新たな翼
「戦争が終わっちまってこいつをどうにかしないと破産だよ」
ドーラがドーラを見上げて言う、
「確かに燃料はバカ食いするし、どうするかな」
ルノアが呟くのを聞きながら、
「改造して旅客ようにすれば、胴体もかなり幅広だからここから花の都と海運都市を結べば十分利益が出るんじゃないかな」
前から考えていたことを提案すると皆はポルコを見る。
「わかった、わかったカーチスにも交渉してからになるだろうから、おい交渉後だぞ」
皆は交渉と言った瞬間動き始めドーラノンナに戻ると機銃や装甲板等を片っ端からはずしていきローレンじいさんとドーラばあちゃんは旅客用の乗り心地のよい席を発注して私に、
「機内の設計をしてごらん、後部にはトイレもねつけるんだよ、いいね」
ドーラから言われてマリーアと共に色々考える。
「機内はクリーム色かい、座席は深緑で、左右に2席ずつ8列だから32人かい」
両側の銃座はガラスをはめこみ上も開けられて外が見れるようにしており、コックピットは簡単に仕切りを入れた。
「後ろにキッチンで軽食でも出すってことかい」
ドーラが聞くとマリーアが頷き、
「温かい紅茶とコーヒーをそれとサンドイッチを出そうかと」
「ならテーブルがいるね、大きくなくてもいいけど乱気流で危ないよ」
「大丈夫、席に折り畳みの机をおいて窪みをつけて動かないようにするから」
「そうかい、それとせっかく機内をきれいに塗ってるなら室内灯を明るいのを」
そう言うとマリーアは頷き作業場に戻って行った。
「他にも考えているだろう小僧」
「カーチス会社にも行ってみたいし、ミチの祖国も行ってみたいし」
「だね、と言う事は世界一周の旅になるね」
そう言いながらポルコがあきれた顔で見ている間もドーラノンナは旅客用の飛行艇改造されていった。
「カーチスから返事が来たぞ」
ポルコが大声で皆を呼ぶと嬉しそうに集まってくる。
「返せとか言われるって事は考えてないのかお前達は」
「だってポルコなら必ず返さなくていいって言ってくれるし、もし言ってもここまでしたんだからね」
「ねじゃねえんだお嬢ちゃん、幸い仮つづけることはできたが」
そう言って私を見て、
「CRー0は返さなきゃならなくなった、シュナイダートロフィーを盗るんで研究をするのにと言うことらしい」
ポルコが言うとローレンが、
「なにっ、てことは敵じゃねえか、敵に塩を送ることなんかすんな」
顔を真っ赤にして言うのをポルコが苦笑しながら、
「じいさん、敵が俺達に塩を送ってくれたんだ」
「ほう、そうか中々やるなカウボーイめ」
そう言うと次回開催されるシュナイダートロフィーの話で盛り上がっていった。
「この子ともうお別れなんだね」
内海を下にマリーアが操縦して私は後ろから見ている。
「頑丈で無理しても全然問題なかったからね」
ついこないだの戦争の事を思い出しながら雲が少ない空を見上げ視線を落としていくとあるものを見つける。
「右下、あれってブルーノだよね」
「どこどこ、あっまたやってる」
白い客船の周りを旋回しながら空に向けて発砲している。
「もう、暇だからって、しっかり捕まっててね」
マリーアはそう言うと右へとダイブしていった。
旋回しているブルーノの前にマリーアは警告射撃を行う、あわてて急旋回しながら回避していくブルーノ達の横にマリーアが並ぶと、
「ブルーノ、そんなことしてちゃダメ」
「なんだ嬢ちゃんかい、いいんだよどうせ保険で支払われるからな」
マリーアがこちらを見たので頷くと、
「怪我させちゃ絶対だめだからね」
そう言うとブルーノは手をふり、
「わかったよ、まったくしょうがねえな、空賊がそんなこと考えてなんてな」
