新型
「あともう一度で弾切れ」
マリーアが叫ぶが自分の手元も同じ有り様で降伏をするかしゃくだがと思っていると敵が動きだし皆無言で狙いをそれぞれつけ、目の前に来るまで引き金を引くのを待っているとエンジン音と落下する音が次々と聞こえて敵が混乱する。
「ようやく来やがったな、カーチスの野郎が良く言っていた騎兵隊のお出ましってやつだな」
正社員の他にブルーノの機体にルノアも見え大きく手をふりながら爆弾を落とし機関銃を地上に向け撃ち込み敵は逃げ惑う、
「ミチ、ついてこい」
軽機関銃を機体からはずしコートの男達が見えた敵の本隊へと走る。
爆弾と機銃掃射で馬は混乱しておりコートの男達は車にかけより逃げ出そうとしているので前に回ると残った弾を全部お見舞いしてリボルバーを構えて車の中の男達に外に出るように命令した。
「うちの若いのが世話になってるようだなおい、何処にいるか教えてくれるよな」
私は工場周辺で何度か見かけた男の眉間に銃口を向けて脅すが煮えきらない態度で誰だとか我々は参謀本部の情報課と言うのをいらつきタバコに火をつけ大きく吸い込むと奴らに大声で、
「がたがた言わずに場所を教えろさもねえとお前の頭を風通しがよくできるぜ」
撃芯を起こすとようやく観念したのか場所を言いルノアに発光信号で伝え頼む、しかしカーチスの搬出をどうするかと戻ると話を聞いたマリーアが走ってきて、
「ポルコだーいすき」
と言いながら抱きついてきてほっぺにキスをされ顔に血がのぼった。
「バカなことしてる間に戻るぞ、車が幸い1台あるからなそれで帰るぞ」
俺にも俺にもとマリーアに懇願してアッカンベーをされてしょげているじいさんとミチをカーチスに留守番に残して陸路で帰る。
今回敵国の兵に変装した将軍はすまきにされ後ろの座席でコートの男と共に跳ねる度に悲鳴をあげてマリーアが自業自得と喜びながら戻った。
「ロイ元気そうで何よりだ」
目隠しを外されるとルノアが嬉しそうな顔で目の前にいて縄を外してくれる。
ブルーノのやその他の髭面の男達が嬉しそうにコートの男達をしばいておりブルーノが、
「今回はこいつら相手だったからな手を貸したまでのこと、本来ポルコなんかに手を貸すはずないだろう感謝もいらん」
そう言って私の肩を叩きルノアは横で笑っていてご苦労さんといい、
「こいつらを人質に身代金でもせびろうかな、そうするぞ」
そう言うとコートの男達に縄を巻いて連れていってしまいルノアは帰るぞと外に連れ出すとドーラばあちゃんが待っていて、
「嬢ちゃんに心配かけるんじゃないよまったく男どもは、まあ無事でよかったよ」
そう言うと車に乗せてくれ工場へと戻った。
「到着したみたいだよ出迎えてあげな」
風呂と食事をすませているとドーラばあちゃんに言われて道路に出て出迎えると運転席からポルコと助手席からはマリーアが飛び出してきて抱きついてきた。
「心配かけてごめん」
涙をためているマリーアに謝ると首を横にふり、
「大丈夫ってわかってたから絶対」
そう言うとキスをしてくれて周りが騒ぐのをドーラがにらんで静かにさせてくれる。
「すまねえが後ろがつっかえてるんでな、それ以上は部屋に戻ってからにしてくれよ」
ポルコが嬉しそうに言うのを何度も礼を言いながら工場へと入った。
「さて後ろのを使ってカーチスを回収しなければならねえからな忙しくなるぞ」
そう言うとカーチスの技術者が、
「解体したのはそのまま船で本社に送り返します」
そう言われて皆動揺するが笑いながら、改良タイプを1機と試作の金属製の単座複葉機をその船で運んでいるので運用試験を頼むと言い皆が大喜びでコートの男と将軍を皆で担ぎ上げ正社員の駐屯所に向かった。
「ポルコすごいね、あんなにむしりとっちゃうんだから」
