表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/173

61話「3対3」

それではここで二手に分かれよう。なにかあれば連絡してくれ」


 一通りの説明を終えたアルトレイアは、そう言って人混みの中に離れて行った。

 その後ろには十蔵のおっさんとパンク兄ちゃん。

 それが向こうのパーティーの編成だ。

 ぶっちゃけリーダーのアルトレイアが一番心配の種だったりする。

 まぁ、十蔵のおっさんがついてるから大丈夫だとは思うけど。

 俺は3人を見送って残った二人に振り向く。


「よし。じゃあ俺たちも行動開始しよっか」

「は、はいっ。よろしくお願いします」

「そうですね。行きましょう」


 と言うわけで、俺はクシャナさんとうららを連れて歩き出した。

 目指すのは祭りのメイン会場になってる神社の境内だ。

 もう少しすればクラルヴァインは来賓としてそこに来るらしい。

 作戦だとまずアルトレイアたちが騒ぎを起こして注意を引く。

 そしてその隙に俺たち3人がGPS付きの盗聴器をクラルヴァインに仕掛ける。

 なんて言うか、すっごいシンプルで分かりやすい。

 その所為なのか、いまいち緊張感無いかも。

 俺はお面を頭の方に上げて顔を出す。

 息苦しいんだよ、これ。


「あ、いいんですか、それ?」

「だいじょぶ、だいじょぶ。クラルヴァインに近づく時に戻せばいいんだって」

「な、なるほど」


 俺の一言でうららがお面を外し、クシャナさんもそれにならった。

 アルトレイアには悪いけど、5色レンジャーは一時解散だ。


「にしてもほんとに幽霊が祭りに来てるのな。そこらじゅうに居るし、すごくない?」


 最初は気づかなかったけど、よく見たら一般客に混ざって若干透けてる人たちが居る。

 割合的には二、三割くらいか?

 やけにライブ感のある降霊祭だ。


「そう言えばお兄さんはみたま祭りに来たことがなかったんですよね。このお祭りは、もしかしたら一度お別れした人と会えるかもしれないお祭りなんですよ」

「かもしれない、ってことは絶対じゃないんだな」

「はい。幽霊さんも自由参加ですし、どこに誰が居るか分からないので、会えたらいいなーっていう感じです」


 あ、けっこう軽いノリなのね。

 まぁ、堅苦しいよりはいいけどさ。


「そうしたらアレか? もし知り合いの幽霊が見つかったら――」

「そうなんですよ。年に一度だけ、このお祭りの中だけですけど、一緒にすごせるんです」

「そりゃすごいな」

「だからけっこう有名なお祭りで毎年人もいっぱい来るんですけど、お兄さんはお祭りとかあんまり興味無い人ですか?」

「んんー、そんなことも無いけど……」


 て言うか、俺が異世界に行く前は絶対こんなんじゃなかったはずだしね、みたま祭り。


「それよりもいいのか? 死んだ人に会えるなら、うららにも探し出していっしょに祭り楽しみたい人とか居るんじゃないのか?」


 俺がそう言うと、うららは一瞬びっくりしたような顔をした。

 それからすぐに顔を伏せてモゴモゴと言った。


「わ、私はちゃんと、会いたい人とご一緒出来てるので、その、だいじょうぶです……」

「?? そうか? ならいいけど」


 そのわりにはクエストに参加しちゃってるけどそのへんどうなんだ?

 まぁ、本人が大丈夫って言うんだから大丈夫だよな?

 俺はなんとなく不安になってクシャナさんをちらっと見た。

 するとクシャナさんはなにかを量るような無表情でうららをじっと見つめていた。

 じーっと。

 じーーーーっと。


「シュウジ。人が多いですから腕を組みましょう」


 うららを見つめてたクシャナさんが不意に俺を見てそう言った。


「え? うん。いいよ」


 珍しいな。

 いっつもならこういう時は手をつなぐんだけど、今日に限って腕を組むらしい。

 なんだろう。

 クシャナさんの行動パターンがいつもと違う。

 今までの経験的に言って、お祭りだからってわけじゃないはず。

 俺が不思議に思ってるあいだにも、クシャナさんは俺と腕を絡めて体を密着させて来た。


「はい。これなら迷子になりませんよ」


 さらにクシャナさんは首を傾げて俺の方に頭を乗せてくる。

 いつにも増して密着度高めでしあわせ度高め。

 たまのお祭りだからいいよね。

 周りにもそういう人たちいっぱい居るし。


「……」


 と、そんな俺たちをこんどはうららがじっと見つめて来る。

 なんかすごく迷ってる目だ。


「わ、私も迷子になってしまうかも、です」


 なんだよ、その宣言は。

 しかもさらになんか言いたそうな目になってるし。

 これはつまりあれか?

 仕事とは言え、祭り会場に来て自分だけボッチなのが不満なのか?


「じゃ、じゃあ俺でよければ手でも繋いどく?」


 妥協案もいいとこだけどね。

 ほんとならうららくらい素直で可愛けりゃ相手くらいいくらでも見つかるだろ。

 でも今はクエスト中だ。

 俺なんかでも居ないよりはましだと思ってもらうしかない。


「はいっ。よろしくおねがいします!」


 妙に元気に返事して、うららは俺の腕にしがみついて来た。

 手を繋ぐって言ったのに、お前もかよっ。

 いやまぁ、バランス的にはその方がいいけどさ。

 でもほらクシャナさんが見てるよ?

 俺の体の陰から半分だけ顔を覗かせてじっと見てるよ?


「…………」


 ここでうらら、顔を逸らすことで衝突を回避!

 そうだ。

 戦いはなにも生まない。

 みんなで仲良く祭りを楽しもう。

 仕事だけど。


「ってことでそろそろ移動開始っ」


 俺は両側からサンドイッチされたまま祭りの賑やかさの中を歩きだす。

 クラルヴァインが現れる予定時刻までもう少し。

 それまで祭り客に紛れながら少しずつ移動しておくことにしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