そう言うと離脱して客船を追いかけていった。
「私達も貧乏になったら空賊するしかないのかな」
帰ってきてポルコの前でマリーアが呟くのを聞い大笑いを始めると、
「そいつはいいな、賞金首で海を飛び正社員とやりあうのもいいかもな」
そう言うと大笑いで酒をのみマリーアは、
「じゃあ私はロイとポルコを捕まえるからね」
ポルコは目を大きく開いて驚きルノア達と大笑いをして直ぐに、
「その程度じゃまだまだ返り討ちだぞマリーア」
「飛行艇を返すまで乗ってあっと言わせるからね、いーだ」
そう言うと皆で笑って楽しく夕食をとった。
翌日ロンドンまでの航路の話がついたのか1週間後に出発することにしてカーチスの返却は4日後となり練習がてらマリーアの実家に向けて飛ぶ、
「お父様、お母様お久しぶりです」
マリーアの実家は自分にとっては窮屈だけれどもそれを出さないようになるべく遠くから見るようにしており、
「婿殿よ、あの戦いでは活躍したようで軍務大臣も誉めておったわ」
頭を下げ礼を言うと後は家族に任せて買い物をする。
「色々あるよなドーラもだけど」
リストを見ながら指定した店に行き購入していき配達を頼むとCRー0に戻り夜間飛行に出る。
満月の月明かりに照らされた内海を当てどなく飛び時折照らされて浮かび上がる船の航跡を見ながらゆっくりと旋回させる。
「満月ってどうしてこんなに大きいのかな」
満月が何時もより近くに感じられ少しずつ上に月に向かうように上昇して息が少し苦しくなる高さまで上がるとエンジンを切って風にのせた。
力強い物ではないがゆっくりと旋回してはるか下に見える島を見たりしながら空が紫色に染まり始める頃に小さな離れ小島の島陰におりて浜辺にCRー0を泊めた。
靴を脱いで裸足になって砂浜に寝転ぶと赤焼けに染まる空を見ながら目を閉じる。
今までの初めて飛行艇に乗った時の事や赤い飛行機との空中戦等を思い出しながらいつの間にか熟睡していると起こされた。
「ねえいつまで寝てるの、早く家に帰りたいんだけれども」
眩しいなかゆっくりと目をあけるとマリーアが何でいるのと思ったが目がきつくほっぺたを膨らませている少女が上から見下ろしている。
「マリーアじゃないよね」
「マリーアじゃないわよシャルロットよ失礼ね」
そう言いながらしばらく考えて、
「もしかしてマリーアの旦那なのね、飛行艇に乗ってると聞いたけどこんなところで何しているの」
それはこっちが聞きたいと思いながら散歩と答えるとあきれた顔で、
「もういいわ、喉が乾いたのとお腹がすいたから準備して」
そう言われてあわててCRー0から水とワインと朝食用のバケットやハムなどをおろして準備しながら聞くと、
「ヨットでゆっくりしていたら何処かのセンスのない色の飛行艇に狙われて護衛の飛行艇と追いかけっこしてたら何か飛んできてマストを折られて、4日ほど流されてここに昨日ついたの、早くちょうだい」
バケットにハムと野菜を挟むと直ぐにとられてワインと共に食べてしまい私は非常食のビスケットを食べるはめになる。
しばらくしてようやく落ち着いたのか色々と言われてあわてて準備をしたり手助けをしてようやく飛び上がる事ができた。
「狭いわね」
口ではそう言うがシャルロットは初めてなのか飛び上がると体を乗り出して周囲を見ており、
「あまり乗り出すと落ちますよ」
と、何度も注意しなければならなくなりながら戻って着水した。
「何でここなの赤と白に決まってるでしょ、まったく使えないんだから」
赤と白ってと思っていると声がかけられ振り向くと髭の大尉が嬉しそうにはしけにおり給油ついでに接岸する。
「大尉お久しぶりです。赤と白って何ですか」
そう聞くと大尉は後ろを見て維持悪く笑いながら、
