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ミッション4 超技術艦『ウォーハンマー』救援

 超技術艦『ヴァルキリー』との戦闘を終え傭兵組織『カラスの巣』へ帰投する最中に、救出した超技術艦『ヴァルキリー』の乗員から多くの情報を入手した。


 まず、超技術艦『ヴァルキリー』に載っていたのは元アメリカ兵で、主にアメリカのミッションをこなしていた。


 次に、超技術艦『ヴァルキリー』では超技術艦『隼』をランキング10位と認識していた上に超技術艦『ヴァルキリー』はランキング外だった。


 「妙な話ですね。傭兵組織『カラスの巣』は何がしたいのでしょうか?」


 「厄介な話だが傭兵組織『カラスの巣』は味方じゃない事だけは確かだな」


 「騙されていたというわけですね。捕虜の件ですが……」


 「なんだ?  藪から棒に」


 「傭兵組織『カラスの巣』本部の付近の無人島に捕虜を置いて行き来する超技術艦を見張らせては如何かと」


 「表向きは傭兵組織『カラスの巣』の同僚として扱ってきたことが活きるか。共に祖国を捨てたという意味では仲間と言えなくはないが、果たしてうまく説得できるだろうか?」


 「真の敵は傭兵組織『カラスの巣』かもしれないという情報は我々だけのものとはせず共有するべきです」


 「想像に過ぎない事だ。勝手な憶測で混乱させてはいけない」


 「ですが、なにもかもが不自然すぎます。超技術艦とは一体なんですか?  なぜこんな兵器が国土を持たない傭兵組織『カラスの巣』にあるんですか?  他国同士を戦わせて戦力を削ぐというならわかりますが戦闘に積極的に参加するばかりか同士討ちまでする。傭兵組織『カラスの巣』は手違いと言っていたが、超技術艦を作れるような頭脳があれば子供でも分かる手違いなんて起こすはずがありません」


 「わかっている。わかっているが、俺たちはこれから艦を修理してもらわなければならないし補給もしなければならない。全員に話すとなるとその話は傭兵組織『カラスの巣』本部にも広まる。そうすると俺たちの命が狙われる」


 「じゃあ、無人島に置いていく者達だけには伝え、それ以外には我々を信じてついてきてほしいとだけ言うことにしましょう」


 「いや、しかし」


 「あなたも欲しいでしょう。情報が」


 「あ、ああ」


 俺は副長の意見に根負けし、超技術艦『ヴァルキリー』の乗員に事を説明した上で無人島に降ろすと、傭兵組織『カラスの巣』本部に帰還した。




 超技術艦『隼』は超技術艦『ヴァルキリー』との戦闘で相当なダメージを受けていたが修理は僅か一日で終了した。


 修理中に次のミッションが追加される。それは日本からでもアメリカからでもなく超技術艦からの依頼だった。


 『こちらは、日本軍のセイロン島占領作戦に先行してマダガスカル島攻撃に参加している超技術艦『ウォーハンマー』だ。ちょっとヘマをやらかしてしまった。誰でもいい手を貸してくれ。マダガスカル島の南300キロメートルの辺りに停泊している』


 「マダガスカルって相当離れているですけど、今更間に合うのでしょうか?」


 「罠ってことだろ」


 俺はそう言いながらミッションを受諾する。


 「ちょっと待ってってもう遅いけど……罠と知りつつなぜミッションを受けるんですか!」


 「日本に加担できるミッションがこれしかないからな。罠と知りつつも乗ってやらないと相手が拗ねるだろ」


 副長はやれやれといった感じでため息を付いた。




 マダガスカル島の南300キロメートルの地点で停泊する艦がある。救援を求めていた超技術艦『ウォーハンマー』が指定した位置だ。


 ここまでの航海中に超技術艦『ウォーハンマー』の情報は調べてある。速力はこちらより劣るが火力も防御力もある艦だ。500キロメートルならこちらが対艦ミサイルで一方的に攻撃できるが、超技術艦『ヴァルキリー』の戦闘で分かっている通り迎撃システムで撃ち落とされてしまう。300キロメートルなら互いに持つミサイルで防御性能で勝てず、30キロメートルでなら相手の火力に押されて負けてしまうが、それは回避性能を計算に入れない場合の話であって回避性能を加味すれば決して近距離でも戦えないわけではない。


