少佐
「今回は砲陣地の爆撃だ、カトンボも飛んでる中を横断して後方爆撃を行う」
1週間後、あの女男もやってこず次のミッションが伝えられる。
「正社員(正規軍)と合同ってのがいけすかん」
ローレンじいちゃんが怒りポルコは苦笑しながら説明を続ける。
「敵の司令部に爆弾を落としてとんずらする。飛行艇の中では圧倒的に我々が早いからな」
「正社員のお坊っちゃまがわざわざ出来るとは思えんが、しかし山岳の湖での補給こりゃ難問じゃぞ」
ルノアも同意して、
「そこより北に少しいけばもっとでかい湖もあるはずだが」
「永世中立と宣言しているから使えるのはここだし標高も350m程だからな」
「道理で遠回りするわけだな、爆装はそこでと言うことか」
確認をしながら質問を行うと工場から引き出して水面に浮かべ発進した。
「500kmか、そして補給で往復1500km、補給をして500km、試金石だな」
ポルコが呟き進路を変更して飛ぶ、
「坊主見てみろ、あれがアルプスだ」
右手には白いそして高く雄大な山々が連なり見とれてしまう。
「戦争が終わったら避暑地をつなぐ飛行艇で輸送をしたいなどうだ」
私は山に見とれながら何度も声をあげ同意する。
「奴等も一緒か、足を引っ張らなければいいが」
ルノアが言う奴等とは同じ飛行艇乗りでありポルコと同じ飛行機創世記の仲間だったと聞いていたが、
「ブルーノから発光信号、ワレニツヅケです」
ブルーノと呼ばれた機体はエンジンが左右に二基ずつ4発だがカーチスに比べ船脚は遅い、
「返信、ワレゲンソクデキズシセンコウスル」
そう返すと艇を近づけ罵詈雑言を言いはじめたがしばらくするとエンジンが加熱して速度が落ちて後方へと下がっていく、
「昔からまったく変わらんな連中は飛行艇もだがポルコそのままいくよ」
ルノアがそう言うとエンジンの回転を少しだけあげて目的地へと進む、
「あれが目標の都市だな、渓谷沿いを西にそして北に湖を経由して西で通り抜けるが」
「一度降りて点検と天気の確認をするぞ」
ポルコがルノアに伝え私は前を見ながら渓谷を楽しみ右へターンしながら湖へと着水した。
「フェルトとロイ、機体の確認をするぞ」
ルノアがそう言うと桟橋にロープで飛行を係留して各部のまし締めやエンジンの調子を見る。
「ここは2000mはあるからな空気も薄くパワーも落ちるし焼き付きに注意だ」
私に整備のいろはをルノアが教えてくれ音で気になった部分を調整していると上をブルーノ達の機体が飛び越えていき左へ回頭していく、
「みろパワーの落ちたエンジンを無理矢理回せば、ほら止まったぞ」
一番後ろで飛んでいた飛行艇が2基あるエンジンの後ろが止まり速度を下げはじめ慌ててこちらへ戻ってこようとする。
「そんなに小さく曲がれば失速するぞばか野郎が」
ポルコが心配した顔でカンテラを持ち出して発光信号で知らせているが必死なのかそのまま続けていると失速しはじめ森すれすれにまで高度を落とし墜落した。
「言わんこっちゃない、じいさん留守番を頼む」
そう言うと私達を連れて湖の向こうの森へと走った。
「いやーなに落ちてもうた」
無精髭のむさいおっさんが豪快に笑いながらポルコをで迎える。
「その様子だと命は助かったんだな」
ポルコは胸を撫で下ろすとそのおっさんからエンジンだけは回収してくれと頼まれ前後に連なっているエンジンを森の中から見つけて人力で湖のほとりまで運んだ。
「恩にきるポルコよ、それじゃあな」
エンジンの上に座り込み私達を見送ってくれる。
「エンジンさえあれば中古のを探して何とかするんだろうさ」
ルロアがそう言うとフェルトが頷き私もそんなものかと思いながら西の空を見つめた。
「偉そうに言ったわりに遅いじゃねえか、さてはトラブルでも出たか」
先に着水していたブルーノが見下したように言うのを気にすることないポルコが、
「リノの飛行艇が落ちた。幸い命は無事だ」
そう言われてブルーノは慌てて飛行艇を見て気付いたらしくポルコに詳細を聞きポルコも話始め、私達は給油と爆装をはじめボートにガソリンのタンクを積んだのが近づき給油を行い、筏に積んだ爆弾を皆で持ち上げて艇体に取りつけ私の座席に小さい爆弾を積み機関砲の点検をはじめた。
「雨になるかもしれないから革のカバーをはずすなよ」
ルロアに言われ前回では元込め単発ライフルだったのがいきなり強力になり私をびびらせる。
その間にも正規軍が次々と着水して補給を受け準備にはいった。
「しかし国王も今更戦争参戦なんか」
「あそこまで大規模な戦いになるとはと言うことだろう」
「噂では対岸の独立を取引の材料に使われたということだ」
「俺達の場所が無くなるじゃねえか、何考えてやがる国王は」
「漁夫の利をえよったっていまさらだしな」
「まあ金払いはいいからな、俺達にとっては様々だ」