「大変だったろうお守りご苦労様、難破して行方不明になり朝から探していたんだよ」
髭の大尉は、
「公女殿下、ご無事で何よりです。私は空軍のボルネロ少佐と申します。お送りいたしましょうか」
少佐になったんだと驚きながらシャルロットを見ると、
「ご苦労、しかしこの飛行艇で帰ることになっておるから心配するな」
少佐は敬礼して私に、
「頼むぞ、護衛はつけるがな」
そう言うと給油を命令してくれ護衛を手配してくれる。
給油も終わる頃に護衛のパイロットがやって来た。
「ロイ何でお前が」
ふりかえると正社員の軍服を着たフェルトが立っておりやな顔をする。
「公女殿下、私は空軍のフェルト少尉と申します。そのような飛行艇では不便でしょうから私の飛行艇に乗り換えられてはいかがですか、そうすれば空軍でエスコートできますし」
「少尉ご苦労、このカーチス気に入ったからこれで戻る事にする」
「しかし」
フェルトが食い下がるがシャルロットが、
「良いと言っておろう、マリーアもこの者の技量誉めておったから問題あるまい」
そう言われて私は顔を赤くなるのを自覚しながら空へと舞い上がった。
「その方あの少尉と何かありそうだな」
聞いてほしくないところを聞かれる。
「幼馴染みですが何故かこうなってしまって」
「早めに仲直りした方がよいぞこう言うのは、しかしゆっくり飛ぶのう。飛ばすのじゃ」
これ以上出せばフェルトの飛行艇では追いつけないのだがあまりに言われるので加速を開始し、高度も上げろと言われ上昇すると更に追いつけずにフェルトは後方へと消え去り心の中で謝った。
「あれが我が父上の領地じゃ、美しいであろう」
海岸線沿いに多くの家と白い宮殿が見えてくる。
「あそこの港へ入る前に低空で街を周ってくれ」
そう言われて地上の人が見えそうなほどの高さでゆっくりと旋回させるとシャルロットは体を乗り出して手をふり、時々名前を呼んだりしながら着水した。
港には執事と侍女が並んで待っておりシャルロットが、
「じい出迎えご苦労、父上も母上も心配されたであろうすまない、この者はマリーアの伴侶じゃ失礼のないようにな」
そう言うと執事達は丁寧に頭を下げ、
「お嬢様を助けていただき誠にありがとうございます。よろしければ夕食をいかがでしょうか大公殿下も望まれております」
「ありがとうございます。マリーアにこちらにいることを伝えていただけませんでしょうか」
「それは、直ぐにお伝えしましょう」
夕方に戻る予定だったのを明日の朝と伝えてもらい給油をお願いして上陸した。
夕食会となりシャルロットの両親である大公夫妻と過ごしながらおもむろにシャルロットが、
「決めた。私もマリーアみたいに飛行艇乗りになる」
そう宣言してしまい周りが説得するが折れずに、
「明後日準備したらその工場に向かうから」
一方的に言われてポルコにどう説明をしていいかわからずに大公夫妻から念を押されて翌日マリーアを迎えに飛んだ。
「シャルロットらしいけど本当に来るけど大丈夫なの」
頭を抱えながらマリーアが操縦して離水、みんなの待つ港町へと戻った。
「で、その跳ねっ返りが来るが本当に乗せるのか嬢ちゃん」
ポルコが呆れたように言いながら確認すると、
「決めたら曲げないから、ポルコごめんなさい」
頭をかきながら来てから考えるぞと言い返却のためカーチスをばらし始めた。
主翼を本体から外して燃料も抜く、送られてきたときの木箱を準備して枠で囲い木の板を打ち付けるとトラックに載せて港へと向かう、
カーチスの技術者は1人だけデーターを取るのにこちらに残り後は帰国となり船に積まれ出港の汽笛が鳴らされると皆で手をふる。
