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47話「修め司るもの」

「せっかくの2人掛かりだ。作戦をよく考えて数の利を上手く活かしたまえよ?」


 床の上、講堂の真ん中で足を止めたレーヴェントーレが言った。

 その表情は見るからに自信満々。

 俺たちに何かを期待しながら、自分が負けるとは少しも思ってないって感じだな。


「白夜。援護頼むぞ。俺があいつの動きを封じたらとどめな。あと俺がヤバそうだったら割って入って」

「分かったわ。あんまり無茶しないでよ?」


 そう言われても上位魔族と戦うこと自体無茶だからな。

 最初から無理な注文だ。

 でもその代わり役割分担はいいひらめきだった。

 レーヴェントーレの狙いはあくまでも俺に能力を使わせることだ。

 つまり基本的には俺を狙ってくるはず。

 だから白夜を後ろに下げておけば狙われる可能性は少ない。

 しかも白夜が後衛として援護してくれれば俺としてもありがたい。

 イベントホライゾンは最強の矛と盾の二役を同時にこなすチートスキルだからな。

 いざという時は助けてもらおう。

 でも間違っても俺にはぶつけないように気を付けてよ?


「もういいのかね? それでは第2ラウンドといこうか」


 レーヴェントーレの右手に赤い魔力波動が灯る。

 それは属性を付加されてない純粋な魔力。言ってみればただのエネルギーの塊だ。

 それでも上位魔族の魔力の強さを考えれば当てられたらただじゃ済まない。


「かわしたまえよ。簡単に終わられてはつまらん」


 レーヴェントーレが右手を水平に突き出し俺に狙いを定めた。

 俺は陣足を使って速攻で回避に入る。

 同時に元居た場所に着弾。

 レーヴェントーレの魔力弾が床を抉った。

 でも全然威力抑えてるな。

 あくまでも俺を試すつもりらしい。

 レーヴェントーレは魔力弾の連射を俺に向かって撃ち続ける。

 手加減されてるとは言え、回避するには全速で動き続けるしかない。

 右へ左へ走り回る間にも魔力弾で床が穴だらけになる。

 おまけに飛び散ったコンクリの破片で足元の状況も悪くなる一方だ。

 このまま逃げ回ってるだけじゃマズイな。

 とにかく反撃に出ないと。

 ただ斬波は回避されるからダメだ。

 威力にはそこそこ自信があるけど当たらなきゃ意味が無い。

 動きの素早いレーヴェントーレ相手には、威力を求めるよりも回避し難い範囲攻撃の方がいい。


「白夜、盾!」


 俺が叫ぶとすぐにイベントホライゾンが割り込んで来た。

 真っ黒な黒点が壁になって魔力弾が音も無く途絶える。

 その隙に俺は迅足を停止。

 イベントホライゾンの陰で床に散らばったコンクリ片をかき集めた。

 細かい破片を握りしめられるだけ両手別々に握りこむ。

 それから俺は自分自身と融合してる古代錬金遺物<レトリック>を起動した。


 レトリックはありとあらゆるものを改変できる素敵アイテムだ。

 俺がスキルを弄ったり鉄パイプをロングソードに作り替えたりできるこのこれのおかげ。

 でもってその仕組みは割と簡単。

 改変したいものとレトリックの機能を掛け合わせるだけ。


 たとえば、増幅誇張機能<ハイパーバリー>。

 こいつは名前の通り、現象やスキルレベルを増幅することができる。

 しかもかなり強力で、スキルレベルで言うと最大で10倍っていう高性能ぶり。

 一つ一つのスキルレベルが低い俺には無いと死ねるレベルの主要機能な。


 ほかには、付加結合機能<オクシモロン>。

 こいつは色んなものを、どんな矛盾でも無視して融合させる機能だ。

 ファイヤーとウィンドを融合させてファイヤーストームにしたりな。

 ただ融合させるとスキルレベルが半減する。

 俺のファイヤーとウィンドはそれぞれLv7とLv6。

 これを融合させた場合、間のLv6.5がさらに半分になってLv3.25だ。

 まぁ、それだと実戦じゃ使えないからハイパーバリーをかけてLv32.5にするけどな。

 さらに言えば、機能としては便利なオクシモロンだけど、実はこいつ結構危ない。

 なんでも融合できるけど、それでどんなものになるかは一回やってみないと分からない。

 融合させてみたら効果がヤバ過ぎて自爆とかって可能性が常にある。

 だからあんまり安易に使うな、ってレトリックと俺を融合させた錬金術師にも言われてるくらいだ。


 そんな感じで俺はレトリックで色々なものを改変して戦ってる。

 ただレトリックは基本的には生物には使えない。

 つか厳密には自我がある相手、な。

 何でも自我ってのは自分って『存在』を保とうとする働きがあるらしい。

 レトリックの改変機能の強制力はそれほど強くないから、ちょっとでも抵抗されると失敗するんだと。

 例外はオクシモロンを単独で使う場合。

 オクシモロンは矛盾を無視出来る機能だけあってその辺もフリー。

 だからヒュドラにマッチを融合して燃やしたりできたわけ。


 さて、そんなレトリックを使って今俺は即席の範囲攻撃を準備する。

 右手の中の砂利みたいなコンクリ片にファイヤーを付加だ。

 さらにハイパーバリーで威力を確保したら出来上がり。

 OK。

 この砂利とファイヤーの組み合わせは昔からよく使ってるから信頼性がある。

 上手くやればレーヴェントーレの動きを止めるくらいはできるはずだ。

 あとは上手く白夜と連携出来るかが勝負になる。

 よし。あの上位魔族に人間だってけっこうやるってことを教えてやろう。

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