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3話「原宿冒険者ギルド」

「うーん。どうしてこうなった?」


 俺は原宿エリアの冒険者ギルドの前で頭を捻った。


「いいじゃない。早く行きましょうよ」


 俺のとなりには妙にやる気な白夜と、


「あなたならこの世界でも十分冒険者としてやっていけると思いますよ」


 いつも通りのクシャナさん。

 俺はその二人と冒険者ギルドにギルド員登録に来てる。


「別に不安なわけじゃないんだけど、やっぱり働かないとだめなのかなーと思って」

「それは仕方ありません。いつまでもシシオに頼るわけにもいきませんし、アイリにああ言われてしまっては……」

「うん。それは分かってるよ」


 俺たちが冒険者として登録に来た理由は、ズバリお金だ。

 こっちの世界に帰って来てからはずっと獅子雄中佐に援助してもらってた。

 でもずっとそれだと雇われてることになっちゃうからそれは避けたい。

 俺としては、別の世界の拠点にため込んであるレアアイテムを売ってそれで生活するつもりだった。

 ところが今日になって問題発生。

 急に愛理が別の世界のアイテムをこの世界に持ち込むことを禁止するって言いだした。

 異世界召喚術士の夢路と色々話した結果、下手に異世界産アイテムを持ち込んで『縁』を作らない方がいいって結論に達したらしい。

 前に夢路が「この世界のアイテムのはずなのに別の世界の縁を持ってることがある」的なことを言ってたよな。

 その話を詳しく聞いて、どうも愛理には何か思うところがあるとかなんとか。

 とにかく何がどうなってるのか分からない状況で、これ以上話をややこしくする可能性を減らしたいんだってさ。


 そんなわけで俺はお金の当てが外れて自分で稼がないといけなくなったってわけ。

 ひどい話だよ。

 いきなりそんなこと言われても、俺にはこの世界で普通に働くとかすぐには出来そうにないしさ。

 そんなわけで手っ取り早く稼ぐには冒険者しかないだろってことになった。

 思いついたら吉日ってことで、夢路と愛理の話し合いが終わって俺はすぐにギルドに行くって宣言した。

 宣言したけど、愛理はなんか用事があるって帰っちゃった。

 だからクシャナさんと二人でギルドに行こうとしてたら、白夜は何故かついて来た。

 それが今の現状だ。


「いいじゃない。私、冒険者ってやったことなかったから憧れてたのよ」

「いや。ていうか何でお前まで冒険者やる必要があるんだよ。実家に住んでるんだろ?」


 そもそも俺と違ってちゃんと親が居る白夜は生活に困らないはずだ。

 なのにこいつは何を好きこのんで冒険者になろうって言うんだか。

 憧れなんて、最初だけだぞ?


「あんたも聞いてるでしょ? 今のこの日本だと16歳で成人なの。だから学校に行ってないんだったら働いてないとおかしい歳なのよ」


 ああ、それな。

 俺も最初びっくりしたけど、白夜の言ってることはほんとだ。

 こっちに帰って来てから今日まで、俺もちょいちょい情報収集はした。

 そして判明した事実。

 日本はずっと16歳で成人扱いだったって風に歴史的事実がすり替わっちゃってた。

 このあたりはどうも幕府が存続してて西日本を統治してるのに関係してるらしい。

 なんか日本国連邦法としての統一ルールだってさ。

 だから俺らくらいの歳だと、学生だったり社会人だったり、人によってマチマチらしい。


「て言うか、白夜はそもそもなんで学校行かないんだ? ほんとなら高校生だろ、俺ら」

「あんたね、今のこの世界で勉強が必要だと思う? この世界を元に戻すつもりだったら、学校なんて言ってる場合じゃないじゃない」

「まぁ、そりゃそうか。学校行っちゃうと放課後しか動けなくなるしな」

「あんたなんかのん気ね。他に頼れる相手は少ないんだから、ちゃんとしてよね」

「してるだろ。実際ここにこうして来てるんだから」


 そうそう。俺だって遊んでるわけじゃない。

 これからのことを考えてちゃんと基盤ってのを作ろうとしてるのよ?


「はいはい。いいから行くわよ。いつまでも話してたら遅くなるわ」


 そう言って白夜は一人でどんどんと歩いていく。

 俺の抗議なんて聞いちゃいない。

 

「シュウジ。私たちも中に入りましょう」


 そう言って俺の手を取るクシャナさん。

 なんか釈然としないけど、まぁいっか。

 俺はクシャナさんに手を引かれながら原宿ギルドに足を踏み入れる。


 冒険者ギルドって言えば、普通は雑多なイメージだと思う。

 だいたいの場合、広い木造の建物の奥にカウンターがあって受付のお姉さんが並んでる。

 クエストボードは壁に打ち付けてるのが定番かな。

 その前じゃ若手の冒険者たちが、どのクエストを受注するかであーだこーだって言い合ってなかなかどかないんだよ。

 その点ベテランは落ち着いたもんだ。

 ギルドホールのテーブルに足を組んで座ってて、「おい若造、美味い話があるんだが聞いて行かないか?」とか言って間抜けなカモを探してんの。

 けっこう伏魔殿よ、冒険者ギルド。


 まぁ、それも一般的な中世ヨーロッパ的な異世界での話だ。

 近代的なこのアナザー東京だとちょっと様子が違う。

 まず建物が立派。

 なんかもう宇宙人が建てたイベントホールみたいに前衛的な形。

 輪切りにされた卵が微妙に崩れかかってるみたいな楕円体の本体は全面的にガラス張り。

 そのせいか建物の中も明るくて、『騙し出し抜き罠に嵌め』っていう冒険者のアウトロー的な暗さを感じない。

 それから天井には吊り下げられた巨大モニターだ。

 なんか番号が並んだ表だとか、ランキング的な名前の羅列だとかを順番に表示してるな。

 ホールの中央には輪になったカウンターがあって、職員的な人はその中に居る。

 そのカウンターを取り囲むように、床からは途中で折れ曲がった板みたいなのが何重にも円を描いていっぱい生えてる。

 よく分かんないけど、たぶん何かの端末だと思う。

 みんな折れ曲がった上の方の部分をタッチしまくってるし。


「ふーん。結構広いのね。案内掲示板みたいなのが出てないみたいだけど、どこに行けばいいのかしら?」

「そりゃ真ん中のカウンターしかないだろ。初めて冒険者ギルドに行ったら、まずそこに直行ってのがパターンなんだよ」

「なんのパターンか知らないけど、とにかくそれがよさそうね」


 そして俺たちはホール中央の円形カウンターに向かった。

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