港からでると直ぐに皆で改造が終わったカーチスを試運転と共に離水させて船の上を何度も周りながら送り出した。
「行っちゃったね」
マリーアはCRー0に愛着がわき始めていたので寂しそうに見送る。
「これの操縦をポルコから習えばいいし、僕もコウパイロットだからね」
今回からポルコは飛行艇の後方でドーラとローレンと共に裏方にまわりルノアと私で交代で飛ばすことになっていているにだが、
工場に戻ってきて電信を読んだポルコが頭をかいてこちらに渡してくるのを見ると、
《今回の旅客は国王夫妻と大公夫妻と随行員なり》
「初の旅客とはいえ、連絡をしてくる」
あわてて事務所からでていきマリーアを呼んで見せると、
「それでか、父も母も旅客の話をしたら楽しみにしていると、大公はシャルロットだよね」
そう言いながらクスッと笑うとポルコが出ていったわけを納得して、
「乗客用のは私が準備する。ロイ紅茶とかカップとか買ってきてるから積み込んでおいて」
頷き鞄から色々取り出しては飛行艇の後部に積んでいく、
「決まっちまってもう変更は無理だと言いやがった」
ポルコが椅子に座ってタバコを吸い始めルノアが、
「ロイ任せたからな、もしミスってもかわいい娘の旦那だ、大丈夫」
「大丈夫ってポルコ」
「奥さんの両親を乗せるんだ頑張れよ」
そう止めを刺されて当日となった。
「いってらっしゃいロイ、気に入られるよいいね」
「何かあったら言いな、何とかしてやるからね」
「派手な葬式にするからね」
ばあちゃん達が早朝から見送ってくれるが心配してくれるには良いがひどい、
「さあ飛びましょう」
そして何故かシャルロットが私の後ろの補助席にローレンじいさんと並んで座っておりポルコ曰く、
「居ても邪魔なだけだ、マリーアとドーラがいればいい」
そう言って席を設置させると迎えに離水した。
「上昇はゆっくりと」
「もっと早くあがろう、お父様お母様にも早く景色を見せたいし」
シャルロットが言うのを苦笑しながら飲み物を安定するまで出さなければある程度ならいいと言ってくれ上昇角をあげていく、シャルロットは上の銃座跡に上ると嬉しそうに声をあげておりローレンが飛ばされないように見張ってくれている。
ゆっくりと降下して着水をすると髭の少佐が出迎えてくれ国王夫妻と大公夫妻はもう少しで到着すると伝えてくれ補給をしながら待機する。
「1400km満タンにして高空で飛べば問題ないですよね」
ルノアに聞くと計算尺を取り出して向かい風でも問題ないと教えてくれる。
「到着したぞ」
ポルコが言うので皆で出て出迎えをする。
「ロイ君よろしく頼むよ」
国王に言われ返事を返し王妃が、
「マリーア楽しみにしてますよ」
そう言うと機内へマリーアが案内をして大公がこられる。
「お父様お母様」
シャルロットが大きな声で出迎えてくれ大公は私の顔を見て顔をひきつらせながら機内へと入っていった。
「点検項目問題なし、計器類燃料も問題なし」
はしけが外されて港外へと進路をとる。
スロットを波が高いので調整しながら出ると風向きと波の向きを確認して加速した。
本国だけの護衛なのか正社員の飛行艇が追従しておりフェルトもいる。
丁寧に離水すると北西へと進路をとった。
「このまま上昇するのはいいけど」
ルノアに後ろが見えるミラーを見ながら言うと、
「気にしなくていい、予定道理上昇を」
そう言われてエンジン出力を上げてぐいぐいと上昇して引き離してしまった。
「なんだ、空軍も大したことないのね」
シャルロットの言葉に、
「向こうは旧式も旧式、こっちはまだ新型でエンジンの大きさも個数も違うからね」
「そうなんだ、だからこないだ送ってもらった時も離されちゃったのね」
