが、小泉彼方だけは違った。
あいつを嫌わせる様な行動をとったはずなのに、あいつはまた私の所へ来た。次の日もその次の日も、いつの間にかあいつとやるゲームが楽しくなってきた。
今までゲーム感覚で作ってきた友達じゃない、本当の友達のように感じた。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
玄関から聞こえた彼方の声と女の声、それは昨日言っていた明日葉という人物だろう。
朝、あんな夢を見たせいで心臓がうるさい、胸が破裂しそうだ。
そんな中、私の部屋のドアが開いた。
「よっ、檸檬、約束通り明日葉を連れてきたぞ?」
「お邪魔します。日代明日葉と言います」
明日葉を見た瞬間、胸が破裂するように痛かった。見ず知らずの同年代、蘇る記憶。心の傷から血がいっぱい出てきた。怖い、そんな感情で心が埋め尽くされた。
「……あれ? 檸檬ちゃん?」
あっ……無視しちゃった……虐められる、殴られる駄目だ早く喋らないと、でも、何を喋ったらいい? 変な事を言ったらまた虐められるのではないか? どうしよう、どうしよう、どうしよう……!
「いたっ……!」
怖さで心が埋め尽くされた時、彼方が頭にチョップをしてくれた。それで、怖さに埋め尽くされた意識が戻った。
「何をやってるんですか彼方君!? 女の子に暴力を振るうなんて!? 大丈夫ですか、檸檬ちゃん?」
明日葉という者が近づいてきた、そして優しく頭を撫でてくれた。……優しい、彼方のチョップも明日葉の手も……ゲームで作った友達の優しさじゃない、本当の人の優しさだ。
それを感じた時に涙が出てきた。必死に涙を流すのは我慢した、目に涙が溜まっているのは知っている、それを見て明日葉が戸惑っているのは知っているだけど、涙はいっぱい出てくる止まらない涙が止まらない、涙が止まらない……!
「彼方君、どれだけ強くチョップしたんですか!? 大丈夫ですよ、檸檬さん後で彼方君を叱っときますから」
優しい、優しい……全てが優しい。涙が止まらない、朝あんな夢見たから、この人がどんな人か知らないけど暖かい……、だから涙が止まらない……!
「……すい……ません。見苦しい……姿をお見せしてます……すいません……すいません……」
泣きじゃくっていて何を言ってるかわからない、恥ずかしい恥ずかしいのに涙が止まらない!
「泣いていいんですよ、泣いて。辛らい事を溜め込んでも良いことはありませんよ」
「すいません……すいません……すいません……!」
その後、泣き止んだ檸檬は俺達にこの空気じゃあゲームが出来ないと言う事なので無理やり帰らされた。
「やっぱり明日葉連れてきてよかったよ……お前、絶対にいいお母さんになれるよ」
「お母さんにって早すぎますよ彼方……いいや、あなた」
「いやいやいや!? その返答は思ってもいなかった!?」
「ふふふっ、冗談ですよ……いいや、冗談じゃなくなったらいいんですけどね……」
明日葉のその言葉は何故か悲しそうだった。
悲しくしてるのは俺がいけないのか? こういう返答はどうしたらいいか分からない。
「お嬢様、お迎えに参りました。彼方様も一緒に乗っていかれますか?」
最高のタイミングで車に乗った連城が来た。連城が運転している訳ではなく、別の執事が運転してるそうだ。
しかし、こういう場合はリムジンっていうのが定番だが、明日葉が乗っているのは普通の車だ。
「明日葉が良かったら乗っていくけど?」
「断る理由がありませんよ、一緒に帰りましょうか」
その後は、俺の家まで乗せてくれてくれた。
ーー次の日ーー
「檸檬、来たぞ」
「檸檬さんこんにちは!」
「こ……こんにちは! 昨日はお見苦しい姿を見せてしまってすいませんでした」
強ばった表情で言う檸檬。俺はその姿に思わず笑ってしまった。
「……なんで笑う? 私だって……恥ずかしい」
「ごめんごめん、それじゃあゲームををやろうか」
ーー次の日ーー
「よっ、檸檬。今日は紗夜も連れてきたぞ?」
「こんにちは! 檸檬さん!」
「……こんにちは!」
「ふふふっ。檸檬ちゃん、また表情強ばってますよ?」
