ミッション5 停戦調印式
次のミッションが追加される。
『日本とアメリカの停戦協定の調印式を行うことが決まりました。しかし、これを阻止しようとする集団が存在することが判明しました。秩序を回復させる為に邪魔な連中を排除しなければなりません』
「罠ですよね」
「もう言葉は不要だろう」
「そうですね。停戦協定を阻止したいのは傭兵組織『カラスの巣』。傭兵組織『カラスの巣』の秩序とは戦争の継続。傭兵組織『カラスの巣』の秩序を破るものは我々。そして、傭兵組織『カラスの巣』は我々を排除しようとしている」
『理由はわからないがな』と言いそうになったが止めた。俺の『言葉は不要』と言った事を台無しにしてくれた副長にそれを言ってしまっては格好悪い。
調印式は日本の戦艦大和の上で、場所はハワイ真珠湾で行うことが決定している。そのためにわざわざ戦艦大和をハワイまで移動するという。その護衛に超技術艦『隼』を使うということだ。とても面倒な話になっているが、停戦の条件にでもなったのだろうか。
戦艦大和とはウェーク島付近で合流しハワイを目指す。
ミッドウェー島を通過してミッドウェー島とハワイの中間辺りでレーダーに二つの反応が現れ、メールが届く。恐らくレーダーが捉えた相手からだろう。
『秩序ある世界に修正するそのために、私はこの時代にやってきた。
世界を破滅から救うためには秩序が必要だ。力を持ち過ぎたものは秩序を破壊する。修正が必要だ』
手旗信号で戦艦大和に退避を促す。ゆっくりと左に旋回し海域から離脱する大和。
副長は相手の情報を入手するために、傭兵組織『カラスの巣』にアクセスする。
まだ、相手との距離は500キロメートルもあるというのに相手が砲撃してくる。これまで通りに着弾前にブーストを行うことで回避する。しかし、弾は近くで爆発し、迎撃システムの一部が破損する。
「弾を回避するためにはもう少し早くブーストしないといけないか」
「迎撃システムの一部が破損。迎撃能力が低下していると思われます」
「わかってるよ。そんなこと」
俺はそう言いながら相手に対して退艦ミサイルを発射する。攻撃対象は右側の艦に集中する。相手の迎撃システムの弾を減らすことが目的だ。
単横陣で直進する二隻の敵艦に対して真正面から相手をしないように、少しだけ右に舵を切ってから直進する。
距離を詰めつつ回避を繰り返して20分くらい経過した頃、副長が突然声を上げた。
「敵艦についての情報を入手しましたが、これは罠かもしれません。ランキング1位の超技術艦『ハスラー』が2隻です」
「嘘で塗りつぶされた傭兵組織『カラスの巣』。もはや信じられる事は何一つない。ただ倒すだけだ」
敵は一隻が距離を詰めるがもう一隻が400キロメートルの遠距離から砲撃を続行する。遠距離からの砲撃はもう20発くらいは飛んで来ているがそれでもこちらが沈まないことに疑問を感じて一隻だけ距離を詰めて状況を見るつもりなのだろう。
俺は接近した敵艦とは互いにミサイルの応酬を行う。回避についてはどちらも回避するのは難しいので遠距離からの砲撃の回避に専念しミサイルは迎撃システムに任せる事にした。
「敵艦視認。超技術艦『ハスラー』ダメージ確認できません」
更に距離を詰めて両用砲の射程に収め、両用砲の撃ち合いが始まる。
超技術艦『ハスラー』に両用砲を撃ち込んで100発程で砲撃で沈めることに成功した。回避しながら攻撃を行ったいたため、いつ超技術艦『ハスラー』に砲撃が命中したかもわからない状態だった。
400キロメートルを保っていた敵艦は弾切れになったのか遠距離から砲撃は止んでいた。
「ひとまず一隻を沈めたが被害状況は?」
「両用砲が300発。迎撃システムの残弾が25パーセント」
「武器も足りなければ、防御も心もとないな」
「それでも行くんですか?」
「あれを止められるのは俺たちだけだろう」
300キロメートルまで近づく。相手はミサイルを撃ってくる。そのミサイルをブーストを使って巧みに回避する。
「すごい。神業ってのはこういう事を言うんだろうな」
