フェルトと新型飛行艇
「北の方では毒ガスていうのがまかれて陸は地獄だそうだ」
じいさんがどこからか聞いてきた話にため息を出しながらエンジンを載せている。
「しかしこんな新型良く手に入ったな」
皆が感心するのだが、どうやら敵国から捕獲したのを製造しているらしくエンジンはこちらのを取り付けると言う事で工場から横流しをしてもらったのがバラバラのままトラックで運ばれて到着をして皆で喜んでいる。
「これは試作のM5と言うタイプ、素性が良く船体を小さくしたものだ」
ポルコが説明をしてくれ数日で組み立て終わるとポルコルノアが試験飛行を行う、
「ウズウズするだろうが何があるかわからないからな待っていろよ」
ルノアが手をふり海面を滑走して飛び上がる。
「軽くて良さそうだね、早く乗りたいな」
今回の横流しはマリーアが父親に頼んでの事もあったのでスムーズに行えており嬉しそうにしている。
今回問題がなければ私はM5に乗りカーチスに代わりに誰をのせるかと言う話もしており、カーチスの技術者も色々組み立てを手伝いながらあれやこれや改造をしていきたいと希望していた。
二人を乗せたM5は始めは色々確かめるように飛び着水してまた飛び上がる。
「本来のエンジンよりパワーは全然上だからな機体のねじれ等で補強が必要かな」
そう言いながら何時ものように説明と対応策を教えを受けながら降りてくるのを待った。
「あれ、正社員の飛行艇」
ポルコの飛行艇と同じ型式の飛行艇が2機で飛んでくると1機が突然旋回して絡み始め、ルノアが機体をひねりながら避けて上昇する。
最初は遊んでいるのかと見上げているとそう言うわけでもなく必死に正社員が絡んでおりルノアがあしらっているのを見上げているとじいさんが、
「好きな恋人にあしらわれている青二才だな」
面白そうに言うとマリーアが興奮して、
「あれは女か、そうなのか」
例えを本気にしてしまいじいさんを苦笑させ、
「そのくらいの情熱があると言う例えだ、まあ覚えがない訳じゃないけどな」
「どんな覚えがあるんだい」
ドーラばあちゃんが後ろから現れじいさんがあわてて、
「お前にバラの花や美しい首飾りなどを贈って情熱を注ぎ込んだだろう、忘れたのか」
そう言って顔をひきつらせていると、
「まあそういうことにしておくからね」
そう言うと笑いながら女性達と行ってしまった。
「息が切れたようだな」
そんな話をしているうちに正社員の飛行艇はよたよたと離脱をしてポルコ達は着水して戻ってくる。
声をかけようとしたがポルコは口を結び難しい顔で工場へ入りルノアは肩をすくめながら南西の空に消えていったM5を見つめていた。
「スロットル開け方に注意しろ、機体が前より軽くて良い動きをするからな」
機体の構造が変わったことにより余分な補強が要らず、さらにエンジンが強力のためカーチスの技術者が補強を的確にいれてくれたM5に初乗りすることになり、
「一人前だ一人で出来るな」
ポルコに言われ不安はあるが大きく頷きながらスロットルを開けて水上を滑り始め大空へと飛ぶ、左右に機体を旋回すると以前とは比べ物にならない動きを見せてくれ嬉しさが込み上げてきて港の上を旋回する。
カーチスとは違い小さく回りながら眺めマリーアが手をふってくれるのを手をあげて返事をして着水をした。
翌日からポルコの技術を座学でマリーアと共に習いながら午後空を代わりばんこに飛び回りひねり込み等を実戦する。
「お嬢ちゃん、何度言えばわかるんだよ、そこはおもいっきりでするもんじゃなくためながら最初は繊細にそして切れこまないとだな」
「繊細にってどのくらいよ、少し切ったら足らないやらなんやらわからないもの」
ポルコとマリーアの意地の張り合いは最近の風物でありじいさんやルノアは始まるとワインを片手に観戦する。
「スロットルを絞りながら機体が進もうとするのをやめ始めた時に切り込んでいくんだよ」
「進もうとって落ちちゃうじゃない、ロイなに笑ってるの自分ができたからって説明できないんじゃ出来たことにならなんだからね」
見事なとばっちりでこちらを見るのでじいさんやルノアに助けを求めるが横を向いてる。
「ずるい」
「何がずるいのよ、ずるいのは貴方でしょ自分ばっかり出来てなぜどうしてそうなの」
幼児のだだっ子と思える行動に何も言い返せずまたポルコと言い合いを始めている。
「マリーア、僕の後ろに乗ってみて正しいかどうかわからないけど説明するから」
終わりない親子喧嘩のような二人に提案をする。
M5にお互いの体をくっつけて加速する。浮いた瞬間に上昇して高度をとると後ろを見て近いマリーアに顔を赤くしながら上昇をしてスロットルをゆるめると失速しはじめる。
「マリーア、飛行艇がプロペラの影響がなくなりねじれがなくなり、この今の状態で切れば」
そう言うと不意に下に飛行艇が向いた瞬間スロットルを開けて加速する。
「スロットルを開ければ確かに左右で旋回するのに違いがある。そうそうなんだ」
納得しながら次々とポルコから習った事をさせられ疲れながらようやく着水した。
「ありがとう、と言いたいところだけどだらしがないです。そのくらいで疲れるなんて鍛え方が足りないんじゃなくて」
何時間も後ろを注意して説明しながらわからなければ繰り返していた事を忘れたのかひどい言葉に何も言い返せずそのまま飛行艇をおりると座り込んだ。
「おつかれさん、教え方うまいな」
ルノアが誉めてくれじいさんが、
「でも恋はマイアリーノだな、お前の年頃なら恋のひとつや二つあるだろうて」
「相手は王女だし、向こうが拒否するよ」
そう言うと笑いながら、
「恋に地位も名誉も関係ない、俺だって若い頃はうら若き伯爵令嬢の部屋に忍び込み」
後ろにドーラばあちゃんが仁王立ちしているのをルノアは笑いながら「仕事仕事」と立ち上がり、私は多分顔色が青くなる。
「おれの話聞いてるのか、それでな」
「聞いてるわよ、ところでそのご令嬢とは何時つきあったんだい、聞かせてほしいね」
ばあちゃんが横に座ると、
「いや、その、何時だったかなロイのように若い頃かな、あはははは」
「今夜ゆっくり聞かせてもらうけど、いいかいロイ、この人の言うことにも一理ある。地位や名誉でこの人と結婚した訳じゃないからねローレンにほれてつき合ったんだよ、結果を恐れるんじゃないよ行動したものが結果を出す。この人がそうだったように」
ばあちゃんの話を頷きじいさんも良い話だと頷く、
「まあ浮気をしたら承知しないからね、わかってるわよね」
ローレンが必死に何度も頷きばあちゃんが戻っていくと歓声がわき、
「手、ゆるめてるんじゃないよ、いつ敵が来るかわからないんだからね」
そう言いながら照れ隠しなのか事務所へと行ってしまった。