「……だって緊張するから」
ーー次の日ーー
「よっ、檸檬。今日は渡と紗夜を連れてきたぞ?」
「こんにちは、檸檬さん。噂に聞いていたとおり容姿は90点以上だ。素晴らしい!」
「え……あっ、ありがとうございます」
「渡君、檸檬ちゃんが困ってるだろ?」
「……いえ、褒めてもらって嬉しい」
ーー次の日ーー
「よっ、檸檬。今日は明日葉と連城を連れてきたぞ」
「初めまして連城成一と言います。成一と呼ばれるのは恥ずかしいので連城とお呼びください!」
「……あ、はい分かりました連城さん」
ーー2日後ーー
「よっ、檸檬。今日は俺一人だ」
「何だ……彼方1人だけか……」
「その言い方だと俺に不満があるとしか思えないんだが!?」
俺を無視し、ゲームを起動させる檸檬。
俺は檸檬の隣に座り喋った。
「最近、人が来るようになって迷惑じゃないか?」
「迷惑……じゃない。本当に楽しい」
「それは良かった。それで檸檬。……お前学校に来たらどうだ?」
檸檬は俺の言葉を聞いてビクッ! と体を震わせた。
「なんて、嘘だよ。明日葉達は皆、お前の事をいい友達だと思っている。学校に行っても快く迎えてくれる。だけど、その他の皆は違う。お前を警戒すると思う。ただ、俺はお前を守ってやるよ、絶対に。後は檸檬、お前が決める事だ」
檸檬は下を向いたまま動かない。檸檬も思う事があるのだろう。
「まぁ、そんな事より今日はメオリーカート∞だ。今日こそは勝ってやるからな!」
「………………行くよ……明日。学校に」
俺はその檸檬の答えに喜ばない。喜んでも意味が無いからだ。
「そうか……じゃあ、俺は明日、紗夜と一緒に迎えに来るよ。絶対に」
「……ありがと」
ーー夜ーー
最近、私はお母さん達と夜ご飯を食べるようになった。必要最低限の事しか喋らないけど、誰かと一緒に食べるご飯は美味しい。
そして、私はその静かなご飯の中で喋った。
「お母さん……明日、私学校に行くけど良い?」
お母さんは驚いた顔をしたが、その後優しい声で喋った。
「いいわよ。いつでも行けるようにしてあるから。それと、無理しなくても全然いいからね」
「……うん」
その後、私は明日に備えて早めに寝た。
ーー次の日ーー
「ピピピピピ! ピピピピピ!ピピピピピ!」
うるさいアラームを止めて、私は起きた。いつもこんなに早く起きた事はない。私は部屋にある制服に着替えた。そして、私は部屋を出て階段を下りリビングに入った。
「おはよう、檸檬ちゃん。ご飯出来てるわよ」
「……おはよう、お母さん」
私とお母さんは何も喋らなかった……いや、何を喋っていいか分からない。私が不登校になった時、私のお母さんは泣いていた。私が不登校になったのはあいつらがいけないのに、お母さんが泣くのは何か感が障るものがあったのだ。そこから、私は母と必要最低限の言葉しか交わさない。だけど、今は本当に馬鹿な事をしたと思っている。その行動のせいで私は今、困っている。
そして、何も会話をしないうちに学校に行く時間になった。
私は玄関まで行くと、お母さんも玄関まで来た。
「……行ってきます」
「行ってらっしゃい。後、絶対に無理をしないでね。いつでも帰ってきていいんだよ」
その言葉に私は心の荷がちょっと下りた感じがした。今、私は朝か心臓がドクドクいっている。その音が少し無くなった気がした。
そして、私は玄関の扉を開け外に出た。
「よっ、檸檬」
「おはよう檸檬ちゃん!」
外に居たのは小泉兄妹。2人はどれくらい待ってくれていたのだろうか? 私は心の準備が出来ず学校の授業に間に合うか間に合わないかぐらいの時間になってしまった。そんな時間になるまで何も催促せず、待ってくれたこの2人に本当に申し訳ない気持ちでいる。
でも、いっつも思ってしまうが私を学校に行かせるようにあんなに頑張ってくれるなんて迷惑じゃないだろうか? 本当は何か隠してるのではないかとずっと思っている。これで裏切られたら本当にもう立ち直れないだろう。
でも、私は2人を信じている。だから、私も頑張ろうそう思った。
「……おはよう」
「それじゃあ、学校に行くか」
そのあと私達は雑談をしながら、学校へ向かった。