「自分でも驚くほどだ」
終わってみると、僅かに迎撃システムがミサイルを落としただけで、ほとんどのミサイルをテクニックで回避して見せた。
「迎撃システムの残弾約20パーセント」
「喜ぶのはまだ早い。弾が足りるかどうか」
「敵艦視認。超技術艦『ハスラー』です。先ほどの艦と同型です」
互いに両用砲を撃ち合う。こちらから250発程撃ち込むが超技術艦『ハスラー』の迎撃システムに阻まれて命中しない。相手からの攻撃はブーストを使った回避で全弾する。
「両用砲残り50発」
「やむを得ない。戦い方を変える」
現在、敵艦との距離は5キロメートルで互いに円を描きながら航行している。相手の方がブーストを長く使用しているので円は大き目だ。
舵を反対に切って同航戦に持ち込む。海戦のセオリー通りならこの方が命中率の上がる。それは相手にとっても同じことなので有利になった訳ではない。その上で、相手の艦と距離を詰めて撃ち合う。
「残弾10発を切りました。迎撃システムの残弾約5パーセント」
敵艦との距離は500メートル。
「迎撃システムの残弾なくなりました」
敵の砲弾が艦の後部に命中し炎上する。ここで敵艦に向かって方向を変えブーストを掛ける。
「両用砲残弾0」
最後の砲撃が超技術艦『ハスラー』に向かって飛んでいくが迎撃システムに阻まれ、ついに砲撃で仕留めることがきなくなった。
相手は勝利を確信したのだろう。方向を変えることなくそのままこちらに砲撃を続ける。更に敵の砲弾が艦に命中しついに機関が停止する。しかし、ブーストして速度がある艦は少しずつ減速はするものの前進を続ける。
「衝撃に備えろ」
激しい衝撃音とともに副長が後ろの壁にたたきつけられる。超技術艦『隼』の衝角が超技術艦『ハスラー』の左舷にぶつかった。
「被害状況は?」
俺は艦内全体に被害の報告を求める。
「機関部が炎上して手が付けられません」
「総員退艦。急げ」
甲板に出て内火艇を下ろす。搭載しているすべての内火艇が下ろされたのを確認すると海へ飛び込んだ。
近くの内火艇に泳いで行き救出されると、近くの乗員の救出を急いだ。
超技術艦『ハスラー』は執拗に無人の超技術艦『隼』を砲撃していた。その砲についに超技術艦『隼』が爆破し、沈む。
超技術艦『ハスラー』はまだ浮かんでいたが、その左舷は大きな損傷があり浸水していることが外からでもはっきりとわかる。超技術艦『ハスラー』は少しずつ沈んでいき、ついに横転した。その超技術艦『ハスラー』からは誰も脱出してこなかった。
「幽霊船だったのか」
副長がそう言った時、超技術艦『ハスラー』から声がした。人ならざる機械的な声だ。
「人はなぜ秩序を否定し混沌を選ぶのか。ありもしない希望に縋るのか。
お前は自分が正しかったとそう考えるだけの確証があったのか」
そこまで言い終えると超技術艦『ハスラー』の機関部が爆発し、沈んでいった。恐らくは自爆だろう。
「自分が正しいという確証はない。ただ、貴様がいう秩序の中に俺たちの命が含まれていない。だから破壊したまでのことだ」
俺は超技術艦『ハスラー』の問いに対して叫んだ。
「幽霊相手に喧嘩売ってもしょうがないですよ。とっとと逃げましょう」
副長。どうあっても笑いを取りに行きたいらしいな。そう言いつつも平和を取り戻した太平洋に長居するつもりはないので戦艦大和のいる方角へ向かって進む。
戦艦大和に救助してもらい、ハワイへ向かい、日本とアメリカの停戦協定が結ばれた。
その後、軍隊に復帰した俺は、傭兵組織『カラスの巣』本部の調査に同行したが、爆破されておりそこに何かがあったことだけを示すオーパーツが入手できただけで、未知の技術を入手することはできなかった。そして、傭兵組織『カラスの巣』が完全に消滅したかを知るすべはなくなった。
ドイツとソ連の戦いはまだ続いており世界はまだ混乱の中にあった。
完結です。お付き合いいただきありがとうございました。
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