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9話「初めてのクエスト(ゴブリン狩り)」

 ゴブリン。

 そいつはどこの世界でも最弱クラスの魔物だ。

 見た目はまさに小鬼って感じ。

 せいぜい100センチくらいの身長で頭が大きい。

 手足は人間みたいで、道具だって使える。

 と言っても難しい使い方は出来ない。

 せいぜいこん棒とかで殴ってるくらい。

 あとは人間が作ったものを盗んで見様見真似で使ってみたりするかな。

 こいつらはまさしくザ・初心者の友達的な奴らで、駆けだし冒険者にも倒せるキング・オブ・ザコだ。

 ただ厄介なのは数が多いこと。

 ゴブリンは狩っても狩ってもどこからともなく湧いてくる。

 つまり繁殖力がハンパないってっこと。

 なんて言うか、ハツカネズミみたいな奴らだな。

 食物連鎖の一番下担当だから数で生き残る、的な。

 そんなもんだから、ゴブリンを1匹みたら30匹は居ると思え、って言うくらいだ。

 言ってるのは主に俺だけどさ。

 まぁ、何はともあれ、俺はこの世界で初めて受注したクエストとして、ゴブリンを追い回してる最中だった。


「修司! そっち行ったわ。任せるわよ」

「また俺かよ。 そろそろ休憩させてくれてもいいんじゃないか、っと!」


 俺はこっちに走ってきたゴブリンを短剣で一突きに仕留めた。

 さすがに雑魚だけあってスキルを使うまでもない。

 間合いに入りさえすれば物理で一撃だ。


「いい調子ね。休憩までもうちょっとだからがんばりましょう」


 もうちょっと、か。

 出来ればそのもうちょっとを早めて欲しいんだけど。

 俺はそろそろ動き疲れてきたよ。


「実は俺、寝不足なんだ。正直、今もすっげー眠い」


 昨日受注したこのクエスト、何が大変ってまず朝が早かった。

 俺たちがやってるのは基本、害獣駆除の類いだ。

 畑を荒らしたり人を襲ったりするのを防ぐための間引き的なやつ。

 魔物ってのは朝夕が一番活発で、どっちかって言うと夜行性。

 もちろん昼間は絶対活動しないってわけじゃないし、種族にもよる。

 でも昼間はあんまり動かずに体力を温存する、っていうのは野生動物と同じ。

 で一番お腹が空く朝と夕方が一番活発ってわけ。

 ってことで、そいつらを駆除しようとしたら俺たちも同じ時間に動かないとダメってことだ。

 そしてそのためには、さらに早起きして準備も必要。

 魔物ハンターの朝は早いのよ。

 今日もすでにけっこう働いたけど、まだ5時よ?

 そりゃ眠くもなるわ。

 

「って言うかさ、倒すのはいいんだけど、運ぶのがなぁ。これ、もうちょっと楽にならないのか?」

「仕方ないじゃない。これも農家の人のためよ。はい。そっち持って」


 そう。

 ゴブリンを倒すこと自体は楽なんだよ。

 ただ倒したゴブリンの死体を片付けるのが面倒だ。

 放置したら他の魔物を呼ぶってことで、わざわざ一か所に集めて処理しないといけない。

 つまり、一匹倒すごとに死体を運ばないといけないわけ。

 けっこう重いんだよ、ゴブリン。

 しかもここ若干山っぽいとこだから足場もよくないし。

 白夜と二人で運んでるって言っても、何匹もってなるとかなり痩せるよね。

 だいたい俺がゴブリンの手を、白夜がゴブリンの足を持って運んでる姿って、まんま殺人犯の死体遺棄みたいでなんかイヤなんだけど。


「とりあえずこのあたりで大丈夫じゃない?」


 2人で斜面を登ると、ちょっとした農道があった。

 舗装もされてないけど、轍があるから一応は道だ。


「だな。たぶんそのうち拾いに来てくれるはず、ってか来たな」


 俺たちがゴブリンの死体を地面におろしてると、道の向こうからエンジンの音が聞こえてきた。

 現れたのは白の軽トラだ。

 軽トラはゆっくり近づいてきて俺たちの目の前で止まった。

 そして運転席の窓を開けて顔を出した運転手のミノタウルス。

 不自然な光景だけど、今のこの世界じゃこれが普通だ。

 白シャツにデニムのオーバーオールのミノタウルスだけど、普通だ。


「ご苦労さんだべ。そろそろ一休みにすっから、それ積んだらおめらも乗っかれ」

「ッス。ミノさん、あざっす」


 ミノタウルスのミノさんは、地元の青年団の団長さんで、今回のクエストのまとめ役でもある。

 クエスト自体を発注してるのは自治体だけど、現場を任されてるのはミノさんたち青年団だ。


「うわ。けっこういっぱい獲れてるじゃん」


 軽トラの荷台はすでにゴブリンの山盛り状態だった。

 人里のすぐそばなのに、割と繁殖してんだな。


「今日来てくれた冒険者さんは、みぃんな腕がいっから捗ってるべ。ここいらのはあらかた片付いたんじゃねっか?」

「ふーん。じゃあ割と早く帰れそうっスね」


 俺はさっき狩ったゴブリンを荷台に放り込んでから助手席のドアを開けた。


「あほタレ。なしておめがこっちさ乗るだ? こういうのはレデ―ファーストて決まってんだろが。後ろさ行け、後ろ」

「ごめん、ミノさん。でもレディーファーストの使い方間違ってると思うよ」


 仕方ないから俺はゴブリン山盛りの荷台に乗った。

 運転席の屋根の後ろの部分にちょうど掴まれるとこがあったから立乗りだな。


「きったねぇ車だけんど、ちょっとのあいだがまんしてけれよ。そのかし運転は丁寧にすっからよ」


 ミノさん白夜にデレデレじゃね?

 クーラーの吹き出し口全部白夜の方に向けちゃってさ。

 俺なんか荷台で死体と一緒よ?


「おい。そしたら動かすぞ? おめは荷崩れしないようによく見てるべ」


 運転は丁寧にするんじゃなかったのかよ。

 死体の山に埋もれるとかなったら、さすがの俺でもそのまま帰るよ?

 とは言えそんなこともなく、俺たちは無事にベースキャンプ的なところに戻った。

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