マリーアとミチ
「そうかそうか嬢ちゃんおめでとう、そうかそうか」
ローレンじいさんは空気を読まず嬉しそうにお祝いをしておりルノアはポルコに本当かよと聞き憮然としている。
「ロイおめでとう、帰ったら派手に祝うぞ」
じいさんの言葉に顔をひきつらせるしかなかった。
「敬礼」
正社員のパイロットが並び出迎える。
大臣の後ろに若く自分と同じ位の青年がおり黒い髪と黒い瞳で優しく微笑み慣れない私たちの言葉で、
「よろしく頼む」
そう言うと機上の人となった。
「まあ色々あったしあるが無事に到着をする事を考え、嬢ちゃん頼むぞ」
「ロイ夫人で良いわよ、でも言いにくければマリーアで」
じいさんは笑いルノアは苦笑いで横を向いた。
「ロイ今回は譲るわ旦那様に」
「ありがとうマリーア」
笑うしかなくエンジンをかけてもらうと港を移動し始めた。
後ろのカーチスを確認してスロットルを開けると加速して滑空する。
「あっ、御父様だ」
マリーアが堤防の突端に立つ男性に気がつき手をふると男性も手をふり私は顔をひきつらせ空へと上がった。
「燃費を稼ぐのに上空にあがるよ」
上空の警戒もかねカーチスの大型飛行艇よりも上位に位置して進む、その後ろに正社員の飛行艇が飛び護衛と言うならもう少し前に出なければならないのにと思いながらも前方を警戒した。
「雨雲が右から左に低空で飛ぶの」
同じ高さに雨雲が広がり右から左へ流れていく、雨雲に飛び込めば操縦は困難になるのでポルコに鏡を反射させ合図すると上空へ上がると伝えてきてカーチスは上へと上昇する。
「ポルコが後ろに上に位置しろって」
指示通り上がるとマリーアは後ろを私は前を監視する。
正社員は相変わらず雨雲のギリギリを飛び私達の真下に位置して飛んでおり何を考えているのか気になりながらも飛び続けるしかなかった。
しばらく飛び続け雨雲も後ろになりカーチスが高度を下げたときに事が起きた。
正社員がカーチスに向けて加速を始め半数がこちらに向け上昇しはじめる。
「ベルト確認、ひねり落としするよ」
マリーアに言いながらスロットルを開けて被せるように同じM5へと、
「ポルコはしばらくは大丈夫って言ってたけど、急いでねロイ」
頷きながらこちらが突っ込んでくるのを見てあわてて、逃げようとして失速しているM5を落とし直ぐに水平にひねりを入れてもう1機落とす。
まだ降下のエネルギーは失われておらず速度もこちらが上なので必死で逃げようとする2機を落とすと、
「ポルコ頑張ってる。いそいで」
マリーアが指差す方向にカーチスが見え低空で横滑りを駆使して避けている。
まだ高度の優位は保っていたので加速して攻撃を行おうと注意がおろそかになっているM5に機関銃の銃火を浴びせて落とした。
「弾はあと60発×2、注意してね」
後ろで機関銃の弾の補充をしてくれて知らせてくれる。
後ろに回り込んでくるM5を横に旋回してそのまま上昇そして失速してひねり後ろに回り込んで叩き込んで直ぐに離脱する。
残りは2機、1機がこちらに向かってきておりもう1機がカーチスに向かった。
速度はこちらが上なので上昇して同じようにひねりを入れる。しかしこの飛行艇乗りは追わずに逆に旋回して間合いを外してから攻撃をしてくる。
横滑りをしながら避けるとM5を追う、狙いを定めて撃とうとすると下降してひねりながらこちらに向いて来てすれ違う、
「あれ、フェルト」
M5に乗った正社員はフェルトで私は混乱しながら追う、追い追われながら射撃をするわけにいかずマリーアが、
「ポルコ行っちゃったよ、どうする」
そう言われこちらを睨み付けるフェルトに困惑しながらスロットルを全開にして速度をあげながら上昇して振り切る。
「汚いぞロイ、僕から父さんも飛行艇もすべて奪って、また逃げるのか」
聞こえるはずのない声を聞きながら、
「逃げたのはフェルトだよな」
そう呟きながら上昇を続け振り切ると目的の島へと急いで夕方には着水した。
「そうか」
ポルコにフェルトが飛行艇に乗っていたと言うと一言だけ言うと宿泊のホテルへと行ってしまいルノアが、
「M5の試験飛行で突っかかってきたのがフェルトだったんだ、俺もだがポルコも驚いてな」
そう言って肩を叩きじいさんは、
「フェルトも一丁前の飛行艇乗りになったか、そうかそうか」
嬉しそうに言いながらワインで孫の成長を喜び乾杯した。
翌日休日をかねておりマリーアに引っ張られて海水浴をするために浜辺に向かう、人々であふれかえっておりパラソルをたてチェアーに寝転ぶ、
「ロイ、寝てないでこっちにいらっしゃいよ」
マリーアが可愛い水着でこちらに手をふり地元の子供達と遊んでいる。
「ここ良いかな」
たどたどしい言葉で声をかけられ見るとあの黒髪の青年が立っており頷いた。
隣のチェアーに寝そべると、
「ミチと呼んでくれ」
「ロイだ、よろしく」
手を伸ばしてきたのを頷くまま同じように手をのばして握り返し笑顔で、
「どうだいここは」
「穏やかだ戦争をしてるとは思えない」
「いるとしても潜水艦だけだから船に乗ってなければ安全ですよ」
そんなことを話しながら、
「しかしわざわざ東から」
「それは国としての責任なんだよ、知らぬ存ぜぬは出来ず自らということ」
「上に立つ者のと言うことか」
マリーアを見ながら早く終わることを願いながら過ごした。
翌日、カーチスを先頭に飛ぶ、
「わかった」
ポルコが頭をかいてコックピットに乗り込みマリーアがその後ろに乗る。私の後ろはミチが希望してマリーアも珍しく譲ったのでポルコもと言うことだった。
「ここは自由だ、私には得られない自由がある」
「空は誰でも自由だよ、この操縦管をにぎれば」
「私も欲したいがそうもいかない」
彼の目には強い意思が宿りなにかが違うと思いながら王都へと帰還した。
「侍従長から聞いている。マリーアが望むらなどうであろうと祝福せねばなるまい」
国王である父から何を言われても何をされても仕方がないと思っていたが冷静に喜んでくれ祝福を言ってくれる。
「御母様は」
「まだ前線の病院から戻ってこないんだよ、娘の晴れ姿が見れたのにな」
そう言うと娘を抱き締め私に手をさしのべ、
「娘を頼む、この先どうなるかはわからないが幸せにしてくれ」
「精一杯しあわせにします。必ず」
そう言って王宮から出発して後日改めてと別れの挨拶をした。
「こないだのことすまなかった」
口髭の大尉が謝罪してくる。どうやら帝国に通じていた重臣が正式に命令したと言うことでフェルトともう一人は謹慎ですんだと言うことでポルコに言うとただ頷くだけだった。
「ロイいいかな」
後ろを振り向くと黒髪のミチが立っていてお別れを言いに来たのかと近寄り、
「帰国かい、東のはての国へ」
そう言うと表情を表に出さないミチが少しだけ笑い、
「実は伸ばしたんだ、この戦のこともっと知っておかなければと父上に手紙を出して、まだ返事はないけど必ず了承してくださる」
ミチは頷きさらに、
「ポルコ殿には伝えたんだがしばらく居候させてもらうからよろしく」
決意の顔で頷きお互い握手すると飛行艇で家路についた。




