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6話「仲裁」

「ギルドでのケンカはご法度ヨ。それをこんな堂々といい度胸ネ。続きするならアタシと言う公的な武力が悪い子に『メッ』するヨ?」


 騒ぎを聞きつけて現れたギルド員は、俺たちをロックオンして拳を握りしめた。

 その登場に一番ビビってたのは、意外にもチームパンダの男だった。


「いや、待て。俺はただこいつらに冒険者のマナーってのを教えてやってただけだ」

「ほー。順番飛ばして横入りするのが正しいマナー言うカ? あんまりバカなこと言ってると、吐いた言葉そのままアタシの拳で喉奥まで突き返すヨ?」

「分かってる。分かってるから構えるんじゃねぇって。俺ぁもう退散するからよ。それでいいだろ」


 とかなんとか言ってそそくさと逃げていくパンダ男。

 なんか妙に大人しかったな。

 さすがにギルド員相手には強く出れないのか?

 つーか俺が舐められ過ぎ?


「ふん。覚悟も無しにケンカするなヨ。意気地なしは男の風上にも置けないネ」

「まぁ、言ってることは分かるけど、ケンカご法度って言いながら拳握るのもどうかと思うぞ?」

「何言ってるカ。元はと言えばケンカ始めるから悪いヨ。まぁ、お前の場合は女の子のために男気見せたから、今回は不問にするネ。でも次からはケンカ買う前にギルドに相談するヨロシ」


 カタコトの女ギルド員はそう言って持ち場へと帰って行った。

 言ってることは正しいと思うけど、まさか受付のねーちゃんに言われるとはな。

 こういうのって、だいたいハゲでガタイのいいギルマスあたりの役割ってのが相場じゃない?

 受付のねーちゃんがすでに好戦的とか、アナザー東京は意外と怖いとこかもね。


「な、何かまた助けられちゃいましたね」


 ともかくちょっと荒れ模様な雲行きがどっかいくと、術士っ子のうららがそう言った。


「『また』とか言うけど、俺は別に大したことしてないだろ」

「そんなことないですよ。ヒュドラの時もさっきのことも、お兄さんは私を助けてくれたじゃないですか」

「いや、まぁ、そう思ってくれるのはうれしいけどな」


 なんだろうな。

 この過大評価って言うか、過剰に好意的に受け止められてる感。

 もしかしてなんか勘違いされてない、俺?


「ねぇ、修司。知り合いだったなら知り合いだったで紹介してくれてもいいんじゃない?」


 っと、いけないいけない。

 うっかり話し込みそうになってたら白夜が焦れてる。


「そう言えば、そちらのお二人はいったい……」


 うららも白夜とクシャナさんを交互に見て興味深そうだ。

 この二人はヴィジュアル的に目立つからな。

 そりゃ気になるだろう。


「えっと、とりあえずこっちの可愛い方がクシャナさん。って言うかクシャーナさん。今はこんなだけど、ヒュドラの時にも会ってるから」

「え、もしかしてあの時一緒に居た美人さんですか? なんでこんなにちっちゃく……?」

「まぁ、色々あってさ。元々種族的に人間じゃないし、ちょっと見た目がこのあいだと違うのは気にしないでくれ」

「は、はい。分かりました……」

「で、こっちのおっきい方が白夜。まぁ、なんて言うか、知り合い」

「ちょっと。何でそんなに雑な説明なのよ」

「いや、だって正直あんまり言うこと無いし……」

「だったらせめてクシャーナみたいに可愛いとかつけてよ」

「分かったって。白夜はこう見えてすっごい可愛いフリフリの服着てたりするから、興味あったら見せてもらえな?」

「バラさなくていいから。その情報はバラさなくていいから!」

「むぐっ!?」


 言った途端、白夜に飛び掛かられた。

 羽交い絞めにされて、口を塞がれる。

 こいつ、フリフリ趣味を他人に知られるのがそんなにイヤなのかよ。

 仕返しが冗談ってレベルじゃなくてもう必死過ぎ!


「な、仲がいいんですね……」


 そんな俺たちの様子にうららも苦笑いだ。


「もごっもごもごごもふぉもーごご!(ぜんっぜんそんなんじゃねーから!)」

「そうよ。勘違いしないで。私とこいつはなんでもないの。言ってみればただの協力者ね」

「は、はぁ……」


 戸惑ってるって言うか納得してないって言うか、うららの反応は微妙だ。


「それよりお前、端末使うんじゃないのか? よかったら操作方法教えてくれよ」

「操作方法ですか? お兄さん、使ったことなかったんですか?」

「無い。何故なら俺たちはさっき冒険者登録してきたばっかりだからな」

「え?」


 あ、リアルでハトが豆鉄砲食らったみたいな顔してる。


「じゃあ、あの時ってもしかして……?」

「ああ。通りすがりかつ善意の一般市民だったぞ?」

「ほんとに、ですか? あんなに強かったのに?」

「ほんと、ほんと。って言うか冒険者になったからって急に強くなるわけじゃないし、別に変じゃないだろ?」

「で、でも一般の人は緊急の時以外は魔物に手を出したらいけませんし、冒険者じゃなかったならどうやって戦いの経験を積んだんでしょうか?」


 あ、そうなの?

 この世界だとそういうルールなのね。

 他の異世界だと、別に冒険者じゃなくても魔物狩っても別によかったけどな。

 もちろん勝てるかどうかは別問題だけど。


「い、田舎の方じゃけっこうその辺緩かったりするんだぜ。小物とかは密かにみんな狩ってたりするし」

「あ、それは聞いたことあります。畑とか荒らされないように猟師さんが小型の魔物を追い払ったりとかですね」

「そうそう。そんな感じ」


 ってどんな感じだよ。

 小型とは言え、魔物追い払うとか猟師強いな。

 でも考えてもみれば猟銃とかあるし、弱い奴ならなんとかなるか?

 まぁ、どっちにしろ、うららが誤魔化されてくれたからOKだ。


「それより機械だよ、機械。これどうやって使うんだ?」


 とりあえずこれ以上深く突っ込まれないうちに話題変えとこう。

 絶対すぐにボロでるからな。


「あ、はい。それじゃあちょっと説明しますね」


 と言うわけで、俺たちはうらら先輩の講義を受けることになった。

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