縦長の本国とは内海で反対側に位置する領地を協商国側に参戦するので譲渡すると言うことなのだが、あの周辺は飛行艇乗りの根城が群諸島にいくつかあるので困ると言うらしい。
「あらみなさん、むさい顔で何を話しているのかしら」
この耳障りな声、そう思いながら見るとランボルト少佐であり何時ものように化粧をした顔でこないだと違い皆を威圧しているようで、
「言いたい事は言わせてあげるわ、でも今回の作戦どうしても成功しないと困るのよね、あまりにふがいないとお互い困ったちゃんだから、よ、ろ、し、く」
一方的に言うとポルコの所に少佐が向かい、
「今回督戦として貴方のに乗るわ、それとこないだの件でこの作戦終了後、国王陛下から招集されているので待ってるわ」
ポルコが言う前に行ってしまった。
「こないだのって何だフェルト」
そう言われて顔を青くしてこないだの説明をしはじめる。
「自分の親に説明してないとはな」
ルロアが呆れた顔で見ており更に釣られて好印象を与えたと言うとポルコはちょび髭を振るわせため息をついた。
そんなこんなで補給整備を終わらせ夜営すると翌朝、濃い霧のたちこめる湖を誘導の船が松明をかかげ昨日の夕飯時に軍から発表のあった順番で動き始める
私達は一番奥に侵入するため1番目に動こうとルロアがスロットルを開け始めようとしたとき、
「私を忘れちゃだ、め」
そう言いながら私の席に入ってくるとポルコは顔をしかめ香水の匂いが立ち込め咳き込んでしまう。
「10時間以上かかるみたいだからよろしくね」
ウィンクをされてフリーズする私に関係なく艇は動き始め水面を滑る様に加速して空へと舞った。
渓谷を抜けるとそこは主戦上であり私が本当に体験する戦争なのでランボルト少佐が話しかけてくるのを口数少く頷く、
「ごらんなさい、あそこに何十万と言う兵がにらみあって戦っているの、すごい量の力が集められ消えていく素晴らしいわ、でも国王陛下は国民を駆り立てるのも国民が駆り立てられるのも好まない、なんと言う自堕落な」
そう言うと興奮したように見つめ続け私は地面に蛇のようにうねうねとある塹壕に人がいると言うのを驚きながらも見えないので現実みがないと感じながら空の警戒を続ける。
「あれが帝国の前線ね、空から見ると一目瞭然だわ」
特に連合国協商国側と空から見れば何が変わっているわけでもなく地上からの攻撃もなく進む、
「進路修正フタマル」
ポルコが言うとルロアが指示通り飛行艇の進路を変更して帝国の奥へと進み広大な森を飛び越えていると退屈な少佐が、
「ロイって言うんだっけ、飛行艇乗りにならずに国軍のパイロットになればいいのに、給料も出るし飛行機なんかにも乗り放題だし」
化粧の顔を近づけてくるのを顔をひきつらせながら、
「ポルコが好きだし、皆も機会を与えてくれ楽しくできますから」
「え~、それなら士官学校に推薦してあげる。私も4年目だけど出世すれば可愛い従卒なんかもつくし、どお」
従卒はどんなことをされているのかと言う好奇心と恐怖に悩まされていると、
「投下ポイント、落とせ」
どうやらその前に準備の指示が出ていたのを聞き逃したらしく慌てて爆弾を吊るしていた紐をナイフで切ろうと立ち上がると、後ろで投下した爆弾の反動で飛行艇がゆれてしまいナイフを落としてしまった。
パニックになりそうなのを押さえながら一人なら楽勝でかかめるシート下なのだが少佐がいるために落とせず飛行艇は右に旋回して離脱をはかりはじめ、ようやくナイフを拾ったときにはとうに過ぎており下には貴族の館なのだろうか白い建物が見えた。
「ロイ何やってる投下しろ」
ポルコの声に驚きナイフで切断すると小さい爆弾はいくつも白い館へ吸い込まれて爆発と油を詰めた爆弾が爆発して火災を起こした。
「あららはずしちゃったわね」
少佐は他人事のように嬉しそうに言うのを殺意を覚えながら後ろからに視線にひたすら前を見続け湖へと帰還した。
「災難だったな」
ルイスが少佐を見ながら言い、
「まだまだ若いのう若者」
じいさんに若者と言われ複雑な感じでいると、
「何があっても集中力は切らすな命にかかわるからな」
ポルコが言うのを返事と謝罪をしておわった。
夕飯を食べていると少佐が嬉しそうに腰をゆらしながら上機嫌できて、
「帝国は司令部を攻撃され混乱中みたい通信が平文で流されていて、それと通商連合からの情報微妙に間違っていてこの子が落とした白い館に司令部を移したみたい情報が流れたってことで、運が良いわねそう言うの好きよ」
投げキッスをされて血が頭から消える感覚でその場にへたりこみ、
「ラッキーストライクとか言ってたのう、こう言うのをあの海の向こうの連中が」
じいさんは笑いながらワインをのみほしポルコも大きくうなずいてワインを飲み干した。




