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97th contacts ~少女と龍と終わりの少年~  作者: 麻茶柚芽
第一章 邂逅と始まり
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第二話

初日連続投稿になります。

パチッパチッと何かが爆ぜる音がする。


「ぅうん」


薄く目を開けると暖かな光が見えた。どうやら近くで炎を焚いている様だ。非常に暖かい。


「おっ、起きたか。おはようございます、お姫様」


「きゃっ!」


視野外から急に話しかけられ、飛び上がる。


「えっ?え?」


あわてて周囲を見回す。声を掛けてきたのはどうやら炎の向かいに座る男のようだった。


いや、よく見るとまだ同年代くらいに見える。年上だとしても、まだ少年といえる顔つきだろう。


「あー、すまんな。急に声掛けた俺が悪かった」


「えっと、気にしないでください。えっ・・・と、おはようございま・・・す?」


周囲はすでに暗く、木が生えており空には月が昇っている。明らかに夜だろう。


「気にすんなって、起きたらおはよう、さ。自論だがな」


「じゃあ・・・おはようございます。ええっと、お姫様って何のことですか?」


「それこそ気にしないでくれ。ただいつまでも寝ているお前さんを揶揄しただけだ。っと、これ本人に言うのはまずかったかな。今のはオフレコでよろしく」


「本人の目の前で言っておいてオフレコは意味無いんじゃないかな」


「確かに。よし、じゃあ、忘れてくれ」


「それは難しいかな」


「しょうがない。諦めるとするか」


いったん落ち着いたところで改めて男、いや少年を観察する。


黒いコートに黒いズボン、いや、藍のように濃い色なだけかも知れない。髪まで黒かと思いきやかなり薄い色をしている。白なのだろうか。


さらに、瞳の色は左右で異なっており、彼の左目は黒いのだが右目は黒ではない。オッドアイというやつだろうか。


夜が明ければ髪と瞳の色がわかるだろう。


そんな特徴をしておきながら、顔立ちはアジア系の少年のものである。ちなみに彼のしゃべる言語は日本語である。日本人なのだろうか、それにしては黒髪に黒目ではない。


ウィッグとカラコンをしているのだろうか、それとも外国の人が整形しているのか。


「気になるか?この髪と目」


「き,気づいてた・・・?」


さっきから人の髪や目をジロジロと見ていたのがばれたのだろう。失礼であることは百も承知なため、声が震える。


「気にすんなって。・・・この数分で何度言ったかな、このセリフ」


「すいませんでしたぁ!」


「だから、気にするなって。これはウィッグでもないしカラコンでもないよ、当然、整形なんてしていないしね」


「えっ,何で考えてることわかるの!?」


「大体のやつらはそんな反応するからな」


「えっと、じゃあ何でそんな・・・あ、聞いちゃまずい、よね?」


「いいよ。くわしくは話せないけど、いや、話したくないけどな。概要だけ。ま、とある出来事があってな、そのときのショックか髪は白く、右目は金色になったんだ」


どうやら色の判別ができなかった右目の色は金色らしい。


・・・黄金の片目とか何かカッコいい。


当然こんなことを考えているなんて口にはしない。髪が白くなったのはショックでだと言っていたのでつらい事なのだと予想はつく。流石にそこまで失礼な人じゃないはずだ、自分は。


いや、その前に知らねばならないことがいくつかあった。このことを先に問うべきだったと少し反省する。


「いくつかお聞きしたいんだけど」


「構わないぞ。まあ、俺が答えられる範囲でならな」


「年はいつなの?」


 じゃなくて、


「十五は、いっているかな、・・・多分だけど・・・」


「じゃあ,同い年だね!じゃなくって」


「何が聞きたいんだよ、お前は」


「そう、それ、それが聞きたかったの!」


「は?」


「名前、名前を聞きたかったの!いつまでも、お前、なんて呼ばれたくないからね!私は小百合、白波小百合!あなたの名前は何?」


「・・・そっちを先に聞くのか・・・」


「えっと、何か言った?」


「いや、なんでもないさ。俺か、俺は・・・将侍だ。苗字は理由あって捨てたんだ」


「将侍くんか、いい名前だね」


「ははっ、そうか、ありがとよ」


「でもなくって、あー、でもこれも大事なんだけど!」


「結局何が聞きたいんだよ・・・」


「えーっとね、」


いったん区切り、大きく息を吸う。


「ここってどこで、私は何でここにいるの、何でこんなところで眠っていたの、あなたはどんな人?」


「そんな一気に質問されてもな・・・息切らしてんじゃん。まぁ、一つずつ答えてやるからゆっくり、一つずつ、質問してくれ」


「うー、ごめんなさい。じゃあ、ここってどこなの?」


「それは結構重要じゃないのか?そんな大事なことはもっと早くに聞けよな。まあいい、ここは俺がイルガークと名づけた世界のグルンドーアっていう大陸にあるグーランという小国の郊外だ。一番近くにある村はサルハンってとこでここからだと歩いて三十分といったところかな」


「えっ?えっ?いる・・・のぐるあ・・・のぐらん・・・?何かの呪文みたい」


「イルガークという世界のグルンドーアっていう大陸、その大陸のグーラン国のサルハンという村の付近だ」


「うぅんと・・・」


その地名に聞き覚えがないか、記憶を探っていくが見当たらない。


「そんな地名も名前も聞いたこと無いよ?」


「そりゃそうだ、ここは『アース』にとって異世界だからな」


「へっ?あーす?異世界?アースって電化製品に付けるあの緑と黄色の線のこと?」


「確かに、それのことも指すが今回は違う。恐らくお前さんが生まれたであろう世界を『アース』と呼んでいるだけだよ」


「お前じゃなくて小百合!さゆって読んでもいいんだよ!せっかく名前で呼んでもらうために自己紹介したのに!」


「じゃあ,白波」


「小百合」


「・・・白な」


「さ,ゆ,り!」


「・・・し」


「・・・名前で呼んでくれないの?」


「はぁ、わかったよ、小百合」


「・・・いつか、さゆって、呼んでもらうんだから。


目をごしごしと制服の袖で拭く。


「ん?そういえば異世界がどうとかって言ったよね」


「あ、ああ、ここはおま・・・小百合の生まれた世界とは異なる『世界』、つまりは『異世界』だよ」

 


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