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ミッション2 ハワイ攻略作戦

 「ミッションが追加されました。追加されましたが……」


 休憩中の俺の元に副長が入ってくる。傭兵組織『カラスの巣』の艦は艦長といえども個室は与えられていない。俺が休憩している部屋は副長と一緒に使っている部屋だ。ベッドとわずかな荷物を入れるくらいのスペースが自分だけのスペースだ。


 「がどうした?」


 「はい。日本軍がハワイを攻略するらしいです」


 「そりゃそうだろ。何を今更」


 「ですので我々の仕事が問題なんです。撤退するアメリカ艦隊の殲滅が我々の仕事らしいのです」


 「なにかの間違いだろ?」


 俺は部屋を出て艦橋に急ぎ、開かれたままのメールを読む。


 『ハワイは太平洋上の最重要拠点である。ここを奪取すればアメリカも迂闊に太平洋上に艦隊を展開できまい。

日本の艦隊の総力をもってハワイを攻略するので撤退するアメリカ艦隊を撃破せよ』


 日本軍は慢心しているな。ミッドウェー海戦でアメリカの空母が三隻沈んだが、ハワイの占領ともなるとそんな簡単な話じゃない。長期戦になるし空母も全滅したわけじゃない。俺なら傭兵組織『カラスの巣』に偵察と襲撃を依頼する。


 いやいや。それは俺たちが俺たちの力を知っているからそう思うだけか。日本軍は俺たちの力をつかみ切れていないのだろう。


 ちなみに傭兵組織『カラスの巣』の情報網は尋常でなく、ミッドウェー海戦でのアメリカの損害が把握出来ている。沈没艦は全空母エンタープライズ・ヨークタウン・ホーネットと重巡洋艦ではアストリア・ポートランドが沈没している。あと若干の艦がダメージを負っている。ちなみに軽巡洋艦以下は物の数に含めていない。


 そしてそこから導き出されるハワイの空母はサラトガとワスプの二隻だ。ちなみにアメリカの残る空母レンジャーは大西洋で元気に訓練中らしい。


 それに対して日本の空母はミッドウェー海戦に参加した赤城・加賀・蒼龍・飛龍に加えて龍驤・隼鷹が合流。


 空母の数では日本が有利だが航空機の数となるとハワイに600機近くが配備されており勝ち目はないに等しい。


 その戦力差を埋める為に大和・長門・陸奥・伊勢・日向・扶桑・山城・金剛・比叡の戦艦まで投入しているがそれはアメリカも同じでペンシルベニア・メリーランド・コロラドに加えて大西洋艦隊からニューメキシコ・ノースカロライナ・ワシントン・ミシシッピを集結させている。


 「どう見たって日本に勝ち目はないですよね」


 「そうだな」


 「どうしましょう」


 副長の声のトーンが下がる。いい考えが浮かばないのだろう。


 「ハワイに突入してハワイから出撃する艦艇はすべて撤退という認識でいいんじゃないか?」


 「はぁ?  そんなことしたらこっちがやられますよ」


 超技術艦『隼』の兵装は両用砲二門400発、ミサイル40発、対艦ミサイル2発で、明らかに弾数が足らなすぎる。対艦ミサイルで空母を沈めた経験があるが、その他の攻撃がどこまで通用するかは未知数だ。


 「貴様には武士の魂はないのか」


 「あるわけないでしょ。……まさかぶつけて攻撃するって言いだすんじゃないでしょうね。確かにこの艦の先端が攻撃用に作られているとは言えいつの時代の戦い方ですか」


 「全く。いつの時代の技術なんだろうな。この艦は」


 「現代に実在しているのだから現代でしょう。まさか伝説の~とか。ロストテクノロジ~とか言い出すんじゃないでしょうね」


 副長が嫌味たっぷりに言ってくる。


 「なんにしても攻撃手段はある。そしてこの速力があれば相手の攻撃を全弾回避した後に衝角を使って攻撃することも可能だってことだ。つまり、俺はこのミッションを受けるぞ」




 ハワイ南方から侵入して暫くするとハワイの南東200キロメートル付近に待機するアメリカの艦隊をレーダーが捉える。輪形陣を敷いており機動艦隊であることが予想できた。


 ハワイの周りには多くの航空機が四方八方に飛んでおり日本軍の攻撃を待ち構えているという状態だ。


 不思議なのはハワイの西側400キロメートル地点に一隻の艦がいることだ。こちらのレーダー範囲のギリギリの位置で停泊している。レーダー上では友軍を示しており日本軍とは思うのだが、単艦である意味がわからない。


 「この日本の艦、なんでしょうね。機関が故障でもしたのでしょうか?」


 「有り得なくもない。が、もし、機関が故障したのならほかの艦で近くの港まで引っ張っていけばいい。なんにしても離れすぎているし、単艦である以上空母ということもない。気にはなるが無視しよう」


 「あなたの血は何色ですか?ミッション終了後でもいいから救出に向かうべきじゃないですか?日本軍ですよ。味方ですよ」


 「違うな。俺たちは傭兵組織『カラスの巣』だ。日本軍は今回のミッションでは味方だがそれ以上でもそれ以下でもない。日本軍なら日本軍に任せよう。それよりアメリカの機動艦隊をどうするか」


 「対艦ミサイル2発で空母二隻を沈めるのが得策でしょうね。大体の位置も把握できますし」


 「同感だ。気前のいいことを言うようになったじゃないか」


 そう副長に返事を返しながら対艦ミサイルを発射する。一発、二発。対艦ミサイルがレーダー上の反応を消す。


 「次どうしますか?」


 「よし、相手に発見されに行くぞ」


 「わざわざ見つかりに行くとか正気ですか?」


 「俺たちは対艦ミサイルを撃ったが相手はその後どう動くか?  相手からすると攻撃が飛んできた方向を警戒するに決まっている。その警戒を利用して敵を俺たちに引き付ける」


