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49話「マイオーシス」

『よかった。ちゃんとバレずに近づけたんだね。ボクは絶対、途中で修司が何かやらかしちゃうと思ってたんだけどなー』


 俺たちが予定の位置についたことを報告すると、愛理はまず最初にそう言った。


「おい、ふざっけんなよ。別に俺はそんなはた迷惑なおっちょこちょいキャラじゃねーっての」


『んんー。それはどうかなー。修司は昔から、うっかりやらかしちゃう症候群だからね。クシャナちゃんが居なかったら、とっくにどこかで落とし穴にでも引っかかって死んでると思うよ?』

「なにそのマヌケな死にざま。せめて魔物と戦って勇ましく死ぬパターン希望なんだけど?」

『いいよ。それじゃさっそくデウスと戦ってみよっか。もしクシャナちゃんに頼らずに勝てたらジュースおごってあげるよ』

「安ッ。たかが120円のためにそんな自殺行為出来るか。だいたい俺とクシャナさんは一心同体なんだから、戦うにしても一緒に決まってるだろ」

『はいはい。じゃあその半身であるところのクシャナちゃんを助けるために、さっそく修司は修司の役割を果たそっか』

「言われるまでもなくそのつもりだよ。とにかくマイオーシスでデウスの魔法防御力さえ下げればこっちのもんなんだ。それくらいの仕事は軽くこなすって」


 今のところクシャナさんはデウスと互角に魔法を打ち合ってる。

 化身の姿に封印されてるからって全然引けを取ってない。

 ただ長引かせれば長引かせただけクシャナさんは魔力を消費する。

 つまり、いつまでも俺がのんびりしてるわけにはいかないってことだ。


『ああ。それからデウスにとどめを刺すのは修司の仕事だって忘れないでね。どうしても無理そうなら仕方ないけど、これを逃すと同じくらいのチャンスなんて滅多に無いんだからね』

「分かってるって」


 怪獣、って言うかデウスくらいの化け物と戦う機会なんてそうそうあってもらっても困るけどな。

 ここ無人島だからまだいいけどさ、すでに結構自然破壊しちゃってると思うぞ。


『とにかく慎重にね。攻撃のことはクシャナちゃんに任せて、3人は身の安全を確保することに徹すること』


 そりゃデウスの防御力を半減させたくらいじゃ俺たちの攻撃じゃ火力不足だろうしな。

 唯一、白夜イベントホライゾンは効きそうだけど、相手がデカすぎて倒し切るまでに反撃される可能性がデカい。

 攻防ともに無敵クラスのこのスキルも、遠くの敵を攻撃させてる間は防御に使えないってのが玉にキズだな。

 そういうわけで、俺たちはこそこそしながらデバフ要員として裏方仕事に精を出すのが正解ってわけだ。


『危なくなったらデウスの弱化を中断してもいいからね』

「だってさ。よし。それじゃ行くか。安全第一で怪獣退治だ」

「何かすごい矛盾してる気がするわ。そんなむちゃくちゃな話、初めてよ」

「自分も、まさかこんな任務に当たることになるとは思わなかった」


 まぁ、文字通り『人間VS怪獣』っていうのはなかなか経験出来るもんじゃない。

 なんて言うか、対ドラゴンともまた違った趣だよね。

 あれはあれで特別な魔物だけど、怪獣ってのはやっぱり日本人にとっては別の意味で特別な気がする。

 ザ・キング・オプ・モンスター。

 そんなのと戦えるんだから男としては誉高いよ。

 いや、ほんとほんと。シャレになってない。


 そんなシャレになってない相手に、俺たちはさらに接近する。

 ここまで近いと魔法戦の轟音と閃光が激しい。

 雷撃の多いクシャナさんの攻撃は、その都度空気を震わせストロボを焚く。

 濃い霧の中は、まるで積乱雲にでも入ったみたいな感じだ。

 でもそれでいい。

 そういう大騒ぎに乗じて、俺はジューグマの光弾を撃った。

 この島は木が多いから水平に撃って足を狙うのは難しい。

 だから枝葉の間から斜めに打ち上げる格好になった。

 あんまり目立つことはしたくないけどこればっかりは仕方ない。


 不安に思いつつ放ったジューグマは、それでもちゃんとデウスに命中した。

 よし。

 なんとか気づかれてないっぽい。

 あとは俺自身にマイオーシスをかけることで、それがデウスにも共有される。


「クシャナさん、いくよ」

『はい。こちらも準備は出来ています』


 レシーバー越しにその返事を聞いた俺はマイオーシスを発動。

 自分の魔法防御を減衰する。


「いいよ。お願い!」


 言った瞬間、クシャナさんの雷撃が激しさを増した。

 怒涛の勢いで打ち出される稲妻。

 最初の数発はそれまで通り、デウスの魔法障壁に防がれて途中で途絶えた。

 でもマイオーシスで減衰された障壁は数発目でついに耐えきれなくなった。

 入った。

 クシャナさんの攻撃が通った。

 濃霧に浮かび上がるシルエットに、次々に雷撃が着弾する。

 そして響き渡るデウスの雄たけび。

 魔法にしろ物理にしろ、相当協力な防御力を持ってたデウスのことだ。

 今までダメージらしいダメージを受けること自体少なかったのかもしれない。

 明らかに苦悶の色を含んだ叫びをあげて、デウスの巨大な体が後ろに傾く。

 そして地響きを轟かせながら、デウスは母島の地面に倒れこんだ。


「よし。効いてる!」


 成功だ。

 マイオーシスは確実にデウスの魔法防御力を低下させた。

 この調子ならこいつを倒すことも本当に夢じゃない。

 俺はこの時点ですでに自分たちの勝ちを半ば確信した。

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