ミッション1 敵機動艦隊攻撃
日本はアメリカの真珠湾に奇襲攻撃を行い太平洋戦争が始まった。
俺も駆逐艦の乗員として戦いに参加するも初戦で沈没。救助された先は傭兵組織『カラスの巣』と名乗る傭兵組織だった。
そして、俺は傭兵組織『カラスの巣』の兵士となった。助けられた恩義もあったが、何より魅力的だったのは圧倒的な力だった。試験をクリアしてその力を手にした。
今の俺達には傭兵組織『カラスの巣』から支給された超技術艦『隼』がある。超技術艦『隼』は、俺たちの知っている技術を遥かに凌駕する技術で作られており、色んなことを機械が自動で行ってくれる。コンソールと呼ばれる平たい部分に様々な情報が映し出され、操作については数十個のボタンで操船から攻撃まで操作することができる。
俺は艦のコンソールにミッションが入っていることを確認するとその内容を確認した。ミッションは複数の中から選択できる仕組みになっていて、俺たちは日本寄りのミッションを積極的にこなすつもりでいる。
『我々日本軍は現在ミッドウェーに侵攻中である。
しかしアメリカ軍が何の対策もしていないとは思えない。恐らくミッドウェー付近に機動艦隊を展開させているだろう。
ミッドウェー島南方から侵入し、アメリカ機動艦隊の捕捉及び攻撃を実施せよ。』
「どういう事でしょうか?ミッドウェー島などさして占領する価値があるとはあるとは思えませんが……」
副長が横からコンソールを覗き込んで言う。艦の乗員は艦長の俺と副長とその他で僅か数十名で済む。
「俺の感でいいなら言わせてもらうが、最終的な狙いはハワイ諸島の占領だろう」
「ハワイ諸島を維持するだけの力がわが軍……。すみません。今は違いますね。日本軍にあるとは思えないのですが」
副長はまだ日本の軍人だった頃の癖が抜けきっていないらしい。
「維持する必要はないんじゃないか?」
「といいますと? ああ、破壊してしまえばいいって訳ですね。アメリカの太平洋艦隊がハワイ諸島を拠点に置くのも施設が整っているからであって、それがなくなるとアメリカは太平洋で身動きが取れなくなる。ひいては日本へ攻撃する手段がなくなるということですね」
俺は他の使い方も考えてはいたが、副長の機嫌を削ぐこともあるまいと思い心に留めておく。
「まあ、そういうことだ」
「ではこのミッションを受諾するのですね」
「もちろんだ」
俺たちはミッドウェー島に舵を取った。
レーダーが航空機の機影を捉える。航空機の位置はミッドウェー島南100キロメートル程だ。
「ミッドウェー基地の偵察機でしょうか?」
副長が額の汗を拭いながら言う。
アメリカ軍の航空機の攻撃によって俺たちの乗っていた駆逐艦は沈んだ。超技術艦『隼』の性能については聞かされているが航空機に太刀打ちできるかどうかまでは信じられるものではなかった。
超技術艦『隼』の性能は優れたもので現在で50ノットで航行している。これでもまだ全力でないのだから驚きだ。しかし、まだ攻撃性能や防御性能は未知数な上に武器や燃料が特殊過ぎて傭兵組織『カラスの巣』本部でしか物資の補給が出来ない。
物資の補給がどこでも簡単に受けられるなら、傭兵組織『カラスの巣』を簡単に裏切ることもできてしまうが中々うまくできていると感心する。
「敵の航空機来ますかね? シミュレーターで経験があるとはいえアレが本当かどうかを信じるとなると別問題ですからね」
アレとはシミュレーターの事を指していて、傭兵組織『カラスの巣』の兵士になる試験で受けたものだ。試験はコンソール上だけだが戦闘を疑似体験できた。その体験自体も驚きだったが、戦艦すらも一撃で破壊する対艦ミサイルや航空機に必中するミサイル等にはさらに驚かされた。
「ああ。ちなみにこのレーダーの性能もな。500キロ先まで捕捉可能といわれても本当かどうか」
俺の言葉に副長が頷いて言う。
「レーダーが正しいとして前進しますか?」
「ああ。敵艦隊に攻撃を加えるまでは引き下がれないからな」
対空攻撃が可能な兵装はミサイルと両用砲だが、ミサイルの射程に敵の航空機が入った。射程は300キロメートルでとても遠くの目標物を攻撃できる。
「どうします?攻撃しますか?」
「早めに性能テストをしておきたい。といってもレーダーが本当かどうかわからないからレーダーが正しいことを前提としての話にながるがな」
そう言って俺はミサイルの発射ボタンを押す。ミサイルの発射口が開いてミサイル煙を噴いて発射される。
「本当に発射しましたね。ミサイル」
「ああ」
「すごいですね」
「ああ」
「結構高いんですよね。あれ。弾薬代もバカになりませんからね」
「……」
「借金し過ぎるとナニカされそうで怖いですよ」
