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ミッション3 ロサンゼルス襲撃

 日本軍からのメッセージが届く。


 『日本は決して好んで戦争をしているわけではない。ハワイとフィリピンをアメリカに返還し停戦に持ち込むつもりだ。そして大人しくしていてもらえば平和的な関係を築けると考えている。

しかし、恐らくアメリカは戦争を止めないだろう。奴らは自分たちが正義だと勘違いしているからな』


 メッセージは傭兵組織『カラスの巣』からも届いていた。


 『ハワイが日本に占領されました。これによってアメリカは太平洋上での作戦に大きく支障をきたすことになるでしょう。

日本はハワイとフィリピンの返還を条件として停戦交渉を画策しているという情報も入っておます。

ただ日本の艦隊は停戦が決定していない状態でハワイから日本に向けて出港させたという情報が入っております。この間に返還条件となるハワイが奪還されたらどうなるかを考えていないとは思えないのですが』


 そして、日本よりのミッションが追加される。


 『アメリカとの停戦交渉は難航している。しかし、我々にはアメリカに侵攻するだけの余力はない。

そこで君たちにロサンゼルスを襲撃してもらいたい。我々は占領を考えているわけではない。相手にそれなりの損害を与えれば停戦に応じるだろう。

報酬は撃破した分だけやろう』


 つまり超技術艦『隼』1隻で殴り込みを掛けろということだ。どういう事かは不明だが傭兵組織『カラスの巣』の情報網を以てしてもロサンゼルスの戦力は不明ということだ。


 副長が話しかけてくる。


 「一体、超技術艦はどのくらいあるんでしょうか?」


 「なんだ藪から棒に」


 「一艦で戦況を一変できる艦がどれだけあるのか?  また、超技術艦にも戦艦クラスはあるのか?  疑問は尽きないですよ」


 傭兵組織『カラスの巣』にはランキングがあり上位の超技術艦はランカーと呼ばれている。未だ誰とも会ったことがないので本当に居るのかはわからないが、ランキング上位はいつも戦艦並みの砲を持つハスラー、散弾砲と長距離に特化した砲を持つヴァルキリー、速射性のある砲と防御力を高めたマギで固定されている。どれも似たような大きさであり巨大艦は見当たらない。そしてランキングは10位までしか乗っておらず、その中に我が艦はない。つまり何隻あるかまではわからない。


 「ランキングを見るだけでは全容は見えないが、ランキングに載っているだけでも世界を相手に戦えるんじゃないか?」


 「なぜそうしないのでしょう?  その方が世界平和に近いと思うのですが……」


 「わからんな。ただ、俺たちが傭兵組織『カラスの巣』にいる理由はなんだ?」


 「なんだと言われても困りますが」


 「この艦の補給が傭兵組織『カラスの巣』でしか受けられないことにある。傭兵組織『カラスの巣』ってのは魅力のない指揮官だ。何と言っても人間味を感じない。誰も好き好んでこんな組織にいるわけじゃない。お前だって日本を火の海にしろというミッションを受けるか?」


 「御免ですね」


 「それはそうとしてロサンゼルス襲撃の件をどうするかというのが今一番の問題だ」


 「日本はロサンゼルスの占領どころかハワイの維持すら難しいですからね。我々がロサンゼルスを襲撃してハワイを維持しているように見せかけるというところでしょうか?」


 「うーん。難しいな」


 「ミッションは引き受けないんですか?」


 「いや。受けよう」


 俺はコンソールからミッションを受ける。




 現在、超技術艦『隼』はロサンゼルス西方600キロメートルの地点を東に航行中である。その行く手には襲撃を予想していないのか疎らに航空機が哨戒活動をしている。


 敵の偵察機をミサイルで撃ち落としさらに前進を続けていると、流石に異変に気付いたのか30機ほどの航空機がこちらに向かってくる。


 航空機を落としただけでもミッションとして成り立つかななんて思いながら敵機との接触を待っていると北から高速で移動する物体をレーダーが捕捉する。


 「北から何か来たから。失礼。来ました。ってなんじゃこりゃ。航空機じゃない。艦です。艦が高速でこちらにやってきます」


 レーダーで敵の高度がわかるので艦と考えられるだけで、低空飛行している航空機ということもあり得るのだが、そうするとわざわざ低空飛行をする意味が分からない。そして、それだけ早く移動できる艦といえば超技術艦しかない。味方かと考えたがレーダーは敵として捕らえている。


 「どう思う機械の故障だと思うか?」


 俺は副長に聞いた。


 「どうでしょう。警戒はした方がいいのではないでしょうか。少なくとも相手はこちらを敵と判断して攻撃してくる可能性はあるわけですし」


 俺は副長の話に頷く。


 「よし。超技術艦の方に進路変更する」


 本来は艦の横側に敵がいてくれた方が攻撃の手数が増えるのだが、今回の場合は超技術艦との接触を待っていると航空機と同時に相手をしなければならなくなる。それを避けるために超技術艦の方に進路変更する。


 超技術艦との距離が400キロメートルにまで近づいたところで、相手が攻撃してくる。迎撃システムで撃ち落とそうとするが近距離で弾が拡散し、一部は艦本体に被弾する。


 「こいつはやばいです。400キロメートル先から撃ってきます。傭兵組織『カラスの巣』の超技術艦でしょうが、敵と認識して迎撃しないとこっちがやられます」


 副長が悲鳴に似た声で言ってくる。俺は対艦ミサイルのボタンを押すことでそれに応える。


 対艦ミサイルは敵艦に届く前に撃ち落とされる。敵艦も超技術艦なので迎撃システムを備えているため当然の話だ。だが俺は敵艦の迎撃システムの弾切れを狙い、続けて対艦ミサイルのボタンを押す。


