猫?の言葉と病の真実
スミマセン、今回本当に難産でしてこんな時間ギリギリになってしまいました。
「ん、んん。と、とにかく!そんなことは置いておいて!
我が輩としては暇つぶしと観光が出来ればいいのであってそちらと無意味に敵対する気は無いのだよ」
「私が鴨ネギ扱いはそんなことですか……」
レノスが恨みがましそうな目でそう言っていたが、悪いとは思うが今は無視させてもらう。
「価値観の違いもあって理解し難いが……一応は人間と敵対するつもりが無いというところには納得しておく」
公爵はまだ少し悩んでいるようだが一応納得してくれたようであった。
「そうしてくれるとありがたいな」
正直な話、これ以上向こうを納得させる為の材料を持っていないからな。
これで駄目だったら、もしもの時に考えておいた作戦の1つを使うことも視野に入れなければならないからな。
「父上も無視ですか……はぁ、ところで話は変わりますがチンリュウ殿は共通語が非常にお上手ですね、今更ではありますが」
「本当に今更だな。だが期待を裏切るようで悪いが別に我が輩はその共通語とやらを話している訳ではないぞ?」
「え?けど現に今こうやって話しているではないですか?」
「これも我が輩の魔法でな、翻訳魔法あるいは伝達魔法とでも言うものでな、対象とした相手に喋った言葉は相手に理解できる言語に聞こえ、逆に対象の喋ったことは自分に理解できる言語に聞こえるというものだ。
そのため我が輩が共通語を話している訳ではなく、レノス達がそう聞こえているだけなのだ」
「ま、また聞いたことも無いようなとんでもない魔法が……」
そう言うとレノスが頭を抱えだしてしまった。
まぁ、確かにこの魔法は我が輩からしてもとんでもない効果だからな……。
この魔法を得るときの石は森で遭遇したゴブリンっぽい集団のトップが持っていたんだよな。この魔法でこっちにおべっかを使って油断しているところに隠れた仲間の毒矢で襲うという、非常に分かりやすい手を使ってこようとしたから逆に速攻で殲滅したんだよなぁ。
「ただこの魔法の欠点、というかある意味では利点は対象とした相手以外には何を言っているかが全く分からないということだな。具体的には今の状況は傍から見たら我が輩はニャーニャー……いや、このサイズだとニ゛ャーニ゛ャーか?言っている化け物にレノスが独り言を言っているようにしか見えない訳だな」
「……そうやって聞くとすごく嫌な状況ですが、それはおいておくとして。ですがそれでは普通に欠点……効果の破格さに比べたら欠点にもならないのでは?と、言いますかどの辺りが利点ですか?」
おや、レノスにはこの利点が分からないか、それに対して公爵はこの欠点がどのような利点になるかを理解しているようだな。
「公爵はこれがなぜ利点になるのかを理解しているようなので、今度は公爵から説明をどうぞ」
「いきなり振らないでくれるか?まあいい、レノスがそう感じるのも仕方ないが、この魔法の欠点が利点になる理由は、対象とした相手以外には言葉が通じていないということだ」
「?だからそれが欠点なのでは?」
レノスは意味が分からなかったのか首をかしげている。
「はぁ、お前の素直さは美点だが、公爵家を継ぐ者としてはもう少し裏を読むことも覚えなければな。
いいか、この魔法は対象意外に効果が無いということは他の第3者、具体的には密偵や間者に聞かれたとしても肝心の話の内容を全てとはいかないが聞かれてしまう事を防げるのだよ。つまりは聞かれて困る話、密談には有用だからある意味では利点だということだ」
「な、なるほど」
レノスにもようやく理解できたらしいな。
だが公爵も言っていたが素直なのはいいことではあるがこのままだと何時か騙されそうだな。いや我が輩がすでに騙しているような気もするが……。
「んん!我が輩の魔法については後々話すとして、今はこれからのことだ。
公爵は我が輩の目的が暇つぶしだというのをまだ完全には納得できてはいないであろう?なので公爵に我が輩自身を信じて貰う為にもう少し骨を折るとしようか」
そう言ってニヤリと笑った我が輩を見て公爵とモルトさんは身構えた。
「……いったい何をされるおつもりかな?」
警戒心を多分に含んだ目で我が輩を見ながら公爵はそう言った。
「時に公爵?レノスの妹さんの病気、全身にあの様に不気味な斑点が浮かび上がる病というのはそちらでは一般的なのかね?」
「……いや、少なくとも我が国ではその様な症状の病など効いたことも無い。だからこそレノスが天上の療果などという存在自体が不確かなものに縋るしかなかったのだ」
「ふむ、念のため症状の確認だが全身に斑点が出たすぐ後に強い倦怠感に襲われ、その後咳、頭痛、目眩により徐々に体力を失っていき、最終的には歩くことも難しいほどに衰弱していった……であっているかね?」
公爵は驚いた顔をするとすぐにレノスにみて「お前が教えたのか?」と目で問いかけたが、レノスは慌てた様子で首を振っていた。
「その様子では合っているようだな」
「黒猫殿、あなたはあの病について何か知っているのですか!?」
流石に興奮した様子で公爵が喋りだした。
「いいや、そのような症状の病は我が輩とて知らんよ」
「ですがあなたはリナに起きた症状を正確に……!?」
「ああ、我が輩はそのような症状の病は、知らない。
だが、それと同じ症状の毒ならば知っているのだよ。
なぁ公爵よ、お主の娘に毒を盛った輩を裁く手伝いをしようじゃないか、対価はお主らの信用でどうかな?」
そう言うと完全に予想外だったのか公爵達は驚いて固まってしまった。
この時の我が輩の表情を表現するのならばきっと10人が10人とも「善人を誑かす悪魔の笑み」と表現しただろう。猫の表情が分かればだが……。
これからストーリーも本格的に動き出しますので頑張っていきますので応援よろしくです。