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13話「パーティー」

 ヒュドラとの闘いは壮絶を極めた。

 不死の体に5つの頭を持つ狂暴な怪物を前に、集いし勇猛果敢な勇者たちが次々と倒れていった。

 嗚呼、無常なるかな兵どもの夢の末路。神の前では人の命はかくも儚いものか。

 しかし見よ。これが人の力だ。男の意地だ。

 そしてついに俺、諸神修司はこの長きに渡る死闘に勝利と言う名の終止符を――


「おい、お前。ぶつぶつ言ってないで俺たちも早く戦闘に参加するぞ。他の奴らに迷惑がかかる」


 先行して臨戦態勢に入った小パーティーのメンバーに怒られ、俺は未達成の武勇伝の脳内執筆から目を覚ました。

 いかん。まだヒュドラと戦ってもないのに気が早すぎた。

 でもいいもんね。こっから俺が華麗に颯爽とヒーロータイムだもんね。


「すみませーん。今行きまーす」


 俺はとりあえず謝って臨時パーティーを組む3人に合流した。

 このパーティーは即興にしては結構バランスのよさそうなメンツがそろってる。前衛攻撃職が二人と後衛術士が一人。そこに攻撃職としてなら前衛も後衛もこなせる俺が加わる形だ。

 リーダーシップを取ってるのは日本刀使いのガタイのいいおっさんだ。身長はそんなに高くないけど筋肉ムチムチで攻撃力的にパワーは十分そうだ。

 そのおっさんと一緒に前衛コンビを組むことになるのは、短剣を逆手に持ったパンクロッカーな髪型の兄ちゃん。こっちはおっさんとは対照的にかなり細身の体系だ。つってもガリガリって訳じゃなくて、ちゃんと鍛えたうえで贅肉を限界まで絞ってきてる。スピード重視の撹乱アタッカーと見たね。

 この前衛二人は落ち着いたもんで、軽い準備運動をしてちゃんと体をほぐしてる。

 それに比べると後衛の女の子はちょっと頼りない感じか。やっぱりヒュドラが相手ってのは怖いのか、術士用のワンドを握りしめて緊張しまくってる。後衛は距離取って戦えるんだから最悪の事態にはならないと思うけど、前衛への援護が滞るようなら俺も支援に回った方がいいかもだ。


「よし。全員準備はいいな。俺たちは一番左の首と戦る。お互い知らない人間同士だ。連携はあんまり当てにせずに自分の身は自分で守れ。行くぞ」


 おっさんはさすがにベテランなのか、割り切った指示を出して突っ込んで行く。それを残りの俺たち3人ですかさず追いかける。するとすぐにパンクヘッドの兄ちゃんがおっさんを追い抜いて先頭に立った。早速スタンドプレーだけど陣形的にはむしろそっちの方がいいだろうな。兄ちゃんが速度で撹乱、ヒュドラに隙が生まれたらそこをおっさんが狙い撃ち。うん。役割分担って素晴らしい。

 そして俺たちはヒュドラの前に立った。

 デカい。近くで見ると結構な大物。全長がいったい何十メートルあるのか知らないけど、持ち上げた鎌首だけでも二階建ての建物くらいある。こりゃ生命力も半端じゃないだろうな。

 でも今さら怖気づいてなんてらんない。周りじゃ他のパーティーがすでに戦闘に入ってる。見たとこ今は全体的に防御的な立ち回りに徹してるな。と言うのも、最初にヒュドラに立ち向かって行った兵士の一人が負傷してしまってるからだ。死んではないみたいだけど足をやられたらしい。相方が肩を貸しつつ安全圏まで連れて下がろうとしてるから、それを援護するために冒険者連中が時間を稼いでる感じだ。


「俺たちも合わせるぞ。お嬢ちゃん。魔法を一発ぶっ放して注意を引いてくれ!」

「は、はい!」


 指示を受けた術士の女の子はワンドを掲げて魔力を練り上げる。緊張してた割には術式の構築は早い。あっと言う間に氷の弾頭を生み出してヒュドラ目がけて発射。不意打ちに近かったこともあって氷弾はものの見事に命中した。


「いいぞ。作戦通りだ」


 術士っ子の撃った氷弾は一応ダメージを与えたけど致命傷には程遠かった。それでもオッサンに指示された通り、攻撃した頭のターゲットを取ることには成功してる。


「来る。囮になっから頼んだぜ」


 怒り心頭でこちを向いたヒュドラの頭。それにパンク兄ちゃんが斬りかかった。

 パンク兄ちゃんが速い。イケイケなビートに乗ってファッキンヒュドラをスローな木偶に、ってやめよう。兄ちゃんに合わせてパンクなノリで解説するには俺のボキャブラリーはあまりにもピープルだ。しかも異世界育ちだから時代遅れだしね。

 とにかくパンク兄ちゃんがいい仕事をする。決して遅くないヒュドラの攻撃を完璧に回避しつつ、逆手短剣の連続攻撃を大量に叩き込んでいく。

 これでヒュドラに回復能力がなかったらそのまま押し切れただろうな。でも残念。パンク兄ちゃんの秒間攻撃力はヒュドラの自然回復量に届いてない。傷を負わせても次の攻撃を当てる前にすでに再生されちゃってる。

 ずるい。さすがヒュドラ。ずるい。

 とは言えヒュドラは兄ちゃんに夢中だ。やっぱ動くものを追いかけるのは野生の本能なのかもな。おかげで日本刀のおっさんがいい位置に着けて、自慢、かどうかは知らないけど立派な愛刀を肩に担ぐように振り上げた。


「チェストぉう!」


 乾坤一擲。おっさんの一撃がヒュドラの首にめり込む。

 こうして俺たちはヒュドラへの先制攻撃を成功させた。


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