マリーアが喜び運転をしているポルコが大口を開けて笑う、回収用のトラックを数台とクレーン車を無償で借りだし賠償金として貴族である将軍の資産から多額の金貨をせしめることに成功をして皆で荷台やらに乗り込んでじいさんとミチが待つカーチスの所へと向かった。
夕闇のなか到着するとじいさんとミチは私の無事を喜んで出迎えてくれ、そのままドーラばあちゃんの指示で焚き火を炊いて夕食を食べその回りで楽しく踊り始める。
マリーアに誘われて踊り色々な人と交代で踊っているとドーラばあちゃんが相手でウインクしてくる。
「今回賠償金もせしめたことだし家持ちな、幸い道の反対の家が売りに出されてるからねけじめをつけなよ」
そう言いながら抱き締められ振り回されて笑いながら過ごした。
翌日はカーチスの技術者が指示を出して飛行艇の解体を始める。エンジンを5つ取り外し翼を解体して尾翼側を本体からはずしてトラックに積み終わると、
「よし周りの金目のもの全部持ってきな、ネジひとつでさえも必要だからね」
ドーラばあちゃんがそう言うと敵に扮していた正社員の装備を全て回収して使用出来ないものは資源として再利用すると言い、
「これって火事場泥棒っていうんでしょおばあさま」
そうマリーアが言うとドーラばあちゃんは大笑いして、
「男どもはただ消費していくしか能がないからね、良いねおぼえとき良い奥さんは亭主が使えなくても使うものさ」
そう笑うとじいちゃんを一斉に見て納得して頷いて本人を憤慨させた。
積込が終わりトラックは列をなして帰宅へと道を走る。
皆で歌いながら町へ戻り、工場へ入らずに港の倉庫に分解したままのカーチスを入れ戦利品を工場で下ろしてトラックを返してようやく一息ついた。
「しかし全部が全部敵の装備だろう、それも購入した良品だな」
ポルコはタバコをふかしながらコートの男達の高額の無駄遣いに呆れながら程よい物は整備して油紙にくるんで箱にしまい、使用に耐えられない物は材料によって工場に併設されている高温の炉で溶かして保管をした。
「連中の馬はロッチーニの牧場が買い取ってくれるって、ロイ1頭ぐらいどうだ」
とルノアに聞かれたがカーチスの技術者が、
「今度の船で鉄の馬が来る。一台プレゼントするからそれに乗りな」
そう言ってくれていたので断ると代わりにドーラが前に言ってくれていた家を買ってプレゼントしてくれた。
「おばあさまありがとう」
マリーアは大喜びでドーラに抱きついて礼をいう、元々工場内の一室で利便性を優先して二人で暮らしていたので初めての新婚さんとなる。
翌日から飛行艇がないので1日マリーアに連れまわされタンスや食器等を購入して幸せを満喫した。
半月後、アメリカからの貨物船が到着して試作の飛行艇が2機おろされ代わりに今までの飛行艇が積まれる。
さらにモーターサイクルと言う2輪のエンジンがついたのが箱詰めされ数台おろされた。
「2気筒V型800cc位か面白そうだな」
ポルコも興味が出たのだが新型飛行艇の組み立てが忙しく組み上げていく、色は前の機体と違いコバルトブルーに近い色で塗装され防錆を意識しており機体の中は行き来できる。
「エンジンも5機から4機に減ったが信頼性と馬力も比較にならない、そしてこれがCRー0試作も試作でカーチスDー10と言うエンジンで300km/hにどうにか手が届きそうな機体だ」
技術者は胸を張り見せてくれる。
「機体と同じ高さの上下翼にぶっとい支柱か」
ポルコがまず見ていき私に確認をしろと言う、今までのと違い剛性がすごいと言うレベルで乗り方も変わることを技術者が説明をしてくれた。
「運用のコストが段違いだな、燃料もだが破損したときのもだ」
ポルコは頭をかきながら技術者と話をしている。個人で運用するにはと言うことで正社員からの依頼を受けることも決め初飛行となる。
