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我輩は猫であるか?  作者: 龍龍卿
天上の療果
4/14

やるべきこと

「ということで夜になったので、始めるか」


「何がということでなんですか?」


「なんとなく言わなければならない気がしてな……」


「はぁ、なんだかよく分かりませんが、とにかく始めましょう……

で、根っこは昼間と同じ様に襲ってくるのですよね?どうやって進むのですか?」


「うむ、それは簡単だ。

お主が襲ってくる根に対処しながら進む、我輩はその横でサポートする、以上だ」


「は、え?私があの襲ってくる根の中を進むと?」


「うむ、そう言っているではないか」


「む、無理です!1つや2つまでなら何とか対処できますが、あれだけの数の根を対処しながら進むなんて自分には無理です!」


そう言うとレノスは首と手を慌てて振りだしてしまったな。

というか1つ2つまでなら対処できるだけでも十分凄いのだが、地面の下から突然高速で突き出される槍に対処できるって言っている様なものなのだからな……

とはいえ、ここは彼に頑張ってもらわねばならんところだからな、少し焚き付けるかな。


「レノスよ、お主は何のためにここまで来たのだ?」


「え?それはもちろん妹のために天上の療果を手に入れること……」


「そうだ、そのためにお主はズタボロのボロ雑巾の様になりながら必死になってここまでやって来た。

それなのに肝心の天上の療果を我輩が手に入れてどうする?お主が妹のために手に入れることに意味があるのであろうが!」


「それは、ですが私ではとても……」


「前にも言ったが早合点はお主の悪いところだな。

我輩は横でサポートすると言ったのだ、何も1人でとは言っておらんよ。」


「あ、私としたことが……分かりました。確かにこれは私がやらなければならないことです。

重ね重ね厚かましいことは承知しょうちの上で、ご協力をお願いします」


腹を決めたようだな、強い意志を感じさせる良い眼をしている。


「気にする必要は無いぞ。最初に言ったようにこれは取引でもあるのだ、きちんと約束を守ってくれさえすれば何も文句は無い」


「それはもちろん。この件が片付き次第必ず約束を守ることをレノス・レーフェスの名において誓います」


「であれば、何も問題は無い。さて、士気が上がったところでそろそろ行くとするか」


「はい!ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします!」


「この根は地面から出てきて獲物を捕らえられないとすぐに地面に戻っていく、なので回避したらその根は無視してよいぞ。

横や後ろからの根は我輩が対処しよう。レノスは前方の根に対処しながらとにかく駆け抜けろ」


「わかりました、では……行きます!!」


そう言うとレノスは一直線に木に向かって走り出した。

というか、我輩が言っておいてなんだが本当に前しか見ないで進んどるな。

確かに横や後ろからは対処するとは言ったが、普通は仲間が防いでくれると分かっていても、死ぬような攻撃が来ると思ったら恐怖で固まったり、動揺するものなのだが……


「ふっ!はっ!らぁ!よし、あとすこし……!?」


連続した根からの攻撃を回避して油断したのか運が無かったのか、足を踏み出すタイミングで襲ってきた根をレノスは回避できなかった。


「ふむ、貸し1追加だな」


「え!うわああ!?」


ゴンッ!!


我輩はレノスを根に当たらない軌道で木に向かって横殴り猫パンチで吹っ飛ばした。

……勢いをつけすぎてすごい音で木にぶつけてしまったが、とりあえず急いで追いつくか。


「あ~、レノス?死んでいるか?死んでいたら返事をしろ」


「……」


「返事が無い、ということは生きているな。よかった、よかった」


「し、死んでいたら、返事なん、かできま、せんよ」


「よし、ちゃんと生きていたな。それにそんなツッコミができるなら死にはせんよ。

それに強い衝撃を受けてふらついているだけだから、少し休めばすぐに動けるようになる」


「し、しかし、このままではまた根が襲って……こない?」


レノスは周りを見渡すがさっきまで引っ切り無しに襲ってきていた根がまったく襲って来ず、夜の森の静けさしか無かった。


「言い忘れていたが、あの根は本体の木の根元、具体的には木陰ができるくらいの範囲では襲ってこんのだ。葉からの光線もな。

おそらくだが、あまり近くでは木自体を傷つけかねないのと、根元近くの地面を荒らすと木を支えきれないのだろう」


「なるほど……勉強になります」


「さて、もう動けるくらいには回復したようであるし、早く本題を済ませてしまうかね」


「そうでした!天上の療果を手に入れなければ!」


「とはいってもすぐそこにあるのだがね、ほれ」


「え!うわぁ……」


先程まではダメージのせいで気がつかなかったようだが、見上げればそこかしこに桃を細長くしたような薄紅色の実がほのかに発光しながら生っていた。


「これが……天上の療果!」


「うむ、レノスの話に合致しそうな物は我輩が知る限りではこれだけなのでな。

おそらくそうであろう」


「これがあれば妹を救うことができる……!」


「あ、採る実は2個までにしておけよ」


「はい?わかりましたが、これだけあるのならもう何個か採っても大丈夫そうにみえますが……」


「あ~いや、そういう意味ではないのだが……まあ、すぐにわかるから2個までにしておけ。後悔したくないなら」


「な、何か怖くなってきましたがとにかく採るのは2個だけにします」


そうしてすぐに実を2個採ってレノスは戻ってきた。


「よし、それでは戻るとするかな」


「はい!……ところでどうやって戻るのですか?

もしまた根を回避しながら戻るとなると実を守りきれる自信が私には無いのですが……」


「安心せい、お主の力量ではさすがにそれは無理なのはわかっている。

なので帰りは我輩が背に乗せて行ってやる。レノスは実を落とさないようにしっかりとつかまっていればよい」


「そうですか、ありがとうございます。それではお願いします」


レノスは安心したように笑っていたが、彼は知らない。

襲い来る根に対処しながらだとすさまじく揺れるということを、そしてそのまま夜も遅いからと行き以上の速度で拠点の寝床までノンストップだということを……


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