 「ところで2隻いるのはどういう事でしょうか?、しかも、レーダーは2隻とも敵と認識しています」


 「罠ってことだろ。さて相手を信頼している場合、どういう行動に出るべきかな?」


 「確認を取るのが一番でしょうね」


 俺は超技術艦『ウォーハンマー』に通信を送る。


 「こちら、超技術艦『隼』。超技術艦『ウォーハンマー』応答してくれ。目標地点をレーダーに捉えたが、貴艦の姿が見当たらない。現在の座標を教えてくれ」


 「こちら、超技術艦『ウォーハンマー』。まずは救援に来てくれたことに感謝する。そして、ハワイの際は俺たちの分まで仕事をしてくれたことにも礼を言っておく。ああ。わかっていない可能性もあるから言っておくがハワイの西側で待機していたのは俺たちだ」


 超技術艦『ウォーハンマー』からは切羽詰まったような状況は伺えない。むしろ無駄に時間を引き延ばしているようだった。


 「目標地点の2隻から航空機が発艦したようです」


 副長が言う。場所と戦況から考えるとイギリス軍のインドミタブルとフォーミダブルだろう。それは通信を通して超技術艦『ウォーハンマー』にも聞こえていたようだ。


 「ああ。そうだった。そうだった。俺たち位置だったな。貴様らの後方500キロメートルで貴様らを追撃中だ」


 レーダーに超技術艦『ウォーハンマー』の機影が映る。接近しているところを見るとブーストをしているらしい。これで空母と超技術艦に挟まれたことになるが、距離が離れすぎていてこれが罠ですといわれなければ気づかないくらいだ。


 「俺はハワイから撤退する日本軍を追撃するアメリカ軍を攻撃する予定だった。しかし、貴様が余計なことをしてくれたせいで日本軍がハワイを占領してしまった。やりすぎたんだ、お前はな!面倒事を増やしやがって。くたばれイレギュラー」


 そういうと超技術艦『ウォーハンマー』からの通信は一方的に切られた。


 「反転して超技術艦『ウォーハンマー』を迎撃しますか?」


 「まずは敵空母に対艦ミサイルを撃っておこうか」


 俺はそう言って対艦ミサイルのボタンを2回押す。そして続けて言った。


 「前進して航空機を迎撃した後、超技術艦『ウォーハンマー』を叩く。今反転すると航空機と超技術艦『ウォーハンマー』と同時に戦わないといけなくなる」


 放っていた対艦ミサイルは2隻の空母を仕留めレーダーから消える。




 40分後、敵機がミサイルの射程距離に入る。約80機の敵機にミサイルを次々に発射する。


 ミサイルを30発撃ったところで攻撃を止める。


 「あと10発ありますが撃たないんですか?」


 「ああ、後は超技術艦『ウォーハンマー』の牽制に取っておく」


 残り50機を両用砲で叩き落さないといけない。




 「敵機視認。複葉機。恐らくソードフィッシュ」


 イギリス軍のソードフィッシュは第二次世界大戦時すでに時代遅れとなった複葉機だったが、ドイツの戦艦ビスマルクを攻撃して大損害を与える程の実績のある航空機だ。しかしそれはソードフィッシュに危険がなかったから成せたことであり、対空攻撃の命中率が80パーセントを超える超技術艦を相手にするには力不足だ。