 「不味い。弾が切れた。これから30分くらいは相手の砲撃を回避しつつ近づくことになる」


 30分後には相手との距離は300キロメートルになり、ミサイルの射程距離に入る。


 「それまでの間、相手の情報収集に当たります」


 副官が別のコンソールから傭兵組織『カラスの巣』にアクセスする。




 距離を詰めつつ回避を繰り返して20分くらい経過した頃、副長が突然声を上げた。


 「敵艦判明。ランキング2位の超技術艦『ヴァルキリー』。散弾砲と長距離に特化した砲を持つ速度重視の艦です」


 「なんだってそんな奴と戦うことになるんだ!!」


 俺は副長に怒りをぶつけた。しかし、そうしたところで事態が良くなる訳でもなく、副長の「そんなこと知りませんよ」という言葉で怒りが返ってきただけだった。


 超技術艦『隼』は損害は軽微ながら既に数発も被弾している上、敵艦のダメージは不明ながら攻撃や速度の低下がないことから戦況は有利とは言えない状態だった。


 「そうこう言っているうちに敵をミサイルの射程距離内に入れることができたぞ。これから反撃だ」


 ブーストを併用していたために若干の時間短縮には成功したがミサイルがどれだけ役立ってくれるかは不明だ。これも全弾撃ち落とされたら、次は30キロメートルまで近づかないといけない。これで終わってくれと思いながらミサイルを発射し続けた。


 3発目は偵察機を落とすのに使用した。


 4発目、5発目。効果なし。まあ、この程度で沈むような相手ではないだろう。


 19発目、20発目。敵の攻撃が変わり、弾が拡散しなくなった。砲を破壊できたか、弾切れか。とりあえずいい兆しだ。


 39発目、40発目。しかし、まだ敵艦は沈まない。こちらの迎撃システムの弾は切れてしまった。


 「迎撃システムが弾切れした。これから1時間以上も掛けて敵艦に接近して攻撃しないといけない」


 「敵の砲撃の間隔が長いのが救いですね。長期戦に備えて弾を温存しているのでしょうか?」


 「無駄撃ちというべきだろう。散弾砲とやらは回避が難しかったが、今の攻撃なら回避は容易だ」


 超技術艦『隼』は、敵の砲撃の間隔に合わせてブーストを行い弾を回避しながら距離を縮めていく。




 「敵艦視認」


 副長の言葉に緊張が走る。両用砲の射程まであと少し。


 3、2、1。敵艦を射程に捉えると同時に、砲撃を開始する。


 初弾命中。いや、相手の迎撃システムはまだ生きている。


 2発、3発。ミス。相手も回避行動を始める。


 「もう少し距離を詰めないとダメか」


 「これ以上距離を縮めるんですか?  胃に穴が空きそう」


 両用砲の30発目の攻撃で初めて敵艦に命中した時、敵の砲撃の間隔がいきなり縮まった。敵は本気を隠していたのだ。回避を間隔で読んでいたので計算が狂い左舷に被弾する。

 「被害状況は?」


 俺は艦全体に被害の報告を求める。


 「右舷に浸水発生。応急修理の作業に入ります」


 言い違いか聞き違いか左舷と右舷があべこべになっているが、緊急時なので無視する。


 「とにかく浸水を止めろ」


 浸水が発生したことで速度が低下するが、しかし、こちらも負けてはいない。両用砲を撃ちまくる。


 31発目からは面白いように弾が命中し、ついに超技術艦『ヴァルキリー』が沈み始めた。しかし、超技術艦『ヴァルキリー』が撃った最後の弾が超技術艦『隼』に近づく。


 超技術艦『ヴァルキリー』の砲撃は、超技術艦『隼』の目の前に着弾した。そこは恐らく浸水せずに航行していれば直撃していたであろう場所だった。


 「勝った。ランキング2位に勝った」


 副長は大喜びしているが、俺は浸水している箇所へ向かった。


 左舷の喫水線より上に当たった弾が装甲を貫通し、内部で爆発して右舷の喫水線より下に穴を空けていた。穴は大きくはあったが応急修理が完成しており、乗員のダメコンスキルの高さが艦を救った。


 「生き残れたか」


 俺たちは超技術艦『ヴァルキリー』から脱出した兵士を救出した後、傭兵組織『カラスの巣』本部に帰投しする。その道中に、傭兵組織『カラスの巣』から2通のメッセージが届く。


 『アメリカから受けた依頼と日本から受けた依頼の類似に気が付かず超技術艦どうしで戦うことになってしまい申し訳ありません。報酬は撃破した分ということでしたので超技術艦『ヴァルキリー』の報酬は傭兵組織『カラスの巣』からお支払いします』


 『日本の機動艦隊がセイロン島を強襲し占領しました。セイロン島はイギリスが支配していましたのでアメリカとの停戦交渉は本気なのかもしれません。

しかし、当のアメリカは日本のセイロン島への攻撃に大変不満を持っており停戦交渉は悪化したと言ってもいいでしょう。

なおイギリスはわずかな被害は出たもののマダガスカル島まで撤退しており、今後日本とイギリスの戦いは激化することが予想されます。

アメリカはその期に乗じてハワイ奪還作戦を計画していることが予想されます』


 「日本は戦争を止めるつもりはないという事でしょうか?」


 「いや。アメリカが停戦に応じない場合、ニューヨーク等の西海岸を火の海にすることを考えているんじゃないか」


 「まさか大西洋を戦場にしようとは……」


 「いや、そうすることで太平洋上の安全は確保できるからさ」


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