後ろを見たい様だがポルコから指示通り動けないならパラシュートにくくりつけて放り投げると言われマリーアからもポルコならするよと言われて座席に座ってシートベルトを着けて大人しくしてくれてる。
目の前に白い雪をたたえている山脈を越すのに戦争中に飛んだ回廊を抜けていき近づくと後ろから歓声が上がる。
紅茶と軽食を出し始めたようで知らせるランプが点灯して優しい舵を心がけていく、眼下には湖が見えてきて懐かしく感じながら峠を越え国境を越えた。
「天候が悪いな」
山特有の雲が峠を越えると立ちこめてきたのでシャルロットに後ろにシートベルトを着けて機体がゆれるので注意をしてきてと頼んだ。
「どうする代わるか」
ルノアが心配してくれたがもう少し頑張ってみると答えコックピットの窓ガラスに雨が当たり始めたので雲に上に出ようとさらに上昇した。
「乱気流だ、スロットルの調整はこちらでするから操舵に集中しろ」
雲の中は荒れており風が前から来たと思ったら後ろから押し出されコンパスを見ているとまっすぐのつもりでも曲がっていく、
「後ろからは何も言ってこないから大丈夫だろう」
安心させるように言っていたがあとで聞いてみると侍従のおっさんが落ちると騒いで降りましょうと言っていたらしい、
ようやく雲の上に出ると下は当然雲海でそこを船のように飛行艇は進みシャルロットは興奮しながら後ろへと行ってしまった。
「操縦を代わろう」
ルノアから言われて操縦管を握ったのを確認して離すとホッと一息ついているとマリーアが紅茶とサンドイッチを持ってきてくれる。
「今後ろでシャルロットと皆でこの光景に大騒ぎしてるよ」
そう言われて紅茶を飲みながら横の窓から後ろを見ると雲に船のような波が広がっており、
「綺麗だよね、海って感じがするし」
「CRー0も良いけどドーラノンナも良いよね」
そう言いながら進路を確認して雲が切れてきたので降下しながら現在位置を確認していく、
「あそこの四角い縦長の溜め池からカーチスの国のカウボーイと向かったから方向としては少し西へ流れてる」
懐かしい地上の風景を見ながら東へ少し転進して日の傾きかけた頃にヌーセ川に到着した。
「指定場所はあそこだな、ロイ南側から進入するぞ」
大きく旋回して場所を確認するとスロットルを徐々に絞りフラップを展開させ通行する船舶を確認しながら優しく着水をした。
指定場所の岸には黒塗りの車と護衛の人々が待機しておりはしけの横に進入してエンジンを停止させた。
「挨拶してこいよ」
ルノアがウインクしてチェックはしておくと言ってくれたので任せて客室へと向かう、丁度国王夫妻と大公夫妻が席を立ったところで私とマリーアを呼んで、
「素晴らしかった。今まで経験したことのない景色を見せてくれ感謝する。帰りも頼むぞ」
握手をしてくれマリーアは母親と抱き合って喜び降りていき大公夫妻は、
「なかなか面白いが、娘を頼むぞ落ち着かないがな」
母親と嬉しそうに話をしているシャルロットに大公は私の肩を叩いた。
1週間程滞在予定と言うことで私達もこちら側が準備してくれたホテルでゆっくりするはずだったが、
「花の都と海運都市への客が結構いるらしく急いで飛ぶぞ」
ポルコから言われて距離は短いので交代で休みを取りながら乗客を載せて飛ぶ、
「ロイとマリーアは明日飛んでもらう今日は休め」
そう言うとポルコとルノアとドーラとシャルロットが空へと客を乗せて海運都市へと向かいそれを見送る。
ローレンじいさんは疲れたとホテルでワインを頼んで自室にこもり、私はマリーアと久しぶりに二人で過ごしながら翌日昼間では到着に時間があるので観光をしながら過ごす。
「ドーラと話してたんだけど世界一周は何時から」
唐突に言われ驚きながら、