工場から引き出されるブルーノの機体を着水させルノアがスロットルを少しだけ開けて港外へと進路をとり皆を見てから頷くと加速を開始した。
本来ならルノアとポルコで試験飛行を行うと宣言していたのだがいざとなると私やマリーアやローレンとドーラまでも乗り込み何か言いたいポルコに歯を見せて笑顔でかえすと、
「ったくしかたねえなうちの家族は、落ちても責任とらんぞ」
そう言いながらその後ろにさりげなく座っているカーチスの技術者にもため息をついて発進を促した。
速度をあげていくが前のカーチスと違いすぐに離水せずに加速する。
重量と速度を増す設計のため距離が必要であり水上ならいくらでも距離ががせげるので皆期待しているとマリーアが、
「このまま水面を跳び跳ねて終了かもね」
そう言うとルノアは顔をひきつらせ技術者からの後ろからの指示に別にあるレバーを引いてようやく離水した。
力強いエンジン音と共に低空で滑空するとルノアは一度着水してそのまま離水する。問題がないと確認をして高度をあげ右に左にと旋回して高度をあげる。
「遠くまでみえる。王宮見えるかな」
マリーアが興奮しながら見ていると頭がいたいと言い出し技術者が高山病と同じですぐに高度を下げてくださいと言われ工場へと進路を取った。
「気を付けないとだな、エンジンも息をつきはじめていたからな焼き付く事もと言うことか」
ポルコが注意点を降りてから話し皆頷く、その後は操縦に対する機体の動きの調整でワイヤーの調整やエンジンの調整を1週間程で行うと初陣となった。
今回はコックピットにポルコが副にルノアが座り私は少し後ろの上方の対空の座席に、左右にマリーアとローレンそして一番後方にミチが警戒に当たる。
爆弾は左右の爆弾室に収納されており前のようにロープで小さなのを吊るしたりはしない、今回は念のためカーチスの技術者が1人コックピットの後ろの補助席に座り皆に見送られて長い加速のあとに離水した。
私は周囲の景色を楽しみながら軽機関銃から変更になったこないだ火事場泥棒をしたときに拾った帝国のMG08の点検を行う、飛行艇の外で射つので水冷冷却式を空冷に変更して取り回しをしやすくしており布ベルト式で250発連射ができる優れもので単座の試作戦闘機にもつく予定なので頼もしく思いながら正社員の塹壕を飛び越え帝国軍の塹壕に到達するとルノアがレバーを引いて爆弾を投下すると南へと退避を始めた。
「ロイ爆弾解放のワイヤーが引っ掛かっているようだ」
そう言われて身を乗り出して下を見ると一番手前の爆弾がまだそこにいる。
大声で伝えると命綱を確保して機体にはいつくばりながら近づく、丁度窓がありマリーアが慌てた顔でこちらを指差しポルコに何か言っているので爆弾を指差し蹴りを入れるジェスチャーをして爆弾の上に到着した。
ワイヤーの根元が引っ掛かってる。改良が必要だなと蹴りを入れ始めずりずりと爆弾がずれて落ち始めたにで窓を見ると手を前にしてストップと騒いでおり下を見ると1隻の船が岸に近づいているその上に爆弾が音をたてて吸い込まれていった。
「外れろ前と同じ命中なんて奇跡はいらないから」
そう叫ぶ私の言葉もむなしく爆弾は貨物船と思われる船の中央に落ちた瞬間、機体外壁からずり落ちそうになる轟音と衝撃波に襲われながら後方に過ぎ去っていく黒いキノコ雲をはやした船を見つめるしかなかった。
「あれほど下を見てからって言っただろう、よりにもよって火薬でも満載していた貨物船に落とすとは」
ポルコに言われて自分のミスを反省していると電話がなり運が良いのか爆沈した貨物船は帝国に弾薬を運んでいた船とわかり報奨金をもらいポルコのぼやきが聞こえてきそうだった。