「檸檬ちゃんてさ、檸檬って名前なのにレモン嫌いなのか!?」
「……そうです。親がレモン大好きなので檸檬になりましたが、あのレモンの酸っぱさには慣れません」
「でも、檸檬のお母さんのレモンジュース凄い美味いじゃん」
「だよな、あのジュースは俺も毎日飲みたいよ」
「……私もあのジュースだけは美味しいと思い、毎日飲んでます」
そんな、雑談ををしていると学校が見えてきた。雑談をしていた中でも鼓動は激しい。駄目だ……怖い。傷が痛い……本当に……痛い。
「檸檬、無理しなくていいんだぞ? 今日、無理なら明日やればいい、明日駄目なら明後日やればいい。俺は何日でも付き合うぞ?」
ああ、何だろうこの気持ち。胸の痛さと違う痛さが出てきた。よく分からない痛さだ。でも、優しい痛さだ。私はここに居るのは全部、彼方のお陰だ。その気持ちに応えよう。
「……大丈夫。2人が居てくれるから」
そうは言ったものの、心臓破裂しそうだ。駄目だ……あれに頼るしかない。私は禁断の性格を利用する。学校で授業を受けて、帰る、それを攻略しよう。
そう心で決めた途端、景色が変わった。鼓動は止み、学校へ行くのは楽しい事のように感じてきた。これをするのは間違っているのか? いいや、間違ってはない。だって、この性格が間違ってないんだから。
(はぁ~やっぱり俺は檸檬が嫌いだ。本当に嫌いだ)
檸檬の雰囲気が変わった。あの時のようにまた。
「紗夜、先に行っててくれないか? 後で必ず檸檬を連れて行くから」
紗夜は俺の目を見て喋った。
「分かった。先に行ってるね檸檬ちゃん」
そう言い、紗夜は学校へと走ってった。
流石、感が鋭い紗夜だ。今の状況を察知して、行ってくれた。
「……どうしたの?」
こういう時、檸檬の素の自分にまた戻すには時間がかかる。だが、素の檸檬に戻す方法は知っている。
「檸檬、素のお前に聞く。お前はどうしたいんだ?」
「どういうこと? これが私の性格」
俺の言っている言葉の真意を汲み取り喋った檸檬。だが、その言葉にまたカチンときた。
「お前はまた、あの性格に頼ろうとした。俺は、あれに頼って学校に、行って欲しくない」
ただの俺の我儘。だが、俺はこの檸檬が大っ嫌いなのだ。
「……私は学校に行きたいそれだけ。だから、この性格に頼ってもいい。私はそう判断した」
冷静な檸檬。だが、檸檬の声色は違う。いつもの檸檬と違う。これは偽りの檸檬だ。
「俺は嫌だ。俺は今の檸檬になって欲しくない。俺は素のお前でいて欲しいんだ」
俺の言葉に、私がやっているのは当たり前だと思ってかのように檸檬は喋る。
「彼方が好き勝手で私の信念は曲がらない。私はこの性格に頼るしかないの」
またもやその言葉にカチンときた。こいつは自分を知らない。
「確かにその性格になるかどうかは檸檬の勝手かもしれない。だけどお前はいいのか?」
俺の言葉に、疑問を浮かべる檸檬。
「どういう事? この性格は何も間違ったことはしてない」
またもや、俺はカチンときた。本当に、こいつはどうしようもない。
「本当にいいのか? 本当に、本当に、それに頼っていいと思ってるのか?」
「良い! 私はこれに頼るしかない! だから、いい!」
大声を出した檸檬。俺はその檸檬の顔を見て、俺も大声で喋る。
「じゃあ! なんで泣いてるんだよ! なんで涙を流してるんだよ! 本当は、本当の自分で学校に行きたいんじゃないのかよ!?」
「泣いてる? 私は泣いてない。この性格はいつも正しい。だから、これに頼ってもいい。頼ってもいいはずなのに……なんでこんなにも胸が痛いの?」
自分の胸に手をやり自分の気持ちが分からない檸檬。
「本当にお前は自分自身を分かってないな! 学校に行きたくないならそう言えよ! 俺はお前を守るって決めた! だからお前は俺を頼れ! お前は自分で自分自身を抱えすぎだ!」
檸檬は頭の中がグチャグチャになりながら喋る。
「頼れって言われても、彼方にはもう……これ以上ないくらい頼った……! これからは私が彼方に恩返しをする番。だから、私は学校に行って彼方ともっと一緒に居て恩返しをしたい。だから、だから、この性格を頼る。間違ってないでしょ?」