「資金、後はコース、季節とか色々とすることが多いからね」
「スポンサーをお父様と大公にお願いをすればいいしコースは飛べるだけ飛んで港があれば降りて補給すれば、季節は暖かい日に決まり」
確かにと思いながらポルコが戻ってきた時に聞いてみると呆れたかおで、
「ロイもだが似た者夫婦か、国王にスポンサー頼めばあれこれ面倒だし、飛べるところまでって給油できるとは限らん、季節は場所によるからな荒れるのは、まあそのぐらい気楽にしないと世界1周なんぞ無理なのかもな」
そう言うと笑って色々考えているから後でなと言って行ってしまった。
本日は私がパイロットでルノアがサポート、マリーアが客室の対応で数時間で往復する。
「すごいね、あの白い壁が立ちふさがるような感じで、でもこの空」
離水して海へとでると内海に比べて波も大きく寒そうに青い、そして海運都市の島が見えると白い壁が見えてきて次第に圧巻の規模で迎えてくれ、花の都もだが規模が大きいのだが黒煙で空は暗く低空で進入して河に着水した。
「あの壁は昔の飛行艇では越えられなかったて言ってたな」
ルノアが教えてくれマリーアが他の話もとせがんでいるので私はポルコに頼まれた用事をすませに行く、
「大きい酒場、こんなところで」
地図にかかれた場所は大きな酒場で中は昼間なのに騒がしい、
「ミスターブラウンはおられますか」
バーテンに声をかけると奥の席を指差したので向かう、もみ上げから伸びるアゴヒゲのいかついブルーノを知的にした感じの男がテーブルの上に書類を積み上げビールを飲んでいた。
「ポルコからのお使いか小僧」
小僧と言われカチンときたのでこれでも飛行艇乗りで先の戦争でも戦ったと言うと気にするわけでもなく、
「そうか、お前があの姫を射止めたナイトか」
そう言うとおわびだと酒を注文してくれ座るように促された。
「世界一周をするのに何かがあったときのための保険だ、それと世界の主要な港湾の情報で給油の有無も注文通り揃えた」
そう言うと本と地図を渡してくれ、
「自己紹介がまだだったな、ブリステッド伯だがここではブラウンと呼ばれている。そしてこの酒場が世界中の情報がすべて集まる場所で、その情報を元に保険を決め請け人を希望する貴族と契約している」
「保険とは」
「お前のカーチス、墜落したときに補償金が出るようにここで契約したのさ、落ちたらカーチスに請け負い人から全額支払われる。何もなければ掛け金を貰えると言うことだ、掛け金を決めそれを成立させるのが我々の仕事だ」
さすが海運都市と呼ばれるだけのことはあり積み荷や船そのものの航海でのリスクを情報を元に決めて掛け金の金額を決めると言うことらしい、
「ルパート卿が全額引き受けると、もの好きなじいさんでたいした目利きと強運で今まで何事もなく掛け金を受け取ったから、今回はかなりリスクがあるから心配してたが」
そう言うと酒を飲み干し、
「それと最初はカーボーイの国へ飛んでもらうからな、俺も契約書を持って飛ぶから落ちるなよ」
そう言うと豪快に来たビールを飲み干してしまった。
書類を大事に抱えて戻ると旅客がすでに乗り込み始めておりルノアと点検を行い操縦を任せると先程の本を取り出して読む、そこにすむ人の習慣や気をつけなければならない事などが事細かに書かれており読みふけってしまう。
「気にすんな、顔も少し赤いしな」
ルノアは気にせずにマリーアのゴーサインと共に花の都へと艇首を向けた。
「カーボーイの国が最初か、距離がありすぎるから北回りでとばねえとだが夏場しか港もだが波も荒いからな、半年後に決まりだな」
皆それを聞いてそれぞれの思いにはせながら外交を終えた国王夫妻と大公夫妻をのせて戻った。




