そんなつもりはございません
2月は雪で執筆どころじゃなかったのでこんなんになりました。
執筆ペース上げれるように頑張ります。
「モフモフ~♪」
「…………」
我が輩の予想が外れたことで諦めて妹さんにモフられていると、まだそれ程経っていないのにモルトさんが少し困った様子で戻ってきた。
何か問題でもあったのか?
「旦那様、宴の準備をするように伝えてきたのですが少々問題が……」
「ん?どうしたんだ?モルト」
「それがリナお嬢様が臥せられていた間、リナお嬢様が食べられないのに自分達だけ食べるのも、と旦那様を含めて肉類を自粛していたではありませんか。
その所為で屋敷の食糧庫に宴のメインになるような食材が残っていないのです……それ以外なら大丈夫なのですが……」
「む、そうであったな。ならば今から調達に……無理だな、質の良い物が即日でそうそう手に入る訳も無いか……どうするかな」
ふむふむ、ようするに宴のメインとなる食材が無いからどうしようということか。
「公爵よ、そういうことなら我が輩から食材を提供しようではないか」
「む、ですが黒猫殿にさらにご迷惑をかける訳にもいきますまい。それに手ぶら……手?猫だから前足?とにかく何も持っていないではないですか。
今から集めるのでしたらこちらで何とかしますよ」
「なぁに妹さんの快気祝いということで遠慮はいらんよ。
それに今手元に……え~と確かこの辺に」
そういいながら我が輩は口で胸元の毛を漁った。
「おお、あったあった!あんまり上等なものではないがこれで大丈夫かね」
ズンッ!
「「「…………」」」
一抱えほどの大きさの氷漬けの肉の塊を出したら周りが沈黙した。
「次はお腹をモフモフ~♪」
あ、訂正、妹さん以外の周りが沈黙した。
「とりあえず聞いておきたいのだが、どこから出したのかね?」
「ああ、今は中身だけを直接出したが、胸元の毛の中に小さな袋があってな。
そこから取り出した。流石に素人仕事なのであまりきれいに作れなかったが見るかい?」
「……お願いできるか?」
なんか公爵の様子がおかしいな。どこか遠くを見ているような眼をしている気もするが……まぁ、見せて減るものではないし見せるか!
自分で作った物を他人に見せるというのはワクワクというかドキドキするな。
「ほれ、これがその袋だ」
そう言って我が輩が取り出したのは皮で作った小さな巾着袋だった。
とわいっても形が歪でお世辞にも上手くできているとは言い難い出来であったが……。
「見た目が悪いのは猫の手で道具も無しに頑張って作ったのだからご愛嬌ということにしてくれ」
「この袋にさっきの肉の塊が入っていたと?」
「おおそうだぞ、サイズがおかしいところは魔法で何とかしている。
こんな見た目でもそれなりな量が入るから重宝しているのだよ」
最初はゲームのインベントリーみたいな手ぶらでいくらでも物が入れられる魔法を創ろうと目指していたんだが、流石にあまりにも難易度が高すぎて無理だった、というかある程度やった時にふと、「これって素人考えでやって、もしミスったらヤバイ生物とかがいる異次元に繋がったり、空間崩壊とかで世界滅亡になりかねないか?」とか気付いてからは怖くてとても続けられなくて断念した。
その後でこの袋にも使われている小さい空間を多きいい空間にする空間拡張とでも言うべき魔法を、あの森にいたずんぐりむっくりした腹に袋のあるでかいタヌキ?っぽい奴から手に入れた時は嬉しくて小躍りしたな。ちなみにタヌキ?は青くも黄色くもなかった。
「モルト、やはりこれは……」
「はい、間違いないかと……」
公爵達がこそこそと話し合ったかと思うと公爵は頭を抱えだした。
やっぱり見た目が悪かったのが問題なのかね?
「黒猫殿、それは我々がマジックバッグと呼ぶものでな、その高すぎる有用性故にそれそのものとそれを作ることができる者は国で管理されるような代物でな……」
「あ~、それを作れるといったのが問題ということか」
「まぁ、国に報告するとかその辺りのことは後々ということにしようじゃないか、わしの胃の為に。
ところでこの肉はなんの肉なのかね」
公爵は胃を慮って問題を後回しにすることにしたようだ。
こちらとしてもありがたいのでこの流れに乗るとしよう。
「この肉は……こっちではなんと読んでいるか分からないが、角の生えたワイバーンっぽい奴の肉だ。あの森での我が輩の主食にしてたものであまり豪華なものではないが上手いぞ」
その話を聞いたとたん公爵達の顔が一気に青ざめた。
あ、あれ?ゲテモノ扱いのものだったり、文化的に禁忌な代物だったか?
「……黒猫殿、それはホーンドワイバーンといって1頭現れたら町がいくつも滅ぶというレベルの魔物だよ」
え、こいつ程度でそんなのなん?お肉が減ってきたから狩ってこないとって感じで普段から食べまくってたんだけど……。
「黒猫殿は驚かしすぎでわしの胃に穴を開けたいのかね?」
滅相もございません。