俺は檸檬が自分から答えを見つける手助けをする。その為には檸檬の本心を知りたい。檸檬の本心を知るなら、俺も俺の本心を言う。
「でも、俺はそれに頼って学校に行って欲しくないんだよ……!それを使って行ってもお前はお前は傷つくだろ……! 俺はそれが嫌なんだよ」
「じゃあ、どうやって行けばいいの……!? 学校を前にすると胸が心臓が弾け飛びそう、この痛みはもう消えない消そうと思っても絶対に消えない」
檸檬は涙を零しながら喋った。そんな、檸檬に俺は揺るがない。
「いいや、その痛みは消える。消えない痛みなんてないんだ。どんな不治の病でも絶対に治す方法はある。お前のその痛みを治す方法なんて一番簡単だ。俺たちをもっと頼ればいい」
俺の言葉に、檸檬は反感する。
「もっと頼ったら恩返しできない! これ以上頼ったらもう、私に返せるものはない……!」
「返してるよ。お前はもう、俺達に本当に大きい恩返しをしてるよ!」
俺の言葉に檸檬は大声を出して言う。
「嘘を言わないで! 私が彼方達に何を返してるの!?」
これで何回目が分からないぐらい、檸檬の言葉にカチンときた。こいつは、俺達の何を見てきたんだ? 俺は、俺の気持ちをぶつける。
「お前と居る時間が楽しい、本当に楽しいんだ! お前とゲームをする時間、お前と散歩する時間、お前と明日葉と渡と紗夜と連城と一緒に居る時間が楽しい。そして俺はあいつらに! お前らに! いつも貰ってばかりだ! だから、俺の方こそお前に恩返しがしたい!」
これは俺の本当の言葉。だからこそ、檸檬はまた、戸惑う。
「そんなこと言われても、私は返せるの彼方達に……?」
涙をいっぱい流す、檸檬。そんな、檸檬につられ、俺も泣いている。
「返せるんじゃない、もう返してるんだよ」
檸檬は戸惑いながら、自分が今から言う言葉に信じられないように喋る。
「返してるなら……私はもっと頼ってもいいの?」
檸檬が意を決して喋った言葉。檸檬はこれ以上、俺に頼るなんて傲慢だと思っているのだろう。だが、俺は違う。大切な親友の心からの叫びがうれしくて堪らない。
「あああ、どんどん頼れ。俺がお前を守ってやるよ」
「……ッッッッ!」
俺はここにはいない皆の気持ちを代弁する。
「馬鹿な俺と、優しい明日葉、そして人望が厚い紗夜、イケメンで頭がいい渡、全てをサポートして、皆を楽しませる連城。この5人がお前を絶対に守ってやる。絶対にだ。後はお前の勇気と覚悟があれば、行けるよ学校に」
檸檬は頬を両手で叩いた。
「……私は行く」
「それは本心で言ってるな?」
「うん。彼方達が守ってくれるなら私はあと勇気を振り絞れば行ける」
俺はこの状況を冷静に考え、恥ずかしくなりそして思ったことを口に出す。
「なんか、ここで言うのもなんだが……無理矢理感半端なくね?」
俺の言葉に檸檬も笑いながら言う。
「それが彼方の美徳であって欠点。だけど、私はそのおかげで、正解が分かった。ありがと、彼方」
満面な笑みで言う檸檬に俺は……
「素直な感謝は照れるな……。ほら、これで拭けよ、涙」
俺は檸檬にハンカチを渡した。
檸檬は普段絶対に言わないことを言ってしまったと理解し、頬を赤らめながら、静かにハンカチを取る。
そして、涙を拭く。
だが、俺はその檸檬の心情を知っているからこそ、困ることを言ってやろうと思い喋る。
「あれ? おっかしいなー、ハンカチ貸してあげたのに、感謝の言葉がないな」
イタズラな笑みを浮かべる俺に、檸檬は、涙を拭き小さい声で喋る。
「……彼方のバカ」
まだ、頬が赤い顔で言われたその言葉に俺はちょっといや、物凄く俺がやった行為が恥ずかしくなってしまった。
ちゃんと日曜日に投稿出来て嬉しい犬三郎で~す。今回は本当に書くのが難しかった! 次の話のストーリーが全く浮かばないので次の投稿は2週間後になるかもです。後、誤字脱字などがあったら教えてください。
追記:私はこの5話の最後の部分が皆に良いと思われているか分かりません。ですので、この5話の感想を頂けると嬉しいです。
by 次の話は檸檬をもっと可愛いキャラにしたい犬三郎