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97th contacts ~少女と龍と終わりの少年~  作者: 麻茶柚芽
第一章 邂逅と始まり
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第一話

初投稿になります。温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします。

短いですが・・・。


見たことの無い建物、見たことも無い人達、見たことも無い景色。そして、見たこともない服を着ている自分。全てが見慣れない。此処がどこなのかすらもわからない。ここは?と口に出そうとしたが声にはならなかった。


普通は青いはずの空に黒い穴が開いており、そこから獣や異形の化け物や、武装した人やらがあふれ出してくる。その数はすでに二万を超えているが未だとどまる様子は無い。


スタンピードとも言えるであろうこの状況に、しかし、目の前にいる白銀の髪をした人だけは取り乱すことも無く、落ち着き払っていた。当然ながら名前も顔も何も知らない人である。


「なあに、すぐに終わらしてやる」


黒いコートを羽織ったその男はこちらを振り返る。


「こいつら全員手早く屠ってやるからよ」


驚いたことにその人は自分と同年代に見える少年である。そして彼は、少し自嘲気味に微笑んだ。


「安心しろ、何せ俺は化け物だからよ」


私は名前すら知らないはずの彼のそんな言葉になぜか安堵を覚えていた。


「この数は・・・少しばかりマジにやらないとな」


少年はそう呟き、懐からケースを取り出して、中から一つ、深紅のカプセルを取り出し口にする。


さらに少年は、しまったケースの代わりに口元まで覆える、白い仮面を取り出して身に付ける。そして彼は無限にいるとも思われる異形たちの軍勢に人の域を超えたすさまじい速さで向かっていった。


白いコートをなびかせて―――――。




・ピ・ピ・ピ・・・


「んんっ、・・・あれ?」


目覚める、いや覚醒したというべきか。授業中でぼぅっとしているとき(決して寝ているわけではないのだ)に不意に先生から当てられたときくらいの目覚め方だろうか。


・・ピ・・・ピピ・・・ピピ・・・


さっきのは夢だったのだろうか。それにしてはやけにリアルな夢だった。なんというか、こう―――


・・・・ピピピ・・・ピピピ・・・


肌に感じた風も、鼻に届いた匂いも、とても夢だとは思えなかったのだ。


・・ピピピピ・・・ピピピピ・・・ピ・


時計のアラームが非常にうるさい。音のするほうへ手を伸ばす。私は二度寝がしたいのだ、そうすればさっきの彼をもう一度会え―――


ピピピピピ・・・・・「ほら起きて!朝よ!起きなさい、小百合。授業一日目からもう休むつもり?」・・・・・・ピピピピピピピピピ


「あーもう、うるさいよぅ、お母さん。起きた、起きましたー!」


「もう八時を過ぎているのよ?遅刻するつもり?それとも初日から登校拒否?」


「ええっ、もうそんな時間!?」


部屋に置いてある時計を見るとすでに八時五分を指している.ついでにアラームを止めておく。


「うそっ!」


「すぐに着替えて顔を洗って歯を磨いて―――」


「今やってる!」


「朝ごはんは?」


「トーストがいい。バターなし、ジャムはいつもの!」


「はいはい、早く来なさいね」


「はーい!」


先日、入学式やらオリエンテーションやらが終了し本日より高校生として初めての授業である。


昨夜遅くまで中学からの友達と話し込んでいたのだ。イケメンの教師や今日から始まる授業のこと、などなどである。話題が尽きず、結局、深夜遅くまで話すことになってしまった。


そのため非常に眠たく、明らかに睡眠不足であるが学校には行かねばならない。


授業中うとうとしてしまうことは確定だろう。だから居眠りではない。あくまでうとうとしてしまう、だ。


親から、もう少しは伸びるだろう、という考え―いや期待だろうか―により少し大きめに作られた制服はやはり自分よりも大きく、袖からはなんとか指が覗く程度である。同年代の平均身長よりも十数センチメートルも低いのだ。実は少し諦めていたりもするのだが・・・。しかし、胸部のことは諦め切れず、毎朝豆乳を飲むことを日課としている。


「行ってきまーす!」


コップに用意してもらった豆乳を一息に空け、トーストをくわえ勢いよく家を出て走り出す。なるべく遅刻はしないようにしなければならない。うとうとはしてしまうだろうが、遅刻しなければいい。


ちなみにトーストにはイチゴのジャムが塗ってある。どこぞの少女マンガの紛い物だろうか。


悠長にはしていられない.


彼女はトーストを五分程度で完食すると、走る速度を上げる。当然ながら、曲がり角で男の子とぶつかってしまうような、テンプレートな出来事が今までに起こったことは無い。そんなに現実はうまく出来てはいないし、甘くもないのだ。


走る彼女の脳内にはすでに今朝の夢のことなど考える余地は残されていなかった。今は遅刻したときの言い訳を考えるのに精一杯なのだ。


五分ほど走ったところで目指す高校の校門が見えてきた。実のところ家から近いという理由でこの学校を受験することにしたのだった。当然ながら寝坊対策に、である。


「あと、三十秒!お前ら急げー!」


体育の先生だろうか。その男の教師はさながら体育科教師のテンプレートのごとく上下のジャージに笛をぶら下げている。


その馬鹿に大きな声に触発されたのか、ギリギリファイター、寝坊戦士たちが校門へと駆け込んでいる。


校門を潜り抜けたらこっちのものだ、彼女はさらに速度を上げラストスパートをかける。


走る、走る、走る・・・・・そして、


「きゃっ!」


何も無いはずの校門の前で何かに躓き盛大にこける。受身のほうが先でスカートに手をやっている暇など無い。


走って走って、前に進むはずだった運動エネルギーは向きを変え、彼女の体を地面に打ちつけようとしていた。


自分の見る世界が急にスローモーションとなる。ゆっくり近づいてくる地面、受身のために地面に向かってやはりゆっくりと伸びていく自分の腕。


「えっ」


その視界が徐々に黒くなっていく。黒煙のような黒い靄が舞うように自分の体に纏わりつき、視界はやがて黒く塗りつぶされた。。


そして・・・


黒い靄が消えた後には少女の姿は無かった・・・



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