 レーダーにはこちらの方角に向かって飛ぶ航空機が捉えられていた。


 「弾が足りないならどうするか?  それは日本軍が弾を使えばいい。その日本軍の抱える問題はハワイの航空機がいることだ。なら航空機を引き受けようじゃないか」


 「相手に発見されても超技術艦『隼』の大きさは駆逐艦程度。アメリカが超技術艦の存在を熟知しているならまだしもわからないはずなのでこちらが引き受ける航空機の数などたかが知れていると思われるのですが……」


 「視認される必要はないさ。定時連絡くらいするだろうから近辺の偵察機を片っ端から落とす。そうすることで機動艦隊などの大部隊がいるように見せかける」


 「ふふふ。正気の沙汰とは思えないですね。我々が犠牲になって日本軍が勝利を収めるというわけですね」


 超技術艦『隼』の速力をもってすれば多くの攻撃は回避可能だろうから犠牲になることはないと考えているが、あくまでも俺個人の考えであり、犠牲になる可能性がゼロなわけではない。だから「まあそういうことだ」と言っておくことにした。




 射程距離に入ってきた偵察機をミサイルで落とすこと10機程度。ハワイからこちらに60機程度の航空機が飛んでくる。


 「ミサイルだけでは足りませんが、ミサイルは全弾使用しますか?」


 副長の提案に俺は少し考えて言う。


 「10発だけ使用して残りは両用砲で迎え撃とう」


 ミサイルを撃って航空機が50機に減る。航空機はミサイルという未知の攻撃に怯むことなくこちらに近づいてくる。


 航空機を視認する。といってもなにかある程度のもので目のちらつき程度のものだ。レーダーがあり方角がわかっている上で目を凝らして初めて見ることができるレベルだ。超技術艦の性能を知らない日本やアメリカの見張り員には申し訳なく思えてくる。


 「両用砲の射程内に航空機が入りました。撃たないんですか?」


 両用砲の射程は30キロメートルもあり戦艦の射程距離に匹敵する。しかしそれは対艦攻撃の射程であり対空攻撃となれば射程距離は狭くなる。


 相手もこちらに気づいたらしく角度をこちらに向る。


 「じゃあそろそろ攻撃しようか」


 2秒に1発ずつ航空機に対して攻撃する。1発撃つごとに航空機が1機また1機と落ちてゆく。命中率80パーセント以上の確率で撃墜していくが数発の爆弾を投下される。


 超技術艦の各所に設置された迎撃システムによって接近する爆弾は空中で破壊される。迎撃システムは砲になっており接近する攻撃を感知して自動で撃ち落とす仕組みだ。弾が1万発くらいあるが攻撃には一切使用できない。弾が切れたり、飽和攻撃ならば艦に攻撃が通るかもしれないが今回はそのようなことはなかった。


 「今まで怯えていた航空機という存在はいったい何だったのでしょうか?」


 「航空機が弱い訳じゃない。超技術艦が強すぎるのだ」


 心の中だけで言うつもりだったが、言葉に出てしまった。


 レーダーにはハワイよりこちらに300機近い航空機が飛来する様子が映っていた。


 「敵航空機きわめて多数がこちらに来ています」


 「それじゃ逃げますかっとその前に」


 そういって俺は艦を元機動艦隊のいた座標に向ける。


 「逃げている艦にはお仕置きをしないとな」




 元機動艦隊がハワイへ帰投しようとしているところに残りのミサイルを全弾発射して壊滅させた。重巡洋艦三隻に軽巡洋艦と駆逐艦という編成だった。


 ミサイルの威力は魚雷程度あり一発で戦艦を沈めることはできないが数発も当てれば戦艦を沈められるだけの威力を持っていた。


 また、日本の航空機が手薄になったハワイに攻撃を仕掛け第二次真珠湾攻撃は大成功を収めた。


 俺たちはしばらくの間、撤退するアメリカ艦隊の捕捉に努めたが五日経過した日には日本の艦隊が簡易的な包囲網が完成したので日本の艦隊指揮官に連絡を取った。


 ハワイの西400キロメートルの位置にいた艦についても教えておこうと思いレーダーで確認するがその艦の反応は消えていた。暫く西の方向に艦を走らせたが見当たらなかった。


 俺は一番大きな戦艦に横付けすると甲板に出る。そうすると一人の老人が現れた。臂章から階級が大将であることがわかる。


 「こちら傭兵組織『カラスの巣』の隼。依頼内容についてだがこれ以上アメリカの艦隊が撤退することはないと考えられる。よって我々は依頼内容を達成したと考え帰投したいのだがよろしいだろうか?」


 「ああ。いいよ。ところでその艦だけで何隻の艦を沈めたのかね?」


 日本軍にいたときは雲の上と思われていた人が話しかけてくる。


 「空母2隻に重巡洋艦3隻、後軽巡洋艦と駆逐艦を10隻程度」


 「ところで君は日本人じゃないのか?」


 「傭兵組織『カラスの巣』としてはそのような質問には答えられません。ただ次敵同士でないことを祈るばかりです。それよりまだハワイ攻略の途中でしょうからお先に失礼させていただきます」


 俺は一方的に話を切ると艦内に入った。話を続けると里心がつくと感じてしまったからだ。


 未だ敬礼する老人に礼を返すことなく艦を発進させて帰投する。


 ハワイはしばらくの抵抗の後、日本に占領された。


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