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43話「正体」

「元々たいして期待していたわけではないが、やはりオーガ程度をどうしたところで使い物にはならんか」


 木刀少年はクシャナさんの倒したオーガの死体をつついてそう言った。

 おいおい。

 勘弁してくれよ。

 お前ただの村人Aじゃなかったのかよ。

 まず言わせてもらえば、こんな危険な魔物の生息地帯に来てる時点でもうアレだ。

 しかも言ってるセリフの内容的に立ち位置最悪。

 俺ってもしかして敵に必殺技教えちゃった?


「ちょっと待て。一応最初に確認するけど、お前がこのオーガに俺たちを襲わせたのか?」

「知れたこと。この島を嗅ぎつけてきた以上、無視しておくことも出来なかったからな。オーガどもの使い勝手を見るついでに遊んでやったまで。とは言え結果はこの有様だ。やはり宿主は選ぶべきだと参考になったぞ」


 くそ。

 最悪だな。

 小笠原がきな臭いのは分かってたんだ。

 当然どこかに敵が潜んでる可能性は当然あったのにこれだよ。


「お前、いったい何者なんだ? なんで俺たちを襲った?」

「なんだ、まだ分からないのか。せっかく家まで案内してやったのに、ずいぶん鈍い奴だな」


 いや、違う。

 なんとなくそうじゃないかと思ってた。

 出てきた瞬間からもしかしたらもしかするかもって思ってた。

 だけどあれだよ。

 まさかほんとにこんなにストレートに来るとは思わなかったよ。


「お前、左天蝉、だな?」


 俺がその名前を呼ぶと、木刀少年はニヤリと笑った。

 ああ、そうだろうさ。

 楽しいだろうさ。

 変装なんかして人をおちょくるのはさぞ愉快だろうさ。

 でも俺は別に気にしない。

 こんなくだらないことでいちいち怒るほど子供じゃないんだよ、俺は。


「違いますよ、シュウジ。その子供は天蝉ではありません。あの男と違ってちゃんと気配のある生き物です。人間に上手く化けていますが、下等な魔物の類いです」

「なぁーんだ、ばれちゃうのか。上手くだませたと思ったのになぁ」

「って天蝉じゃねーのかよ。ふざっけんなよ、紛らわしい真似しやがって」


 くそ。

 完全におちょくられてるじゃねーか。

 いったい何が悲しくてこんな子供にバカにされなきゃいけないんだか。

 いや、絶対普通の子供じゃないけどさ。


「天蝉の客だから、せっかく楽しませてあげようと思ったのになぁ。で、もぉ、魔物っていうのは勘違いだよー。これでもちゃんっとした人間だからねぇ」

「それはうそです。あなたの気配は微弱ですが、感じ取れる限りでも人間のそれではありません。おそらく粘性思念体の一種でしょう?」


 それってつまりスライムだよな?

 見た感じ完全に人間だけど、どうなんだろう。


「へぇ。そこまで分かるなんてやるじゃん。たしかに今はスライムだよ。でもやっぱり元が人間っていうのは本当なんだよねぇ」

「元人間のスライム? そんな話は聞いたことがありません」

「そりゃあそうさ。僕以外にスライム人間がそうそう居ちゃあせっかくのこの体がつまらないからね」


 つまらないって、オンリーワンなスライム人間は楽しいのか?

 あんまりそうは思えないけどな。


「この体、ですか。天蝉も普通ではない体をしていましたね。あなたたちはお互い体を変化させた同類、と言うことですか?」

「冗談。あんなのと一緒にしてもらっちゃこまるなぁ。天蝉は機械の体にご執心だけど、僕に言わせればナンセンスさ。だってそうだろ。機械なんて設計図の段階ですべての可能性が決まってる。そんなものをいくら開発したって楽しみがない。最初から最後まで予定調和じゃなんのために生まれ変わったのか分からないだろ」


 天蝉は少なくとも鎧武者の体は気に入ってそうだったけどな。

 あれだな。

 同じ趣味なのに趣味が合わないとか、同好の士って言うには残念な関係だ。


「その点、スライムの体は最高さ。不定形で不確実。なんにでもなれるし、縛られるものが無い。これほど可能性に満ちてる存在なんて、僕以外には居ないだろうねぇ」


 やけにスライムを高く評価するな、こいつ。

 いや、単に自分大好きなだけか?

 なんて言うか、筋トレして自分の体にうっとりしちゃってる人たちに通じるものがある気がする。


「そのあなたがこんな島で何をしていたのです。せっかくの可能性も、こんな孤島では意味が無いでしょう」

「そうなんだよ。あいつら、僕につまらない役目を押し付けて、自分たちだけ好きかってやってくれちゃってさぁ。だから今日は僕の遊びに付き合ってもらおうと思ってさ。余興はいまいちだったろうけど、今度は僕が楽しませてあげるよ」


 うわ。

 なんかすごいありがた迷惑な感じがする。

 絶対ろくなこと考えてないパターンだよ、これ。


「生憎ですが、あなたの遊びに付き合うつもりはありません。それよりも天蝉やクラルヴァインについて話してもらいます。抵抗しない方が身のためですよ?」

「あはは。いいね。お互い楽しもうよ。もし僕に勝てたらなんだって話してあげるよ。せいぜい頑張って捕まえてごらん」


 ずいぶん自分に自信があるスライムだな。

 言っちゃ悪いけど、どう考えても相手が悪いだろ。

 正直スライムなんかクシャナさんに勝てるわけないって。

 でもいっか。

 こいつを生け捕りにすれば色々と情報が得られそうだし。

 クシャナさんにサクッと倒してもらってクラルヴァインについて聞き出そう。

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