 敵機が10キロメートル内に近づいたのを確認すると艦を反転して、砲撃を開始する。

砲撃は全弾命中し、2分と持たず敵機を撃墜した。敵機を艦に近づけることもなく攻撃すら許さなかった。


 「残弾、ミサイル10発、両用砲350発」


 「超技術艦を相手にするには残弾が心もとないな。足らないとは思えないが」




 超技術艦『ウォーハンマー』との距離が300キロメートルに近づき、ミサイルの射程に入る。それと同時に相手からミサイルが発射される。


 こちらも負けじとミサイルを撃つが発射する数が問題だ。こちらが2発に対して相手は流れるように撃ってくる。


 相手は一定距離を保つような動きを見せたが、こちらがミサイルを温存していることがわかると距離を詰めてきた。しかし、しばらくミサイルを撃たないでいると、また距離を取る。そうするとこちらもミサイルで攻撃する。それを繰り返しているうちに両方とも弾切れになる。


 迎撃システムの残弾は相手のミサイル攻撃に半分消費してしまった。




 超技術艦『ウォーハンマー』の砲撃は最大射程距離が100キロメートルあるが、弾速が遅く有効射程距離となると30キロメートルとこちらとさほど変わらない。そして相手の最大射程距離に入った。


 「撃ってきましたね」


 「牽制だ。有効射程距離に入ればもっと激しい攻撃になるぞ」


 なおも敵艦との距離を詰める。




 「敵艦視認。もうすぐで両用砲の射程距離に入ります」


 超技術艦『ウォーハンマー』には傷一つ付いていない。迎撃システムの残弾がどれだけ減らせているかが問題だが、こちらの手数はこれまでミサイル10発であり大して効果があったとは思えない。超技術艦『ヴァルキリー』との戦闘を踏まえると両用砲の残弾で十分倒せると思うがこればかりはやってみなければわからない。


 射程距離に入った瞬間、互いの苛烈な砲撃が開始する。


 俺はブーストを小刻みに噴かせて敵の攻撃を回避する。回避できなかった弾は迎撃システムが撃ち落とす。


 互いに弧を描いて撃ち合う。




 「残弾、100発を切りました」


 副長がそう言った矢先だった。ついに超技術艦『ウォーハンマー』が被弾する。2発、3発と命中してついに超技術艦『ウォーハンマー』に火災が発生する。火災は急激にその勢いを強め爆発した。


 爆発した超技術艦『ウォーハンマー』は真っ二つになって、あっという間に海底へと沈んでいった。


 「終わってみればあっけなかったですね」


 「敵勢力がいなくなった今救助するまでが仕事だ。漂流中の乗員はいないか?」


 俺はそう言い辺りを見渡すが生存者は発見できなかった。




 「傭兵組織『カラスの巣』が俺たちを殺すつもりならなぜこのタイミングで襲ってこないのか?そして補給はできるのか?」


 傭兵組織『カラスの巣』本部への帰路に俺がつい不安を漏らした。


 「……わかりません」


 律儀に返答する副長。


 何が?と言おうとして自分の思考が独り言として漏れていたことに気づく。




 帰りに無人島に寄り超技術艦が通過したかを尋ねたところ超技術艦『隼』が通過した後、超技術艦『ウォーハンマー』が通ったらしいが、それ以外は見ていないということだった。異なる拠点で活動している超技術艦がいくらか存在しているとしても、残りの超技術艦の数はそれほど多くはないだろう。




 今回に依頼は超技術艦『ウォーハンマー』の私怨によるものとして扱われているらしく、傭兵組織『カラスの巣』本部での補給は無事受けられた。


 アメリカ軍は全戦力を投入してハワイの奪還に成功する。しかし、日本軍もマダガスカル島を占領し大西洋に進出してきたため、アメリカの艦隊は大西洋に戻れなくなった。


 イギリスは日本が大西洋に進出を阻むことができず降伏した。




 その後の依頼はすべてアメリカからの依頼だったので、その依頼を無視して日本とアメリカの戦いを見守ることにした。


 大西洋の制海権を得た日本軍は生産拠点であるアメリカ西海岸を空爆しアメリカの生産力を少しずつ削り取っていった。そしてついにアメリカは日本との停戦協定に応じた。その後、傭兵組織『カラスの巣』からメッセージが届く。


 『日本とアメリカとの間で停戦が決まりました。しかし、ドイツとソ連との戦争はまだ続いています。秩序を回復させるために排除するべき敵はまだ潰えたわけではありません』


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