「そんなに不安になることを言わないでくれるか副長」
そんな問答が行われいる間にレーダー上で航空機とミサイルが衝突し、両方の反応が消える。
もうミッドウェー島に200キロメートルまで近づいたとことでレーダーに艦影を捉える。ミッドウェー島北西の艦影は日本の艦隊だった。艦隊から航空機が飛び立っていることがレーダーに映し出されていた。日本軍は敵艦隊を見つけられずに業を煮やしてミッドウェー島に向けて攻撃隊を発艦させている最中だった。
「不味いな。このままではミッションに失敗する。早く敵艦隊を見つけ出さなければ」
「どうします?」
「よし、ブーストというやつを試そう」
「ブーストは約10分使用可能です」
「それまでに敵を捕捉できなければお仕舞だ」
俺はブーストのボタンを押す。と同時に体が押しつぶされそうな程の重力が掛かる。
「うわ」
副長が加速に悲鳴を上げる。
ブーストを行っている艦は巨大な飛沫を上げて加速する。前方が持ち上がり今にも空を飛びそうだ。現在の速度がコンソールに映し出されているが200ノットと表示されている。200ノットといえばゼロ戦よりは遅いが、そこいらの下手な航空機より早い。
8分、7分。まだ、敵艦隊を捕捉出来ない。
3、2分。日本の艦隊から続々とミッドウェー島に攻撃機が飛び立って行く。
1、0分。残念ながらエネルギー不足の為ブーストを停止する。
敵艦隊を見つけられなかった失望感が艦橋を支配する。
「見つけられませんでしたね」
副長が肩を落として呟いた瞬間、ミッドウェー島北東に敵艦影を捉える。
「よっしゃ来た、対艦ミサイルの発射準備」
対艦ミサイルの射程はレーダーの範囲と同じく500キロメートルで、弾数は2発。
「準備ですか? なぜ早く撃たないんです」
「どうせなら大物を叩きたいからな。艦影から陣形を割り出して空母を仕留める」
「ですね。対艦ミサイル高いですからね」
レーダーでアメリカ艦隊の陣形を捉え、空母に的を絞る。
対艦ミサイルのボタンを押す。その大きなミサイルが轟音とともに発射される。
「おっと敵艦隊の位置を日本軍に教えるのを忘れていた」
コンソールを操作して通信を行う。
そうしているうちにミサイルが敵艦隊に到達し艦影が一つ消える。
「もう一発お見舞いしてやる」
「ええ! 弾薬費が……」
泣き言を言う副長を無視して再度対艦ミサイルのボタンを押す。ミサイルと副長の悲鳴が心地よい。
日本の艦隊から送信した位置に向かって航空機が30機飛んでいく。恐らくは魚雷を装備した雷撃機だろう。
「それじゃ引き返すか」
返事のない副長の意を『戦況を見守りたい』と曲解して暫く適当に艦を走らす。
一つまた一つとレーダーから艦影が消えていく。この艦影を消しているのは恐らく南雲機動艦隊の攻撃隊だろう。
アメリカの空母からも航空機が発艦したようだが、もはや勝負は決していた。アメリカの航空機は一機も日本の艦隊にたどり着くことなく途中で叩き落されていた。
傭兵組織『カラスの巣』本部に戻った俺たちに待ち受けていたもの。それは報酬額を上回る弾薬費だった。
「あああ。だから弾の価格が高いって言っていたのに……」
副長の絶叫が響く。
傭兵組織『カラスの巣』の力を試すことが目的だった訳だが、ここまですごい力が手に入るとは思わかなった。
傭兵組織『カラスの巣』は各国とパイプを持ち、依頼もその筋から俺たちに回ってくる。俺たちが直接日本と交渉しても手玉に取られるだけなのでありがたい話なのだが、どうしても奴らに踊らされているような気がしてならない。
日本軍からのメッセージがメールで届く。
『君たちの活躍でミッドウェー島の攻略に成功した。まずは感謝の意を示す。これからも我々に協力してくれ。我々日本はアジアの発展と世界の平和を実現させたいだけなのだ。アメリカの様に自国の利益しか考えない国に屈してはいけないのだ』
過去に籍を置いていた国とは言え流石に美化し過ぎだろう&アメリカを悪く言いすぎだろうと思いながらも、心の底にはそうであってもらいたいと思う気持ちもあった。
もう一通のメールが届いていた。送信元は傭兵組織『カラスの巣』だ。
『ミッドウェー海戦は大番狂わせでした。あれほど一方的に日本軍が勝つとは予想外でした。今後日本軍が増長し暴走する可能性があります。注意した方がいいでしょう』
日本軍はハワイ諸島の攻略に乗り出すはずだ。俺はそのミッションが依頼されるのを待つことにした。
処女作になります。至らない点等ありましたらご指摘していただけるとありがたいです。
※注意
ミッドウェー海戦時、アメリカ軍が輪形陣を用いていたかどうかの確認はとれていません。完成後に気づいた問題点で修正が難しいのでそのまま続行します。もし違っていたらゴメンナサイ。